今年の新人賞には、六五六篇もの詩と一三篇の評論が寄せられました。全国からの切実な心にこちらも勇気づけられたことをお伝えします。応募された皆さん、ありがとうございました。
詩に語られたものは社会状況を反映して、閉塞感と疎外感が濃厚でした。それでも詩を心の拠り所にして声を発していることが希望です。皆さん、これを機にますます詩の道を続けて頂きたいと願うものです。
受賞の島田奈都子さんは技術的にも新人の域を越えています。作品は放射能の時代を幻想的な想像力と奔放な筆致で描いています。社会現実が内面化されて、人の関係性が個と類の記憶の交錯する所に展開されます。ますます書いて詩人会議をリードして下さい。
佳作一席に入選の紫水菜さんに注目です。大阪の一七歳、高校生。作品には強い光を感じました。これから詩の世界で羽ばたく逸材です。ひりひりする若いエネルギーの身体感覚がリアルな情景を綴りながら、動くことで外の世界へつながっていく。この内側からの力強さはどうでしょう。表現にも文芸のセンスと個性を感じます。私はこの作品を新人賞に推しました。
佳作二席入選の井上尚美さんの作品は、描写と構成が巧み。津波をめぐる悲しみが関係性の中に描かれています。
佳作三席入選の草野理恵子さんの作品は、家族の大切な物語が感銘を呼びます。障害をもった子の歩みが、母の絶望から感謝に。湖の比喩が新鮮です。
小山健、大村理沙、五藤悦子、北方修司、白瀬まゆみ、町田理樹、坂本遊、平野加代子、桐木平十詩子、薫ハル、金子忠政、細田貴大、榊次郎、尾堂香代子、寒山花、秋山末雄、七尾美日、古屋淳一、岡村直子、後藤順、林口玲也、吉田ゆき子、植田文隆、春山房子、若本有加、中沢聡、あずまなず菜、小箱、市井肇、の皆さんも光ります。
評論部門は、安達重子さんのジャン・コクトー論が光り、戦争や偏見に負けない詩人の生き方がありました。ただ叙述に弱点があり、私以外に賛同者が得られず先へ進めませんでした。
最後に、共に選考と事務に尽力された皆さんに感謝です。
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