詩のパンフ『憲法改悪に反対する』1・2集がでました。

詩作品は

1集

小森香子 中正敏 増岡敏和 玉川侑香 赤山勇 福永充郎
木目夏 茂山忠茂 くにさだきみ 佐藤文夫 佐相憲一 荒波剛
赤木比佐江 仲村ひろみ 葛原りょう 芝憲子のみなさん。

2集

瀬野とし 久保田穣 上山青二 花田克巳 滝いく子 中村信司
石関みち子 長居煎 あらきひかる 野川ありき 青井耿子 葵生川玲
脇彬彬樹 草倉哲夫 鈴木文子 高岡岑郷のみなさん。

どちらにもあとがきとして
土井大助さん(詩人会議運営委員長)の詩が掲載されております。

 1集には画家の鯨井洪さん、十滝歌喜さん、
2集には美濃部民子さん、宮本和郎さんが画で参加しています。
各100円です。送料は一部120円。送料は10部から無料でお送りします。
ご希望の方は詩人会議までご連絡ください。



   sijin-kaigi@tokyo.email.ne.jp

作品紹介

『憲法改悪に反対する』

1集より


歩いていますから  玉川侑香

 

 

いのちとは まるごと

抱きしめられて愛されるもの

 

おまえを産んでごめんなさいと

若い母親に言わせては いけないものなのに

あの日のファルージャの

炎になって燃えたものの

 

ごめんなさい

いま私たちは 歩くことしかできないけど

 

もう 殺さないで と叫んでいます

プラカードを掲げています




名刺  赤山勇

 

 

瀬戸内海。

小豆島土庄町で元少年特攻隊員宿舎だった紡績工場が解体される、しかも敗戦時の「血書の壁」があると聞いて、海を渡った。

これを遺すには牛乳瓶一本分の血がいるという、「盡忠本土決戦」はとっくに姿を消し、「靖國神社」の名刺だけが残されていた。

あの大鳥居の「靖国」は東京九段から動かぬそう思いこんできたがちがうんだ、「靖國」は神事神職の衣擦れもうやうやしく、いたるところへ静かに出張る、先んじる。

日本の隅々はおろか血が匂う現場へは名刺一本で進出し吟味し、今日の戦果を祀ラントス。




夢二題  佐藤文夫

 

 

いまは夢みることさえ罪なのか

平和としあわせの夢を………

夢みることさえ罰せられたあの時代

いまは歌わぬことさえ罰せられる時代だ

まもなく夢みることさえ罰せられる時代が

やってくるにちがいない このままでは

    *

畳のうえであたたかい夢をみていたい

それさえもこの国ではかなわないのか

雨にぬれ風にふかれて 路上で

つめたい夢をみることしか

この国ではかなわないのか

リストラされたわたしたちには……




ハビビ アッサラーム  葛原りょう

 

 

ハビビ は 愛しています

アッサラーム は 平和

何千年も昔から 何千年も未来まで

ハビビ アッサラーム

 

町長も 警官も 野菜売りも

集えばすぐに談笑するという

 

侵略者の服を脱ごう

生まれた土地の服を着よう

解放者という偽善も脱いで

ハビビ アッサラームのひと言で




2集より



贈りたい  瀬野とし

 

 

アメリカは

たくさん 持っている

 お金も

 広い土地も

 宇宙ロケットも

 ノーベル賞受賞者も

 

でも わたしは 贈りたい

あなたがたが持っていなくても

わたしたちが持っている すばらしいもの

 「戦争の放棄」条項を

 

アメリカ合衆国憲法に




五月の風のなかで  久保田穣

 

 

父の遺したアルバムに

若い兵士の写真が

数多く貼られていた

  昭和十五年 出征

  昭和十七年 出征

教え子たちが父に遺していった

茶色の写真

 

アルバムに封じ込まれた死を見つめ

父は戦後をどう生きたか

五月の風のなかで

父の悔恨のことばが

今も わたしの胸によみがえる




木  葵生川玲

 

 

自衛隊の、

古い倉庫群が取り壊されて

塀だけが残された広い土地がある。

 

真ん中に、

ただ一本の木が残されていて、

遠い空の青と

鮮やかな葉の緑が、

希望のように萌えている。




九条とともに  鈴木文子

 

 

紅筆の先がスタートラインを引く

日本の女は下唇から

ヨーロッパの女は上唇から

愛しい者 愛する者に向かって

いっきに描く一本の線

 

「二度と戦争を起こさないように」は

国のために死んだ

命からのおくりもの

美味いものは分けあって食べるわたし

若返りの化粧して

生まれ変わった命と赤い唇で さぁ!