小詩集
憲法改悪反対パンフ
2013年3月3日発行

このパンフレットに収録されている詩は、憲法改悪、戦争反対などの活動に、ご自由にお使いください。(無料)
その場合、掲載紙誌を詩人会議事務局までお送りいただければ幸いです。



 
sijin-kaigi@tokyo.email.ne.jp

 パンフの作品から紹介します。
エクスタシー     秋村宏  

軍艦も
戦闘機も
戦車も
ミサイルも
もっと
もっと
もっと
核だって
人間を殺すシステムもほしい
もっともっともっともっと 

 
沖縄県民は   島袋あさこ

沖縄は
沖縄県民は
後に続くどんな言葉を
どれだけ費やせば伝わるのかと
鬱々とした日常の中で
沸々と湧く怒りを抑え
ヒリヒリとした痛みに耐え
滲む悔しさと哀しさを噛み締め
百四十一万二千五百十三人の県民は
その数だけの想いを持って
憲法の下で日々暮らしている
私の中では
理不尽だ りふじんだ
リフジンダの声が響きわたり
他の言葉をさがせない


 アベコベニクシ的転回     長居煎 

自衛隊を「国防軍」にしたい連中は
憲法が憎くてたまらない
「軍」を海外に雄飛させたい連中は
憲法が憎くてたまらない
生活保護など切り捨てたい連中は
憲法が憎くてたまらない
権利を主張する国民が疎ましい連中は
憲法が憎くてたまらない
マグナカルタや権利章典の伝統も受け
時の為政者の横暴を許さないように
最高法規として定められてきた各国の憲法。
その主旨をアベコベにし
国民を締め上げ
戦争に駆りたてようとする改憲案。
そんな迷妄への「アベコベニクシ」的転回はNOだ!


 手放すな!    山岡和範

憲法があることも知らず生まれて十五年
神の国の少国民として育ったぼくは
戦争は負けたのに殺されもせず
爆音のない青空 光る星空を見上げていた

神の国にも憲法があることを知ったのは
新しい平和憲法ができてからだったが
憲法は国家権力が国民を縛る法と思って
いつもそのことが気になっていた

朝鮮戦争が始まってまた戦争かと思ったが
新しい平和憲法は国民の人権を守るために
国民が国家権力を縛る法であることを学んだ
平和憲法九条を手放すな!


溢れることば      田上悦子

戦時下の教室は先生だけがしゃべっていた
夢はほとんど兵隊さんになることだったから
話すこともなく静かだった

今朝のホームルームの議題は「夢」
教室は喧々囂々(けんけんごうごう)とにぎやかだ
夢が一人ひとり違うので
先生だけが笑顔で黙って聞いている

自衛隊を国防軍にしよう
という声が近頃随分大きくなった
そんな名を付けたがる人は
一人ひとりの夢やことばが最も嫌い
日本中うるさい教室のようであるのが最も怖い
私が最も怖れるのは うるさい自分を
恥じること あきらめること 心が死ぬこと

 騙されまい!     南浜伊作 
 
アジアの民衆の大きな犠牲ふまえ
生みだされた日本国憲法
戦力を持たず 交戦権を放棄した
9条こそ日本国民の国際公約なのだ

その9条が日米同盟の妨げになっている と
米国務副長官アーミテージに言われ
集団的自衛権を行使できるように
憲法改悪をたくらむ人が総理になった

「新しい憲法を自らの手でつくろう」
「溌剌とした気分」をつくりだし
「新しい時代を切り開いていく」ために
さも自主憲法づくりを装い主張してきた男だ


 これでいいのか    佐藤文夫

これでいいのか いまの日本 これでいいのか
まえの政府は詐欺師 ペテン師らの集団だった
いまの政府は「あ」の字も 「い」の字も
ヤクザのように怖い眼で国民を恫喝し脅迫する
増税一本やりで 原発は推進し軍備は増強する
福祉は切り捨てTPPもオキナワもフクシマも
財界べったりアメリカべったり九条を改憲して
日本を強力な軍事国家に 変えようとしている

収賄贈賄 料亭に集まりひそかに行う談合政治
むかし政治家は汗水流し、時には血をながして
自力で支持者を集めていたのに今時の政治家は
国から政党助成金と名づけた庶民の血税を奪い
これでは盗っ人顔負けの  ドロボーではないか
これでいいのか いまの日本 これでいいのか



白い貝殻      白根厚子

白い貝殻をもらった
南の海でひろったんだって
貝殻は波に打たれて小さかった
なんだか見ているうちに
涙がでてきた

あの海から戦艦がやってきた
海を埋めつくすように
あの小さな島で何があったのか
時がどんなに流れようとも
忘れてはならないことがある
白い貝殻は
わたしの掌のなかで
つぶやいている


 大樹けんぽうの木      池谷あきお

この国土の真ん中に一本の大樹がそびえている

樹齢六十数年 けんぽうの木 と呼ぶ
暑さの夏は広げた深緑の木陰が
総ての人々を等しく守ってくれる
春秋は美しい彩りで人々の喜びを誘う
寒さの冬は葉を落とし
働く人々に暖かい陽を与え
落ち葉は地味を肥やしてくれる
大地に深く張った根は
揺るぎない安心を与える
大樹は何よりも人間の争いの血を嫌う
どこまでも平和を愛する

この大樹と共に生きて来た私は
これの伐採を企む者を決して許さない


いのちの砦     杉本一男

リンゴやミカンだけではない
物が上から下に落ちるのは当り前
落ちないような手立てはあるか
固める 吊る 浮かせる 支える

岩盤ごと崩れる 陥没 水没 大津波
燃える 揺れる 流れる 転覆する
物体ぐるみ 墜落する 激突する
無差別爆撃 爆薬や劇薬 核爆発

ぼくもあなたも 自然の分身なのに
何事かの企みで 突然 自然が奪われる
怒り猛り 狂い 人の生死を決める
いのちが漂着する先は いのちを守る砦
さわやかな条文が 撃たない 撃たせない

 
焼け跡から     山本隆子
 
『あたらしい憲法のはなし』といった。
戦後、焼け跡の小さな中学校で
私たち 小さな小冊子を手にし、
その時はじめて「憲法9条」と出合った。
生存を否定される恐怖と欠乏の日々の後に。
今も世界のあちこちに暴力と飢餓は絶えず、
世界の人々のためにも私たち
日本国憲法を手放さず高く掲げたいと強く願う。
国の内側で憲法を壊そうとする力が騒がしいが
壊すこと傷つけることをけっして許すまい。
この国に生き、平和憲法を持つ歓び、希望、責任。
必ず子に孫に手渡すべきかけがえのない価値を持つ
日本国憲法。70年経ち100年経とうとも古くならぬ、
無残な焼け跡から生まれたピカピカに新しい真理。
人間の生命と幸福を守るためのそれは 真理だ。

命の詩      佐相憲一

地球が回転していることは日頃わからない
切り取られたニュースを見ても
くらしや願いは見えない

七十億人みんな混血児なのに
国が家だなんて誰が決めたんだ
七十億人みんな寿命しか生きられないのに
殺していいなんて誰が決めたんだ

夢はずっと回転している
先駆者たちを追いかけて

いま武器をもたないことを選ぶなら
歴史にのこるだろう
小さな島国から世界にひろがった命の詩として