トライアスロン夏の始まり

“トムおじさん” 松村壽良

1998年7月 兵庫県三木市 於 グリーンピア三木
まだ梅雨明け宣言をしないのは、日本海側に梅雨前線が残っているからなんだって。近畿は串本から丹後半島まで一斉に梅雨明けしないとだめみたい。
前日、教祖様におめどうりできたので、元気いっぱいトムおじさん5時起床、まずとりあえず、バナナ3本、ハチミツ入り牛乳1杯、自家製レーズン入り食パン4分の1斤。こんなもんで11時までお腹持つかな?
自転車、ヘルメット、シューズが2足、水着にゴーグル、ランパン、バスタオル、あっ!日焼け止め。なんやかやで結局尾ばっちゃんち(家)に着いたのが6時28分。なんとか出発時間に間に合った。
駐車場から会場まで、健ちゃん,大きなクーラーボックス肩に掛け、玉のような汗をかいて「まだかいな、えらい遠いやないか!」と御立腹だったのは去年のこと。尾ばっちゃんも、トムおじさんもコマ付きキャリーでごろごろ会場まで、らくちんらくちん。
木陰は良かったんだけど太陽の動きに合わせて荷物も人も陰とともに移動、そんなんいややと今年はターフテントでバッチシ決まり。今年は何とか15分ごとに荷物を動かしながら動かなくてもいいのだ。
尾幡洋輔、今年からキッズを卒業してジュニアでエントリー。いつの間にかヨウスケが中学生になってしまうんだからトムおじさんも年をとるわけだ。もうそろそろスタート時間だ、ぼちぼちプールに行こか。3人でプールに向かっているとバイクパンツに上半身はだかの変なにーちゃんが、「がんばれーがんばって!」と、金網のフェンスにしがみついて叫んでいる。
あれれ・・・、門選手やないの?。

「何で?何で?門さんがここにいるの?。」
「なんや、洋輔君まだやったんかいな!どうりでキッズのエントリー名簿にあれへんなーおもてたわ。さっきバイクでついてん。」
「えー?やっぱ自転車で来はったん?」
「そう、さっきからキッズのレース見てたんやけど居てへんなー思うててん」
「今からスタートやねん、プールサイドで見よ。」

ジュニアの部になるとさすが身体のできあがった子がたくさんいる。
特に女の子のスイム上がりの子は、肩幅も広くヨウスケの倍ぐらいも胸の厚みがあるのでヨウスケかわいそう。
スイムは何とか泳ぎきったけど、これくらいの年頃の2,3歳ちがいは、体力に大きな差が出てしまう。でもなかなかよく頑張ったと思う。
特にランはまだまだ余裕があった。さすが陸上部だ。これから筋力がついてきたらますますたのしみです。
トムおじさんのスタートまでまだ2時間半もある腹ごしらえしとこっと。幕の内弁当広げたけど、「門選手もたべてないでしょ?ちょっと食べたら?」

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幕の内弁当には一口おにぎりが8個トンカツ6切れミニオムレツ1個
その他付け合わせエトセトラ。

なのに門選手、おにぎり4個トンカツ4切れミニオムレツ1個、ペロリ。  

これからレースのトムおじさん、エネルギー不足になりそう。
でもチャリンコでこんな所までくれば、お腹も減りますよねー。
2時半スタート、15分前に200の流し2本で心拍数をあげること。充分にのびきった芝のコースを走っていると、

「まつむらさーん!!」
「何で、何でランボー和美がこんなとこにいるの?。町内会の草刈りやったんちゃうのん?。」
「そう、草刈りでしっかり汗かいてから電車とタクシー乗り継いで今やっとついたん。間に合って良かった!。」
「そんなにプレッシャーかけんといていな。それでなくても、もう待ちくたびれて疲れてしもてるのに。」
「松村さん、あのウエット着た人大阪トライアスロン協会の会長と幹部役員やったんちゃうかなー」と門選手。
「遊園地のプールで泳ぐのに、ウエットスーツとは大げさやなー思うてたけどあの人ら本気やな、いっちょうバトルかましたろか。」

いよいよスタート。トムおじさん最前列できっちりウエットの2人の隣にスタンバイ。10秒前・・・・・スタート!
トムおじさん、思いっきりダッシュ、30m位で体半分リード、トップに出ました。
「体一つ離せばこっちのもんや、あとは蹴りまくってコースを一人占めや!」
ところが相手は若いがさすがにベテラン、トムおじさんの、か細いしなやかな大腿部を上からグイと押さえ込み、動きを止めてその間にすり抜けて、インコースに並ばれてしまった。コーナーを回る頃にはとうとうトップを取られてしもた。
頭に来たトムおじさん、プールの床を蹴ってイルカ飛び、ウエットスーツに一撃っくらわしましたが時すでに遅し、心拍数があがってもう抜き返すのは無理でした。

「松村さん、2周目のラップえらい遅いけど、なにかあったんやろか?・・・まさか落車・・・?」 
「そうかもわからへんで、あのおっちゃん、カーブでブレーキかけよれへんからなー。」

そのとうり、トムおじさん、去年も同じ場所の下りカーブで転びそうになりながら、なんとか立ち直ったけど、今年はきっちり側溝を飛び越えてコースアウト、草むらに突進してました。 
でも、軽い打撲とチェーンが外れただけで済みました。 自転車担いでなんとか周回コースに復帰。 応援団が見えるあたりにさしかかると、ほっぺた引きつりながら、口元ほころばせ、痛さこらえて、足取りかろやかに。
「松村さーん、がんばってー。」 「おっちゃん、いけーいけー。」の声援に、片手を上げて応たえる余裕。 そやけど応援団が見えなくなると、歯を食いしばっても足元ふらふら、泣きそう。
スイムランとか、トライアスロンの楽しみは、最後のランで追い抜けるからなんとか頑張れる。後は走るだけや。 溺れることもあれへんし、ブレーキもかけんでええし、思いっきりいこ。そやけどこのクソ暑いのに走るんいややな。
でもトムおじさん、がんばって何人かを追い抜きました。と言うのも応援団の声が聞こえるあたりにさしかかると、無理してペースアップしてええカッコしよるもんで。そやから後がしんどい、しんどい。
「ビール!ビール!」と頭に泡立つジョッキを思い浮かべながら、なんとかゴールイン!
応援団の皆様ご声援有り難うございました。お宅等の応援プレッシャーのおかげで、ばてばてになりましたがな。
結果は去年より2分速くスプリント40歳以上の部、12位。50歳以上やったら1着やのに年代別があらへん、残念!。
トムおじさん、完走できたのは応援団とビールが待っていたからです。 カンパーイ!