2004年01月08日

「白鳥の湖」レニングラード国立バレエ(シェスタコワ&シャドルーヒン) <★★★★>

 キャスト 

オクサーナ・シェスタコワ * オデット/オディール
シャドルーヒン * ジークフリード王子



今年のバレエ初めの公演。
可愛いシェスタコワちゃんが全幕主役をどう踊るのか。

王子は夫のシャドルーヒン。顔写真を見たときは「ニヤケ顔でスケコマシっぽくて、シェスタコワちゃんも苦労してるんだろうなぁ」という印象だったのだが、実際見ると「いい人」オーラが出まくっていた。優しそうな好青年。(実年齢より、かなり老けて見えるけど)
踊りは端正で良きロシアダンサー。私の好きなタイプ。
が、しかし、大問題が。
オデコがM字を形成中なのは仕方ないとしても、その胸毛はどうにかならないものか?
彼はお肌がピンク色つやつやなため、黒い剛毛(のような)胸毛が目立つ目立つ。
剃るなり、抜くなりして欲しかった。

 第一幕 

【 パ・ド・トロワ 】

オリガ・ステパノワ
アリョーナ・ヴィジェニナ
アントン・チュマノフ

 ステパノワ、以前『ルジマトフの総て』公演でキトリを見たとき「この人、カタギじゃないよ〜」と思ったくらいコワモテ極道系。久しぶりに見たら、だいぶ落ち着いていた。
ヴィジェニナ、オーレリ・デュポンから筋肉と毒とオーラを抜いた感じの美人。
踊りはステパノワ圧勝。こんなにキレイに踊れる人だとは知らなかった。
惜しいのは、彼女は踊っているとき常に目線が下を向いている。
もう少し表情が付けば、踊りが良いだけに、もう一皮向けると思うんだけど。
チュマノフ、髪型がアフロだった。

*

宮殿から湖畔へのセット替えは幕を閉じずに、シルクスクリーンを降ろし、舞台前面で王子が踊っている間に行われていた。
この演出は初めてだが、気持ちが途切れずに非常に良かった。シャドルーヒンの踊りも綺麗だったし。

そして、シェスタコワちゃん、登場。
夏に見たときより、すこしふっくらした印象。しかし、あの美しい手足は健在。そして、可愛いお顔!
踊りは丁寧にパを繋いでいて美しい。そして何よりもポール・ド・ブラが素晴らしい。彼女の手の動きは指の爪の先まで神経が行き届いていて、思わず吸い込まれてしまう美しさ。
彼女は脚よりも手が雄弁なダンサーだ。

 昨年見たロパートキナの白鳥が「神々しく畏れ多い白鳥の女王」だとしたら、今日のシェスタコワちゃんは「慈愛に満ちた白鳥の母」といった感じ。聖母マリア様みたいだった。非常に母性的な白鳥。
シャドルーヒンとはさすがにイキもぴったりで、特にシャドルーヒンに白鳥に対する強い愛情が感じられた。
「この人、私生活でもシェスタコワちゃんが大好きなんだろうな」と思ってしまった。
シェスタコワちゃんの、白鳥の群れ全体を包み込むような大きな母性的なオーラに対して、王子は完全に添え物。でも彼はそれが本望なんだろうな。

【 小さな四羽の白鳥 】
ナタリア・ニキチナ
ヴィクトリア・シシコフ
タチアナ・クレンコフ
アンナ・フォーキナ

 今日は会場にバレエ初体験のお客様も多かったようだ。
この曲が流れた瞬間「あ、知ってる!(←志村けん)」といった感じで会場がザワついた。
夏の「ドンキ」であまりのブサイクぶりに強烈な印象を残したキューピッドを発見。

【大きな四羽の白鳥】

ギリョワとコシェレワが良かった。
特にギリョワ、細ーーい手足が美しく、一つ一つの動作が優雅で目を惹く。
もう少しお顔が短かったら、プリマになれるのに、、、。(既になってるのか?)

*

この日は曲のテンポは速かった。(最近、そういう公演が多い)
特に四羽の大きな白鳥は非常に早くてせわしない。ゆったりと優雅な曲なのに残念。
でも、シェスタコワちゃんが踊るときは指揮者もかなりのスローペースに落としてくれていたので、良かった。彼女の踊りを堪能。


 第二幕 

王子は黒い衣装に御召しかえ。相変わらず胸毛健在。いっそのことクビの詰まった衣装にしてくれたら良いのに。

【 スペイン 】

男女2組のペアが白組、黒組で踊る。白組が目を惹いた。特に女性が大人の色気を漂わせ、美しい。

【 ナポリ 】

この曲は毎回和むなぁ。ソリストがいないヴァージョンだったのが残念だったけど。

【 ハンガリー 】

ソリストの男性が一生懸命踊っていたのが好感が持てた

【 マズルカ 】

配役表にエフセーエワの名前があるのだが、あまりにせわしない踊りで、判別不能。期待していた濃い演技のクリギンさんは無表情でつまらない。夏のジプシー男が懐かしい。

*

【 黒鳥のグランPDD 】

シェスタコワちゃん、颯爽と登場。歩き方から白鳥とは全然違う。でも、黒鳥もキュート!ことさら悪女っぷりを強調して踊らず、コケティッシュな可愛らしさで白鳥とは違う魅力で王子を翻弄。いやぁ、シェスタコワちゃんの黒鳥はこんなに魅力的だとは思わなかった。踊りも素晴らしい。彼女の踊りはたまに「あれ?曲にのってない?」と感じる瞬間があったのだが、この黒鳥は音楽にあわせて流れるように踊っていた。
シャドルーヒン、存在感は無し。シェスタコワちゃんを追うのに必死で殆ど見てないし。でも、ヴァリエーションはさすがに綺麗だった。
コーダの最後、オディールが舞台上をジュテを織り交ぜピルエットで回り続けるハードな振付なのだが、さすがにここで体力切れの瞬間があってハラハラ。でも、順調にクリア。ほっと一安心。
また、シェスタコワちゃんが偉いのは、幕間ごとにあるレヴェランスでポアントで立っていること。相当お疲れだとは思うが、最後まで気を抜かない。そしてそのポーズの美しいこと。幕が閉まる瞬間はいつもシャドルーヒンと同じポーズを決めてくれて、一枚の絵のようだった。


 第三幕 

【 二羽の白鳥 

エルビラ・ハビブリナ
オリガ・ステパノワ

*

なかなか叙情的で美しい終幕だった。最後の主役二人が水没する終わり方こそ、「ゲ」と思ったが、それ以外はコールドもキーロフよりよっぽど叙情的だった。雛鳥(黒い白鳥)たちも、キーロフではただの突撃隊にしか見えなかったが、ちゃんと「弱弱しい雛鳥」に見えていたし。幕が閉まる瞬間、雛鳥が遠くに飛んでいくという設定なのだが、これが余韻があって良かった。

*

年始めのバレエ公演としては大満足の公演。
中でもシェスタコワちゃんの可愛らしさ、美しさ、ひたむきな踊り、バレエ団の(キーロフとは違った)アットホームな一生懸命さは好感が持てた。
すっかりレニ国が好きになってしまった。

 * Bunkamura *


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