2004年01月09日

「ドン・キホーテ」谷桃子バレエ(朝枝めぐみ&斎藤拓) <★★★★>

 キャスト 

朝枝 めぐみ  * キトリ
斎藤 拓  * バジル
枡竹 真也  * ドン・キホーテ
斎藤 彰 * サン・チョ・パンサ
原田 公司  * エスパーダ
樋口 みのり  * 大道の踊り子
マッシモ・アクリ * ガマーシュ


初めての谷桃子バレエ団公演。
招待券を頂いたので、特に期待もせずに行く。
当日風邪を引いてしまい、明日の逸見@シンデレラ王子を見逃すわけには行かないし、
もしつまらない舞台だったら途中で帰るつもりでいた。
が、とんでもない!素晴らしく盛り上がった舞台だった。

 まず、役者がそれぞれ素晴らしい。(除くキトリ)
バジルの斎藤拓くん。
出てきた瞬間はそのハイライトを入れた髪型から「失敗した関口宏」と思ってしまったが、前言撤回。とても魅力的なバジルだった。
踊り良し、演技良し、そしてサポートが素晴らしい。何度も片手リフトを成功させていた。
また、彼は足が美しい。日本人の男性ダンサーには珍しくアン・ドゥオールが完璧。
そのためリフトした瞬間のポーズがとても美しい。
音感もとても良いと思う。(私とは合う)
特に三幕のヴァリエーションで音楽に乗って伸び伸びと踊る姿は美しかった。
ローザンヌのクマテツのバジルを思い出した。
すっかり私のお気に入りに登録。

キトリの朝枝めぐみさん、これが周りと全然噛み合っていない。
ところどころ動きが妙に優雅になってしまい、キトリから外れる瞬間があった。
振りをこなすことは出来るんだけど、それ以上の個性が全く無い。
去勢された(女性だけど)優等生ダンサーにしか見えなかった。
また、バジルとのルックスのバランスも悪い。
柴犬の仔犬みたいでコロコロと可愛らしく魅力的なバジルに対して、一回りは年上のおばさんにしか見えない。まるでヤリ手の未亡人に若者がたぶらかされているみたいだった。(のちに主役お二人がご夫婦と判明し、驚愕)
またキトリの衣装がとても変。中でもドルネシア姫は頭にヘッドギアみたいなティアラを被らされて「大魔神」かと思った。腕には妙に光る鱗のような袖がついており、半漁人みたいだし。
その点はお気の毒だった。
が、最後の最後にこれまでの失点の総てを払拭するもの凄いフェッテを披露。
昨夏のバレエフェスでステパネンコ姐さんが披露した「シングル、シングル、ア・ラ・ズコンド、ダブル」を最後まで回転速度を落とさずに力強く回りきり場内騒然・拍手喝采。
コーダを踊り終えた彼女は、ほっとしたのか泣いているように見えた。

今日は脇を固めた役者が素晴らしかった。
中でもドン・キの枡竹 真也さんは昨夏見た史上最高・前人未到のジュド様のドン・キに次ぐ素晴らしさ。威厳あり、かつ美しいドン・キだった。
サン・チョ・パンサは拓君の実のお父様の斎藤 彰さん。
とってもにこやかで優しさに溢れた太陽みたいなサンチョだった。
トランポリンで落ちそうになった時はハラハラしたけど。
マッシモ・アクリのガマーシュ。大好き、とっても可愛いガマーシュだった。
そして、何よりびっくりしたのは男性ダンサー陣。
ゲストのエスパーダはそのサラリーマンみたいな髪型とごつい体型から、どう見ても「経理課長」にしか見えなかったけど、コールドの皆さんは今までどのバレエ団でもかつて見たことないくらい満面の笑みで、実に楽しそうに踊っていた。ブラボー。こんなに演技している男性コールドは初めて見た。また、斎藤さんほどではないけど、皆さんアン・ドゥ・オールがなかなか。きっと指導者が良いのだろうな、と思った。

そして、舞台装置。
妹尾河童さんデザインで、とってもシンプルなんだけど斬新でセンス良し。
日本人が演じる、日本の舞台にとても合っていたと思う。
「西洋コンプレックス」を払拭しているというか、ムリして西洋の雰囲気を醸しだそうとしていないところに好感が持てた。
衣装もキトリと闘牛士軍団以外(なぜ妖しいラベンダー色!?)は良かった。
特に三幕はセットも含め、全体を白と黒にまとめていて、非常に美しかった。

その他、目に付いたこと。

生ウマ・生ニワトリ(ハト?)登場。とてもお利巧だった。
特にウマは、どうみてもダンサーではない付き添いのお兄さん(それなりに扮装)に導かれ、少しでもそっぽを向く度手綱を引かれて直されていた。もちろん鳴かないし、馬糞もしない。(絶食しているのだろうか?だとしたらちょっと可哀相)
そこらのクソガキより、よっぽどお利巧。

キトリのカスタネットヴァリエーションにて、闘牛士たち。
最後、斜めにピルエットで横断していく時、北朝鮮マスゲームを髣髴とさせる、一糸乱れぬマントの動きが素晴らしかった。完璧。

森の場面のキューピッドの子供達、とっても身長が揃っていてびっくり。
完全に身長で選んでいるな。中にはド下手な子が混じっていて、場がが和んだ。
きっと谷桃子さんは几帳面な方なのだろう。

カーテンコールにて、谷桃子御大ご登場。
立っているだけでヨロけて、アクリさんが支えていたのはご愛嬌。
(ちょっとシャレにならなかったけど)

谷桃子バレエ団、勝手な想像で「松山みたいなんだろうなぁ」と思っていたが、とても魅力的なバレエ団だということが判明。今後は観劇予定に入れなくては。(さらに散財か〜)

* 東京文化会館 *


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