2004年01月10日

「シンデレラ」新国立劇場バレエ(さいとう美帆&逸見智彦) <★★★★>

 キャスト 

さいとう 美帆  * シンデレラ
逸見 智彦 * 王子
大森 結城  * 仙女



 ロイヤルのアシュトン版シンデレラのセット・衣装をそっくり買い取った本作。
さすがに豪華で見とれた。特に衣装が今まで見たどんな作品の衣装よりも美しい。
ほどよくアンティークな味わいも加わっているのか、とても豪華で落ち着いた衣装だった。

本日が初主役のさいとう美帆さん。
第一期研修生で伊藤友季子ちゃんと同級生。
入団即いきなりの大役大抜擢。素顔の写真はとても可愛らしいお嬢さん。
しかもデビュー作品がシンデレラなんて、これ以上ないお膳立て。
まさに「あなたがシンデレラ」状態。
実際目にすると、実年齢の割りに老けて見えた。
随分と痩せた?写真と違ってかなりの面長だ。お化粧も随分濃く、もう少しナチュラルにした方が彼女の若々しい魅力が伝わると思う。
踊りは最初のボロ・シンデレラでの演技にこそ一瞬の硬さが見られたが、時間が経つにつれ徐々に乗ってきた。特に二幕に入ってからはノリノリ。
音楽に乗ってアシュトンのさせわしないステップを軽くこなし、主役抜擢を客席に納得させていたと思う。ファンなのであまり言いたくないのだが、同級生で昨年末牧バレエ「くるみ」で雪の女王に抜擢された伊藤友季子ちゃんとは全然モノが違う。おどおどとビクビクした冴えない踊りだった友季子ちゃんに比べ、立派なものだ。
また、演技もそつなくこなしていた。
昨日見た主役デビューの朝枝さんと比べても随分とこ慣れていたと思う。
むしろ年齢・初主役からくるドキドキ・ハラハラの初々しさが欠けていたと思ってしまうほど、堂々とした立派なデビューだった。
今日見た限りでは、水香嬢のように飛びぬけてプロポーションに恵まれている訳でもなく、志賀さんのようにテクニックにずば抜けて強い訳でもなく、恐らくtotalのバランスが良いダンサーなのだろうな、と思った。
全幕を通して踊ったとき、安心して見ていられる新人は、そう多くはいないだろう。
既にプリマとしての技術や落ち着きは備わっているようなので、あとは経験豊富なプリマたちと同じ土俵で競ったとき、何が彼女の魅力になるのか、その部分の個性を伸ばしていって欲しい。

今日のお目当ての逸見さん。
二幕からご登場。
白い王子衣装がとてもお似合い。
ヴァリエーションの踊りは美しかったし、彼の4回転ピルエットを初めて見ることが出来たので、調子は悪くなかったと思う。ただ、アシュトンの振付のスピードにサポートが付いていけない場面があった。さいとうさんのタイミングから弱冠遅れてたり。
さいとうさんとはパートナーとしての相性はあまり良くないのかもしれない。
彼女のスピーディーでキレの良い踊りにはむしろ小嶋さんの方が合う気がした。
とは言え、逸見王子はいつも通り美しい王子様で、まるで宝塚の男役のような麗しのオーラを発していた。
カーテンコールで優しくさいとうさんをエスコートしてがるの笑顔がとても素敵だった。

この物語の影(表?)の主人公、アグリー・シスターズ。
本日は昨日のガマーシュに引き続き、マッシモ・アクリ氏とシスターデビューの奥田慎也さん。
アクリさん、怪演、お見事!
なんて楽しそうに演じているんだろう。本当に芸達者だ。
それに引き換え奥田さんはイマイチ羞恥心をステ切れていない、というか役に乗り切れていないのでは。振りが小さくて見栄えがしなかった。彼が演じた妹の方が恥ずかしがりやなので、アクリ姉のような怪演を期待するのは筋違いだが、もう少し突き抜けた演技を期待したい。

ダンス教師の吉本さん、役柄上仕方ないのかもしれないが、髪型が全く似合っていなくて、オカマどころかとっつぁん坊やにしか見えなかった。

仙女の大森結城さん、申し訳ないが、この方のお顔とプロポーションは私はどうしても受け付けない。踊りも良い瞬間が所々あるのだが、仙女を踊るからには全曲通じて総て抜きん出て上手くなくては困る。衣装はとっても綺麗でゴージャス。

四季の精
春の真忠久美子さん、随分と痩せたように見える。ギスギスしていて踊りもせわしなく魅力を感じない。彼女にはアシュトン、中でも早いテンポの春をを踊りこなす技量が無いのだろう。
それに引き換え、夏の寺島ひろみさんは素晴らしかった。今日見たバレリーナ達の中で、彼女の容姿&踊りの実力は郡を抜いて素晴らしい。彼女が主役の全幕物の予定はないのかなぁ?オーロラで是非見てみたい。
秋の本島美和さん、さいとうさん同様、研修所卒業後いきなりソリストに抜擢。来シーズンの『カルメン』で主演が決まっている。が、特に印象に残らず。怖いお顔だけ印象に残った。(帰りがけ彼女の素顔を垣間見たが、すんごい美少女。素顔は清楚な感じなのでメイクが下手なのか)
冬の厚木三杏さんは強烈に印象に残った。まさに吹きっさらしの乾燥した冬。冬以外で彼女の四季の精は考えられない。しっかし彼女の首はどうしてあんなに骨が浮き立ってしまうのか。拒食症なのだろうか?見ているこちらが辛くなる瞬間がある。せっかくキレイに踊れるんだから、もう少しお肉を付けてまずは見た目から優雅さを付加して欲しい。

星の精
とっても綺麗だった。やはりこのバレエ団のコールドはレベルが高い。星の精が舞台に出てくるたびにワクワクした。特に終幕の結婚式では綺麗だったなぁ。

全体的にとても楽しめる作品だった。プロコフィエフの音楽は相変わらず苦手だけど。
しかし、ロイヤルはよくこの素晴らしいセット・衣装を手放す気になったものだ。
(後悔しているという話も耳にしたが)
同じお子様向けバレエの「くるみ」よりも断然美しく夢がある。
特にガラスの馬車は女の子の永遠の夢だろう。一週半だけなんて、もったいない〜。
劇場で展示してくれれば、さぞ見栄えするだろうに。

* 新国立オペラ劇場 *


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