「眠れる森の美女」日本バレエ協会(島添亮子&法村圭緒) <★★★> |
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島添 亮子 * オーロラ姫
法村 圭緒 * デジレ王子
小川 友梨 * リラの精
マッシモ・アクリ * カラボス
恵谷 彰 * 青い鳥
永橋 あゆみ * フロリナ
まず声を大にして言いたいのは、なぜこんなに日本バレエ協会主催の公演は観客のマナーが悪いのか。二年前の「日本バレエフェスティバル」も最悪だった。
主催者が身内意識丸出し。金を取って「公演」と銘打っている以上、「商売」としての気構えを持って欲しい。それが出来ないのであれば、「発表会」として無料で公開するべし。
まるで、関係者(この場合、バレエを習っているガキ及び親、親戚)以外居場所がないような雰囲気は異様だ。そして、そういった関係者に限って観劇マナーが大変悪い。「ほら、出た!」「右よ、右!」。そんなに見たいなら、事前に打合せしておけ!ここは運動会じゃない。
本人達は小声で言っているつもりかもしれないが、生オーケストラ以外台詞のないバレエの公演でその駄声がいかに目立っているのか自覚ゼロ。大人なのにバカじゃないのか。
そしてそれを助長しているとしか思えない主催者。お前らが身内意識の塊だから、生徒及び保護者の観劇マナーが向上しないのだ。もし、バレエを広く知ってもらうことを目的に公演を行っているのであれば、まずは身内の観劇マナーを向上させてくれ。今の状態では、「観劇」目的で来た一般の人は二度とバレエ公演に足を運ぶことは無い。結果、一部のバレエマニア及び父兄等関係者しか客席にいない状況が今後も続く。この日本でダンサーを職業として成り立たせたいのであれば、バレエ上演に関係するバレエ団関係者・教師が、まずは社会人としての常識を身に付けることが必要だ。金を払って見に来ている客がいることを肝に銘じて欲しい。まずはその基本に立ち返れ。少なくとも私は日本バレエ協会の公演にはもう二度と行きたくないと思った。
公演自体は主役二人と青い鳥が素晴らしかった。
元々は関東ではお目にかかる機会の少ない法村氏目当てだったのだが、オーロラの島添さんもとても良かった。法村氏と島添さんのペアは身長も踊りもバランスが良く、今後も是非組んで頂きたいペア。
実は、島添さんはルックスが全く好みではなく全然期待していなかったのだが、あまりに踊りがキレイなので引き込まれた。嬉しい誤算。
たしかにルックス的にはキツイものもあった。
大変小柄なのだが、お顔が長い。そのため本来長いはずの手足が短く見えてしまう。
そしてメイク、なぜあんなに厚化粧なのか。口紅が真っ赤で年増に見えるばかりか、長いお顔を強調してしまう。先日新国立で見たさいとう美帆さんもそうだが、島添さんもまだまだ若さで勝負できるんだから、是非薄化粧にして頂きたい。絶対その方が可愛い。
踊りは非常にコントロールが利いていて、品も透明感もあった。
相当なテクニシャンとお見受けしたし、演技力もなかなか。
一幕のローズアダージオ、とっても可愛らしかった。4人の王子の一人がオーロラに一瞬迫ったら「こわいわ、、、」といった風情ですかさず母王妃に駆け寄っていた。この演技が自然。王妃も「大丈夫よ」と優しく諭してあげ、「大切に育てられたお姫様」感が感じられた。
バランスはちと危なげではあったが、オーロラの初々しさは良く出ていたし、何よりポーズが綺麗なので多少ぐらついてもOK。
糸車を指に刺してしまうシーン、踊っている最終に糸車が吹っ飛んでいた。あれは意図したもの?(いや、ハプニングであろう)舞台のまんまん中に落ちていた。
全体としてまずまずのオーロラなのだが、一つ惜しかったのは三幕での演技。
一/二・三幕をきっちり演じ分けているのは立派なのだが、三幕は怖すぎる。
一番めでたいはずの三幕の結婚式で、一幕で見せていた愛らしい雰囲気が総て吹っ飛び、無表情で気の強そうな姉さん女房になってしまった。まるで「老舗の三代目(←法村氏)を首尾よく捕まえた年上未亡人妻」って感じでちょっと怖かった。
それ以外はとても素敵な踊りで、彼女の全幕舞台を他にも見たくなった。
二幕、法村王子登場。
「うわ、地味、王子に見えないよ」と思ったのだが、踊りだしたら立派な王子だった。さすがワガノワ仕込みだけあって、一つ一つのポーズが美しい。王子のソロのアラベスクなんてうっとりだ。またテクニックにも強い。ジュテなんて空中で一瞬止まっていた。マネージュもご立派。日本人の王子様のソロでここまで「お!」と思わせてくれたのは久しぶりだ。演技もお育ちの良さが出いてて、可愛い。恋する喜びが素直に伝わってきて、「ガンバレ」と応援したくなった。ただし西洋の王子というよりは平安貴族の麿の雰囲気により近いかな。あと10キロほどダイエットしたらかなり素敵な王子様になれると思います。二重アゴのラインが気になったし、三幕の衣装はパツパツだった。(全身ホワイトはきつい、、、)
演出的にはごくオーソドックスだと思うが、ところどころツッコみを入れたくなった。
まず、一番考えた直した方が良いのは、三幕の結婚式で主役二人が白髪頭で登場すること。100年の眠りから覚めたら白髪だなんて「浦島太郎かい?」と笑ってしまった。
それで無くても日本人に白髪の鬘はヤバ過ぎる、、、。
その他にも鬘がいちいち可笑しい。
4人の王子、なぜか全員肩まで垂らしたロン毛。主にバッハ。が、一人カールが甘くオスカルになってしまっていた。日本人男性の黒髪オスカル、かなりのトホホぶり。
オスカルと言えば3幕の長靴を履いたネコ、こいつもロン毛のオスカルだった。すっごく変。
私は日本人の大きな頭で素の黒髪で勝負されるよりは(ex東バ「眠り」の4人の王子)いっそのこと鬘を付けてくれた方が好みなのだが、向き不向は考慮して頂きたい。
二幕の幻想のシーン、なぜかコールドが緑のネグリジェ、頭にスカーフの衣装。
森を表現しているんだろうけど、色がケバくて謎のアマゾン軍団みたいで変だった。島添さんも緑のチュチュだったが、一幕のピンクの方が似合っていた。
それからリラの魔法(?)の杖、これが先端にでかいタマが付いていて、まるでハタキみたいで変だった。そして、リラ強すぎ。彼女が杖を一振りするとカラボスは「ぐるじぃ」と勝手に後退する。だったら最初から王子なんて呼ばないでカラボス倒せば良いのに。
カラボスが登場した時、妖精達がいっせいにキャバリエ男性に「いやん、こわい」とシナを作って寄り添っていたのは見苦しい。「お前ら、出来ているのか?」と思った。
リラ役はじめソリストたちのレベルは低かった。男性ソリストは妖精のキャバリエをはじめ皆さん健闘しているのだが、女性ソリストが物足りない。普段見慣れている「牧阿佐美バレエ団てレベル高いんだ!」と改めて思った。
リラの小川さんはスタイルはとても良いのだが、踊りに柔らかさが無く、リラとしてはミスキャストだと思った。リラは妖精達の女王様なのだから、もっと堂々として包み込むような優しさを表現して欲しい。妖精たちに至っては発表会レベル。プロのダンサーとしては余りに役不足。衣装が妙なパステルカラーなのでより一層発表会感が強調された。
そんな中、ブルーバードを踊った恵谷彰さんは素晴らしい!こんな素敵な青い鳥(尻尾が付いた尾長鳥?)は日本人で初めて見た。男性にしてはポール・ド・ブラが美しく「君なら瀕死の白鳥も踊れるよ」という位、お見事だった。ジュテは高くて消音着地だしテクニック的にも危なげなくこなしていた。その上演技がブラボー。あんな短いPDDの中で「フロリナが大好き」「結婚式のお祝いに来たんだよ♪」という気持ちを見事に表現していた。彼の舞台が東京であったら、また是非見に行きたい。
今日は客席のマナーが余りにも悪く、1幕の段階で法村氏を見たら二幕で帰ろうと思っていたが、法村氏と島添さんの踊りに引き込まれ3幕までいて良かった。恵谷さんのブルーバードが見られただけでも今日の公演は行った甲斐があった。
でも、もう日本バレエ協会の公演には行かないかもしれない、、、、。
* 東京文化会館 *
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