2004年02月13日

「中国の不思議な役人 他2作」東京バレエ団(首藤康之他) <★★★★>

生ではじめて見るベジャール作品。
東京バレエ団の古典以外の作品も初めて。
女性のサポートから解放された男性ダンサー達がどう踊ってくれるのか。
今日はオケがいない分、緞帳のはるか前まで舞台がせり出している。
それだけでも期待が高まる。

 春の祭典 

首藤 康之 ・ 吉岡 美佳 * 生贄

ベジャールの春の祭典は男女の結合・豊穣を表現している踊りだが、まさにその通りと言った印象で至って健全な踊りだった。以前何かの映像で抜粋を見た際には男女の結合の表現が「モロ」だと思ったが、今回見た限りではそんなでも無かった。むしろ爽やかなくらい。
(『マノン』の方がヤバいだろう、と思った。)

まず、男の群が登場。そして生贄決定
男の場合は集団の中の弱い奴が生贄。モタついた瞬間に弾き出される。
次に女の群れが登場。生贄は弱者ではなく「巫女」。
一番神々しい、群れの長。
この男女の生贄の設定の違いは何だろう?
何か意味があるのだろうか?

首藤さんについてはあまり印象に残らなかった。
「彼の生贄はすごい」とバレエ本に出ていたので期待していたのだが、ちょっと期待外れ。必要充分ではあったが。
それよりも後藤晴雄さんにビックリ。古典物だと白タイツが全く似合わず常イケてないのに、ベジャール作品では眼光鋭くセクシー。これ程イキイキと素敵に踊るなんて、古典を踊る時は「やってらんねぇよ」と思っちゃっているのかなぁ?同一人物とは思えなかった。

吉岡さんは役にピッタリ。
彼女の清らかな個性だからこそ、生贄を「巫女」と感じたのかもしれない。
妙に生生しくならず、健全な感じがしたのも彼女の個性のためかもしれない。
別の人が踊るとまだ違った印象を受けるのだろうが、私は今日の踊りが好みだった。


 「ドン・ジョヴァンニ」 

オペラの筋を必死に覚えて予習したが、意味なし。オペラの筋はほぼ関係なし。
プレイボーイの男(登場せず、光で表現)を巡る、女の子たちの恋のさやあてを短い小品に仕上げた作品。

なかなか面白かった。女の子たちが可愛い!
中でも小出領子ちゃん、無表情なのがちょっと気になるが踊りがキレイなので、イキに仕上がっていた。それに対して遠藤千春ちゃん、女の子だけの中に入るとガタイのよさが目立ちもっさりした印象。おまけに小刻みなパが彼女は踊りきれていない。彼女の個性にこの作品は全く合っていなかった。
井脇幸江さんはちょっと怖い、役作り以上に老け方が、、、。太田美和さんは太りすぎ。ダンサーとして許せないくらい太い。牧バレエのMr.塚田を思い出した。吉岡さんはここでもプリマの格の違いを見せてくれた。春の祭典とは違って可愛らしい踊り。


 中国の不思議な役人 

木村 一夫 * 中国の不思議な役人
大嶋 正樹 * 若い娘
後藤 晴雄 * 首領

人民服を着たゾンビが新宿二丁目出没というお話。
私にはこれがナチ台頭の時代の混沌としたドイツ社会を表現したものとは理解できなかった。ダンサーの熱演は素晴らしかったけど、ゾンビとオカマ以外何か深い意味があるのだろうか?

ここでも後藤さんがメチャクチャカッコ良かった。彼、ベジャール物だけ踊った方が良いかもしれない。古典物とのあまりのギャップに戸惑いを感じるほど素敵だった。
木村一夫さん、役になり切っていて全く瞬きをしないくらいの大熱演。
彼の端正な踊りはこの役にぴったり。でも、彼の大熱演に応えるほど、この作品に意味ってあるのかなぁ?
大嶋さんも熱演。でも彼の熱演はどこか空回りしている。たしかに芝居ッ気があって、熱の篭った熱い芝居なんだけど、『白鳥』の道化と何が違うかっていうと、笑わないだけ?
熱演と名演は違う。熱演には拍手を送るけど、この役を表現出来ていたとは思わない。終演後、汗でメイクドロドロ。こちらもゾンビに仕上がっていた、、、。


*

カーテンコールに出てきた振付指導の小林十一さん、オーラ無し。ちょっとショックだった。
(もっとカッコよいはずなのに〜)


* 五反田ゆうぽうと *


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