「ロミオとジュリエット」新国立劇場バレエ団(フェリ&コレーラ) <★★★> |
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アレッサンドラ・フェリ * ジュリエット
アンヘル・コレーラ * ロミオ
吉本 泰久 * マキューシオ
森田健太郎 * パリス
評判高きアレッサンドラ・フェリのジュリエット。
オークションでプレミアまで付いている公演。
恐らく日本で最後になるであろう、フェリのジュリエット。
なのに、なぜ、こんなに冷めた目で舞台を眺めてしまったのだろう?
なぜか感情移入が殆ど出来ずに終ってしまった。
バルコニーの場面では魅せてくれた。
流れるように美しかった。が、、、、、、、。
フェリはもはやバレリーナでは無いのかもしれない。演技に逃げてしまっている。
サポートがある場面ではまだ良いのだが、ソロになると途端にボロが、、、。
踊りを流してしまっている。見ているこちらも辛い。
確かに演技力はあるし、まさに「女優」なのだがその「女優」と踊りのバランスが悪く、
女優>>>>>>バレリーナとなってしまっている。
そのため、踊りからは伝わってこない感情/演技から伝わってくる激しい感情、この二つのバランスが悪く、全編を通すとジュリエットの成長過程・心情変化が上手く伝わらなかった。
そして舞台上のアンバランスさを更に助長してしまった配役。
アンヘル・コレーラが突出し過ぎている。
(見た目的には短足・顔デカ・出っ尻ののコレーラも、小柄なフェリも、新国立の舞台に溶け込んでいたんだが)
マキューシオの吉本泰久さん、ペンヴォーリオのトレウバエフ、ともに健闘していて拍手を送りたいのだが、コレーラとタメを張ることは不可能。あまりにも踊りが違い過ぎる。
特にマキューシオ、キャラクター的にロミオ以上のヤンチャさを感じさせて欲しいのだが、吉本さんにそれは荷が重過ぎる。小嶋さんの不在が痛い。彼がいれば今日の舞台は全く違ったものになっていただろう。
コレーラだけマクミランのパを完璧に踊れているのだが、他の人たちの「一生懸命踊ってます」感漂う踊りとあまりに開きがある。
パで表現すべき感情が彼らの踊りからは伝わってこない。これはフェリと同様。
恐らく、マクミランの作品は完璧に踊れた上で初めて役の感情を表現できるものだと思う。
その意味で現状の新国立バレエ団ががこの作品を上演するのは背伸びをし過ぎているのかもしれない。新国立にはもっと別の演出の方が団の身の丈だろう。
(「マノン」は踊れたんだけどねぇ。、、、なぜ?)
キレキレに切れていたコレーラの踊り。
立派に踊りこなしていると思う。それは認める。でも、回りゃぁ良いってもんじゃないだろう。
ロミオを見た、という気がしない。
イキが良くて回っているコレーラを見たという印象。
それなりに演技もしていたんだけど、彼の場合は踊りが突出し過ぎて演技が伝わってこない。
既に女優となってしまっているフェリとのバランスも悪かった。
おまけに新国立のダンサーが上記の状態なもんだから、彼の踊りが妙に勝ち誇ったものに見えてしまったのはお気の毒ってところ?
周りがもっと踊れていたら、彼に対する印象も全く違ったものだったろう。
かえすがえす小嶋さんの不在が痛い。
やはり舞台を引き締める脇役がいるといないでは大違い。こうまで主役の印象に影響を与えるものかと改めて思った。「マノン」では主役二人に対して、レスコーという元締めがいるから舞台に重石が加わり、厚みを増していたのだろう。「ロミジュリ」ではマキューシオがその任を引き受けるべきだが、残念ながら適任のダンサーは新国立には小嶋直也しかいない。
オケ、初日は外しまくった、と耳にしたが今日は大きな破綻は無かった。
でも、いっそのこと外しても良いから、もっとドラマチックに奏でて欲しかった。
昨年「なんて酷いオケ」と思ったキーロフ(音は外しているし、誠意のカケラもないオケだけど)、実は非常にドラマチックなオケだったんだと気が付いてしまった。
今日のオケはよく訓練された高校の吹奏楽部のオケみたい。つまらないオケだった。
そして最後に触れない訳にはいかない。
パリス!君の存在のせいで、物語の筋が変わってしまう。
パリスってバレエ団で一番のイロ男が演じるんじゃないの?
今日の森田さんは不動明王(または雷神さま)みたいだった。
どんなにサポートが上手かろうが、まず痩せろ。もはやダンサーの体型ではない。
芸術監督もなぜ彼をパリスにキャスティングするのか理解に苦しむ。痩せるまでキャスティングするな!舞台の質が下がる。
* 新国立オペラ劇場 *
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