「マラーホフの贈り物Aプロ」(ウヴァーロフ他) <★★★★> |
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■ 第一部 ■
ポリーナ・セミオノワ
ウラジーミル・マラーホフ
ガラ公演のオープニングのトップバッターは大抵落ち着かないものだが、今日は星空をバックに二人が現れた瞬間、会場の心を鷲掴みにした。
最近ベルリンで初演されたマラーホフ振付の新作。
振付は奇をてらわず、オーソドックスで美しかった。
ポリーナは昨年の「眠り」「くるみ」に比べて格段に美しくなっていて、華がある。
踊りに余裕も表情もあり、プロのダンサーらしくなっていて、短い期間の確実な進歩にビックリ。
上半身は首が詰まったレース状のノースリーブ+下がり気味のチュチュの衣装が彼女に似合っていて、まさにシンデレラそのものだった。
ライナー・クレンシュテッター
恐ろしく体の柔らかい少年。マラーホフ以上の柔軟性。
パンツ一丁で裸体を晒し、紫のライトの中妖しい雰囲気が漂う。
この振付は彼のために振付けられた作品?と思える程彼にハマっていた。(実際は違う)
会場も思わぬピンチヒッター(彼は代役)登場に盛んにブラボーが飛んでいた。
ディアナ・ヴィシヨーワ
アンドレイ・メルクーリエフ
あまりに美しくて、涙が滲んだ。
昨年キーロフ公演で見たヴィシのジュリエット、完璧に踊っているのだがどこか心ここにあらずでやっつけ仕事に見えてしまったが、今日のジュリエットは素晴らしかった。
それもメルクリエフのお陰。ヴィシの毒消しになってくれて、彼女が非常に清らかに見えた。
アクがなく優しげな彼は見た目も雰囲気もロミオそのもの。なんでキーロフ公演で躍らせないかなぁ???オブラスツォーワとなんてぴったりなのに!
メルクリエフ、ジュテが夜空に吸い込まれそうなほど鮮やかに飛んでいたが、サポートがぐらぐらで不安定だった。ヴィシとはあまり組まないのかなぁ?
思えばヴィシが完璧にサポートされている姿って見たこと無いなぁ。
もしかしたら彼がサポート下手なのではなく、ヴィシが手脚が長すぎるのかもしれない。
サンドラ・ブラウン
デズモンド・リチャードソン
私の想像していた宗教音楽の有名な「アヴェ・マリア」ではなく意表を突かれた。
かなり激しい音&踊りの「アヴェ・マリア」。
二人の体が交差して絡みついている。
リチャードソンがソロで踊っている間、ブラウンはポアントで二番のグランプリエの状態で静止。かなり長い時間だったので驚いた。
ガリーナ・ステパネンコ
アンドレイ・ウヴァーロフ
二人とも絶不調、、、。
まず曲のテンポがスローで二人の踊りに全く合っていない。
特にウヴァ様のソロはメロメロのヘロヘロ(泣)。
韓国ツアーでキムチ食べてお腹でも壊したのか、二人の踊りからキレが全く感じられない。
今までウヴァ様の不調は見たことあったけど、姐さんの不調は初めて見たのでショックだった。アラベスクの脚が上がり切らないのも気になった。
が、コーダの32回転フェッテはア・ラ・ズコンド入りで緩急つけてバッチリ決めてくれた。
昨夏ほどの完成度ではなかったが、それでもミスなく決めてしまうところはさすが姐さんだった。それにしてもウヴァ様の不調は目を覆いたくなった。
■ 第二部 ■
ウラジーミル・マラーホフ
ディアナ・ヴィシヨーワ
コリーム・ヴェルディユ
東京バレエ団
長い、長すぎる。
終った、と思うとまた始まるの繰り返し。
緊張感が持続せず、途中で飽きてしまった。
特にマラーホフが出てきて物思いに耽っているシーンなど欠伸がでたよ。
おなじみの東バはソリストとして木村和夫・後藤晴雄がコリーヌと、武田明子ちゃんと小出領子ちゃんがマラーホフと踊っていた。女の子二人はいつ見ても可愛い。木村氏は今日もハイテンションだが、踊りはバッチリ。目がイッテルのがちょっと怖い。
群舞は揃っている場面もあればバラバラの場面もあり。
全体的に牧バレエや新国立に比べて、コールドのレベルはやや下か。
群舞では後藤和雄さんや中島周君が目を惹いた。
一番目立つ真ん中にゴリラにそっくりな人がいた。(あれは誰なのだろう?)
マラーホフは連続アントルシャが美しく決まっていたが、そこで疲れきってしまい、その後のアラベスクがボロボロ、最後のピルエットはなんとか回りきったものの、かなり危なかった。
彼も確実に年を取っていると感じてしまった演目だった。
昨夏のバレエフェスよりもヘロヘロだった。
ヴィシはさすがの華と格の違いを見せ付けてくれた。
コリーヌはヴィシと比べると見劣りするが、東バと踊るとその優しげな雰囲気が
「子供たちと歌のお姉さん」みたいで和んだ。
■ 第三部 ■
ガリーナ・ステパネンコ
アンドレイ・ウヴァーロフ
第一部の「黒鳥」が二人と絶不調で、踊りは期待しないことにした。
私の目的は「ウヴァ様のマント姿」に焦点を絞った。
が!今回も見事に裏切られマント無し〜。なぜ!?
その変わり、第一部とは別人のように踊りが素晴らしかった。
特にウヴァ様の復活はお見事。
猛々しく、男らしく、激しい踊りをキメキメでこなしてくれた。
彼は「ライモンダ」が似合うなぁ。なんて素敵なんだろう。
姐さんは極上のヴァリエーションを見せてくれた。
パ・ド・ブレが細かくて美しく、止まるべきところは微動だにせず床にポアントが突き刺さっている。腕を上から下に下げるだけで魅せてしまう説得力がある。
あの一見地味に見える踊りでここまで観客を魅了できるのは姐さんならではだろう。
背景のカーテンのブルーと姐さんのコバルトブルーの衣装、ウヴァ様の真っ白は衣装が映えて視覚的にも美しかった。
ウヴァ様・姐さん完全復活!
とてもあのヘロヘロ「黒鳥」と同じ日の踊りとは思えなかった。
短期間で立て直すところはさすがの二人でした。
デズモンド・リチャードソン
夢のような古典演目から一転、身体能力の限りを尽くしたアメリカンなソロ作品。
筋肉がまさに「スジ」といった感じで、全身ムキヌキのマッチョマン。
でも、どこか品があってこの人は純粋クラッシクもいけるんじゃないか、と思わせる。
一度だけジュテを飛ぶが、それが非常に高さがあって180度開脚状態で只者ではなかった。
ポリーナ・セミオノワ
アンドレイ・メルクリエフ
うわぁ、可愛い。なんて爽やかな二人なんだろう。
特にメルクリ、髪の毛をきっちりなでつけて、新入社員みたいなんだけど爽やか。
金髪に青い目、白タイツが王子様そのもの。
ポリーナちゃんもマラーホフパパと踊るより、メルクリと踊った方が断然可愛い。
たしかにパートナーリングに問題はあったが、踊り込んだら素敵なペアになれるはず。
メルクリ、ウヴァ様とキャラがかぶっていない(<と言うか、ウヴァ様より格下)ところも
好感度大。
コリーヌ・ヴェルディユ
ライナー・クレンシュテッター
事前の演目発表では「海賊」としか発表されておらず、てっきりアリのPDDを踊るものだと思っていたら、ランデケムの方だった。クレンシュテッターならアリの方が合うと思うんだけど。
衣装もラベンダー色でぼやけてしまった。やはりここはアリで上半身裸で決めて欲しい。
踊りは端正でテクニックは確か。
奴隷商人になりきって「ニヤ」と笑うところなんか、演技もなかなか。
コリーヌはクレンシュテッターと並ぶと年増感が。
ウラジーミル・マラーホフ
初めて見たが、純粋に良かった。
コンテンポラリーは苦手なのだが一流の人が自分にあった演目を踊るとこんなに面白いんだ、と認識できた。
マラーホフは髪の毛サラサラ、白いスーツの衣装が良く似合っていてカッコ良かった。
ポリーナの保護者からもヴィシの呪縛からも開放されて、一人伸び伸びと踊っていた。
彼はソロ演目が一番光る。
手を「バイバイ」と振って「あっといけない」と口に手を持っていく振付が彼らしく(カマっぽい)
良かった。
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フィナーレ
前回は全員ジュテで登場だったが、今回はレヴェランスのみ。少々物足りない。
姐さん、隣のメルクリの手を幼稚園児の手を引くように引っぱていて笑えた。
* 東京文化会館 *
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