2004年05月02日

「マラーホフの贈り物Bプロ」(ウヴァーロフ他) <★★★★>

全体として、Aプロの演目の方がバランスが良く華やかだった。
代役組の演目がダブっているのが、連日見ている者としてはつまらない。
が、ウヴァ様の全身黒尽くしのカッコ良さ+マラのアポロの神々しさに★おまけ。

*

■ 第一部 ■

 チャイコフスキーPDD 

ポリーナ・セミオノワ
アンドレイ・メルクーリエフ

途中ポリーナちゃんが躓き、ケガをしたのじゃないかとハラハラしたが
大事には至っていないようで安心した。
若々しく清らかな二人、Aプロ「眠り」では清新な印象を残してくれたが、あいにくBプロでは演目選びがイマイチ。元々音感が良い方ではない二人にはチャイコは合わなかった。
特に最初のアダージオ、曲のテンポは遅いし、ポリーナのハプニングもあったりで、
バランシンが目指した「眼で見る音楽」には程遠かった。
この二人ならわざわざチャイコを踊らなくても、むしろオーソドックスな古典のPDDの方が
彼らの魅力が伝わるだろう。
ポリーナちゃんの巨乳が凄かった。ゆっさゆっさと揺れていて、眼のやり場に困る。
ペチャパイだらけのバレエ界では間違いなく巨乳女王。


 ラクリモーサ 

ライナー・クレンシュテッター

3回目ともなると、初回ほどの衝撃はないが、それでも充分楽しめた。
彼の踊りは基礎がしっかりしていて端正で美しい。
このモーツアルトの絶筆曲と彼の若さとが相反し、退廃的な魅力を感じる。


 アヴェ・マリア 

サンドラ・ブラウン
デズモンド・リチャードソン

こちらも三回目。


 「マノン」より寝室のPDD 

ディアナ・ヴィシニョーワ
ウラジーミル・マラーホフ

昨夏のバレエフェスで見たときは「女郎クモと捉えられた蝶々」に見えたお二人。
今回は綺麗な蝶々が二匹で戯れている様にに見えた。
マラーホフは前回のオールバックおっさんヘアーから自然なヘアーになっていたので素敵なのだが、私には彼がデ・グリューには見えない。若い神学生があんなに華やでシナを作っているとは思えないのだが。
ヴィシニョーワのマノン、前回ほどのねっとりしたイヤらしさは感じなかったが、今回も上目遣いが妙に物欲しげだった。マノンは娼婦だけど16歳の少女娼婦なんだからもう少し色気を押さえ気味でお願いしたい。

それにしてもなんで彼らは毎回(バレエフェスと今回)「マノン」を選ぶのだろう?
ヴィシの長〜い手足はマクミランの振付だともたついて見えるし、マラーホフとの身長差・彼の腕力から考えてもリフトが上手く決まらない。

<追記>

その後「ロシアバレエのスターたち」で見たヴィシの「マノン」はとても良かった。マラーホフとは身長的に合わないのかもしれない。


 「ラ・バヤデール」より影の王国 

ガリーナ・ステパネンコ
アンドレイ・ウヴァーロフ


昨夏見たときは衣装がブカブカで子供のパジャマみたいだったウヴァ様。
今回はサイズはバッチリだけど、ハーレムパンツがタイト過ぎて、なんだかジャージを着た体育教師みたいだった。
姐さん、踊りは本調子ではないと思う。アラベスクの足が上がりきらないのがAプロの初日から気になったが、ここでも変わらず。さすがに最後の舞台横断シェネは魅せてくれた。絶対人より余計に回っているはず!あまりに早くて呆気に取られてしまった。ベール、姐さんがアラベスクしてウヴァ様がベールを持っている場面、ベールが妙にンと張っていて姐さんがコケはしないかとハラハラた。その後ベールを持って去っていくシーン、ウヴァ様は体中にヴェールを撒きつけて、まるでトイレットペーパーみたいだった。なんだか今日のベールは可笑しかった。

ウヴァ様のソロル、踊りもお姿も絶品。出来ることならキーロフの腹空きビキニ衣装を着たウヴァ様で全幕を見てみい。

■ 第二部 ■

 アポロ 

ウラジーミル・マラーホフ

ディアナ・ヴィシニョーワ
ポリーナ・セミオノワ
コリーヌ・ヴェルデイユ

幕が開いた瞬間、そこにはまさに”太陽神”がいた。
サラサラの光り輝く金髪に白い肌、真っ白な衣装で神々しいまでの美しさ。
マノンのカーテンコールで大汗かいていて「おっさん」になってしまったマラーホフ。
そんな様子を微塵も感じさせない人間離れした美しさ。
こんなに美しいアポロを最初に見てしまったら、今後どんなアポロを見ても納得することが
出来なくなりそう。

3人の女神達、ヴィシとポリーナが共演しているのを見るのは初めて。
改めて見比べると、やはりヴィシの貫録勝ち。彼女は別格。ヴィシが硬質な美しさが光っていた。ポリーナもプロポーションでは負けていないし、踊りも綺麗だけど、まだ振付を自分のものにしていないようだ。

マラーホフとヴィシ、演技&色気過剰な「ベストカップル」のお二人、物語性が強い「マノン」のようなバレエを踊るより、余計なものを削ぎ落として踊りの純度を高めたバランシンの方がお二人の美しさが際立つ。

コリーヌはヴィシ・ポリーナの二人の女神の中に入ると、ちょっと見劣りしてしまった。

■ 第三部 ■

 黄金時代 

ガリーナ・ステパネンコ
アンドレイ・ウヴァーロフ

当初、第三幕のトリの前、四演目目の予定だったが、幕が開直前、会場の照明が落ちてから「都合により上演順序を変更します」のアナウンスにより、ウヴァ様がトップバッターに。
突然のご登場に全く心の準備が出来ていなかったので、焦ってしまった。
舞台上は赤いライトが照らされ、怪しい雰囲気。
そこへ「コットンクラブ」のような衣装&妖しい目付きの姐さんが登場。
その後全身黒づくめ(黒Tシャツ、黒パンツ、黒ベルト、黒い踵のついた靴)のウヴァ様が登場。てっきり漁師さんの服装(腰に魚篭とか)だと思っていたので、あまりの格好よさに言葉を失ってしまった。踊りはタンゴを基調にしたクラッシクバレエとは異なるもの。途中難しいリフトが何度かあり、そこはバッチリとは決まらなかったが、そんな事よりウヴァ様の踊るタンゴが素敵過ぎて、私は完全にノックアウト。「アポロ」を見た時点で「今日はこれで元を取った〜」と思っていたが、この演目は大当たり!ウヴァ様、案外コンテンポラリーもいけるんじゃないかと新しい発見も出来、非常に有意義な演目だった。Bプロもチケット二枚取っておいて良かった!しかし上演時間が短すぎる!もっと長くやって。


 パリの炎 

コリーヌ・ヴェルデイユ
ライナー・クレンシュテッター

初めて見る演目だが、無難なPDDだった。衣装はトリコロールが基調で可愛い。コリーヌの髪の毛の結い方が前髪をねじっていて可愛かった。クレンシュテッターは上品で綺麗な踊り。
途中正面向いてジャンプした瞬間脚を240度くらい開いていてびっくりした。この人は身体能力が本当に高い。踊りも端正だし、これでもう少し身長があって上半身に筋肉が付けば素晴らしい王子様になれるはず。今日はコーダで変則回転を見せてくれた。コリーヌは今回の女性メンバーの中だと格落ち感が漂ってしまうが、きれいに踊っていて優しげな雰囲気に好感が持てる。


 アダージョ 

アンドレイ・メルクーリエフ

メルクリは癒し系。振付はつまらないけど、彼を見ていると心が和む。でも彼のソロがこの公演に必要かなぁ?彼は爽やか青年部隊として、ヴィシの毒消しやポリーナちゃんの相手役にもっと活躍して欲しい。


 レイトリー 

サンドラ・ブラウン
デズモンド・リチャードソン

アヴェマリアと似ている。
どうせならリチャードソンのソロが見たかったかも。


 コート 

ウラジーミル・マラーホフ

前回の贈り物公演で見た際は奇妙なBGMのせいもあって「なんじゃこりゃ、イロモノだな」と思ったマラーホフの代表作。今回はその素晴らしさを堪能できるかなと思ったが、今日はトラブルがあった。妙に長い間奏があり、舞台上は闇、一瞬舞台が明るくなったと思ったら、叫びながら舞台袖に走っていくマラーホフの姿が見えてしまった。どうやらストロボがトラぶった?らしい。たしかに、一度目の空中遊泳はフラッシュのタイミングがずれていた。演目再開後はストロボのタイミングもばっちりでなかなかの空中遊泳だった。どうせ見るなら1F席がおすすめ。私がいた3階席だと、飛んでいるのかどうかイマイチ分からなかったのが残念。


*

フィナーレ

姐さんを見ていると面白い。
女性陣が全員でレヴェランスする際、全員が頭を下げたのを見計らってから、一人悠然とレヴェランス。さすが、姐さん。


* 東京文化会館 *


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