スヴェトラーナ・ザハロワ * オーロラ姫
イーゴリ・ゼレンスキー * デジレ王子
前田 新奈 * リラの精
G.イリイン * カラボス
新国立は女性ソリストが充実しているから(主役を踊るダンサーではなくソリスト級が)バレリーナがたくさん登場する「眠り」のような演目は安心して見ていられる。前回見た「ロメ&ジュリ」に比べて格段に良い舞台だった。
そしてザハロワ&ゼレスキー。この二人は黄金カップルだ。ゼレンスキーと踊るときのザハロワが一番綺麗に見える。今日は二人とも本調子では無さそうで、ところどころ危ない場面もあったけど、それでも充分に美しかった。
G.イリイン * カラボス
前田 新奈 * リラの精
大森 結城 * 優しさの精
西川 貴子 * 元気の精
本島 美和 * 鷹揚の精
西山 裕子 * 呑気の精
厚木 三杏 * 勇気の精
セットがとても豪華。さすがキーロフ版を採用した新国立。
ソリスト総出演の今日の舞台、妖精たちも豪華キャスト。
でもどうもこのバレエ団の女性ソリストには魅力を感じない。東バみたいに小柄で可愛いらしい子がいないのと、全体的にがっしり体型の人が多いから私の好みではないのだろう。踊りは安定しているんだけど、伸びやかな個性や美しさを感じない。そんな中目を惹いたのは勇気の精の厚木さん。相変わらず肌はどす黒く痩せ過ぎなんだけど、日本人のダンサーで勇気の精をあんなに小気味よく踊るのは初めて見た。オーロラが似合うとは思わないが、キトリは似合いそう。テクニックがしっかりしているので、踊りの切れ味がとても良い。
リラの前田さんはすっごく良かった。リラのヴァリエーションを見た段階で「すごい、綺麗」と感心したが、その後の全幕を通して彼女のリラは踊り・演技とも素晴らしかった。
牧バレエで「眠り」を見た時も思ったが、日本のバレエ界は案外リラ役の人材は豊富なのかもしれない。主役を踊る華はないけど、テクニックと演技がしっかりしている堅実なダンサー。前田さんはまさにそんな感じ。
イリインのカラボスはなかなか。目をひんむいて大口を開けている姿など一皮剥けたな、と感じさせた。演技も大きくて、楽しんで演じているのが伝わってきた。
カラボスの手下のコウモリ軍団の中にものすごい美脚のこうもりを発見。あれは誰だったのだろう?
プロローグに引き続きセットがほんとうに豪華。
中でも噴水は本物の水が流れていて目を引く。ただし、水音が少々うるさい。
ザハロワ登場。
相変わらずの美しさ。
前回白鳥でゲスト出演した時ほど周囲から浮いていないが、それでも一人だけ別世界。長い手足、小さな頭、本当に同じ人類とは思えない。また、彼女はお肌が綺麗で真珠のような光沢がある。それから頭蓋骨の形もすっごく綺麗。特に後頭部は絶品。そして極めつけが肩のライン。クビから肩にかけての、流れるような流麗なラインが美しい彼女の中でも一際美しい。
踊りは、普通の人が軽くジュテでこなす振付を彼女は180度開脚していたり、何かとアクロバット。この人にとってはこれが普通なんだろうなぁ。たまに、あまりにアクロバティック過ぎてパの繋がりが途切れてしまうことがある。プティパの振付の枠内では彼女の身体能力は納めきれないのだろう。こうなったら彼女の独自の美を追求して欲しい。他のバレリーナとは別物と思ってみるのが正解。
4人の王子は全員同じような衣装で、帽子を被っているオーソドックスな扮装。落ち着いている。思えば、牧バレエの4人の王子の衣装は奇妙キテレツで楽しかったなぁ。ヒゲ王子とかメキシコの王子(アメリカ?)とかいたもんなぁ。
リラの前田新奈さん、カラボスと対決するシーンが見事。カラボスに対しては毅然と立ち向かい、オーロラや周りの人には慈愛に満ちていて、その緩急が素晴らしい。とても頼りがいのあるリラだった。
いよいよゼレ登場。
めっちゃくちゃカッコ良かった。
正直彼が出てくるまでは「髪の毛、大丈夫かなぁ」とかなり心配していたのだが、彼を一目見た瞬間全てが吹き飛んだ。なんてカッコ良いのだろう!光り輝く金髪は前回見たソロルの時よりも短くなっている。ソロルの青い衣装も似合っていたが、今日の山吹色の衣装も良くお似合い。踊りも素敵。豪快なジュテなのだが、着地音が殆どしない。忍者かと思った。演技も今日は熱かった。彼に対しては「クールで淡々としている」というイメージがあったが、そんなことない。かなり濃い演技だった。全身でオーロラに恋をしていた。表情がたまらなくセクシー。そして彼の最大の魅力は「大人の男」の雰囲気を感じさせてくれるところ。バレエの王子様は頼りなかったり、女ぽかったりすることが多いのだが、彼はそんなことない。包容力を感じさせてくれる。あの背の高いがっしりした体型のせいもあるが、優しげに微笑んでいる表情に余裕を感じさせてくれる。すっかり彼に魂を射抜かれてしまった。
そんな訳でいつもは流してしまう狩りの場面も食い入るように見つめてしまった。ダーツを投げる姿もめちゃくちゃセクシーなゼレ。
猟師の吉本泰久さんと村娘の高橋有里さんが可愛くて和んだ。特に吉本さんは「シェー」の鬘がとてもお似合いで違和感無し。
幻想の場面、新国立の舞台はそんなに広くないため、ちょっとゴチャゴチャしてしまった。少し人数を減らしても良いかもしれない。ゼレとザハロワの二人だけで踊るシーンがもっと見たかった。リラの精とともにゴンドラに乗るゼレ。そのお姿も素敵。リラを優しくエスコートする大人なデジレ王子であった。カラボスの手下と戦うゼレも素敵。この人、こんなに熱く演技する人だったんだ、と改めて惚れ直す。
ザハロワの目覚めの演技はなかなか良かった。思わず「おはよう〜」と声を掛けたくなるような気持ち良さそうな寝起き。そんな彼女をゼレは優しい眼差しで見つめている。素敵だ。
【宝石たち】
遠藤 睦子 * ダイヤモンド
大森 結城 * 金の精
川村 真樹 * 銀の精
丸尾 孝子 * サファイアの精
遠藤睦子さん、雰囲気に演歌入っている。きちんと踊れているんだけど一杯一杯な感じで見ているこちらの掌に力が入ってしまった。もう少し力を抜いて欲しい。
サファイアの丸尾さんと銀の川村さんが音楽に乗って軽やかに踊っていた。
【猫】
真忠 久美子 ・ G.バリノフ
真忠さんの猫は「似合いそう」と思ったが、イマイチだった。
猫特有のグーに握って前で構えているポーズ、気が抜けたのか踊りの最中にブラブラしていた。彼女の踊りにはそういう「気抜け」の瞬間を感じてしまう。プロポーションに恵まれ華も充分だから、来シーズンの「白鳥」主役デビューに向けて頑張って欲しい。
猫がバリノフ君とは全く気が付かなかった。
【青い鳥のPDD】
寺島 ひろみ * フロリナ王女
M.トレウバエフ * 青い鳥
寺島さんが物凄く綺麗だった。彼女もザハロワに負けないくらいの美肌の持ち主。身体のラインも美しく、お顔も非常に可愛い。新国立の中では彼女が一番好き。踊りは多少安定感に欠けていた。もっと踊れるはずなので、今日は調子が悪かったのだろう。トレウバエフとのイキがあまり合っていないせいもあるだろう。そのトレウバエフ、全く期待していなかったのだが、案外良かった。彼は脚さばきが美しいので、この役は適役。ただし、ヴァリエーションの最後のポーズは身体の硬さが露呈してしまった。
【赤頭巾と狼】
さいとう美帆 ・ 市川透
可愛い!さいとうさんにぴったりの役。彼女の脚は美しくて強いなぁと改めて実感。さすが全幕主演を見事に踊りきれる実力の持ち主。ただ、彼女はお顔が長めなので、前髪を下ろした方が似合う気がする。<余計なお世話かしら
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【グランPDD】
スヴェトラーナ・ザハロワ
イーゴリ・ゼレンスキー
なんとなく、二人のイキがあっていないように感じた。ゼレのサポートが悪いのか、たまにザハロワのピルエットの軸が曲がっていた。振付もとこどろこと変えていたし、ゼレは汗だくだし、やはり本調子では無かったのだろう。と、言っても必要充分以上であるのだが。ゼレのヴァリエーション、最後のキメポーズを舞台の最端でキメていた。計算通り?
欲を言えば、この二人で見るんだったら眠りよりももっと絡みの多い、ラ・バヤとか白鳥が見たいな。眠りはあまりリフトが無いので、弱冠物足りなさが残った。ゼレにリフトされているザハロワの図が一番好きなもんで。
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カーテンコール、ザハロワ拗ねてた?冷ややかなものを感じた。なんとなくゼレに対して怒ってる?私の気のせいだと思うが、、、。ゼレは最後までザハロワを優しい眼差しで見つめていた。最後、ザハロワをエスコートしようと手を差し出すゼレに対し、ザハロワはバレエ団を称えようとしていて、なかなかゼレの元へ行かず会場から笑いを誘っていた。そんな時もゼレは首を傾げて「どうしたの、おいで〜」といった風情。本当に大人の男だ。
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豪華で大満足の舞台だが、全四幕休憩三回(休憩だけで1時間)は長すぎる。終演は10時を過ぎていた。見る方にとっても体力勝負の演目である。
* 新国立オペラ劇場 *
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