「モーリスベジャールバレエ団日本公演Aプロ」モーリスベジャールバレエ <★★> |
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エリザベット・ロス * 彼女
ドメニコ・ルヴレ * 彼
ジュリアーノ・カルドーネ * ビム
同じ「海」が主題なら、「ギリシャの踊り」の方が断然良いと思ってしまった。
紫とグリーンが基調の色彩や照明の使い方は綺麗なんだけど、"バレエ"を見たという気がしない。ミュージカルのようだった。
オープニングの、巨大なシーツを波に見立てて真ん中にドでかいエリザベット・ロスがいる演出は美しかったが、ちょっとあざとさを感じた。
エリザベット・ロス、でかい(何センチあるのだろう?180センチくらい?)、逞しい、でも美しい。
上腕筋の盛り上がり具合がマリ・アニエス・ジロを彷彿とさせた。二人で踊ったらさぞ迫力があるだろう。いつか見てみたい。
「彼女」は「母」なのだろう。振付もそんな感じで、ビムを軽々と抱きかかえていた。(さすがの腕力)。ベジャールの作品はそんなに知らないのだが、『くるみ割り人形』での「母」もエリザベット・ロスだった。しかも衣装は同じもの。(上が紺白ボーダーで下が紺のパンタロン)。ベジャールの「母」のイメージは彼女なのだろう。でも、それってかなり屈折していませんか?エリザベット・ロス、彼女から慈愛や愛情は感じない。それどころか思わず取って喰われそうな、飲みこまれてしまいそうな、女・フェロモンムンムンの妖しくて美しい妖怪のようだった。世間一般の「母」のイメージからはかけ離れている。
「彼」のドメニコ・ルヴレは「父」ではないだろう。侵入者といった趣。親子に割って入った「母の愛人」という感じだった。
最後、出演者全員が両手に扇子(←美しいけど意味不明)を持って膝を閉じたり開いたりして歩きながら登場。この膝の動きを完全にこなせていない人が殆ど。フィナーレなのに美しくなかったのが残念。そんな中、恐らくウォン・シーチー君と思われる東洋人の男の子が綺麗に踊っていた。彼はU2の曲で踊る男性群舞の中でも目を惹いた。踊りのキレが良く、プロポーションが華奢だけど綺麗で、是非クラッシクを踊っているところを見たくなった。
ジル・ロマン
パンフレットにも特に解説はなし。ストーリーはないのだろうか?
それでもジル・ロマンが踊ると意味ありげに見えてしまうから、彼のオーラはすごい。
身体のラインが美しくて、とても40を過ぎているようには見えない。
若手が束になって挑んでも絶対適わない存在感が素晴らしい。
たまに、目を見開いた瞬間、マイケル・ジャクソンに似てしまった。
あっという間に終ってしまう短い作品だった。
入魂の踊りの後の飾らない素の笑顔が彼の一番の魅力だ。
そのギャップが素敵だ。
ジュリアン・ファブロー
カロリーヌ・マリオン
カテリーナ・シャルキナ
キャスリン・ブラッドネイ
エリザベット・ロス
評判高いジュリアン・ファブロー、かなり期待していたのだが、私の好みでは無かった。
そもそも目が離れている顔はバレエダンサーに限らず好きになれない。
踊りが美しいとも思えないし、オーラも感じなかった。
別の作品ならもっと違う感想を抱けたのだろうか?
この作品はかなりクラシック寄りの振付だ。
スローテンポでリフトが多用されている。この作品ならクラシックダンサーの方が上手く踊れるだろう。ウヴァ様やルグリと比べてしまうと、ファブロー君は分が悪い。女性たちも同様でこれだけクラッシク寄りの作品だと美しく見えない。特にキャスリン・ブラッドネイは辛い。体型が完全にオバさんで、踊りも町の素人ババリーナ(注:おばさんダンサー)を見ているようだった。そんな中、カテリーナ・シャルキナの繊細で儚げな雰囲気は良かった。(パンフで経歴を見るとキエフ出身だった、納得)リフトされた時の突き上げた脚なんてすごく美しかった。
エリザベット・ロスはやっぱり逞しい、、、。
音楽をわざとかけないで無音の中踊らせるのはベジャールの十八番なのだろうか?『海』でもそういう場面があったが、あまり好きになれない。踊りのギコチなさが静寂の中で際立ってしまっていた。
ベジャールの作品には余計な狂言回しが登場する。「ザ・カブキ」の現代の勘平・お軽しかり、「バクチ」の崇拝者しかり。いっそのこと登場しない方が踊りや物語の純度が高まってより分かりやすく美しくなると思う。
【T】
バプティスト・ガオン * 崇拝者
ティリー・デバル * ラーマ
長谷川 万里子 * シータ
長谷川さん、なぜ彼女がシータに選ばれたのだろうか?日本公演だからか?そうとしか思えないほど、全然踊れていない。フラフラしていて、どんなポーズを取りたいのか良く分からない。彼女は日本人の中でもプロポーションが悪い方だし、アン・ドゥオールが出来ていない(と思う)。だからポーズを取るときに膝が外を向いていない。足先も身体と平行。外国人の間に佇む東洋人独特のものかもしれないが、妙に幼くも感じた。
一方、ティリー・デバルはなかなかセクシー。身体のラインに無駄な肉が無く美しい。寡黙な雰囲気で大人の男の匂いを漂わせていた。
な、もんだから二人で踊ると全く夫婦(と、言っても神様だけど)には見えない。
ロリコン&援交ぽい、妙なエロさが漂ってしまった。
【U】
イゴール・ピオヴォノ * 崇拝者
ジュリアーノ・カルドーネ * クシュリナ
クリスティーヌ・ブラン * ラダー
「海」で可愛らしいビムを見せてくれたジュリアーノ・カルドーネ、笛を吹く姿がはまっている。
クリスティーヌ・ブラン、可愛い!なんて清らかな踊りなのだろう。彼女とカルドーネが踊ると見ているだけで幸せになれそうだ。
【V】
スタン・カバール・ロエ * 崇拝者
オクタヴィオ・スタンリー * シヴァ
カトリーヌ・ズアナバール * シャクティ
カトリーヌ・ズアナバール、ブラヴォー。素晴らしい踊りだった。なんとなく盛り上がりに欠ける会場だったが、彼女のソロのあとは割れんばかりの拍手が起こった。それも納得の素晴らしい踊り。初見のベジャールバレエ、踊りの力量においてはクラシックのバレエ団ダンサーよりやや下かと思ったが、彼女は違った。素晴らしい脚!ポアントが強くて見ていて気持ちよい。テクニックもしっかりしていて、踊りにキレがある。この人が踊るクラシック、見てみたいなぁ。
オクタヴィオ・スタンリー、あっと驚く変な鬘をつけ(←ヤマトタケルが寝起き、みたいな頭)、赤いタイツがお似合いでワイルド、物凄く雰囲気はあったんだけど踊りはイマイチだった。
このバクチV、8月に東バのガラ公演で上野水香&木村一夫で上演が予定されている。お二人に凄く似合いそう。特に水香ちゃん、あの長い手足で踊ったら迫力あるだろう。木村氏も常にハイテンションな個性がシヴァにぴったり。(チケット、早く取らなきゃ。売り切れてないだろうな〜)
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カーテンコールにて、ベジャール御大登場。風船みたいだった。
「枕草子」は体調が理由で渡航禁止になったけど、今回は日本に来られたんだ〜、とりあえず良かった。全体的に盛り上がりに欠ける内容だったが、ベジャールが登場した途端「ブラヴォー」がコダマして、スタンディングが起きていた。彼って日本で愛されているんですね。
オケが居なかったので、直接舞台上のダンサーに花束を渡している人が何人かいた。ある方がベジャール御大にまるでホームレスが持つような紙袋入りのお土産を渡していた。中身は何だろう?ベジャールもおどけて覗いたりしていた。(会場は笑い)。クリスティーヌ・ブランのファンの人がピンクのミニバラの花束を渡していた。彼女にぴったり。センスの良いファンの方だ。
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ベジャールの作品について詳しくないので見当違いかもしれないが、今日見た限りでは東バが上演を許されている作品は彼の作品の中でもアタリなのかも。ベジャール、多作だけど当たり外れアリアリ!?
* 五反田ゆうぽうと *
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