2004年07月19日

「ルグリと輝ける仲間達」パリオペラ座(ルグリ・プラテル・オーレリ)<★★★>

鑑賞暦の短い私はパリオペ方面は特に疎くて、まともに見たのは2003年の来日公演くらい。世界最高峰のバレエ団だし、おフランスだし、何と言っても座長はあの完璧主義者のルグリだし、それはそれはピンと張り詰めたお洒落〜な公演になるに違いない、と勝手に思っていた。いやいや、大違いで嬉しかった。こんなにドキドキハラハラ出来る公演になるとは思っておらず、とっても楽しむことが出来た。まるで牧阿佐美バレエ団の公演を見た後のような、ほのぼのとした気持ちになって会場を後にした。

どうしても比べてしまうのが同じNBS主催の「マラーホフの贈り物」公演。あちらは一つのバレエ団で構成せず、世界各地の一流のダンサーをお招きしている。そのため公演やダンサーの完成度はマラ公演の方が断然良い。それに演目のバランスもマラ公演の方が良かったし、豪華に感じた。一方初めて見るルグリ公演の魅力は「一から十まで揃ってます」て感じで、下はカドリーユの男の子から上は大エトワールまでいて、いろんな段階のダンサーを見ることが出来る。その分完成度は劣るけど青田買いの気分を味わえる。一つのバレエ団をじっくり見据えることが出来るので、これはこれで楽しい。今回は初めて見る演目やダンサーが多かったので新鮮だった。



【 プログラム 】

第一部
 精密の不安定なスリル  ドロテ、ミリアム、ミュリエル
 オドリック、エルヴェ
 アベルはかつて  ビュリヨン、サイズ
 エスメラルダ  オーレリ、マチュー
 マニフィカト  プラテル、サイズ
 四重奏のフレーズ  ルグリ
第二部
 ディアナとアクティオン  アバニャート、ビュリヨン
 幻想・白鳥の湖のように  ルグリ・オーレリ、サイズ
 チャイコフスキーPDD  ユレル、ゴレィオン
 フ ー・ケアーズ  ルグリ ほか



 良かったダンサー&演目 

◆ヤン・サイズ

可愛い♪
物凄くスタイルが良くて、頭が小さい。身体のラインが綺麗で見ているだけでうっとり。なのに、どこかスっとぼけた雰囲気があり、ちょっとウヴァ様を彷彿とさせる。お顔は俳優のジョニーデップ似。今日は四演目もご出演。


◆オーレリ・デュポン

やっぱりエトワールは凄いと認識させてもらった。プルミエのお嬢さんたちが束になっても彼女の存在感にはかなわない。この公演、彼女が居なかったらと思うと背筋が寒くなるくらい、彼女が要所要所を締めていた。「エスメラルダ」「幻想・白鳥の湖のように」「フー・ケアーズ」と雰囲気の全く違う演目を見事に踊り分けていた。彼女にはステパ姐さんの後を継いで「極道系姐さん」の道を是非歩んで頂きたいと思った。


◆ミリアム・ウルド・ブラーム

文句無く可愛い♪
POBでは珍しく、華奢で儚げな西洋人形のような愛らしさ。ロシア系ぽい。バレリーナはこうでなくちゃ。踊りは正確で透明感がある。アラベスクがとても綺麗で、もっともっと見ていたい、という気にさせられた。彼女のシルフィード、可愛いだろうなぁ。ジュリエットも似合いそう。是非全幕主役で見てみたい。


◆ドロテ・ジルベール

ミリアムちゃんの素直な可愛らしさに比べると、随分と大人びていて多少のあざとさを感じてしまったが、人の目を惹き付ける天性の華は彼女のほうが上かもしれない。プルミエのお姉さんたちより断然ドロテちゃんの方がエトワールに近いだろう、と思った。



◆「アベルはかつて」

ステファヌ・ビュリヨン
ヤン・サイズ

オープニングの「精密の不安定なスリル」に出てきたオドリックベザール(肩幅だけ異様にあって手が長くてクモ人間みたい。なのに下半身と腰のあたりが異様に華奢)、若さゆえかあまりにも身体が出来ていなくて、コンビニのバイトの兄ちゃんを見ているようでゲンナリした。次のこの演目でしっかり身体の出来上がった美しい青年二人の上半身を堪能することが出来て気持ちを持ち直した。目の保養。この演目ではビュリヨンの坊主も気にならなかった。


◆「幻想・白鳥の湖のように」

マニュエル・ルグリ
オーレリ・デュポン
ヤン・サイズ

短い抜粋の中で、きちんと物語を見せてしまうところが、素晴らしい。
ルグリは第一部の「四重奏のフレーズ」での汚点をばっちり解消していた。心に影のある神経質な狂王ルードヴィッヒはルグリにぴったり。ナタリア妃のオーレリもはまり役。NHKで放映したハンブルクバレエ版はナタリア妃がどう贔屓目に見てもおばさんにしか見えなかったので、この配役で是非全幕が見たいと思った。ヤンはいてもいなくても支障はない。殆ど踊らない役だったが、全身黒の衣装が似合っていた。


◆「フー・ケアーズ」

第1PDD
エレオノーラ・アバニャート ・ マチューガニオ

エスメラルダで「イマイチ」と思ったマチュー君、「フーケアーズ」の衣装はとてもお似合いで可愛らしい背伸びした美少年だった。アバニャートも「ディアナとアクティオン」より全然良かった。この二人は相性が良いのかもしれない。

第1ヴァリエーション
ミュリエル・ズスペルギー

地味で本公演では目立たない存在だけど、踊りは確実で好感が持て安心して見ていられる。

第2PDD
オーレリ・デュポン ・ ヤン・サイズ

ヤン、可愛い♪オーレリ、さすが!なんて華のある美人なんだろう。オーレリ、ルグリと踊るより若手の可愛い男の子と踊る方が姐さんキャラが生きて伸び伸びしているように見える。

第2ヴァリエーション
メラニー・ユレル

ルックス的には好みと全く正反対なんだけど、踊りはしっかり踊っている。そこはさすがプルミエ?

第3PDD
ミリアム・ウルド・ブラーム ・ エルヴェ・クルタン

途中までクルタンをルグリと勘違いしていた。この二人、体型は全く違うんだけど顔と踊り方が少し似ている。
ミリアムちゃんが可愛い♪彼女、愛らしい西洋人形そのもののルックスに反し、割と無表情でクールな踊りをする。そのギャップと正確な踊りがガラスのような透明感に繋がり魅力的。Bプロのマチュー君との「眠り」がとても楽しみ。
クルタンも若くて可愛いミリアムちゃんと踊るのがとても楽しそうに見えた。

第3ヴァリエーション
ドロテ・ジルベール

本当に華があるし、踊りもスキが無い。個性的な美人で年齢の割りに大人びて見える。

第4ヴァリエーション
マニュエル・ルグリ

これで不惑とは恐れ入りました。彼は同世代のルジとはまた別の超人的なエネルギーがある。まだまだ現役で充分行けるのはもちろんのこと、衰え知らずだ。「ジュエルズ」のルビーやこの演目など、洒脱な踊りをやらせたら彼に適う人はいないだろう。


 悪いけど、期待はずれ 

◆マチューガニオ

あれだけ世間で絶賛されている中て言うのは憚られるが、マチュー君は期待はずれだった。
体格がまだまだ子供で、上半身が華奢。よって頭が大きく見える。お顔はとても華があり映画「気狂いピエロ」に出ていた超美少年を思い出したが、今後の顎骨の発達具合にに一抹の不安が。若いのに胸毛があるのも気になった。(仕方ないとは分かっているけど、美少年に胸毛はそぐわない)
踊りもまだまだ不安定。「エスメラルダ」をオーレリと踊ったときは完全にお師匠さんと弟子になってしまっていた。オーレリとマチュー君にはそれが似合っていたけど。
コーダの回転でどんどん左にずれていった時は直前のオーレリのヴァリエーションで落ちたタンバリンの部品を踏んじゃないかと手に汗を握った。(幸い大丈夫でした。)
入団間もない若手のホープとして見る分には「可愛い♪」と成長を見守る気にもなるが、エトワールとして見るには役不足か。


◆エレオノーラ・アバニャート

「美しいダンサー」と言うけど、別に、、、。
スタイルも並だし(東洋人ぽい)、顔はカエル顔。踊りも特に心惹かれるところはなく、「エトワール(オーレリ)とプルミエの差は大きいなぁ」と思った。「エトワール任命」の噂もあるらしいけど、彼女くらいのレベルだったら日本のバレエ団にゴロゴロいると思った。全幕で見るとまた違った印象を抱くのだろうか?

◆メラニー・ユレル

男顔と盛り上がった肩の筋肉が私はダメだった。
ロシアのダンサーと違ってPOBのダンサーはガタイが良くてもOKなのだろうか?メソッドのせいなのか、POBの女性ダンサーには肩から腕にかけての筋肉が異様に発達した人をよく見かける。(際たるものがマリ・アニエス・ジロ)
特にメラニーは男顔も手伝って、出てきた瞬間「グランディーバ!?」と思った。

◆「ディアナとアクティオン」

エレオノーラ・アバニャート
ステファヌ・ビュリヨン

第二部のオープニングで「いよいよアバニャート登場」と期待していたが大コケ。会場も盛り下がった。アバニャート、「ジュエルズ」のエメラルドの素晴らしさが印象に残っていただけに残念。ビュリヨンに至っては髪の毛を伸ばして、出直して来い!
最後のリフトが決まらず、二度ほど上げなおしていたが(「ダンベル体操かい!?」と軽く心の中で突っ込んだ)、結局伸ばしきれずに終った、、、。

◆「チャイコフスキーPDD」

メラニー・ユレル
マロリー・ゴディオン

彼らの踊りを見ながら「マラ公演のポリーナとメルクリは良かったなぁ」と追憶に耽ってしまった。二人ともソロで踊るときは曲に乗って軽やかなのだが、二人で踊るとメタクソ。音楽を全く感じることが出来なかった。最後リフトで下がる時、マロリーはメラニーを持ち上げ切ることが出来ずに斜めの状態のまま下がっていた、、、、。
マロリー、お鉢が大きくてアリンコみたいだった。

 謎!? 

◆ステファヌ・ビュリヨン : 何で坊主なの!?

「イワン雷帝」のタイトルロールに抜擢されていたし、紹介写真も好みだったので期待していたんだけど、がっかり。
出てきた瞬間「なんでハゲなの!?」と会場中が思ったことでしょう。綺麗な丸坊主だった。
ロモリとか自然現象の場合は仕方ないとして、バレエダンサーでハゲ坊主って許されるの!?
第一部の「アベルはかつて」はまだ良かった。でも第二部の「ディアナとアクティオン」では、ハゲ坊主に衣装は白フンドシ一丁(正確に言うと、腰巻)で、どうみても前衛舞踊または修行僧にしか見えなかった。踊りは身体が固く、着地音が五月蝿い。


◆「四重奏のフレーズ」 : ベジャール爺の大失敗作をなぜ選ぶ!?

なんでルグリはこの演目を選択してしまったのか?彼が熱演すればするほど、見ているこちらは恥ずかしくなってくる。マイクを持って語りだしたときには赤面しちゃったよ。台詞はフランス語だからまだ許されると思う。日本語だったら聞くに堪えない。

* 五反田ゆうぽうと *


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