2004年09月29日

「ルジマトフの総て」ルジマトフ、ジュド <★★★>

会場に着いて演目表を見るとルジの「海賊」が追加になっている。ラッキー。




■ 第一部 ■

 薔薇の精 

ルジマトフ
ロマンチェコワ

10年ほど前のニーナ・ガラ公演の映像で見た時は「ルジに薔薇の精はちょっと、、、。」と引いてしまったが、今回は良かった。手の動きが指先まで丁寧で美しく「ルジってこういう役も似合うんじゃん!」と新たな発見。

お衣装はもっとススけた色かと思っていたら、赤味が強い紫に近いピンクで意外と派手だった。これがよくお似合いで華やかで匂い立つような薔薇の精だった。


 海 

音楽:メルテンス
振付:G.コフトン

クチュルク
ミハリョフ

お二人ともプロポーションに恵まれていないのが惜しいが、踊りはイキがぴったりで良かった。特にクチュルク、脚が強くてラインが綺麗。お顔も個性的な美人。彼女、ロシアのバレリーナというよりも、脚力の強さ・お顔の雰囲気・プロポーションと全体的にパリオペっぽいな、と思った。


 愛の伝説 

マハリナ
シショフ

うわ、シショフが崩れてる、、、。かなり太って人相が変わってる。おまけにあの奇抜な衣装。
全身←こんな色のタイツで、頭にはでっかい王冠、首には←こんな色のケープというかスカーフ。アンビリーバボーな状態でしばしショックを受ける。
一方、マハリナは全身黒タイツがお似合い。6月に「シェヘラザード」で見たときは妊婦のような腹肉が気になったが、今回はすっきりとお痩せになっていた。

踊りは「君達にグリゴロは無理だよ」と言いたくなるほどボロボロ、、、。


 アダージェット 

振付:O.アライス

ジュド
ルブロ

ジュド様、素敵。
なんとも言えない包容力があって独特のオーラがある。
ルブロも清純そのもののルックスが可愛い。

この演目、出だしのライトが暗すぎてダンサーがよく見えなかった。残念。


 海賊 

ルジマトフ
エフセーエワ

異論はあると思いますが、意外にもこの二人の組み合わせが良かった。
かたやウマいもの喰ってそうな幸せの象徴みたいなお嬢ちゃん、かたやストイックで虐げられた雰囲気を感じさせる求道者ルジ、全く正反対の個性がかみ合ってしっくりはまっていた。ルジは「大切に育てられた親友のお嬢さんをお預かりしている」とでも言った雰囲気。エフセーエワはルジと踊れるのが嬉しいのか、とても丁寧に踊っていて好感が持てる。ただし、彼女は歩き方が変。プリマなら直して欲しい。コーダのフェッテ、途中で大きくヨロけたが、一度は持ち直した。が、最後に回りきれなかったのが残念。思わず「ガンバレ、ガンバレ」と唱えてしまった。

ルジのアリは一段と美しくなっている。若い頃のアリよりも今の方がずっと良い。身体のラインもどんどん綺麗になっていく気がするし、気のせいか、踊りも若返っていませんか?


■ 第二部 ■

 LUZ DE LUNA 

ロサリオ・カストロ

音が煩さ過ぎ!
テープの音量をもう少し考えて欲しい。1F席後列で頭が痛くなるくらい煩かったから、前列にいらっしゃるご年配の方たちは大丈夫かしら、と心配になるほど。
フラメンコ、粋で姉御な踊りで良かったけど、このガラ公演には必要ないのでは。


 ダッタン人の踊り 

エフセーエワ
レニ国の男性達

「スーフリ(ワダさん)」的なノリの「ダッタン人、、、」だった。
妙に若くて明るくて、軽〜い踊り。特に男の子たち、まだ踊りなれていないのか自信なさげで目が泳いでいる。そんな中、クリギンさん一人だけ妙に濃ーーーーーい踊りで思いっきり目立っていた。彼を見ていると可笑しくて可笑しくて、途中から笑ってしまった。ロシアのバレエ団にはたまにこういう勘違いしている人がいて面白い。

エフセーエワはチアガールみたいだったけど、彼女の身体能力はとても高いと分かった。エビ反りジュテ、美しかった。キトリ、いけそう。


 レクイエム 

振付:笠井 叡

ルジマトフ

予告編をシアターTVで見た友人に「絶対寝るよ」と言われ、自分でも「寝るだろうなぁ」と予測していたが、実際目にするととても良かった。ルジの美しさをあますところなく伝えてくれる振付で、振付者の笠井さんはすごいなぁ、踊ってしまうルジも凄いなぁと思った。


■ 第三部 ■


 ロメオとジュリエットよりバルコニー 

振付:マクミラン

ドヴォロヴェンコ
ベロツェルコフスキー

この二人は本当に美しい。見惚れた。期待に違わぬ大当たり。
今回は特に、マントの裾から覗くマクシムの爪先の美しさにやられた。彼は前回見た時より髪の毛が短くなっていて、凛々しさ&色男ぷりが更に上がって惚れてしまった。

このお二人はガラでしか見たことが無いのだが、短い上演の中で毎回ドラマを感じさせてくれるところが素晴らしい。今回もとてもドラマチックだった。

この二人を見ていて「良いな」と思うのはイリーナから「マクシム大好きオーラ」が発散されているところ。以前ダンマガの「バレエ・ファミリー」特集のインタビューで馴れ初めを語っていたけど「学校時代にコンクールに出ることになって『パートナーは誰が良い?』と聞かれ、迷わず「マクシム」と答えた」とイリーナが言っていた。「彼が一番素敵だったの」だそうだ。マクシムもそんなイリーナを大切にしているのが踊りから滲み出ていている。おまけに二人とも揃いも揃って美男美女。「世の中にこんな恵まれた夫婦がいるのかい!」と俄かには信じられないほど、見ているだけでとても幸せな気持ちになれる。まさにパーフェクトカップル。


 ムーア人のパヴァーヌ 

ルジマトフ
ジュド
ルブロ
フランシオジ

名人芸を堪能させて頂きました。
中でもジュド様のまとわり着くような、絡みつくような邪悪なストーカーぶりが素敵だった。


*

今回のガラ、踊りは皆それぞれ良かったのだが全体を通したテーマが定まらなかったのが惜しい。風呂敷を広げすぎた感は否めない。小さな劇場ならではの臨場感をもっと生かしルジ&ジュド様を中心に据えた大人の雰囲気漂う演目に絞っても良かったのでは。

それから出演者の扱いがあまりにもったいない。ABTからプリンシパルを二人も呼んでいるのに一演目ではバチが当たる。マハリナも同様。いっそのこと出演者をもっと絞って、各二演目ずつにすれば良かったのに。


* 東京芸術劇場・中ホール *


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