「ライモンダ」新国立劇場バレエ団(ザハロワ・ウヴァーロフ)<★★★★> |
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スヴェトラーナ・ザハロワ * ライモンダ
アンドレイ・ウヴァーロフ * ジャン・ド・ブリエンヌ
ロバート・テューズリー * アブデラクマン
湯川 真美子 * クレメンス
西川 貴子 * ヘンリオット
M.トレウバエフ * ベランジェ
冨川 祐樹 * ベルナール
ウヴァ様組二日目。
こちらの目も慣れてきたのか初日に抱いたほどの違和感は感じなかった。
が、やはり一幕はお直し希望。
まず、プロローグ。
二回見ても、この短い時間で物語の背景を説明するのには抵抗がある。視覚的にはとても美しいのだけど。この演出だとジャンに現実感が無さ過ぎて、夢の中でいきなり登場すると「幽霊?」て感じ。彼は主役なのに〜。
衣装もアブデラクマンは長〜いマントを翻しているのに、ジャンはマント無しで見た目、負けてるし。大して踊る振付では無いので是非マントを背負わせて欲しい。(白マント希望)
夢の場面、ジャンの登場シーン。
やはりあの踊りはカマっぽい。座りながら眠っているライモンダの周りをひらひら踊る姿はまるで『バラの精』モドキ。あれはこの世のものではない両性具有的な怪しい精なのに、なぜ十字軍遠征中の勇壮な騎士ジャンが似たような振付なの?群舞の動きもやはり単調。あんなに美しいダンサーたち&セットなのに眠たくなってしまうのはもったいない、、、。
一幕全体を通して、ストーリー進行をあそこまで急ぐ割には「(私の目には)これ、いらないよ」という踊りがいくつかあったのだが、いかがなものだろう?
二幕・三幕についてはテンポ良く踊り中心に進められていくので楽しい。
欲を言えば二幕はアブデラクマンの踊りを増やして欲しいのと、既に決闘が始まっているのに無理矢理ダンドリ踏ませるおせっかいな国王をカットして欲しい。致命傷も「脳天かち割」ではなく「首筋カット」希望。
三幕はグリゴロ版では無い主役二人のアダージオがあるのが、豪華で嬉しい。お得な気分。この幕の背景画は本当に美しい。理科の教科書の「北極星・定点観測写真」そっくり。
初日気になった「イタリアの大道芸人」みたいなアブデラクマンの手下はプログラムによると「大道芸人」だそうな。はて?イタリアなのか?いずれにしろ、色彩がこの衣装だけ妙に浮いていて違和感。その他の衣装は細部まで豪華な装飾が施されていて、大変美しかった。(男性陣がもっと似合ってくれると尚良し!)
◆テューズリー
ブラヴォ〜!
今日は彼に惹き込まれた。素晴らしい!
都さんとの「ジゼル」でも思ったけど改めて彼は演技派ですね〜。アルブレヒトとは全く違う役だけど、こんなに魅力的に演じてしまうなんてスゴイ!
一幕と二幕冒頭のアブデラクマンはライモンダに対して紳士的に振舞っている。それが二幕が進むに従って目に狂気の色がほとばしる。「ライモンダを手に入れたい」という己の欲望を理性で抑えられなくなり、獲物を狙う獣の目に変化していく過程がスリリングでゾクゾクした。狂っていくほど、セクシィ〜になるのは色男の特権か?完全に惚れました。
踊りも柔らかい上半身を生かした踊りでした。
◆ザハロワ
この人はやっぱりすごい。初日に比べて格段にグレードアップ。
踊り、演技、ダンドリ、総てがスムーズになっている。一番びっくりしたのは汗!
初日、ザハロワにしては結構な汗をかいていたのだが、本日はペース配分を掴んだのかほとんど汗をかいていなかった。たった一回の舞台経験でこんなに成長してしまうのか、この人はやはり天才なのだ、と思った。
三幕の手叩きヴァリエーション、初日はかなりグラついていて物足りなさを感じたが、今日はなかなかの迫力。My手叩き女王・ステパ姐さんの極道オーラには及ばないが、初日とは打って変わった「静寂」の美にしみじみと酔わせて頂いた。
◆ウヴァ様
初日・本日とも全体を通して絶好調!という感じではなかったけど、充分満足。初演の作品にご出演で色々と大変だったと思いますが、お疲れ様でした。
今回の舞台、彼の肌の色と金髪が舞台の背景に溶け込んでいて思わず「このセットはウヴァ様仕様?」と思うほど。一枚の絵のように美しい騎士だった。(黒髪の王子達は大丈夫なのでしょうか?)。
今日は初日よりダンドリに慣れてきたのか、一幕からヤル気を出していた。
ザハロワとのコンビは今日もパーフェクト・ビューティフル。(私はここに一抹の寂しさを感じる。ステパ姐さんの尻に敷かれているほうが好きなの。)
二幕のヴァリエーションを踊り終えたウヴァ様、ご本人会心の出来だったのか、いつになく自信に満ちた晴れやかな表情だった。その笑顔を見てこちらまで「良かったね〜」と心から嬉しかった。今公演ではマラ・ガラでは見られなかった心からの笑顔を何度も見ることが出来て、とても嬉しかった。ウヴァ様も座長(?)として、満足のいく初演作品だったのだろう。
しかし、ウヴァ様の魅力はそれだけでは終らない。
今日のツボはアブデラクマンとの決闘・登場シーン。
マントを背負ってカッコよく登場したのは良いが、ザハロワにマントを踏まれてしまった!ウヴァ様、初日の威厳はどこへやら、笑っちゃってるし。ザハロワが除けて、再び彼が歩き出すと、まだ踏んでいた!この瞬間とうとう堪え切れずザハロワも笑ってしまった。うぐぐぐ、面白すぎる。マントを踏むなんて、古典コントの王道!サスガ、ウヴァ様。
その後の決闘シーンも前日のスティーフェルが『首筋カット』だったのに対しウヴァ様は『脳天かち割り』に戻ってるし。(しかも、微妙に外している)。
また、ウヴァ様はチャンバラが下手。運動神経の悪い子供が木刀を振り回しているみたいだった。しかもその表情はお口「へ」の字の「怒りんぼ」。学芸会?初日はあんなに素敵な決闘シーンだったのに、今日は完全にコントだった。
あんなに完璧な二枚目なのに、どこかスっとぼけているところが彼の魅力。本当に見ていて飽きない。やっぱり私はウヴァ様は大好き!
◆新国立の皆さん
大森結城さん
彼女の「サラセン人の踊り」は絶品。この作品の中で「何がもう一度見たい?」と聞かれたら大森さんのこれ、かも。
吉本さん
初日に増して気合入りまくりのチャルダッシュ。新国立の男性陣の中で彼の存在は貴重。お顔もジャニーズ系ベビィフェイスで可愛らしいので、これで身長さえあれば王子不足の新国立の定番王子だったろう。12月「くるみ」の王子デビュー、頑張って下さい。
最後に、これは好みが別れるところだと思いますが、、、、
私にはどうしてもザハロワと湯川さん&西川さんが友人には見えない。
新国立にはもっと細くてプロポーションの良いダンサーがいるのだから、その人たちを抜擢して欲しい。
* 新国立オペラ劇場 *
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