グルメあほかいな

 

 きっと貧乏な生れのせいだろうと思うが、とにかく「グルメ」という人種は気に入らない。「高価な食べ物にグダグダ文句を言Tっているようなやつは、食べるものがなくなったときには何も食わしてやらんぞ。泣くなよ!!」と脅かしたくなる。

 小学校の頃同じクラスに「給食はマズくて食べられない」と言うようなことを得意そうに言っているやつがいたので、大いに軽蔑してやった。(本当は、ぶん殴ってやりたかったのだが、逆襲されるとまずいので……) そもそも給食以外満足な食事が食べられない子がたくさんいた時代だった。そんな時に「食べるものがある」状態を感謝もせず、文句を言うというようなやつは「人間じゃねえ。犬畜生にも劣る野郎だ!! 叩き切ってやる!!」と思ったものだった。

 その文脈から言えば、ミシュランの「星がいくつだ」という騒ぎは、私の中に憎悪以外の何者も生み出さない。

 「千円のランチメニューで何処がおいしいか」とか、「どこのラーメンがうまいか」いう情報は大いに意味があると思う。

 一食三千円とか、まあ頑張って五千円程度までの店ならランク付けに意味があるだろう。
 しかしミシュランが選んでいるのはすべて、二人でちょっと行って(予約がなければ行っても無駄な店ばかりだが……)食事と飲み物で軽く七〜十万円の店だ。

 星3つが東京に8軒、星2つが25軒、星1つが117軒で、パリよりも星の数が多いとか少ないとか話題になっているが、ハナっから馬鹿馬鹿しい。そんな馬鹿高ければ、おいしくない方がおかしい。

 私はドイツに3年ほど住んでいたが、ヨーロッパで売られているミシュランは、もっとずっと表現もシンプルで(写真なんかないし、説明も殆どない)選ばれた店も、格式は高かったが、日本みたいにバカみたいな値段ではなかった。(まあ、1万円前後。あ、高いワインを飲むと無限に高くなりうるが……。 酒なしで、ひと座り十万円なんて店は日本だけかも……)

 そもそも食べ物のランク付けなど、そうとう怪しい。その証拠には、正月テレビ番組で、普段高い食事を食べつけているだろう芸能人が十数人で、最上級の鯛と、回転寿司で使うニセモノの鯛(ティラミスとか言っていた。深海魚らしい)を食べ比べて、半数以上が間違えたし、百グラム数万円の薩摩黒豚と普通のスーパーマーケットで売っている百グラム178円の豚を食べ比べてこれまた半数近くが間違えていた。(ちなみにいうと、同じ番組で、合計25万円のバイオリン、ビオラ、チェロ等の弦楽四重奏用楽器セットと合計30億円の楽器セットで同じ曲を演奏し、どちらが30億円の音色かを当てるのだが、音楽でメシを食っているはずの人達を含めて半分近くが間違えていたし、正解した人も決して自信を持っているわけではなかった。
 「本物は、音が躍動しますよね
!!」なんて話がおおむね幻覚であることがよくわかる

      閑話休題ー)

 馬鹿馬鹿しい!! 「本物は口に入れた途端に香りが違いますよ」といっている人々でもその程度のモノだ。グルメなどと気取らないでほしい。

 

★ 料理ごときでいばるな!

 

 だから「料理の鉄人」などというのは、はなっから大っ嫌いだ。
 寿司なんて、ネタが同じなら同じ味に決まっている。名人もへちまもあるものか!
 マイセンで飲もうが、100円ショップのカップで飲もうが、同時に入れたコーヒーは同じ味だ。当たり前だろう。
 製造業のオヤジの苦心、苦労、創意、努力、涙と、料理人のちょっとした思いつき、ちょっとした苦労を一緒にしないでくれ。「世の中に対する貢献度が天と地ほど違うわい」、と思う。

 料理なんて腹が空いてりゃ皆おいしい。時間をかけて「見た目にも鮮やかに」などと手間をかけて飾りたてるのは全くの無駄。(だから、「目で味わいながら食べる……」というような本格的な日本料理は嫌いだ。)
 その点で中華料理はいい。ジャージャーと炒めて、ガッと盛りつけて、スッと出てくる。くだらない飾り付けはしない。すぐにできるし、すぐに片づけられる。皿も一種類ですむ。極めて合理的だ。

 私も今回ミシュランで三つ星をとった本格的日本料理店というか、まあ、料亭に行ったことがあるが、ちっともおいしいとは思わなかった。女主人とかいうのが出てきて、「何とかいう俳優が昨日来た」とか、「作家の○○先生がエッセイにおいしいと書いてくれた」とか、「政治家の××先生の予約が入っている……」とか、自慢たらたら。「食べさせてやる」的態度濃厚で、不愉快で、味もヘチマもなかった。

 そういえば2007年12月11日号エコノミストの編集後記にこんな話が書かれていた。

 ミシュランで三ッ星をとった有名な鮨屋でのこと、中年の男女が飛び込みで入ってきた。「ご予約は?」「いいえ」すると店の女性はいかにも迷惑そうに「うちはおまかせでお一人2万5千円ですけど」と、店の全員に聞こえるような大声で叫んだ。

 客の視線がいっせいにそちらに向く。二人は顔を見合わせながら、すごすごと店を後にした。

 なんと失礼な対応だろうか。通りがかりに寄っただけかも知れないが、デートなら最悪だ。いくら有名で予約がいっぱいでも客に恥をかかせるような店は名店とは呼べないだろう。
 たかが食い物で、そんなにいばるんじゃねえ!

 

★ 星なしでも凄いぞ

 

 広尾の周りは最近、ちょっと「小ジャレた」店が続々とできつつある。
 渋谷がやたら有名になって、田舎の人が多く来すぎるので、より洗練された東京の人達は、恵比寿・広尾方面にくるのだとか……。

 私の住んでるマンションの近くにあるとあるステーキ屋は、夕方6時開店なのだが、4時頃から十数人が並んでいる。

まあ、ディズニーランドと同じで、「待つこと自体が金のかからないレクレーション」なのかも。

 そういえば恵比寿にトシ・ヨロイズカの店もあって、朝でも昼でも数十メートルの列ができていて、その列を作る客を目当てにアクセサリー店とか美容院とかコーヒーショップが出来ていたのだが、ヨロイズカが六本木のミッドタウンに引越して、急に寂しくなってしまった。おかげで、ヨロイズカの客を当てにして開店した店は大騒ぎ。


 地下鉄日比谷線広尾駅1番出口を出て、広尾散歩道を入ったすぐ右にある「太桜(たろう)ラーメン」という店は、「橋本ミシュラン」では間違いなく星五つだ。私の息子も、娘も、一時期東京を離れてくらしていたのだが、東京にきて「行きたい店」といえば太桜ラーメンだった。私もそうだ。
 非常においしい上に安い。しかも、帰りに餃子券をくれるので、次回にそれを持って行くと餃子三個がサービスになる。私の一家は三十数年来ひいきにしていて、しょっちゅう私ら夫婦、娘夫婦と子供4人、息子夫婦と子供1人、計11人様で行くくらいのものなのだが、意外に有名にならない。おいしさと安さからいえば、もっと有名になっても良いと思うのだが……。

 

 もっとも私の料理の味に対する評価がどの程度かといえば、政策研究大学院大學の同僚に政治学で有名な飯尾潤教授がいる。(2009年に彼が書いた「日本の政治構造」とかいう本がサントリー学術賞を受賞した)若いが、頭も人柄も良い先生なのだが、先日「どの店がうまいか」という議論をしている時に、私の意見を聞いていた彼が、「橋本先生の食べ物に対する評価の基準は、味の素の量と比例していますね」と、痛いところをついてきた。

 失礼だと想うが、振り返ってみるに、その表現がピッタリ当たっている。あたっているだけに悔しい。

 

 そういえば、あるテレビでギャル曽根が、六本木駅から私の大学に来る通り道にあるある寿司屋で大食いする番組があったのだが、150巻食べて、お代金が60万円だって……!!!!。

1巻4000円じゃん。トロとか、ウニもあるだろうけど、イカ、タコ、玉子だってあるだろうに!!! 
 そんな無駄使いするカネがあったら、ユニセフや、国境無き医師団や、赤十字に寄付しろ!!!!