エレコム
VGA切替器 DTSP2−VGABB

オート・パソコン・セレクタの製作

これは、エレコムのVGA切替器についての驚くべき(?)レポートです。
VGA切替器などの切替器の多くは、ロータリースイッチを使ったメカ接点のタイプが多いのですが、これは電子式のタイプです。電子式と聞くとどんな物かと思われそうですが、リレーなどのメカ接点ではなく、半導体スイッチを使ったタイプを意味するのが普通です。半導体スイッチは、普通FETを使ったスイッチング回路を使いますが、ビデオ回路のインピーダンス(75Ω)にくらべると、FETはスイッチング抵抗が10数Ω〜数Ωと高めなため、バッファ回路などのアンプが必要になります。この切り替え機もそういった構成をしています。

電子式の切替器の特徴は、高解像度でも信号の劣化やゴーストが少ないことです。機械式の切替器などのロータリースイッチは、配線の引き回しが長く必要となり、インピーダンスが狂い映像が乱れます。電子式なら、配線の引き回しは最低限になり、また、アンプを内蔵するので信号の劣化も少なくできます。反面、出来の悪い回路だったりすると、折角の電子式でも信号が劣化し、高画質を得られません。つまり、電子式は回路次第でどうにでもなるというわけです。

さて、エレコムの電子式切替器は、この種のタイプとしては最も安価な製品です。普通2対1のタイプで6000円程度はしていたのですが、エレコムは4000円程度で買えてしまいます。この2000円の差は何か、エレコムの切替器はどうなのかレポート致しましょう・・・

最終更新日 : 2001.8.21


この写真は、エレコムVGA切替器の内部の基板の写真です。なぜかICの名前が削り取られています。余程画期的な回路なのか、恥ずかしい回路なのかのどちらかでしょう(^^;) 配線から回路を推察すると、16ピンのICで切り替えをしているようです。IC1つあたり3回路あり、ICの数は3つで全部で9回路分切り替えます。不思議なことに、ビデオ信号も同期信号も、それ以外の信号も皆、このICで処理しているようです。不審に思ってICのピンレイアウトを調べてみると、なんと4053と同じです! 4053といえば100円も有れば買えるC−MOSのFETスイッチです。4053と同じピン・レイアウトなビデオ用FETスイッチがあるなら話は別ですが、ICの名前が削り取られている処をみると、どうやら4053であるに違い有りません。有る意味、1600x1200の解像度をセレクトする用途に使えるということは画期的なのかもしれませんが(笑)

では、肝心の性能の方はというと、妙に画面のコントラストが落ちた感じです。ディスプレイの設定で補正可能ではありますが、メカニカル式の切替器と取り替えてみると、かなり見にくくなるほどに画質が悪化します。ただし、1600x1200での使用は、自宅のディスプレイ(飯山 MT-8617E)では違いが分からない程度の画質はあるようです。というか、飯山のディスプレイがボロで、1600x1200では、初めからピンボケです(笑) メカニカル式の切替器と比べても変わらない程度です。


オート・パソコン・セレクタの製作

電子式VGA切替器を買った真の目的は、この、オート・パソコン・セレクタの製作のためです。電子式でないと、マウスやキーボードのセレクタと同時に切り替えられません。最近、完成品のパソコンセレクタが1万円くらいで買えるようになりました。これ以下で作れなくては面白くありません。VGA切替器(2チャンネル)が税込み4500円ほど、マウス、キーボードの切替器は300円もあれば作れそうです。自動化するための制御部は、ケースを含めて1000円程度でしょうか? 実は、全部手持ちの部品で作ってしまったので、掛かった費用は総額で5000円程度でした。新たに部品を買っても6000円で済みそうです。しかし、市販品は4チャンネルの切り替えが可能ですけど、これは2チャンネルです。なんか、市販品を買った方が良かったかなとも思えます(笑)

製作したセレクタの機能

オート機能は、切り替えスイッチを触らなくても、電源を入れた方のパソコンへ自動的にディスプレイ、マウス、キーボードを接続する機能です。2台のパソコンを同時に使用する場合は、スイッチによって切り替えることになりますが、どちらかのパソコンの電源を切れば、自動的に電源の入った方に切り替える機能も持っています。

パワーマネージメント機能は、キーボードやマウスを10分間操作しないと自動的にディスプレイの電源を切ります。このような機能は、Windows98などではソフトウエアでできる機能なのですが、ある種のアプリケーションと相性が悪く、自宅のパソコンでは、この機能を使うとパソコンが時々(1日に1度程度)ハングアップします。どうも気持ち悪いので、この機能は停止しているのですが、自宅に居て、起きている間は、ほぼ電源を入れっぱなしであることと、パソコン関連の使用電力の半分を喰っているディスプレイを付けっぱなしにするのは電気代の無駄だと思うので、パソコン切替器に、この機能を付けました。

詳細については、CQ誌2001年4月号に掲載予定です。回路図はCQ誌の方をごらんください。プログラムについては、そのうち、こちらのにも掲載すると思います。

プログラムダウンロード
pasosel.asm (2001.3.21)

問題点について・・・

この試作した切替器を使用していると、ごく希にマウスカーソルが、勝手にどこかへ行ってしまうことがあります。もともと500円で買ったジャンクマウスなので、少々変なところが有ってもおかしくは無いのですが、切替器を使わない時には、こんな事はありませんでした。怪しい箇所と言えば、セレクタに4066を使用しているため、そのON抵抗が数100Ωと高めであること、ショットダイオードを通してマウスに電源を与えていることです。オート・セレクタ化したときに、4066の電源電圧を5V→12Vとすることで、マウスの誤動作は少し減ったのですが、それでも、まだ希に誤動作します。さらに、ON抵抗の低いセレクタを使用する必要があるのかもしれません。ちなみに、同じ回路を使用しているハズのキーボードには全く不具合がありません。おそらくは、マウス側にも相性問題があるのでしょう・・・

夏場は大丈夫?

春先には、マウスカーソルが飛ぶだけでなく、キーボードまでおかしくなってましたが、夏になり暑くなってからというもの、至って安定して動作するようになりました。回路がなじんだのか、熱が良い方向に働いているのか不明ですが、10月頃になったら、この結果がでるでしょう(^^;)