サルコイドーシス友の会の皆様へ
 サルコイドーシスは原因不明の基本的には、全身に病変が起こりうる可能性のある、 炎症性の病気です。炎症性というのは、癌ではない、遺伝性のものではない、などの 意味でご理解ください。炎症の中には、感染症も含まれ、これは人に移る可能性があり ますが、サルコイドーシスはその意味では、感染症ではありません。

 サルコイドーシスは、人口10万人当たり一年間の患者さんの出現数は30名前後 です。喘息の患者さんが、3000〜5000人といわれているのに比べると、少ない 病気に入ると思います。

 サルコイドーシスは、我が国の患者さんの統計からみますと、胸部X線写真上の異常 陰影を健康診断で発見されて、症状がないままに医療機関を受診することになる場合と、 目の症状(ぼやけたり、霧がかかった感じ)で、見つけられる場合とが主な発見の型です。

 サルコイドーシスの診断のためには、類上皮細胞肉芽腫という特別な細胞の集合所見 を組織標本上、見つけることが必要ですので、目だけの患者さんも、他の症状や所見 (皮膚や神経症状など)で見つかった方でも、一度は呼吸器内科にこられることが多い のです。診断を確定するためには、皮膚生検か経気管支肺生検が日常的に、よく行われ ている診断方法です。

 診断のために7日くらいの検査入院が必要となりますが、特殊な場合を除いて、ほと んどの患者さんは、外来通院で、しかも、半年に一度の経過観察、治療中は月一度の 通院(お薬の処方の関係で)となります。しかし、治療をされる患者さんの数の方が、 圧倒的に少ないのが、この病気の特徴です。すなわち、かなりの方は、5年の経過観察 で、自然に治ってしまうからです。

 私たちの経験は約1000人の患者さんの臨床経過に基づいていますが、最初に症状 がない方では、その5%位が慢性化して、最初に症状のあった方の10%位が、慢性化、 その一部が難治化していくとの状況です。

 これまでに、30名くらいの患者さんが、肺、心臓、腎臓などの内臓の病気の進行の ために、治療され、肺移植しか救命の方法がない状態の方がごく一部にはおられます。 しかし、多くの患者さんは、これらの難治化の患者さんとは異なり、もしご自身が 何か体の違和感を自覚されたとしても、それはむしろ、更年期症状、あるいは老化現象、 あるいは生活習慣病のあらわれであることの方が多いのが現状です。

 ですから、安定しており、サルコイドーシスの専門医が経過観察だけでよいと評価 した場合には、あまり、重症化された患者さんの状態と自分を一緒にしてしまわずに、 安心して日常生活を送っていただきたいと思います。

 難治化して、このサルコイドーシスと闘病せねばならない患者さんにとっては、医療 関係の情報をきちんと理解し、長い道のりをきちんと歩いていく覚悟が必要です。この ために私たちも、新しい治療法、臨床経過の正しい理解について、皆様に、きちんとお話 していく姿勢をとりたいと思います。

 患者さんの方でも、きちんとした経過の情報を、我々に与えてくださり、そのことが、 サルコイドーシスの治療管理に良い形で還元されるように、ご協力をお願いいたしたいと 思います。

 21世紀を迎え、さらなる緊密な科学的な連係を創っていくためにも、友の会の果たす 役割が充実していきますことを祈念申しあげます。


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