立花暉夫先生講演(6)
 次に、生活不自由のお話をいたします。肺の場合は呼吸困難が挙げられます。非常にまれな場合は、外国で肺移植を受けられた方もおられるようです。在宅酸素療法を受けられている方もおられます。眼の場合は失明される方もおられますが、サ症と診断されてから失明される方はまずおられないと思います。サ症の専門医にサ症と診断される前にすでに失明されている場合があるようです。脳に病変が及んで、尿崩症になると、1日に尿がたくさん出て、水をたくさん飲まなければならなくなります。脊髄の場合は、数は非常に少ないのですが、四肢ことに下肢に運動障害がみられることがあります。腎臓の場合は人工透析を受けなければならないことです。筋肉の場合は、大きな腫れ物でこぶし大のものになってしまったり、骨が変形したりすると、大変になります。一番問題なのは心臓です。私が調べた範囲で全国に四十数名の方がペースメーカーを使用されていますが、近畿地方にも十数名の方がおられ、案外多いのです。心臓は非常に気をつけなければなりません。

 最後に合併症の事ですが、サ症だけで安心していてはいけません。他の病気が合併症として出ていないか気をつけなければなりません。40才以上の女性の方に多いのですが、生命に一番関係の深い悪性腫瘍のことです。過去には、サ症の患者がツベルクリン反応が低下するという事は、ある程度抵抗力が低下していると考えられ、悪性腫瘍に対する抵抗力も低下すると考えていた時期がありましたが、決してそういうことはありません。今からお話ししますのは、頻度が高いということではなく、あるとすればこういう病気が考えられるということです。まず第一に胃ガンです。胃ガンは日本人に一番多い病気です。ただ、胃ガンだと思って手術してみると胃のサルコイドーシスであったという場合もあります。女性の場合は乳ガン、子宮ガンという例があります。消化器の場合は、肝臓ガンが多く、胆管ガンもあります。白血病や悪性リンパ腫という場合もあります。しかし、これらは頻度は非常に少なくまれです。

 次にばい菌による病気、感染症ですが、日本人には結核が多いのでやはり結核が多いです。肺だけの病変になって、多少息苦しい時、10〜20年たたなければそうはなりませんが、クリプトコカス、アスピルギルスというかびによる場合があります。一番ありふれているのは、帯状発疹で、中年以上の方に多いのですが、若い方にもみられます。それから、はしかや水痘は子供の病気だと思われるでしょうが、20才代の女性で水痘になってサルコイドーシスが出来たという方がおられます。サ症にはしかが合併するという事もありますし、水痘やはしかが肺に及ぶと重症になりますので気をつけなければなりません。

 呼吸器の病気では喘息が多いです。原病ではリウマチの合併症が案外多いです。

 糖尿病は一番ありふれた病気ですから合併症としても多い病気です。肝炎や胆石もあります。サ症の方のお腹を超音波で調べると20〜30%の方に胆石があります。ただし自覚症状はない場合がほとんどです。肝炎が進んで肝硬変となった方もおられます。腎臓結石や尿管結石の方もおられます。

 次に甲状腺ですが、甲状腺機能がたかぶって、喉の甲状腺が腫れる場合があります。逆に甲状腺機能が低下して、むくみが出たりする場合もあります。ただ、問題なのは甲状腺サルコイドーシスという場合もあるのです。最近は北陸地方で見つかっています。

 循環器の病気の場合は、心臓弁膜症を伴う方もおられます。それから心筋梗塞や狭心症の方もおられます。ただ問題なのは心電図に異常がある場合に、それが成人病としての心筋梗塞や狭心症なのかサ症によるものかを見分けることです。サ症による場合でも心筋梗塞のような心電図を呈する場合がありますので気をつけなければならないのです。

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