4.検査所見
(1)胸部X線・CT所見
 サルコイドーシスの胸部X線所見は、
1期:BHLのみ
2期:BHL+肺野病変
3期:肺野病変のみ
に病期分類されている。
 3期を肺野病変期、肺線維症期に2分して1期〜4期とする考え方もある。(図4)
 しかし、胸部X線所見上の分類は便宜的なもので、1期でもCT検査では肺野病変の見出されることがあり、また外科的肺生検では、 ほとんどのサルコイドーシス症例が肺野病変を有することが示されている。
 CT検査では、X線単純写真では認められないリンパ節腫脹も検出される。またX線単純写真 に比し、高頻度で肺野病変が見出される。

(2)肺機能・血液ガス検査所見
 3期の後展期症例では、混合性障害、拡散機能障害、低酸素血症が認められるが、 1期、2期では異常所見を認めることは少ない。

(3)ツベルクリン反応
 陰性例が多い。陽性であっても強陽性を示すことはまれである。
(4)臨床検査所見(活動期)
 血清ACE(angiotensin-converting enzyme):70〜80%の症例で血清ACE高値が認められる。 特に、肺野病変例では80%以上の頻度で高値所見が認められる。遺伝子多型と活性のレベルには関連があるので、活動期の 評価には値の変化をみることが必要である。
 BALF細胞所見:@細胞数の増加、Aリンパ球%の増加、Bリンパ球CD4+/CD8+比の増加所見が認められる。
 血清イオン化カルシウム、活性化ビタミンD、尿中カルシウム:本邦症例でも40%近い症例で高値所見が認められる。 活動性の指標として有用である。
5.診断
 (1)臨床診断
 サルコイドーシスの病名は病理組織学的所見に基づくものであるので、基本的には病理組織所見、生検所見が 必要である。しかし、多くの症例では以下のような所見から臨床的には診断可能である。
 @胸部X線・CT所見:BHLは、本症を疑う大きな根拠となる。加えて、眼病変、皮膚病変が認められれば、 まず本症と確定できる。多彩な肺野病変が認められるが、病変の様相に比較して呼吸器症状に乏しいことは本症を疑う 根拠となる。
 Aツベルクリン反応陰性
 B血清ACE高値
 CBALF細胞所見
 A、B、Cの所見は本症を疑う大きな根拠となる。ただし、サルコイドーシス以外の疾患でも認められる ことがあるので注意が必要である。
 (2)病理組織診断(確定診断)
 生検部位の選定順序:簡便、安全、確実の3条件からみた生検部位の選定は以下のようである。
 @皮膚病変、表在リンパ節腫脹があれば、まず第一に行う。陽性率も高い。
 A経気管支肺生検では、胸部X線所見上肺野に病変が認められなくても、50%以上の症例で陽性所見が 得られている。
 B前斜角筋リンパ節生検では70〜80%に陽性所見が得られる。
 C縦隔鏡下リンパ節生検では100%近い陽性率が得られる。
 D外科的肺生検は、上述のステップでの診断ができず、かつ他のびまん性肺疾患との鑑別が必要な場合に 限って行われるべきである。
 生検による非乾酪性類上皮細胞肉芽腫病変の確認はサルコイドーシスと診断する大きな根拠となるが、 非乾酪性類上皮細胞肉芽腫病変の認められるのはサルコイドーシスだけではない。結核症、真菌症においても同様の 病変が認められることがあるので、生検材料については培養検査を含めた細菌学的検査が必要である。
 (3)鑑別診断の対象となる疾患と鑑別点
 @BHLを示す疾患
 肺門リンパ節結核:BHLは片側性である。ツベルクリン反応は例外なく強陽性を示す。しかし、肺門 リンパ節結核は、現在では極めて稀である。
 リンパ腫:発熱、全身倦怠感などの症状がみられることが多い。
 A肺野陰影を示す疾患
 過敏性肺炎:呼吸困難・発熱などの症状がある。BHLは認められない。血清ACE高値の認められる ことはない。我が国に多い過敏性肺炎である夏型過敏性肺炎では、BALFのリンパ球増多はあるが、CD4+/CD8+ は低値である。
 慢性ベリリウム(Be)症:Beへの暴露歴、病理組織材料からのBeの確認以外には、基本的にはサルコイドーシス と鑑別困難である。
 特発性肺線維症:CT所見、運動負荷による血中酸素分圧の低下から鑑別可能なことが多い。

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