オーディオ日記 第57章 道の向こうへ(その12)2024年 4月25日


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Target Curveの研究:

このところずっと続けてきた遮断特性に関わるチャレンジであるが、前回 記載 したようにある程度の成果は上がったようにも思う。これをベースに更に精進すれば、もうちょっとだけでも前進できるのではないだろうか、とつらつら考えてきた。だが、オーディオは音をフィーリング(だけ)で判断していては誤った方向に行ってしまう危険性も無いとは云えない。自分の感覚、感性を本来信用すべきなのだろうけれど、絶対の自信などは全く持てていない、、、

で、ひとつ考えてみたのは現状の遮断特性をベースにしたリスニングポイントに於ける周波数レスポンスのブラッシュアップである。音のクオリティそのものは周波数のバランスという観点とは異なる次元にあるとは思うのだが、重要な要素のひとつであることは間違いない。だが、どのようなバランスとなっていれば良いのか。古来多くのオーディオファイルが 議論 、研究してきた観点だと思うが、これが正解というものは(多分)未だに無い。20Hz~20KHzが平坦、フラットであれば良い、という意見もあるとは思うが、経験上これには同意できないし、実際そのフラットネスを実現できている装置など殆ど無いだろう。

研究されてきたことを紐解けば、それなりのヒントもあろうし、何らかの知見も得られるというもの。改めて、ここで云うところの周波数レスポンスに関わる情報を少々漁ってみた。デジタルイコライザー等は今や当たり前のものだが、その設定において「Target Curve」と呼ばれるものは半ば常識となっていると思う。

このTarget Curveについてはかなり昔の有名な研究( B&K House Curve )もあるのだが、一般論的にはなだらかな「右肩下がり(Tilt Down)」として知られているもの。もちろん、これとてどの程度の右肩下がりにするのが良いのか、単純な正解はない。ここには再生される環境における絶対音量が絡んでくる。所謂フレッチャーマンソン曲線と云われるように、人間の耳の感度は音量と周波数の関係において、「同じ音量」と感じるレベルはかなり異なるのだ。従って、測定によって捉えた「フラットネス」というものはあくまでも機械のレベルによるものとなる。

フレッチャーマンソン曲線:耳の感度は個人差(年齢を含む)も大きいので一義的に同じとは云えない
Target Curve 一般論として3KHz~4KHzの感度が大きく、低域は高域より感度が落ちる

従って、普段自分が聴いている音量レベルを基準することがスタートラインとなるかもしれない。まずは自分が聴く音量にて現状を測定して、その上でこのTarget Curveを設定していく、という感じだろうか。デジタルイコライザーにおいてはこのTarget Curveを設定すれば、それに沿って自動的にイコライジングしてくれるという便利なものも今では多い。

Target Curveの代表例(左)、イコライザにてこれを目標とする設定の例(右):
Target Curve Target Curve

当方もかっては「 三ツ山特性の追求 」だったりとデジタルイコライザをあれこれ弄ってきた経験があるけれど、完全に成功レベルに達したということはない(音の劣化が気になる点などを含めて)。そのため、今回はデジチャンだけのレベル設定を工夫することによって少しでも理想的なTarget Curveに近いことができぬものか、という実験になる。その前提としては、まず自分流のTarget Curveはどのようなものか、目標を設定することから始めなければならない。

ここもいろいろな例を見習って一般論的にはなるのだが、1KHzを中間点として基準の±0dBとすれば、100Hz辺りで+3.0dBから+4.0dB、10KHz辺りで-3dB、20KHzで-5dBから-6dBくらいだろうか。デジタルイコライザの優秀な機器であればおそらくその目標に沿って自動的に測定、補正してくれるものと思うが、このような微妙なレベルの測定、設定が自分の環境で手動でできるのかどうか、やってみなければ判らない。また、音楽の再生では音源によって含まれる周波数成分が大きく異なり、音楽の種類やマスタリングによっても違うのでその点を意識しておく必要があるだろう。

さて、今回実践した内容であるが、周波数レスポンスのスケール(目盛)をなるべく小さく(1dB程度)して測定、調整することと測定におけるスムージングを3dBとして細かい山谷を気にせず大きな「傾き(Tilt)」に注目する、というもの。当然ながら、1dB目盛では山谷が大きく出てしまうが、ここを根気良く、全体として望むような「右肩下がり」になるように調整してみた。目盛を小さくすることによって、微妙(0.5cm)なレベルでのタイムアライメントの設定による変化が一層判りやすくなる、という副次的なメリットもあった。これは全体としてのインパルスレスポンスの波形を綺麗な状態からくずさない、ということにも繋がるようだ。

試行錯誤して、もうこれ以上は無理かな~、というところで、測定スケールを5dBに戻してみたが、こうすると微妙な右肩下がりはあまり明確には判らなくなってしまう。だが、何となくリスニングポイントにおける良さげな周波数レスポンスになったようにも思えてくる。

1dBスケールで右肩下がりに調整(左)したものを5dBスケール(右)で見てみる:(測定スケールの変更のみで同じもの)
Target Curve Target Curve

一旦ここまでやってみて、あとは試聴によってさらに微妙なレベル調整ということになろうか。だが、この状態でも何となく「一皮剥けた」ようにも聴こえてしまうのは、やはり自己満足なんだろうか。

仮にであるが、この状態をベースに、更にデジタルイコライザにて細部の山谷を潰せたならば、もっと良い成果が期待できるかも? と欲も出てくる。そこまでやる必要があるのかと自問もしてしまうし、過去の二の舞になりそうな気もするけれど、Eversolo DMP-A6がファームウェアアップによってイコライザ機能が 実装された こともあるので、これを使って微調整を加えたデジタル出力をデジチャンに入れたならば、、、という、その誘惑を断ち切れない。


                 Blisma M74B用4way構成の設定値(2024年4月16日)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- SONY
SUP-L11
(Experimental)
BeW-16
Bliesma
M74B
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 97.0 (+7.0) 92.0 (+2.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.0 +1.2 +0.7 +3.7
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -2.0 -3.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.0 86.7 82.7 83.7
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz
315
315

800
800

2800
6300

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-12 12-12 12-6 6-flat
DF-65 DELAY
設定
cm -19.0 +22.0 +20.0 +19.5 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Rev Norm Norm  
DF-65 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-65デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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