オーディオ日記 第53章 超えてきた壁越えられぬ壁(その15)2022年4月21日


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追い求めてきたもの:

世の中的にはいろいろな諸問題、課題が一層深刻となり正気を失ったような指導者によって引き起こされる争い、悲劇も続く。歴史から学んだはずなのにまた同じ過ちを繰り返す。人は根源的なところで一体何を欲しているのだろうか。未だに人間の意識や欲求に基づく行動原理が自分には理解できていない、と感じてしまう。

今年の誕生日で古希を迎える、、、自分では若かりし頃と比較して少なくとも精神構造、精神年齢は大して変化していない(老化していない、とも云いたい)と思うのだが、おそらくそれは自分の強がりでしかないだろう。普段それほどには意識せずとも体力、気力は確実に年齢相応になっていかざるを得ないものだし、全ての生き物、命に与えられた等しくそして抗うことの出来ない終末に徐々に向かうことになる。

年齢を重ね、それなりの常識(あるいは固定観念?)を身に付けた現在ではその流れは自然なことで敢えて逆らおうと思うこともない。だが、オーディオに係わることで云えば聴力の衰えは若干ながら(あるいは既にかなり?)あるだろうと推測されるけれど、その影響を冷静に分析することは自分ではできていない。いくら個人差や経験の蓄積があると強がってみても高域が聴こえ難くなるという法則は冷徹に存在する。

今までオーディオに求めてきたもの、そして今これから求めていくことが同じままで良いのか、、、オーディオ趣味と自認し多少なりとも散財してきた。もちろん世の中には当方の数倍、数十倍、更にはそれ以上に費用と時間を注ぎ込んでいるオーディオファイルも多くいると思うけれど誰にでも等しく年齢というものは加算される。自分ではとても大事にしてきた機器であっても残された家族にとっては粗大ゴミとしか云い様のないものに結果としてなっていく。(家内からは趣味には好きに散財して良いが、無駄に機器は増やさないで欲しいとの厳命も。だから云ってMagico M9は買えない)

音楽を聴くこと、趣味としてのオーディオ弄り、、、そのバランスをもしかしたら少しづつでも変えていかなければならないのかも、とつらつら考えている。一般論的な車の両輪説のように音楽とオーディオは切り離すことは出来ないと思うのだが、やはり向き合い方は変えるべきなんだろうと思う。これまでやってきたこと、積み重ねてきたことを集大成し、心安らかに音楽に浸れるようになればそれで最早後悔は無い、と云えるのだが。

世にはオーディオ的快感を与えてくれる素晴らしい曲がある。オーディオ趣味としてはそのような音源を追い求め、その希少な音源を自分のシステムで納得の再生ができるように心を砕いてきた。曰く解像度であり、高S/Nであり、重低音であり、透き通る高音であり、美音、そして爆音である。それらが片鱗でも実現できた時にオーラのように音楽が部屋を満たす。その時に皮膚は鳥肌、産毛(もう無いが)は逆立ち、涙まで滲む。つまり、オーディオとはそのようなものでもあるし、それを多分求めてきた。

それらは元々がオーディオ的な(あるいはオーディオファイルをターゲットとした)音源とも考えられなくはない。だが、逆に余りにも加工され過ぎていると心のどこかで思わずにはいられない部分もある。それは自然な音とはどこか掛け離れている。もっと普通の音色と響きで良いはずなのに、、、楽器の音を単独に収録し、それぞれをぎりぎりとコンピュータ加工し、そして重ね合わせる。結果として素晴らしいオーディオ的快感音源が生まれる。(時にはあざとさに陥ってしまっているとも感じるのだが、、、)

けれど音の煌きや揺らぎ、そして響きを素直に取り込んだ音源はそこそこの自然さを保ったまま音がぴんぴんと立って活き活きしている。そういう珠玉の音楽に囲まれていたい。こういう音楽に溢れていたら、もっとずっとシンプルな装置で良いのではないだろうか、という思いもある。だがオーケストラの音の伽藍を再現させるためにはどうしてもそれなりの仕掛けは必須になるし、現状でも尚納得のレベルには至っていない。この矛盾を抱えたまま時は過ぎていく。

全てを完璧に再生してくれるはずのオーディオシステムは夢の彼方にあって、実現の見込みは立たない。もちろんどのようにアプローチすればそこに至れるのか未だ道筋すら判っていないのだ、、、

高額な機器が「音が良いはず」という幻想も今は無い。もちろん相応の効果、改善はあるものと思うのだが。微妙な積み重ねを吟味しつつ、本当に良いもの(機器だったり、設定だったり)を取捨選択していくということが重要なんだと思う。何かを変えれば必ず音は変化するのだが、それが自分によって本当により良いものになったのか冷静に判断せねばならないし、時には後戻りとなることもある。

簡素かつシンプル(でローコスト)なオーディオシステムの音がイマイチとは全く思わないし複雑怪奇で巨大なシステムの音が良いとばかりは云えない。結局普段良く聴く音楽の種類、内容と再生システムのマッチングなのかな~とも考えてみたりする。クラッシック系の小編成の音楽を楽しむのであれば、もしかしたら現状のような4wayマルチアンプシステムなどよりも、シングルコーンあるいは小型2wayスピーカーなどの方が鮮度感が優れていることもあるし、余り音のそのものに拘らずにリラックスして聴けたりもする。

実際、インターネットラジオのYourClassical、RelaxチャネルやLullabiesチャネルをBGM的に良く聴くのであるが、これらはいずれも圧縮音源(AAC256くらい?)であり、スピーカーユニットの数を絞って2way~3wayくらいの構成で聴いてもあまり違和感がない。むしろすっきりとした感じや心地良さ的な雰囲気も出て、これはこれで良いんじゃないかと。結局ここで流されている音楽の傾向、質によるんだろうなとも思う。ダイナミックレンジも抑え目で大仰な曲は少なく小編成のものが中心で、選曲の良さというか、好みにマッチしているというか、ある種自分にとってインティメートと感じる曲が多い。

しかしこれはまた自虐的に云うなら聴力の衰えた老人が惚けて聴く音楽としては最上、とも思えてしまうのだ。そして(多分)シンプルな装置でも充分楽しめる、、、これをもってオーディオに対する退化、あるいは諦観と呼ぶべきなのだろうか。

自分は一体何を追い求めてきたのか、そしてこれから尚、更に何を追い求めるのか。年齢に鑑み相応に考えても見るけれど、答えは出せずにいる。だが、この種の珠玉の音楽を聴くためにも、最善のシステム構成になっているのか、という自問もしなければならない。当然ながら今のレベルでやり尽くしたなどとは自分としても世の先達オーディオファイルから見ても笑止であろう。

だが、希望的観測を含め金額を考慮して機器を購入するようなことは最早無いと思う。自分にとっての良否は対価では決まらない。そこまでは何となく判ってきた。今まで自分の中でオーディオの常識と思ってきたこと、考えてきたこと(囚われてきた事とも云えるかも)、これを打ち破ること。それがこの先には必要なことなんじゃないだろうか。高いものは良い音がするはず、あるいは特殊(かつオカルトで高額)なアクセサリーによる改善効果、など思い込み自体は全否定はしないけれど、、、これは既に老齢による猜疑心の現れなのか? でも最後は自分自身の感性で判断すれば良いこと。

ラズパイに取り組んだことや、ストリーミングおよびストリーミングの再生環境に絡んでそれ以前の自分の価値観とは大分変わってきたことは認識している。それはテクノロジーの進化がもたらしてくれているある種の革命であり、コスト構造の大幅な変化でもある。そしてそれは音源(=音楽)に対する向き合いにも絡んでくる。

もちろん最高を求めようとすればアナログという手もある。かっては2,000枚にも満たないアナログディスクを大事に聴いてきた。それは今でも人類のレガシー(遺産)だと思う。が、アナログを極めようと思えば半端ではないコストと共にさらに道程は遠くもなるかもしれない。一方で、今では無尽蔵とも思えるほどの音楽に多大な負担もなく接することができる。それは良くも悪くも(趣味という道には逆行するのかもしれないが)進歩であることは間違いない。この変化を後ろ向きにならず取り入れることで、おそらくそこで見えてくるものがあるはず。それによって老化、退化する己を少しでも食い止められるかもしれない、というささやかな希望も顔を覗かせる。

まさに禅問答のように答えのあるや無しやに迷いつつ、斯様な世迷言をつらつらと思う日々であるが、ひとつ云えることは結局自分はオーディオに関しても(そして精神年齢も)大した成長はしていないんだな~ということ。それはちょっと心が痛むのだがどうにも確かなことのように思えてしまうのだ。


                 4way MW16TX構成の設定値(2022年3月10日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
SB Acoustics
MW16TX
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
能率
能率(90dB基準相対差)
dB 97.0 (+7.0) 87.5 (-2.5) 110.0 (+20.0) 93.0 (+3.0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.0 +1.0 -9.0 +4.0
マスターボリューム
アッテネーション
dB -9.0 -2.0 -3.0 -0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0 0 -12.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.0 86.5 86.0 85.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz

140
140

560
560

3150
4000

High Pass

Low Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-18 48-48 48-24 24-flat
DF-55 DELAY
設定
cm -8.0 +19.5 -37.0 +25.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm  
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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