オーディオ日記 第40章 はじめに音楽ありき(その14)2017年7月17日


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デジチャンを 導入 してから、かれこれ5年近い月日が流れた。マルチアンプシステムの構成要素としてチャネルデバイダーは不可欠の機器であり、この機能のデジタル化による恩恵は計り知れないものがあると実感してきた。一方で、アナログからデジタルに移行したことによって、オーディオにおける基本かつ核心の部分である「音量調節」において、長きに亘り我慢を強いられたこともまた事実である。導入当初よりデジチャンは「デジタル入力で使うべき」という脅迫観念(?)にも似たあるべき論に拘った故の葛藤である。

一般論的にデジタル音源の再生においてはDACからのアナログ出力をデジチャンに入れ、そこでA/D変換、デジタル演算処理、D/A変換が行われてパワーアンプに送り出されるために、余分なA/D変換、D/A変換が加わってしまうことになるのだ。どんなに優秀なDACでD/A変換しようとも後段でこれらの処理がデジチャンによって追加的に行われることに変わりは無い。

ならばアナログチャネルデバイダーで良いのではないか、とも思われるのだが、タイムアライメントを含む調整に係わる自由度・機能面で、そして何よりデジタル入力を選択した場合の音の面でのアドバンテージが大きいと感じられた。だが、問題となるのはデジタル入力を選択した場合の音量調節である。 デジチャンに0dBのデジタル信号入力を行えば、デジチャンでD/A変換された後のアナログ信号をチャネル数分(4wyaなら8ch)同時に音量調節を行わなければならなくなる。即ち「マルチチャネルマスターボリューム」というものが必須となるのだが、選択肢はほとんどないのだ。もちろん、送り出し側にて音量を絞ってしまうデジタル絞り方式もある。だが、DACはデジタル信号でフルスィングさせてあげてこそ真価を発揮する。

デジチャン導入当初は3way構成であったために6ch連動のアナログボリュームを持つプリアンプ(CX-260)を急ぎ 調達して 何とか事無きを得た。その後マルチアンプシステムの飛躍を目指して4wayへの移行を決断し、この6ch連動プリが使えなくなって、そこからまた混沌が始まってしまった。その後奇跡的にも4way構成において10ch連動のマスターボリューム(ローターリー式のL-PAD型アッテネータ)を 譲ってもらう ことができ現在に至っている。

だが、この10chマスターボリュームもパーフェクトかと云えば必ずしもそうではないのだ。ひとつにはロータリー式の故に音量調節のステップ数に限界があることから、1ノッチの音量差が比較的大きく微妙な音量調節をしたい時には若干のもどかしさがある。また、機械式であるためにリモコン等によって音量調節をリスニングポイントに座ったまま行うということが出来ない(この点は設置位置によっては手元で出来る可能性があると思うが、我が家では配置的に難しいのだ)

このため、電子ボリュームを使用したマルチチャネル対応のマスターボリュームを特注などで製作いただくことも視野に試聴などしてみたが、残念ながら合格点を付けられるものには出会えなかった。オーディオ的には、この音量調節器(ボリューム)というのは案外鬼門でもあり、そこで音質的な劣化が起こることから逃れられないという事実がある。音質に拘れば超高級なボリュームを使用するケース、単純なL-PAD型抵抗でパッシブプリ的に行うケースなどが考えられる。だが、4way用ともなると同時に8ch分の音量調節が必要となるので、拘れば拘るほど現実的にはハードルが高くなる。また市販製品はプロ用のSPL Volume8を除いてほぼないというのが現状なのだ。

希望的には、1dB刻みでの音量調節がリモコンによってリスニングポイントからできること、この点に尽きるのだが、、、

しかし夢は見続ければ叶う。同じような機能を希求する人もマルチアンプユーザーには多いようで、本当に画期的と思われる8chマスターボリューム(注記)の設計、製作をしてくれる方が現れ現在試用を開始するに至っている。
(注記)正確には「リレー式マルチチャネル対応アッテネータ」と呼ぶべきものかもしれない。

本体は左スピーカー脇に、表示系は従来のものの上に仮置き:
Multi Channel Attenuator

入力系のケーブルは誤接続防止のため4way分を色違いに:
Multi Channel Attenuator

見かけコンパクトでかつシンプルであるが、想像以上に多機能である。音量調節機構そのものは少数の抵抗の組み合わせによって行われるパッシブ型であるにも係わらず、その切替はリレーによって行われ、0.5dB刻みで-63.5dBから0dBまでの128ポイントに亘って音量調節することが可能という画期的なもの。また、全8chの音量は各チャンネルごとに設定可能で、例えば能率の高いドライバーユニットを使用している当該チャンネルのみ予め音量を下げておけばその音量差を保ったままボリュームのアップダウンを行う、という芸当もできる。パワーオン時に一定の音量となるように予めプリセットしておくこともできるし、もちろんミュートもリモコンボタンのワンプッシュで可能だし、リモコンも学習機能付きなので、好みに合うようなしっかりとした重量級(?)のリモコンを選択することもできる。基本機能部分は2チャンネル毎の基板に集約(8chなら基板4枚を使用)されており、入力・出力はバランス接続であるにも係わらず内部には電源供給とコントロール以外の余分な配線など一切なく本体は極めてコンパクト。それにリモコン受光器を兼ねたメインコントローラとデジタル音量表示器(明るさの調整も可)の組み合わせとなる。

構成概要図:
System Configuration

さて、テストに際しての基本的な設定であるが、4wayのうち、Mid Highに使用しているドライバーとウーファーの能率が高いのでこのチャネルについて-12dBと-6dBの設定としてまずは使ってみることとした。当方はデジチャンの使用において、一切のデジタル絞りを排除することを主眼としていたために、スピーカーユニットの能率差はパワーアンプ側で吸収せざるを得なかった。このため、現状の10chマスターボリュームを使用する際にはパワーアンプでの「入力絞り」を使用している。だが、これからはマスターボリュームにて全ての音量調節を集約して行う方式にできる(例外としてパワーアンプのGAIN切替は使うが)。この新たな8chマスターボリュームは各チャネルのレベル設定が自由にできるためそれが可能となり、余分なところで減衰量の調整を行う必要が全くない。これは実に嬉しい機能である。

抵抗によるパッシブ音量調節なので抵抗素子のエージングが必要かなとも思うが、出てくる音は鮮度感高く全く違和感がない。リモコンによる音量操作もスムーズである。ただし、本体からはリレー切替に伴う音が発生する。それほど大きいものではないが気になる場合はこの本体に対して適切な防音処理を行なえば良いかもしれないな、と思う。

もうこれらの機能と現状の音だけで当方などは充分過ぎるのであるが、音量調節自体は抵抗の組み合わせによって行われるため、その抵抗自体によって音の差が生まれる。先日いつもお世話になっている達人宅にて設計・製作者を交えて、この抵抗による音の差を比較・検証する機会があり、自分の駄耳では抵抗による音の差などは聴き分けられないのではと心配しつつ参加してきた。存外にもそれと判る差があるものであった。最終的な抵抗の選定完了をもってファイナル版が製作される予定であるが、一刻も早くファイナル版が欲しい! と正に渇望している、、、

(注記)
現在このマルチチャネルアッテネータは こちら から入手可能となっている。


4way構成の設定備忘録(2017年7月17日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
DF-55の
出力設定
dB +1.5 0.0 +2.0 +2.0
Analog Att
OFF
マスターボリューム
アッテネーション
dB -6.0 0.0 -12.0 0.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB 0.0 0.0 -12.0 -6.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 92.5 90.0 88.0 89.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

180
180

1000
1000

4000
5000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-12 12-12 12-24 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm 23.0 55.5 0 54.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Rev Norm Norm VoyageMPD
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない


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