オーディオ日記 第33章 原点への回帰(その12) 2013年8月31日


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禁断のミッドバスと4Way幻想の果てに

PARC-L11の試聴機にてじっくりと確認作業を行ってきた。このユニットは単体(ツィータ無し)の状態で聴いてもボーカルなどは本当に素晴らしい音がする。暖かくて、実在感があって、そして音楽のプレゼンスが良い。このユニットをミッドバスに使用すれば、トータルな音がきっと良くなるはず、と単純に考えてもいた。

それは間違っていた。それほど単純ではない。だからオーディオは難しいと改めて思う。判っていたことだが、3Wayから4Wayにシステム構成が増大すれば、そのセッティングの難しさは級数的に増加する。既存の3Way構成に後付けで追加するのだから、設置場所の問題などもあり自由度も制限される。クロスオーバー周波数、位相、スロープ特性、出力レベル、タイムアライメント、そして何より重要なのが音色。これらが総合的に定まって始めて音楽として楽しめるかどうかの評価が可能となる。それまでは試行錯誤だ。計測の結果だけでは良い音は作れない。聴いて聴いて、繰り返して聴いて目指す方向に近づく僅かな細い道を辿っていかねばならない。

今まで3Wayであっても苦難、苦労の連続でその道は果てしもない、と思っていた。やっとこところ、ひとつの目指す方向が見え始めて落ち着いた状態になってきた、とも云える程度なのだ。ここで、ミッドバスを導入し、4Wayに行くのか、どうしてもそうするのか、そうしなければならないのか、PARC-L11を抱えたまま幾晩も呻吟した。呻吟し続けた。単に目先の費用だけではない。これを完成させるには、さらに膨大な時間と手間とその他の費用が掛かるであろうことは目に見えているのだ、、、(それが楽しみとなるか、苦行となるかは一重に出てくる音が喜びをもたらすものになってくれるかどうかにかかっている)

しかし少しづつではあるが、このミッドバスユニットがこちらを向き始めてくれたのかもしれない。心地良いポイントが見え始めてきた。当初暫定的にテストしていたAS-XR 150mmウーファ(BS403)の能率86dBとPARC-L11の能率(89dB)についてあまり意識せずに3dB+α程度に考えて最初のレベル設定をしていたのだが、これがアプローチの躓きでもあった。公称値はひとつの目安だと思うが、これを完全に信じてはいけないようだ。PARC-L11は音の浸透力、瞬発力が強く、これを単なる音圧としてだけ見てはいけない。AS-XRウーファーも反応は良いのだが、聴いた感じでは音量感が多少異なるのだ。このため、公称値の差に基づく設定とするとPARC-L11はボーカルの質感、表現力は高いのだが、曲によっては声の張りの強さ、膨満感も感じられた。これが、ユニットの周波数特性によるものなのか、クロスオーバー周波数の設定によるものなのか実は当初判らず、PARC Audioにもいろいろと質問させていただくなどお手間を取らせてしまった。レベル設定であっても、良く考えればこのようなことをしっかりと考慮して行かねばならないのだが、どちらかというと受け持たせる周波数の設定の方に気を取られていて、疎かになっていたようだ。PARC-L11は公称値よりもパワー感があるので、少し抑え目のレベルとした方がベターなようなのだ。もちろん計測はしてみたが、この辺りの微妙な差は正確には結果に現れてこない。もちろんこれは所有している計測機器の精度などに問題があるかもしれないが。

ミッドバスは受け持たせる帯域の設定も自由度がありすぎる故にこれも難しい。ウーファーとホーンであれば、ドライバーやホーンの性能から中域の下限は自ずから決まってくるし、ウーファーも使用できる上限は目安が付け易い。しかし、ミッドバスとなると、このような他律的な制約はあまり無く、全くの自由だ。これが、ホーンを使用するミッドバスドライバーならホーンそものもからの制約も出てくるのだがコーン型ユニットではそれが無い。結局ウーファー、ミッドバス、ドライバーの音色の美味しい帯域を探し出さねばならない、ということだ。上限や下限など制限があれば判りやすいが、個々のユニットの美味しいところを探り当てるのは4Way初心者の当方にとっては真に至難の業である。一般論的に云えば、ホーンドライバーはその質感の高さ、反応の観点からなるべく低いところまで使いたい。口径の大きいウーファーはあまり高いところを受け持たせると低音の軽さや質感に影響が出てくるので、ほどほどに抑えたい。このせめぎ合いで3Wayなら決めていけるが、ミッドバスは性能的には両者を充分カバーできてしまう。こうなると、何を基準にすれば良いのか、と却って迷う。極論すれば、自分の感性が基準だ、ということなのだが、そこまで自信過剰にはなりきれない。

結局、ボーカルの帯域を中心に考えて、PARC-L11が声の質感の良さをちゃんと発揮できるように受持ちの周波数を絞り込んでいった。この点はまだまだ奥が深く、とても何かを語れるという状況ではないのだが、何とか心地よく音楽を聴けるポイントまで辿り着いた。現状は315Hz~900Hzである。ウーファーとミッドバスのクロスをあまり低くすると、SUP-L11の個性が消えて行く。ミッドバスとSUP-T11のクロスを下げるとPARC-L11が醸し出すボーカルの豊穣感が後退する。上げすぎるとSUP-T11の持つ浸透力や音楽のプレゼンスが後退する。という感じなのだ。これはおそらく今後変わって行くであろうし、ベテランから見ればまだまだこの程度の格闘は序の口ということかもしれない。

ただ、面白いのは、PARC-L11の設定をそのままAS-XRウーファーに適用しても(もちろんレベルだけは合わせ直すが)、これでは好結果にはならないということだ。ユニットが変われば(当然といえば当然なのだが)美味しい受持ち帯域が変わってしまう訳だ。

しかし、BS403でテストを始めて数週間、PARC-L11を借用して一週間程度。この期間で何とか納得のレベルまで持って来れたとすればまずは良しとせねばならないであろう。

さて、ここまで来た。問題はこれからである!

現状を維持するのか、敢えて苦難の道を進むべきか。多分その最大のポイントは、何とか纏めてみたこの4Way構成が、現状と比較してしっかりとアドバンテージが実際にあるのかどうか、による。パワーアンプは4Way分あるにはあるが、大分年期を経てきているなど十全な構成ではない。また、8chのマスターボリュームが新たに必須になる。頭が痛いことが増えるのだ、今後の出費も含めて。それを越えて行こうという原動力になり得るのかどうか。

システム構成を組み直して、3Wayと4Wayがデジチャンのメモリ選定で一発で切り替えられるようにした。低域、中域、高域の出力レベルは現行3Wayと同じである。(この二つの構成は測定ではかなり似たような周波数レスポンスとなっているが、それでも微妙な山谷の差異は残る)

3Way構成:
LOW  630Hz,-18dB/Oct
MID  630HZ,-18dB/Oct : 8KHz,-12dB/OCT
HIGH  8KHz,12dB/Oct

4Way構成:
LOW  315Hz,-18dB/Oct
M-L  315Hz,-18dB/Oct : 900Hz,-18dB/Oct
MID  900HZ,-18dB/Oct : 8KHz,-12dB/OCT
HIGH  8KHz,12dB/Oct

3Way構成と4Way構成を切り替えての一聴した感じでは(当然かもしれないが)それほど大きな差は感じない。音色も同傾向にあると思う。さて、 音楽再生がより心地良いかどうか、数曲のレベルではなく、NASにあるいろいろなジャンルの楽曲を延々とランダム再生させながら検証していく。気になった曲があれば、即座に停止し、3way構成で聴き直す。印象の変わらない曲もある。だが、悪くなった、という印象の曲は無い。どたらかと云えば、安心して聴けるというのか、リラックス度が高い。また、音の充実感が備わるのか音楽そのものに没頭しやすい。面白いなと思った点は音量に対する印象である。4Wayの方が音量が小さめでも音楽の充実感が失われないのだ。これはミッドバスの受持ち帯域が音楽にとっては重要な帯域であり、この部分の反応、質感が上下の音との繋がり方にも関係しているようにも思える。この帯域のユニットの是非が結局大きく音楽自体の構成に影響してくるのであろうし、ユニット同士の連携の重要性という観点も見逃せない。これは結構アドバンテージかもしれない。3Wayでは音量を下げると何故か満足感が減少してしまうようにも感じられる点もある。

単に4Way化したということだけでは、このような結果は得られないと思う。翻って、SUP-L11、SUP-T11の系譜につながるユニットPARC-L11に出会えたことは何とも幸運なことであったのではないだろうか。かってSUP-L11、SUP-T11にめぐり合えたことは我がオーディオ人生の中で大きな至福だったと思っているが、今回もきっかけはBS403を導入し、それで遊び始めたことを起点としてあれよあれよという展開となってきたものだ。

さりながら、思う。ミッドバス導入、4Way化についての是非。PARC-L11の音、ならびにそのポテンシャルは大変素晴らしいのだが、 これが絶対不可欠か、と自問すると明確には答えが出せない。相似していると云える所までもってこれたが大きく凌駕してはいない。当方の経験不足、システム全体のまとめの 力量の問題かと思うが、これがこの先に望む方向だろうか。このまま突っ走って良いのか今一歩のところで最終決断できない。このまま 進めばまたまた泥沼に嵌りそうな予感もあり、まずは現用の3Wayをもっと 熟成させて、その上で考えるべきではないか、との思いも残る。

やはり禁断であり、幻想なのだろうか、、、


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