皆様からのリクエストにおこたえする名作劇場。
ああ、あの作品、ああ、この作品。
埃まみれのバックナンバーから掘り当てました。
今回は久々に掲載者本人(佐藤吉臣)様からのリクエスト。
小説前後「鶴の恩返し」!
最優秀賞≪後≫
うれしかったのでしょう、「ゲロゲロゲロ」と三べん水を吐いて、それから草むらに入っていきま はたしてその夜のこと、表の戸をトントンたたく音があります。「そら来た」おじいさんは飛び 起きて戸口の方へかけ寄りました。「松田聖子ちゃんみたいかな、河合奈保子ちゃんみたいかな」 舌なめずりしながらガラッと戸を開けてみると、そこには、 ヌーーーーーッと、 コルゲンコーワのケロヨン人形が青い顔して立っていました。 |
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illusutration by Masakazu Sato |
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優秀賞≪後≫ 早く覗いて! 内藤哲夫(静岡県)19歳
とと相成りました。 「私が機を織っているところは絶対に覗かないで下さいね」と告げて娘は機を織り始めました。 太助もこれを守りましたし、その時は覗きたいという気も起こりませんでした。 娘は一週間に三反ずつ織り上げ、太助に町へ売りにやらせました。もちろんたいへんな高額で売 れました。 そしてそれから一年過ぎました。太助の家は今では村一番の大金持ちです。……しかし、金が人 の心を変えるというのはよくあることで、三週間過ぎても一反も織り上がらないのに腹を立てた太 助は、とうとう娘の部屋を覗いてしまいました。するとそこには……丸裸の鶴が一ぴき、毛糸のセ エターを編んでいました。 |
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準優秀賞、入選は省略 |
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佳作≪後≫ ツンツルテン 佐藤吉臣(岡山県) 「おじいさん、大変ですよ。反物の注文が殺到してますよ」 「そんな事言ったって、つうは逃げてしまったんだよ。あの布はつうでなければ織れないんだよ」 そう言ったあとで、おじいさんの頭に、とてもいいアイデアが浮かびました。 数日後、素晴らしい反物が織り上がりましたが、不思議なことに、老夫婦の頭のフサフサした 白髪がなくなり、二人ともツンツルテンになったということです。 |
この他にも佐藤氏の入選作品を見つけたのでスペシャルアップ。
サルカニ合戦 1980年1月号 入選≪前≫ 野獣一猿の陰謀---食い意地の怪---- 佐藤吉臣(岡山県) 桃太郎は、鬼の首を刃で切り落とした。すると、不思議な事に、鬼の首は、おにぎりに変わった。 桃太郎は「イヤハヤ、これが本当の鬼切りだ」と笑った。猿が「食いてえな」と言うと、桃太郎は 猿に渡……そうとした。ところが犬が横取りしようとして。あっ、犬の鼻がおにぎりに当たって、 海の中へ。犬は犬かきで、おにぎりを追いかける。猿、猿泳ぎで追う。おにぎりは海上を転がる。 雉が空からおにぎりを追う。あっ、猿が犬を雉に投げつけた。命中!雉が落下。犬も重傷。猿、な おもおにぎりを追う。おにぎりはなおも転がる。そしてついに海岸へ。あっ、カニがいる。おにぎ りを拾った。 猿、しかし、諦めきれない。「さあ、どうやって、おにぎりを手に入れようか。へへへへ。ここ が頭の使い所だぜ」猿は植木屋へ行き、柿の種を一粒買った。 |
花さかじいさん 1980年3月号 入選≪後≫ 幸福な男 佐藤吉臣(岡山県)21歳 「私は幸福だ。『こぶ取りじじい』で鬼にこぶを取ってもらい、美形になった私は、ばあさんと 結婚した。ばあさんは『舌切り雀』以来、心を入れかえて正直者になった。老年の為に子宝に恵ま れなかった私達も、『鶴の恩返し』や『竹取物語』では、短い間だが、自分の娘を持つことができ た。桃から生まれた『桃太郎』は今、鬼ヶ島に行っている。もうすぐ鬼から宝物を奪って帰るだろ う。そして今度は花を咲かせて殿様から褒美を貰った。私はいつも幸福だ。ただ一つの心残りは、 もし、あの時玉手箱を開けなかったら、もっと若い娘と結婚できただろう。私の青春は、あまりに 短すぎた」と、正直じいさん(本名は『浦島太郎』)は思いました。 |