市長意見書 (2006.4臨時議会)

この度、地方自治法の規定に基づき制定を求められました「梅田貨物駅が吹田操車場跡地へ移転されることの市民の意思を問う住民投票条例案」につきまして意見を申し述べます。

 住民投票は、間接民主主義を補強するものとして制度化されており、地方自治体の重要事項について市議会並びに行政と民意との間に意見の大きな乖離がある場合に、直接住民の意思を確認するために定められたものであり、地方分権時代に入り多様な住民ニーズを反映する上で改めて注目が高まってきていると理解しております。

 私は、市政運営に対して市民意見が正しく反映されることがもっとも重要であると考えており、本事案についても、住民の代表である市議会との十分な意見交換を重ねた結果、御理解を得ることができたと理解しております。

 また、住民の方々には、22年間に及ぶ様々な経過について、その都度「市報すいた」及び市のホームページにより説明責任を果たし、また可能な限り地域の方々の御意見も聞かせていただいてまいりました。

 吹田操車場跡地は、市南部に存在する貴重なまちづくりのための空間であり、昭和59年(1984年)2月に吹田操車場が操業を停止して以来、本市のまちづくりにおける最大の課題となっておりました。

 日本国有鉄道の分割・民営化が昭和62年(1987年)4月に行われることを契機に、梅田貨物駅機能を吹田操車場跡地に全面移転させる計画が明らかになったことから、この跡地での良好なまちづくりを推進するため、市議会においては、昭和61年(1986年)に「国鉄吹田操車場跡地利用協議会」が、また平静4年(1992年)には「吹田操車場等跡利用対策特別委員会」が設けられました。以来、市議会と市が一丸となり、移転計画の見直しを求め、運輸省(当時)はじめ関係関係機関への要望、要請活動を行ってまいりました。

 その結果、平成9年(1997年)6月に国鉄清算事業団(当時)から移転規模を半分に縮小した申入れがなされ、本市に約14.4ヘクタールのまちづくり用地が確保されることになりました。

 また、市議会におきましては、平成10年(1998年)3月に、移転には取扱貨物量の遵守、アクセス道路出入口付近の交通・環境対策の実施、また市総合計画に沿ったまちづくりの実現に資する対応などを求める「旧国鉄吹田操車場等の跡地利用に関する要望決議」が可決されております。

 このような経過を踏まえ、平成11年(1999年)1月に吹田貨物ターミナル駅建設に際して、大阪府をはじめ、摂津市、日本鉄道建設公団国鉄清算事業本部(現在の独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構国鉄清算事業本部)及び日本貨物鉄道株式会社の間で、「梅田貨物駅の吹田操車場跡地への移転計画に関する基本協定書」を締結し、取扱貨物量や貨物専用道路、環境対策、住民説明など、移転に際して事業者が遵守すべき事項や、本市のまちづくり計画の実現への協力やまちの南北分断の解消など、事業者が協力すべき事項を規定し、事業の着手に当たってはこれらを誠実に履行し、本市等の合意を得ることを定めました。

 解決すべき主要課題であった貨物駅建設に伴う環境対策は、本市環境影響評価条例にのっとり、事業者に対して70項目に及ぶ市長意見書を送付し万全の環境対策を求めました。これは、本市環境影響評価審査会からの60項目の科学的、専門的な答申意見に、市議会での議論や多くの市民意見を反映し、市長として総合的な環境対策の実施を強く求める意見10項目を付加したものです。これに対する事業者の見解を審査した同審査会は、事業計画に十分な環境配慮がなされていることを客観的に評価しました。

 足掛け7年に及ぶ手続きを経て最終的に提示された延べ143項目の環境対策が履行されることで、事業実施に伴う環境影響は可能な限り低減されることが担保されたと判断しました。

 これまで市議会と両輪で本事業に対応してきた経過と、事業者が遵守・協力すべき項目についての整理・解決が図られたこと、市議会の圧倒的多数がこの事業を推進することについて理解を示されていること、さらには、市議会が民意を適切に反映していることから総合的に判断して、本年2月10日、関係5者間で「吹田貨物ターミナル駅(仮称)建設事業の着手合意協定書」を締結したところであります。

 吹田操車場跡地は、JR東海道本線という国土軸に位置し、新大阪駅や大阪国際空港、関西国際空港など国内外への主要アクセスポイントまでの利便性が高いという立地特性を備えています。市では、この跡地に健康・教育のための新たな機能集積を図り、市の東部拠点として「近未来の夢のあるまちづくり」を進め、北大阪のみならず関西の活力を牽引してまいりたいと考えております。

 私は、この東部拠点のまちづくりを推進することが、将来市の大きな財産になると確信しており、35万市民のみならず将来の市民の御期待にこたえるためにも、市議会並びに市民各層のますますの御理解と御支援を賜り、しっかり手を組んで取り組んでまいりたいと考えております。

 以上のようなことから、本事業については、改めて直接住民の意思を問うための住民投票条例を制定する必要はないと考えるものです。