「活字」を、辞書(大辞林・三省堂)で調べると、
 (1)活版印刷や和文タイプに用いる字型
 (2)活字印刷した文字
 と出ています。

 活字離れだと嘆く声が聞かれます。辞書の説明に沿って言えば、活字離れは当然の事です。活版印刷、和文タイプは、既に文化遺産的存在です。敢えて言えば、「文字離れ」でしょうね。

 しかし、変ですね。情報伝達手段としての「文字」は絶対的な存在です。それに文字離れの現象など全く感じません。混んだ電車の中、これを読まなければ命に関わる……的な悲壮感に満ちた態度で、必死に新聞を読む人。文庫本を読む人。そして、週刊誌に漫画本。まるで神のお告げでも期待するが如き真剣な顔で携帯電話を見る人。総て媒体は、「文字」です。
 でも、何故、混んだ電車でなければならないのでしょう。周りの人の迷惑を顧みずに見る事にこそ、その人にとって価値があるのでしょうか。


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活字離れ…… 嘆く人達が言いたい事は、文芸作品や小説などを読む人が少なくなった。このような状態が続くと文化の衰退に繋がる、と心配しているのでしょう。その裏には、心の荒廃を愁う気持があるようです。

 確かに今の世の中、全く理解に苦しむ事件が多くなっています。憤る以前に、何故? どうして、こんな事を同じ人間が遣るの? と混乱してしまいます。その後おとずれる感覚は「悲しみ」です。
 
 静かに「本を読む時間」が失われているのでしょう。静かに、自分を省みる時間も……



                    (了)




        
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写真:MONTBLANC MEISTERSTUCK 149