ドワーフクエスト
第二章 アドバール城砦
「アドバールの人々」


●憩いの泡ジョッキ亭

フンディン: それでは夜もふけたことですし
フンディン: 憩いの泡ジョッキ亭へ行きましょう

スキールニル : もたもたするなあそこだぞ

フンディン: スキーニー

アル: はいはい

フンディン: こら、スキーニー!

スキールニル : なんだ?

フンディン: その剣ちゃんとしまいなさい!
フンディン: 逮捕されちゃうよ!

スキールニル : こんなでかい剣しまえるわけないだろ


*スキールニルはグレートソードを背負っている。

スキールニル : よく見ろ。大丈夫だ鞘に入ってる

フンディン: ああ、それなら構わないよ
フンディン: ええと、この建物がそうかな?

スキールニル : 看板に書いてあるじゃないか!

アル: そう書いてあるな

エル: 看板を信じればそうだね

スキールニル : カンバン疑うやつっているのか?


*フンディンは宿屋の扉をノックしている。

スキールニル : ノックはいらんぞふつう・・・

*フンディンは扉を開け、一行は”憩いの泡ジョッキ亭”へと入った。

フンディン: こんばんは

エル: どもー

ラミリ: やあいらっしゃい
ラミリ: あたしがここの主人、ラミリだよ

フンディン: お初にお目にかかります

スキールニル : 部屋あいてるかな?

アル: 早速だが食い物が欲しいな

ラミリ: ふむ、こんな時間に到着とはね…

スキールニル : まあいろいろあったんだよ・・・

フンディン: わたしはフェルバール城砦はムンディン・アイアンビアードの息子フンディンと申します

ラミリ: これはこれはご丁寧に!


*ラミリは感心しているのではなく、適当に合わせているだけのように見える。

スキールニル : えーい出会う人間全部にいちいち名乗るな!
スキールニル : 夜があける

フンディン: お手数をおかけしますが、今宵一晩の夜露をしのぐための部屋を一つお貸しいただければこれ幸いなのですがいかがでしょうか

ラミリ: そうね、空いてるよ
ラミリ: えーとね、小部屋と大部屋どちらにするんだい

スキールニル : 安いほう

アル: 寝るより食うのが先じゃないか!

フンディン: お値段はおいくらでしょうか?

ラミリ: 値段は変わらないけど、小部屋は4人には狭いかもね

フンディン: それでは大部屋をお願いします

ラミリ: 一晩3GP


スキールニル : 結構するな・・・

*この値段、NWNには金貨以下の貨幣が存在しないため、TRPG版とは金銭感覚が異なる。

フンディン: アルドリックさん、まずは荷物を部屋におかなければ
フンディン: 鎧を着込んだまま食事というわけにはいきませんよ

アル: 確かに

ラミリ: はいよ、誰か払っておくれ

フンディン: ではわたした払いましょう

スキールニル : こういうのって前払いなのか・・・?

ラミリ: じゃあね、2階の真ん中の部屋だよ

アル: 夜逃げされないように前払いでしょ

フンディン: えっ?
フンディン: スキーニーは夜逃げしようとしていたの?

ラミリ: 食事はそこの給仕に頼んでおくれ


*スキールニルはフンディンを小突いた。

スキールニル : なわけないだろ

フンディン: いた!

スキールニル : んじゃ部屋に行くぞ

フンディン: そうしましょう、皆さん

ラミリ: ま、ゆっくりしていくといい

フンディン: ご丁寧にありがとうございます

エル: お腹が空いたようなんだけど

アル: 荷物おいてメシメシ


*2階に上がる一行。

フンディン: 真中の部屋というと
フンディン: こちらですね

アル: よいしょっと


*部屋に入ると、それぞれに荷物を降ろす。

スキールニル : よいしょって・・・
スキールニル : お前いくつなんだよ・・・

アル: 50

フンディン: こちらが寝台なのでしょうか??
フンディン: ずいぶん大きいですね

エル: 4人部屋だからね

アル: 区切られてないんだな

エル: 火も灯ってる

スキールニル : メシ食いにいこう

アル: そうしよう!

エル: そうしよう!

フンディン: …

スキールニル : ひさびさに熱々の食い物が食えるなあ

フンディン: うーん、仕方ないなぁ


*荷物を降ろした一行は、1階に戻って適当な席につく。すぐに給仕を呼んで、料理と飲み物を注文する。

スキールニル : おーうまそうなパイだ

アル: う〜ん、マイルドでコクがあり

スキールニル : まず一杯
スキールニル: *げっぷ*

フンディン: こら!
フンディン: スキーニー!

スキールニル : なんだよ・・・・

フンディン: 皆でそろっていただきます、の前に食べちゃ駄目でしょ!
フンディン: いくらおなかがすいているからって

スキールニル : あほか・・・
スキールニル : お前のうちじゃないんだぞココは・・・

フンディン: ああ、エルドリックさんまで…

エル: *げっぷ*
エル: ウマイー

フンディン: 仕方ないですね…

アル: マイウー

スキールニル : 酒場の連中みんなで音頭とってメシ食うわけないだろうが・・・

フンディン: ともかく

エル: やっとひとごこちついた

スキールニル : そうだな

アル: だなだな〜

フンディン: では今日この夜に
フンディン: 我らがオール・ファザーの恩寵と深い慈悲によって

スキールニル : うまいパイだ
スキールニル : 袋につめてもらおう

フンディン: 今日の食事をいただけることを感謝します

スキールニル : 明日の弁当だな


*フンディンの祈りの言葉の間も、他のメンバーはがつがつと料理をつついている…

フンディン: いただきます!

アル: ちょいと情報収集でもするかな

スキールニル : さてたらふく食ったし

フンディン: えっ?

スキールニル : 自由行動だな

フンディン: (今食べ始めたばっかりなのに…
フンディン: 皆さん食べるのが早いですね!

エル: それじゃ僕もお酒をおごってくれる人がいないか探してみよう

スキールニル : (相変わらず食うのが遅いヤツだなあ)


*フンディン以外のメンバーはすでに食べ終わっており、席を離れる。宿には人間の客もおり、珍しい。

エル: 人間だね
エル: ほそっこいな

アル: へぇ〜

スキールニル : 人間がどうかしたのか?


*どうやら、護衛の仕事で来たらしい。住居の狭さと街まで響いてくる鍛冶の音に辟易しているようだ。

スキールニル : カンカンうるさいってなんのことだ?

アル: 鍛冶の音じゃないかな?

スキールニル : あー
スキールニル : あの音を子守唄に育つのにな俺たちは


*宿には他にも住民の客も来ており、アドバールについて聞くことが出来る。この宿のある地上の地区は外からの他種族の旅人も利用できる場所だが、アドバールの中枢は地下にある。しかし必要な買い物はこの地区でも出来るとのことで、店の場所などを聞くことができた。

エル: 腹いっぱいで眠くなった
エル: 上で寝てるよ


*エルは2階に上がっていった。

アル: じゃあ寝る前に唄うかな!

スキールニル : おお!
スキールニル : アレやってくれ・・・こないだの
スキールニル : なんだっけ
スキールニル : ブルードのサガ
スキールニル : あれやってくれよ

アル: ブルードね

スキールニル : ネヴァーウィンターって街で英雄になった男だ
スキールニル : 真の戦士だなあれこそ

フンディン: ああ、なんだか…
フンディン: 今日はいろいろなことがありすぎて
フンディン: 今ごろになって足がおかしくなってしまいました
フンディン: それではお先に失礼します


*フンディンも2階へ。後を追うようにアルも2階に上がっていった。

アル: じゃ今日は寝るよ
アル: またね

スキールニル : なんだもう寝ちゃうのか・・・
スキールニル : まあいいや腹筋して寝るかな


*スキールニルも2階へ。

フンディン: (ん? ベッドなんかあったっけ…
フンディン: ZZZ…


*2階に上がったフンディンは間違えて隣の部屋に寝てしまう。

スキールニル : 何でやつはいないんだ?

アル: さぁ?

スキールニル : まあいいか・・・

アル: う〜ん、眠い…


*そのまま一行は眠りに落ち、次の日…

アル: おはよう!

スキールニル : よし素振りするかな

アル: 熱心だな〜

スキールニル : モチロンだ
スキールニル : 修行のたびだしな

エル: グッモーニン


*その頃フンディンは隣の部屋で目が覚めた。

フンディン: あれっ?
フンディン: …夢だったのかな?
フンディン: どうしてベッドが二つもあるんだろう??

アル: フンディン荷物置きっぱなしで

フンディン: ぼー…


*フンディンはぼーっとしたまま、隣の部屋から出てきた。廊下には、一人のドワーフが立っており、今まさにフンディン達の取った部屋のドアをノックしようとしていた。

遊撃隊員: おや

フンディン: はっ!

遊撃隊員: フンディンどの?

フンディン: おはようございます

遊撃隊員: …
遊撃隊員: 思ったよりお若い方だ

フンディン: いかにも、わたしはフェルバール城砦はムンディン・アイアンビアードの息子フンディンと申します
フンディン: 失礼ですが御仁は…

遊撃隊員: 昨日はナクルどのはお世話になった
遊撃隊員: わたしはナクルどのの部下です

フンディン: ナクルどの…?
フンディン: ああ、!
フンディン: 昨日の戦士どのですね!

遊撃隊員: そうです

フンディン: ナクルどのはご無事なのでしょうか?
フンディン: こちらへたどり着いたときにはだいぶ手傷を負われていたようですが

遊撃隊員: ええ、今は神官の治療を受けて元気になられていますよ

フンディン: そうですか!
フンディン: それは良かった…!

遊撃隊員: それで、あなたたちをご案内するように頼まれてきました

フンディン: ご案内?

遊撃隊員: えーと、女将は大部屋と言っていましたが…他の方は?

フンディン: ??
フンディン: それが奇妙なのです
フンディン: 今朝目がさめたら
フンディン: アルドリックどのもエルドリックどのも
フンディン: それに我が従兄弟スキニーも
フンディン: こつぜんと姿を消してしまっておりまして…
フンディン: なんとも申し上げにくいのですが…

遊撃隊員: …
遊撃隊員: それはですね…
遊撃隊員: あなたが部屋を間違えたのでしょう…

フンディン: ??

遊撃隊員: あなたの部屋はこちらです

フンディン: ???

遊撃隊員: ここが大部屋
遊撃隊員: あなた方が取られたお部屋でしょう


*モグールは目の前の部屋を指差す。

フンディン: 失礼ですが御仁
フンディン: 仰っていることの意味がわかりかねます…
フンディン: わたしの部屋はこちらですよ
フンディン: 実際のところ、昨晩わたしはこの部屋で就寝したのですから

遊撃隊員: 女将からはこちらを取られたと聞いていますが

フンディン: ???

フンディン: それはきっと女将の勘違いなのでしょう


*廊下でそんな話をしていると、大部屋の扉が開きスキールニル達が出てきた。

フンディン: あれっ??

スキールニル : ???

フンディン: スキーニー!

スキールニル : お前何やってんだ

フンディン: どうしてこんなところにいるんだい!

エル: おはよう

フンディン: エルドリックさんも!

スキールニル : どうしてって朝起きて部屋を出ただけじゃないか

フンディン: ???

エル: 昨晩はどうしたんだい?

スキールニル : 理由なんかないぜ

フンディン: それでは昨晩はどこへ行かれていたのです??

エル: 女でも見つけてよろしくやってたのかい?

スキールニル : こっちの台詞だ

エル: 部屋に帰らなかったろう

スキールニル : ???
スキールニル : 話が見えない

フンディン: それがどうして別の部屋から???

スキールニル : 一体何の話なんだ!
スキールニル : 別の部屋って俺たちの部屋はココだろうが
スキールニル : 大体荷物ほったらかしでナニを

フンディン: はっ!
フンディン: そうでした!
フンディン: こちら
フンディン:  ナクルどのの旗下の方で
フンディン: ええと
フンディン: 失礼ですが御仁、お名前はなんと申されますか?

スキールニル : ナクルっていうとアレかあの戦士か

遊撃隊員: お初にお目にかかる。わたしはナクルどのの部下でモグールと申す者

フンディン: スキーニー、失礼だよ!

モグール: いや、いいのです

スキールニル : 何が失礼なんだ・・

フンディン: わたしはフェルバール城砦はムンディン・アイアンビアードの息子フンディンと申します
フンディン: 以後よろしくお願いします、モグールどの

モグール: ところでみなさんはアドバールは初めてと聞きました
モグール: それになにか用事があるという事
モグール: 案内するようにおおせつかりました

スキールニル : というか廊下で立ち話でいいのか?
スキールニル : 下に下りて話すなり部屋に入るなり

フンディン: ああ、それは失礼を!
フンディン: モグールどの
フンディン: 入られてください

モグール: いや、結構
モグール: 私はここで待っていますので

フンディン: そ、そうですか…

モグール: 出かける準備が出来たら知らせてください

スキールニル : 案内してくれるってのはありがたい
スキールニル : 俺たち右も左も分らないからね

フンディン: そうでした
フンディン: それではエルドリックさん
フンディン: 朝食を頂きましょう
フンディン: あれっ?
フンディン: アルドリックさんまで

スキールニル : 荷物をまとめておこうっと

アル: 荷物持っていこうとしたんだけど
アル: 重すぎて駄目だった

フンディン: それにどうしてわたしの荷物が
フンディン: 隣の部屋に置いてあるのですか??

スキールニル : ・・・・

アル: へっ?

フンディン: どうもわからないことだらけですね…

アル: 何言ってるんだ?

スキールニル : ・・・ほっとこう

フンディン: 何かもしかすると
フンディン: これは我々の探索を妨害しようという悪の勢力がすでに手をのばしてきているということかも知れません
フンディン: ゆめゆめ油断をしないようにいたしましょう

スキールニル : ・・・・あのなー

アル: そ…そうだな

スキールニル : お前が部屋間違えただけだってば

フンディン: ??
フンディン: それよりも
フンディン: これを見てください

スキールニル : どれ?

フンディン: これは父上の手記の中から
フンディン: ここアドバール城砦に関することがらをまとめたものです

アル: ふむふむ
アル: イランディルって人に会えそうだな

フンディン: ええ、そのお方が
フンディン: ガーリン師匠のお弟子さんにあたる方
フンディン: つまりわたしの兄弟子ということになります

アル: おぼえてるよ

フンディン: まずはイランディルどのにお話を伺おうと思っています

アル: そうだな
アル: それがいいと思う

アル: さて、俺は手紙を預けてこよう

フンディン: 手紙?

アル: ああ

フンディン: なんの手紙ですか??

アル: フェルバールにな

エル: 聞くだけ野暮ってもんだぜ
エル: なあ、兄者

フンディン: はっ!
フンディン: それは失礼をいたしました

アル: いや、別に聞かれて困るもんでもないよ

フンディン: お二人にはお二人のご用時があるのですね
フンディン: わたしが踏み込んで良いものではありませんでした…

アル: スキールニルの親父さんにだ

スキールニル : ん?

フンディン: ???
フンディン: スキーニーの父上??
フンディン: 叔父上に何か御用なのですか??

アル: 別に用じゃないよ

フンディン: ????

アル: 無事を知らせる手紙さ

フンディン: ああ!
フンディン: それは重要なことですね!


*話しながら部屋を出る一行。

モグール: みなさん、宿を取ったのは一晩だけでしたよね?荷物は持っていったほうがいいかと思いますが

フンディン: はい、持ってまいりました

スキールニル : どのみち荷物は手元に置かなきゃ
スキールニル : ダメだろう普通

アル: 俺も持ってきたよ

モグール: それでは、どうしましょう?

フンディン: イランディル・バングスティールどの
フンディン: という方はご存知でしょうか?

モグール: 鍛冶長の?

アル: そうそう

フンディン: ええ

モグール: …

フンディン: ?

モグール: お知り合いなのですか?

アル: 英雄は弟弟子なんだ

モグール: (この子たちは何者なのだろう…)
モグール: わかりました

アル: あっ、英雄ってのはこのフンディンのことだよ

フンディン: 実はわたくし、不肖の身ながらガーリン・ファイアフォージ師匠の弟子でありまして
フンディン: イランディル・バングスティールどのとは弟弟子にあたる身なのです

スキールニル : 英雄ねえ・・・(ふん)

モグール: …
モグール: …わかりました

フンディン: 今この探求に際して、イランディルどのの後助力をあおげればと思い
フンディン: はるばるフェルバールより訪ねて参った次第です

モグール: 鍛冶長は地下のほうにおいでだと思いますので、まずそちらに案内します

フンディン: よろしくおねがいいたします

スキールニル : (この人貧乏くじひいたな絶対)

モグール: それでは、参りましょう


*モグールを加えた一行は、どやどやと1階に下りる。

ラミリ: あ、ちょっとあんたたち

フンディン: なんでしょう?

アル: はいはい?

ラミリ: 昨日の夜、二部屋使っただろう?

フンディン: ???

エル: 使ってないよ

アル: (ドキッ)

フンディン: 二部屋というのは…
フンディン: 部屋を二つ使った
フンディン: ということでしょうか?

ラミリ: そうよ

フンディン: 申し訳ないのですが、覚えがないのです

ラミリ: わたしは一部屋分のお金しかもらってない

フンディン: たぶん他の客人の方ではありませんか?

ラミリ: …
ラミリ: ちょっと…
ラミリ: しらばっくれるつもり?

アル: (おいおい…張本人が)

フンディン: しかし本当に覚えが無いのです

エル: 僕らが立て替えますよ

アル: エル、お金ないんじゃなかったか?

エル: フンディンが払うんだよ

アル: ならかまわないけど

フンディン: しかし見に覚えのないことにまでいちいちお金を払っていては
フンディン: 旅費も足りなくなってしまいますよ

アル: 実際、俺はもう足りてないぞ

ラミリ: あんた、見てただろう
ラミリ: 起こしにいったんだから、部屋から出てくるところ


*宿の主人ラミリはモグールに問う。

モグール: …はい
モグール: 女将、たしかにフンディン殿は手前の部屋に
モグール: 他の方は真ん中の大部屋にいらっしゃった

スキールニル : ああいう証言が出てるんだし観念したらどうだ

モグール: だが、何か勘違いしている様子

フンディン: ああ、あれは違うのです、モグールどの
フンディン: 我々は部屋を一つお借りしたのですが
フンディン: 夜こちらで食事を済ませて
フンディン: 朝起きたら
フンディン: こちらのアルドリックさんとエルドリックさん
フンディン: それにわたしのいとこスキーニーが
フンディン: 姿を見せなかったのです
フンディン: それで不審に思っていたところ
フンディン: モグールどのがいらしたというわけです

モグール: …というように勘違いしておられるわけだ、女将

フンディン: ???

ラミリ: 仕方ない。ちょっとまってな


*ラミリからすれば、フンディンは宿代の払いをごねている面倒な客としか思えない。ラミリは机から宿帳を取ってきた。

ラミリ: いいかい

フンディン: はい

ラミリ: ちゃんと宿帳についてるんだよ
ラミリ: あんたたちは大部屋を借りた
ラミリ: 大部屋というのは真ん中の部屋で他にはない

フンディン: ええ、昨晩確かにそうでした

スキールニル : めんどくせえから払えよ

ラミリ: だがあんたは手前の小部屋に寝ていただろう?

フンディン: はい
フンディン: ということは、女将どのが間違えて書かれたということでしょうか??

アル: (まったく変なトコで頑固だからなぁ、英雄は…)


*スキールニルがフンディンを小突く。

フンディン: いたい

スキールニル : てめえが間違ったんだこの馬鹿!

フンディン: ???

スキールニル : お前が部屋を間違って小部屋使ったの

フンディン: どうしてスキーニーが怒るんだい?

スキールニル : わかる?

フンディン: うーん、さっぱりわからない…

スキールニル : (うう・・・殺意が)

アル: つまり「犯罪者になりたくなければ金払え」ってことだね、うん

ラミリ: 状況を見るに、あんたは部屋を勝手に使っておきならが知らないの一点張りで言い逃れしようとしてるようにしか見えないんだがねえ…

フンディン: が、ここで事をややこしくしても仕方がないですね…
フンディン: ではいくら払えばよろしいのですか、女将どの

ラミリ: 一部屋分、5でいいよ

フンディン: こちらで問題はないですね!


*フンディンはむすっとした様子で金をラミリに渡す。

エル: とても英雄の歌は作れそうにない

フンディン: ではモグールどの、参りましょう

モグール: …

スキールニル : ほらほらいこうぜ

アル: そうそう


*モグールはラミリに、これに免じて…とこっそり金貨を渡そうとする。しかしラミリは代金はもらったからいいとそれを受け取らなかった。モグールはナクルに、フンディン一行についてまかされているため、ラミリとの間を取り持とうとしたのだ。

スキールニル : (なんだありゃ)

フンディン: ????

スキールニル : (ま、いいか)

モグール: では、行きましょうか

エル: これが話に聞いた賄賂ってやつだね!

スキールニル : 話に聞いた・・・ねえ
スキールニル : そんなのどこでもやってるよ


*一行は宿を出た。

フンディン: どうもこの宿は得心が行きませんね

モグール: ……

フンディン: 明日は別の場所に泊まりましょう

スキールニル : あーあーそうだろうよ

アル: 別の場所があればね

スキールニル : ただでとまれるところがいいな
スキールニル : 部屋を間違えても問題なし


*モグールは一行を案内しながら進む。

モグール: まず

フンディン: はい

モグール: この城門を入ってすぐの地区が地上区です

フンディン: 我々がいまいる場所ですね

モグール: ここは外から来る友好的な相手のために作られた場所です

アル: 唄うならここがいいね

モグール: ですから、旅に必要なものもここで買えるでしょう

フンディン: わかりました!

モグール: ここはモラディン神殿
モグール: とはいえ、本物は地下にあります

スキールニル : さすがに立派だ
スキールニル : せっかくだからあとで拝もう

フンディン: ここは外来者向けの仮の寺院というわけですね

モグール: これはあくまで、我々の信仰を見せるためのもの
モグール: そういうためでもあります
モグール: 後ほど、気になるなら寄られるとよいでしょう

モグール: ここは訓練場になっています

アル: へぇぇ

モグール: アドバールの兵士はここで訓練していますが

スキールニル : いい道場だ

モグール: 敵に攻め込まれた時、ここで食い止める場所でもあります

フンディン: 成る程

アル: スキールニル向きだね

モグール: まあ、この地上区に敵が到達したことすら、歴史上ありませんがね

スキールニル : すごい・・・ハリツァール式のカタパルトまである

フンディン: そう聞き及んでおります

モグール: 後ほど見学なさるといいでしょう
モグール: 頼めば、訓練させてもらえるかもしれませんね

スキールニル : それはすごい

モグール: 反対側も訓練場になっています

モグール: ここから、地下です
モグール: 行きましょう


●工房

*地下は地上よりも暖かく、生活感もある。フンディンたちにとっては、地上よりも居心地がよい。

モグール: まずはイランディル殿のところですね

フンディン: よろしくお願いします

モグール: そのまえに一つ言っておきたいのですが
モグール: わたしの隊長、ナクルからの命令で
モグール: あとでナクルのところに案内しないといけません

スキールニル : それは何で?

フンディン: ナクルどのにも
フンディン: 是非お会いしたいと思っていたところです

モグール: 時間が決められていますので、時間的に
モグール: イランディル殿のところに寄ったらそのまま行きます

フンディン: こちらこそよろしくお願いいたします

スキールニル : 忙しい人なんだね

フンディン: かしこまりました
フンディン: スキーニー

スキールニル : ?

フンディン: 子供みたいに失礼な口を聞くのはよくないと思うよ
フンディン: あまり

スキールニル : ああそうかい
スキールニル : (奴にだけは言われたくなかった)

モグール: ここが工房の入り口です

フンディン: イランディル・バングスティールどのはこちらに?

モグール: そのはずです

フンディン: 失礼致します


*一行は工房に入る。工房はフェルバールに比べるとずいぶん広く、中は熱気に満ちており、袖の短いシャツの火焼けしたドワーフたちが忙しく働いている。モグールは近くの一人に声をかけた。

モグール: そこの方

ドワーフ: ん、なんだい

モグール: イランディル殿はどちらに

ドワーフ: …あー、うちらのボスね
ドワーフ: ボスは今出かけちまってて、2.3日もどらねえよ

フンディン: えっ?!

アル: あいたた

エル: あらら

フンディン: はっ
フンディン: し、失礼しました

ドワーフ: あまりじっとしてねえ人だから

フンディン: つい頓狂な声を

スキールニル : まあ出かけちゃったのなら仕方ない

ドワーフ: いや、きにするこたぁねえ

フンディン: そ、それでは御仁

ドワーフ: なんだい

フンディン: ぶしつけで恐縮ではありますが

ドワーフ: おうよ

フンディン: イランディル・バングスティールどのがどちらへ行かれたかについて
フンディン: 何かお心当たりはないでしょうか?

ドワーフ: あの人は、珍しい魔法の武器の噂とか聞きつけると
ドワーフ: さっさといっちまう
ドワーフ: いちいち聞いてたらきりがねえから
ドワーフ: いまはもう誰も聞かねえよ

アル: 追っ掛けるつもりかよ?

ドワーフ: せっかく来たんなら、見て行くかい、わかいの


*工夫は奥を指差す。フンディンは目を輝かせた。

フンディン: は、はい!
フンディン: ぜひおねがいします!

ドワーフ: こっちだ、ついてきな

スキールニル : 2-3日って言ってたけど
スキールニル : 実際はいつ戻るかわからないってわけか?

アル: 参ったね、宿代足りないよ

エル: 野宿すれば大丈夫さ、兄者

ドワーフ: まあ好きに見てってくれよ

フンディン: *はあー…*

スキールニル : うーむすごい鍛冶場だ

フンディン: *ぽー…*

ドワーフ: あ、おい、それに触るんじゃねえぞ
ドワーフ: いま大事なところなんだからな

フンディン: は、は、はい

ドワーフ: 仕事の邪魔はしない程度に見てくれや

ドワーフ: まあ、また後で来てもいいぜ

フンディン: *ぽー…}

スキールニル : それよりナクルに会いに行こうぜ

アル: そうだな、イランディルさんはいないんだし

スキールニル : イランディルをここで待っててもしかたねえ


*入り口にはモグールが腕を組みじっと待っていた。一行は工房から出る。が…

スキールニル : 鍛冶場も道場も立派
スキールニル : いい街だ

スキールニル : 気のせいじゃなかったら一人足りないが

アル: 気のせいじゃないね、絶対

スキールニル : 多分まだほうけてるのかな
スキールニル : 引きずってくるか・・・

エル: 困ったもんだね

フンディン: *はあー…*

スキールニル : アル

アル: はいはい、英雄さん。行きますよ〜

モグール: …

スキールニル : そっちもってくれ

フンディン: ん、ん?

アル: よしきた

スキールニル : 右は俺が持つ

フンディン: な、なんだい、スキーニー

スキールニル : じゃあ運ぶぞ

フンディン: いきなり

アル: せ〜の

フンディン: アルドリックさんまで

スキールニル : もたもたしてるから強制連行だ


*両脇を固められ、引きずられるフンディン。

フンディン: あっ
フンディン: もう時間なの?

スキールニル : ナクル待たせちゃ悪いだろ

アル: そういう事〜

フンディン: わかりました
フンディン: それでは行きましょう


*フンディンは何度も振り返りながら、工房を後にした。

●遊撃隊小隊長ナクル

スキールニル : 確かに見事な場所だ
スキールニル : いい鉱脈もあるらしい

モグール: では、行きましょう

フンディン: はい!

モグール: ここを西に行くと
モグール: 坑道区に入ります


*モグールは西を指差した。

モグール: 遊撃隊の本部はこちらです

*一行は別の通路を進む。

モグール: ここからが
モグール: われらが遊撃隊の詰め所です

フンディン: 失礼します

スキールニル : なるほど


*モグールは本部の中にある一室の扉の前で声をかけた。

モグール: ナクル小隊長
モグール: フンディンどのご一行、お連れしました


*それから扉を開けて、フンディン一行を促す。

モグール: 入られよ

フンディン: では失礼致します


*フンディンたちは部屋の中に入る。そこはナクルの部屋になっているようだ。ナクルは椅子をフンディンたちのほうに向けて、手を軽く上げる。

ナクル: おう

フンディン: おお、ナクルどの

ナクル: 来たか

スキールニル : こないだはどーも

フンディン: ご健勝のようでなによりです!

ナクル: うむ、呼び出してすまなかった
ナクル: 昨日はすまなかったな、満足に礼も出来なかった

フンディン: とんでもありません
フンディン: こうしてナクルどのがご無事で、このアドバール城砦にてお会いできただけでも
フンディン: 何よりの幸せであります

スキールニル : 互いに命を救いあった仲・・・気にすることはないさ

フンディン: お怪我の方はもうよろしいのですか?

ナクル: うむ、もう大丈夫だ

フンディン: よかった…

ナクル: それで、われらが鍛冶長には会えたのかね

フンディン: それは…
フンディン: イランディル・バングスティールどのはあいにくお留守でした…

ナクル: そうかい。気まぐれな方だからな
ナクル: さて、ゆっくり話をしたいところだが
ナクル: 昨日の件で軍議があるんだ

スキールニル : オークのことか

ナクル: ただ、礼だけは言っておかねばとおもってな

エル: 野生のクマの対策も練らねばなりませんね

アル: 思い出したくないなぁ

スキールニル : そういや熊もいたね

ナクル: 昨日は助けてもらって感謝しとる。ありがとう

フンディン: とんでもありません
フンディン: 当然のことをしたまでです
フンディン: そのようにかしこまって礼など頂いてしまっては逆に悪い機が
フンディン: 致します

ナクル: だがね、英雄の坊や
ナクル: 仲間の意見や人の意見には耳を傾けるものだ

フンディン: は…

アル: (思いっ切り肯く)

ナクル: 強い意志というのは我々にオール・ファザーが与えた長所だが
ナクル: 時にそれは死を招くし
ナクル: お前さんを愚か者にもする
ナクル: わかるかね?

スキールニル : なるほど

フンディン: それは…


*フンディンは何か言いかけるが、そこで止める。

フンディン: 肝に銘じておきます

アル: (わかんねえだろうなぁ…坊やには)

スキールニル : さすがに古強者がいうと説得力があるぜ

ナクル: わからんなら、いい。いつか気がつけばいい事だ

スキールニル : 死ぬ前に気づかないとナ

アル: (そうそう)

ナクル: つい説教を言っちまったが
ナクル: 昨日の礼を、渡しておこう
ナクル: 金だ。旅を続けるにも必要だろう。受け取ってくれ

フンディン: し、しかしわざわざそのような…

スキールニル : それはありがたい

エル: 話のわかるおっさんだ

ナクル: いいから、もらっておけ。金で感謝の気持ちを表したいのだ。

スキールニル : 贈り物を断るのは名誉を傷つけることになりかねないぞ

フンディン: …では

アル: 肉が食える、肉が食える、肉が食えるぞ〜♪

フンディン: ありがたく頂いておくことにいたします

スキールニル : 肉なんかいつも食ってるじゃないか

アル: 肉が食える、食えるぞ〜、肉が食えるぞ〜♪
アル: 保存食じゃない肉が食いたいんだよ〜

スキールニル : あーなるほど

エル: パイならあるぜ、兄者

ナクル: おっと、ちゃんと双子に渡したか?

アル: 貰いました〜

エル: ええ

ナクル: どっちがどっちだが区別つかんな

スキールニル : 慣れるとわかるよ

アル: 双子ですから〜

エル: 服で判断してくれ

スキールニル : 顔も地味に違う

ナクル: それじゃあ、俺は軍議に出ないといかん

アル: 髪の色もちょっと違うよ

フンディン: はい

ナクル: アドバールにはどれくらい滞在するのかね

アル: ご苦労様です!

フンディン: まだはっきり決めたわけではないのですが
フンディン: 数日ほど居ようと思っています
フンディン: イランディルどのにお話を伺いたいこともありますので

ナクル: 何か目的があってのようだが、それは今回の作戦が終わってから聞くとしよう

スキールニル : いつ帰ってくるかが問題だな

アル: 作戦?

スキールニル : オーク殲滅作戦か

アル: そりゃ無理でしょ

ナクル: まあ、事はそう単純でもないんだがね

スキールニル : 単純じゃない?

フンディン: ?

ナクル: 気になる事を言ってしまったか、すまんな
ナクル: 昨日もあまり詳しい話はできなかったが
ナクル: 今日もあまり時間はないんだ

スキールニル : ・・・わかった
スキールニル : それじゃあ行くか

アル: あら
アル: 失礼します

フンディン: ナクルどの

ナクル: ん

フンディン: ナクルどの

ナクル: なんだね

フンディン: いえ…
フンディン: 失礼しました

ナクル: そういえば、そこのスキールニルは納得がいかんような顔だが

スキールニル : ん?

フンディン: スキーニーは昔からこのような顔なのです

ナクル: 昨日もいろいろ聞いてきたから、気になっているのかと

スキールニル : 気になるさ
スキールニル : オークは憎むべき敵だ

ナクル: …昨日、実際に戦っておるしな…

スキールニル : フェルバールもオークに苦しめられたし

エル: 醜かったね

ナクル: もし俺の部屋で待っていたら、話をする時間もあるかもしれん

スキールニル : へえ

ナクル: おっと、もう時間がないな。それでは。


*ナクルは部屋を出て、向かいの部屋に入る。軍議を行う会議室らしい。遊撃隊本部から出る一行だが、フンディンは走って引き返す。

フンディン: ナクルどの!
フンディン: ひとつ

ナクル: ん、
ナクル: ここは立ち入り禁止だぞ

フンディン: お聞かせください
フンディン: わたしは
フンディン: わたしはナクルどのの仰るように
フンディン: 仲間の意見や人の意見に耳を傾けない愚か者であるように見えますか?


*仲間たちは本部入り口で待っている。

エル: なにしてんだろ

スキールニル : さあねえ

アル: さあねぇ?


スキールニル : あいつはわけがわからん

*中では、フンディンを追い出そうとする遊撃隊員をナクルが手で制した。

ナクル: さあ…少なくとも
ナクル: 頑固さが、そういう結果を招くような気がしただけだ

フンディン: 頑固さ…

ナクル: 絶対に自分を曲げない。貫き通す意思というものは
ナクル: 大切なものだが
ナクル: 反面、それが悪く働く事もあるということを
ナクル: 言いたかっただけだ

フンディン: ありがとうございます

フンディン: はっ


*フンディンは辺りを見回し場違いなところにいることに気がついた。

フンディン: し、失礼致しました!
フンディン: それではこれにて


*フンディンは退出した。外では仲間たちがフンディンの帰りを待っている。

スキールニル : しかしイランディルがいないとなると
スキールニル : あとは手がかりは何だっけな

アル: ダグダ・アムミルかな?
アル: それともマーダック?


*と、フンディンが戻ってきた。

アル: お帰り

フンディン: お待たせして…

アル: もう慣れたよ

フンディン: 父上の手記からアドバール城砦に関するものを読んでみたのですが
フンディン: 坑道長のダグダ・アムミルどのという方が
フンディン: 父上のお知り合いのようです
フンディン: ご挨拶に伺いたいと思っています

スキールニル : ナクルの話も気になるなあ

フンディン: アルドリックさんとエルドリックさんは
フンディン: 何かご予定はありましたか?

アル: ないない

エル: 兄者がなければないよ

フンディン: では一緒に参りましょう!
フンディン: それじゃ行こう、スキーニー

スキールニル : さて俺はどうしよう

アル: スキールニルは訓練場か?

スキールニル : じっとしてるのも性に合わないな
スキールニル : あとで落ち合うのに手間取りそうだからまとまって動くか

フンディン: それじゃ行こう
フンディン: でもスキーニー
フンディン: もう少し丁寧な言葉遣いをするようにしたほうがいいと思うよ
フンディン: まるで子供みたいだ

エル: ぷっ

スキールニル : 育ちが違うんだよ坊や

フンディン: わたしと一緒の時は良いけど
フンディン: ここはフェルバールではないんだからね

エル: 子供に子供って言われてら


●ドロウの噂

*一行はさきほどモグールに教えてもらった坑道方面へと歩いてきた。

フンディン: こちらが坑道ですね

ドワーフ : ん

フンディン: ごきげんよう

ドワーフ: なんだい、お前さんら
ドワーフ: ここは遊び場じゃないぞ

フンディン: わたしは
フンディン: フェルバール城砦はムンディン・アイアンビアードの息子フンディンと申します

ドワーフ: ふむふむ
ドワーフ: これはご丁寧に。

アル: お供のアルです

フンディン: こちらに父の友人
フンディン: ダグダ・アムミルという方を訪ねて参ったのですが

ドワーフ: ああ、おやっさんだな

フンディン: ご存知で?

ドワーフ: 残念だがね、今はちと忙しいんだよ

フンディン: そ、そうですか…

スキールニル : 今は?

ドワーフ: 坑道でちょっとした問題があって

スキールニル : 普段とは違うって意味だよな

アル: 問題?

フンディン: 問題??

アル: 手伝えることなら手伝うよ

ドワーフ: そうだなあ…ドロウが上手く解決してくれりゃあ、すぐなんだがね

フンディン: ドロウ???

アル: ドロウ!?

ドワーフ: おっと…

スキールニル : ドロウってあのドロウ?

アル: ドロウって…あのドロウ?

ドワーフ: うーん…

フンディン: ????

ドワーフ: まあ、ドロウってのはあのドロウエルフだが

アル: やっぱり…

ドワーフ: わしらの味方になってくれるやつもいるんだよ

フンディン: あっ!

アル: 嘘みたいな話だね

スキールニル : そんなやつがいるのか

フンディン: その方のことなら存じております

ドワーフ: ドロウの問題はドロウに解決してもらうのが楽だろう

フンディン: 確かドリップト…
フンディン: ドゥラーレン…
フンディン: いや、ちがうな

ドワーフ: 名前なんてどうでもいいよ。わしはドロウって呼んでる

フンディン: ドリジド・ドゥラーメン?

エル: ドリッズトだよ
エル: 有名じゃないか

スキールニル : どこかで歌を聞いたことがある

フンディン: ドロウの問題ということは

ドワーフ: 不気味な黒い豹を連れて歩いてる放浪者さ

フンディン: ??!
フンディン: それでは

ドワーフ: 残念だが…お前さんらひよっこでは役にはたたん問題だよ

フンディン: ダグダ・アムミルどのはそのドロウエルフに同行して
フンディン: 問題の解決にあたられているということなのでしょうか?

ドワーフ: まあ、そういうこった

フンディン: ふーむ…

スキールニル : どいつもこいつも留守ってわけか・・・
スキールニル : 次行こう

アル: あんまり首を突っ込まない方がいいみたいだね

ドワーフ: すまんね

スキールニル : いやいいよ
スキールニル : あんたのせいじゃないさ

エル: 見てみたいけど
エル: 名高いその剣技をさ

フンディン: それではまた後ほどうかがおうと思います

ドワーフ: ああ、覚えてたら、伝えておこう

フンディン: お騒がせ致しました
フンディン: それでは

ドワーフ: それではな

スキールニル : おやっさんによろしくね


*仕方なく、一行は坑道区を立ち去った。

フンディン: あのねえ、スキーニー

スキールニル : ああわかったから

フンディン: いつまでも子供じゃないんだから
フンディン: 初対面の人に「おやっさんによろしくな」はないと思うよ
フンディン: 本当に体ばかり大きくなって

スキールニル : ひよっこよばわりするようなじじい相手にはちょうどいいぜ
スキールニル : それに俺の育った場所じゃあんなのは丁重なほうだ

フンディン: またその話?
フンディン: スキーニー、ゴブリンとオーク
フンディン: どちらが上等だと思う?

スキールニル : どっちもくずだ

フンディン: そうでしょう?
フンディン: 仕方のないものを二つ比べても
フンディン: 何にもならないということだよ

エル: ゴブリンのほうがいいと思うよ
エル: ねえ、兄者

アル: 同感


*一行は地上に戻った。すでに日は暮れており、一行は宿を取る前に地上区の店を回ることにした。武具屋では品揃えの豊富さに戸惑い、ドワーフ都市では珍しい双子の魔術師の店では見たこともないような品物に驚くばかりだ。閉店前の店を一回りした後、一行は神殿にやってきた。

●神殿の老人

*神殿にはドワーフの善なる神々が荘厳に立ち並んでいる。広い神殿はよく掃除されているようだ。神殿には今、一人の初老の神官が祈りを捧げているだけだ。

初老の神官: おやおや

エル: こんにちは

フンディン: これは

初老の神官: こんな時間に礼拝かね?

フンディン: お邪魔しております、司祭様

初老の神官: いや、かまわんよ
初老の神官: ここには、わししかおらんでな

アル: こんな時間に済みませんねぇ

スキールニル : 地上部分だからですか
スキールニル : おおわが守護神もあそこに


*立ち並ぶ神々の像の中に、自分の守護神を見つけたようだ。

フンディン: それでも
フンディン: 立派な堂々たる風情だと思います

スキールニル : われに勝利を われに武運を

アル: お祈り終了

エル: 夜もふけたし、宿に戻らないか?

アル: それがいいね
アル: お邪魔しました

フンディン: 宿を探さなければならないですね

スキールニル : 昨日のとこでもいいんじゃないの?

エル: では

フンディン: 先に行っていてください
フンディン: わたしはもう少しここで祈りを捧げたいと思います

アル: じゃ、あとでな


*フンディンを残し、スキールニルたちはどやどやと神殿を出て行った。

フンディン: ……
フンディン: 司祭様

初老の神官: …なにかね

フンディン: 地下の寺院というのは
フンディン: わたしのような外来者は参拝することはできないものなのでしょうか?

初老の神官: いや、全ての父の子らならば
初老の神官: 誰でも迎え入れるだろう

フンディン: おお…

初老の神官: だが、大切なのは場所ではないよ、わかいの

フンディン: はい、それは承知しているつもりです
フンディン: ただ…
フンディン: 父上がかつていらしたこの場所
フンディン: 父上はどのような思いで日を過ごされたのかということを
フンディン: 少しでも知ってみたく思い…

初老の神官: それは重要な事かね?

フンディン: わたしにとっては大切なことであると思えます

初老の神官: そなたは、父上の後を追いかけて旅をしているのかね?
初老の神官: それとも、自分のため?

フンディン: わたしは…
フンディン: わたしは、ムンディン・アイアンビアードの子として恥ずかしくない者になりたいと思い旅に出ました

初老の神官: もし父上が…そなたの思っているような人物ではなかったら、そなたの旅には何の意味もなくなってしまう?

フンディン: どういう…意味ですか?

初老の神官: いやいや、深い意味はないよ。惑わすような事を言ってすまなかった
初老の神官: そなたのその気負いが、そなたの道を踏み外させない事を祈るのみだな…

フンディン: ……

フンディン: 司祭様はこちらの寺院におられて長いのですか?

初老の神官: 長いような短いような
初老の神官: いや、きっと長いのだろう

フンディン: それでは…
フンディン: それではもしや、ムンディン・アイアンビアードにお会いしたことはありませぬか?

初老の神官: ある…としたらどうするね。何を聞きたい

フンディン: 父上は
フンディン: 昔、祖父上と共に暮らしていたのですが
フンディン: このアドバールに来る前に
フンディン: 何かの出来事にあって
フンディン: 以来、祖父上を亡くされたそうなのです

初老の神官: それは残念な出来事だ

フンディン: その頃のこともどうしてか
フンディン: 覚えておられぬご様子なので
フンディン: 司祭様が何かお心当たりがあればと思いました

初老の神官: ふむ…
初老の神官: 残念ながら、わしはそなたの父上に会ったことはないし、その悲劇も知らない
初老の神官: だがね、わしらドワーフは長い人生をもっておる
初老の神官: その中で、失われていくものや変わって行ってしまうものもある

フンディン: ……

初老の神官: ただ、モラディンの子らが自分の道をゆくことが出来ればよい…そう思っておる

フンディン: はい…

初老の神官: さ…友人たちも待っておろう。今日はもう遅い
初老の神官: また、来なさい。

フンディン: ではこれで失礼致します
フンディン: し、司祭様

初老の神官: …


*司祭は黙ってフンディンを見送った。一方、フンディンが神殿にいる頃、他の者はすでに”憩いの泡ジョッキ亭”のテーブルの一つを陣取って楽しんでいた。

スキールニル : 宿で歌ったら宿代ぐらい稼げないもんかな

エル: やろうか

スキールニル : どうだい自信はあるかな

エル: 昨日は疲れと怪我とでそれどこじゃなかったものね

スキールニル : 確かにへとへとだった

エル: 今日は、時間が遅すぎるか

スキールニル : だけど俺は今日のほうが疲れた

エル: 今日は歩き回っただけじゃないか

スキールニル : 俺が何か言うたびに文句を言う奴がいるからだよ

アル: 本当だね

スキールニル : 養父上よりたちが悪いぜありゃ

アル: そう思うかい?

スキールニル : 性質が悪い
スキールニル : あんまり飲みすぎると金が減るぞ

エル: うう
エル: もう半分使っちゃった

アル: とは言え、呑まないのもねぇ

スキールニル : 半分?!
スキールニル : なんに使ったんだよ

エル: スピリッツ

スキールニル : 半分も酒につぎ込んだのか?!

エル: うん

エル: 大金が手に入って浮かれちった

アル: エルに賢明さを求めるのは無駄だな

スキールニル : そういうアルはどうなんだい
スキールニル : 双子だろうが

アル: 俺は腕力よりも賢明さを重視してるよ
アル: 兄弟揃って浪費家じゃ家が潰れる

スキールニル : 両方ないとダメなんだけどなほんとは・・・
スキールニル : なるほど
スキールニル : 苦労してんだな

アル: お互いがお互いを補うのさ
アル: 苦労はしてないよ
アル: むしろ楽しいね

スキールニル : そうか
スキールニル : 生まれる前から一緒だもんナ

アル: ははは
アル: そうだね

スキールニル : 俺には兄弟はいないから判らんけどな

アル: まぁとにかくエルは頼もしいよ

スキールニル : 腕も立つしな

アル: そこそこだけどね、まだ

スキールニル : よし腕相撲するか

エル: 歌は自信あるさ


*などと言いながら、エルとスキールニルは腕相撲で勝負する。二人とも筋力では同じくらいだが、体調か力の使い方の上手さか、スキールニルが勝った。

アル: 手加減しすぎだろ

スキールニル : なかなかやるな

エル: 腕が反対に曲がったー

スキールニル : そんなにまがってないって

スキールニル : 今腹がなったか
スキールニル : おおミートパイだ

エル: 夜に食べてばかりいると、ビヤ樽みたいな腹になるらしい

スキールニル : 鍛えれば大丈夫

アル: うまいねぇ

スキールニル : ほれ


*スキールニルはシャツをめくってみせる。

アル: 割れてる!
アル: すっげぇぇ

エル: 昔の歌であったじゃないか、ビヤ樽のノーガンの歌

スキールニル : でもやはり一番感動するのはブルードのサガだな

アル: ネヴァーウィンターの英雄だからね

スキールニル : 会えるもんならあってみたいもんだ
スキールニル : 一本でいいから稽古試合をみてほしい

アル: 二刀流、カッコいいだろうなぁ

スキールニル : 習熟するのは難しいらしいぜ

アル: でも、憧れるよねぇ

スキールニル : 片手じゃなかなか骨まで断てない
スキールニル : 俺は俺の守護神にあやかって両手剣だ

アル: 急所攻撃で決めるらしいよ
アル: 相手を転ばすのも得意らしい


*と、そこへフンディンが真っ赤な顔で現れた。

フンディン: よぉおお
フンディン: しゅきーにー
フンディン: *ヒック*
フンディン: 飲んでますかぁ

スキールニル : なんだこいつ

フンディン: *ヒック

スキールニル : 酔ってるのか・・・


*外の市場で酒でも買って飲んだのか、フンディンはすでに出来上がっている。

アル: ………

フンディン: なんらそのぶっちょうづらは?!
フンディン: *げっぷ*

アル: 偉い変わりようだな

フンディン: *げっぷ*

エル: フンディンは酒に弱いね

フンディン: *ヒック*

スキールニル : 酒乱だったのか

エル: 安上がりでいい

スキールニル : 知らなかった

フンディン: だれがしゃけによわいらって??
フンディン: *ヒック*

スキールニル : あんただよ

アル: 呂律回ってないぞ、英雄

エル: フンディンの歌を作るときはその酔いっぷりは入れないで置こう

フンディン: しゃけをくらしゃい!

スキールニル : すきっ腹で飲むからだ

エル: なあ、兄者

アル: そうそう

フンディン: *げっぷ*

スキールニル : 入れたら入れたでおもしろい喜劇になるよ

エル: 一応英雄譚を歌うつもりなんだ

アル: 呑む前に食べる

フンディン: んんん?
フンディン: うっでゅたいがーの二人は
フンディン: しゃけものんれないれすか?

アル: 呑んでるよ…

フンディン: *ヒック

エル: 飲んでたんだけど、お金がもったいないから、今日はもうやめた

フンディン: しょれなら
フンディン: こり
フンディン: おごりましよ
フンディン: *ヒック*


*フンディンは給仕を呼びつけると酒を注文する。

アル: 気前がいいねぇ

エル: *げっぷ*

フンディン: *げっぷ*
フンディン: *げっぷ*

スキールニル: *げっぷ*

アル: *げっぷ*

エル: エールは酔い覚ましにいいな

フンディン: *ヒック*

スキールニル : そうだな

フンディン: シュキーィニー!

スキールニル : あん?

アル: 宿を頼むなら英雄は別の部屋にした方がいいな、こりゃ

フンディン: *げっぷ*
フンディン: *げっぷ*

スキールニル : ・・・・困った奴だなあ

フンディン: らいたい

フンディン: こんなとこれもそんなでかい剣ふりまわして
フンディン: そりじゃまるでばかみたいら!

スキールニル : 馬鹿はお前だ

エル: フムゥ

スキールニル : 鞘に入れて「平和の紐」でしばってある

アル: フンディンは酒に弱いようです…と

フンディン: 馬鹿って言ったほうが馬鹿!
フンディン: つまり馬鹿はしゅきーにーら!

スキールニル : ちょっと面白いなこいつ

エル: バカみたいなのは、スキールニルで、馬鹿なのがフンディンか・・・

フンディン: *ヒック*

スキールニル : もっと飲ませてみよう

エル: 難しいなぁ・・・

スキールニル : ほれほれもっとグーっといけ

フンディン: しょーいえば

スキールニル : アイアンビアード家の漢として・・・

フンディン: アルロリックと
フンディン: エルロリック 
フンディン: の二人は
フンディン: ろーしてわらしのこと
フンディン: *げっぷ*
フンディン: ワレ・ラガエイユーとよぶでしか?

アル: 英雄だからだよ
アル: それだけさ

フンディン: *げっぷ*
フンディン: エイオー??
フンディン: わらしが??

アル: 違うとしか言い様がない

フンディン: *ヒック*

アル: さぁ部屋で寝ようか

フンディン: へや?

アル: 金がなくなる前に

スキールニル : 寝る前に少し素振りするかな


*もうフンディンに飽きたというか、面倒くさくなったらしい…

フンディン: へや、*ヒック*
フンディン: へや、ここ

アル: はいはい

エル: 寝ようか

フンディン: Zzzz


*フンディンは突っ伏して眠ってしまった。

エル: 兄者

アル: ん?

スキールニル : 面倒だからほっとくか

エル: 寝ようぜ

フンディン: *すぴーすぴー

アル: おかみさん

ラミリ : あんたたちか…なんだい

スキールニル : おかみさん、あいつと俺たち別勘定で頼むよ

ラミリ: わかったよ…
ラミリ: で、泊まるのかい

スキールニル : 「俺たちは」迷惑かけないから
スキールニル : ああ泊めてくれ

ラミリ: それじゃあ5GPもらうよ。大部屋で?

フンディン: むにゃ…

スキールニル : それでいい

フンディン: しゅきーにー…

アル: 一応あいつの分も払っておくよ

ラミリ: あれを部屋まで運べって?


*あれ=フンディン

アル: きっと勝手に部屋に入ると思うから

エル: 兄者はお人よしだなぁ

アル: これあいつの分ね
アル: いや
アル: 明日の朝またもめるのも嫌だしね

スキールニル : いい奴だな

アル: 一応運ばない?
アル: まぁいいか

エル: 寝よ寝よ

ラミリ: あんたたちは寝なよ。わたしが面倒見ておく

スキールニル : 悪いね

ラミリ: いいさ、それが仕事だからね

スキールニル : なんだったらほっといてもいいんだけどね


*ということで、フンディンの面倒はラミリにお願いして他のものは部屋を取って眠りに落ちた…。

●スキールニルの夢

*その晩は、酒も入って皆ぐっすりと眠り込んでいる…。スキールニルも例外ではないが、彼はやけにリアルな夢を見ていた。

*夢の中で、スキールニルはどこか暗い洞窟にいる。通路はまっすぐ続いており、スキールニルはとぼとぼと歩いて進むしかない。ふと、目の前の地面でキラリと光るものがあった。近づいて良く見ると、金貨のようだ。拾い上げてみると、ドラゴンが掘り込まれた見たことのない金貨である。金貨を手の中で弄んでいると、それはキラキラと光って美しいと思える。

スキールニル : ・・・美しい

*金貨の踊る輝きに目を奪われたまま、夢は終わる。

●二日酔いの朝

スキールニル : ・・・はっ
スキールニル : ・・・・
スキールニル : ・・・・なんか夢を見てた気がする
スキールニル : ・・・なんだったか忘れた


*スキールニルは昨晩の夢は覚えていない。ただ、夢の中で感じた印象だけはなんとなく残っている。

アル: おはよう、エル、スキールニル

エル: おはよう

スキールニル : まあいいや素振りだ

アル: 俺は英雄の様子を見てくるよ
アル: おっと、その前に食事だ

スキールニル : 素振りは朝飯前に済ませないと・・・

アル: 俺は素振りしないから…


*一方、フンディンは1階の酒場にある暖炉の前の長椅子の上で目が覚めた。

フンディン: ZZz……
フンディン: ううん……・

フンディン: う…
フンディン: あ、頭がいたい…


*上体を起こすと、掛けられていた毛布がぱさりと床に落ちるが、フンディンは気がついていない。

ラミリ: 目が覚めたかい

フンディン: ?!
フンディン: おはようございます
フンディン: 女将どの


*ラミリが気がつき、歩いてきた。そして落ちた毛布を黙って拾う。

フンディン: それにしてもわたしは
フンディン: (いたた…
フンディン: なぜこのような場所に???
フンディン: あいたたた…

ラミリ: 昨日、飲みすぎたようだね

フンディン: 飲みすぎた??
フンディン: なにをです?

ラミリ: 酒だよ

フンディン: ???
フンディン: わたしが、お酒をですか??

ラミリ: それ以外に、そんな状態になってる説明がつくかい?

フンディン: どうも昨日の夜のことはよく覚えていないのです


*状況だけみると、先日といい今日といい、はっきり言ってかなり面倒な客だが、ラミリは特に表情や仕草には表さない。と、そこにアルが2階から下りてきた。

フンディン: いたた…

アル: おはよう、酔っ払い

フンディン: アルドリックさん!
フンディン: おはようございます
フンディン: あいたたた…

アル: 結局ここで寝てたのか?

フンディン: いったい昨日の夜何があったのですか?
フンディン: はっ
フンディン: ともかく女将どの

アル: お前、酔っ払って大変だったんだぞ…

フンディン: いきさつはともかくわたしがここで寝ていたことは事実
フンディン: お受け取りください
フンディン: (いたたた…

ラミリ: いらないよ

フンディン: ??

ラミリ: 酒を買ってくれたし、部屋は借りてないだろう

フンディン: それ、は、
フンディン: ???!


*フンディンがこみ上げてくるものを抑えながら酒場から走り出て行く。ちょうど、スキールニルとエルも2階から下りてきた。

スキールニル : なんだありゃ

*スキールニルが様子を見に行く。

スキールニル : ・・・
スキールニル : 酒場の前でぶちまけてるみたいだぞ


*双子も酒場の外に様子を見に出る。

フンディン: いったい何が…
フンディン: うぷっ…
フンディン: *すーはー…すーはー…

アル: おいおい、大丈夫か?

フンディン: あ、あ、アルドリックさん…

アル: (背中をさする)

フンディン: いったい、わたしの、体に、なにが…

アル: 二日酔いってヤツだろうね

フンディン: ぜーぜー…

フンディン: フツ・カヨイ?
フンディン: それは何かの、毒、なのでしょうか??

アル: 固い長椅子の上で寝たから、それも良くなかったんだな

フンディン: …ぜー…ぜー・・
フンディン: うう…

スキールニル : 今日は誰を訪ねるんだっけ

アル: ・・・

スキールニル : ・・・

フンディン: すー…はー…

スキールニル : 一体どんだけ飲んだんだ

フンディン: ふー………

アル: どうも二日酔いになったの初めてみたいだな

フンディン: だ、だいぶ
フンディン: 落ち着いたようです…

スキールニル : じゃあ出発だな

エル: 二日酔いか、そんなにつらいのか

スキールニル : 俺なったことないや

フンディン: 何者かに
フンディン: フツ・カヨイなる毒を盛られたようなのです…
フンディン: 面目ない

アル: くっくっく

フンディン: ううーん…

アル: 面白いな、英雄は

フンディン: なんだか地面がぐらぐらと…

スキールニル : 面白いのも度を過ぎるとなあ

エル: 自分で毒を生成したんじゃないの?


*ふらふらと歩き始めたフンディンだが、街灯にぶつかってしまう。

フンディン: いたい!

アル: おいおい
アル: 真っ直ぐ歩けないのか?

スキールニル : どうするコレ?

フンディン: うう…

エル: 引きずっていこう

スキールニル : そうだあそこの噴水に
スキールニル : 放り込めばしゃんとするんじゃないか?

アル: 自分で落ちたりしてな…

エル: えい


*エルが無理やりひっぱり、噴水に連れて行く。

フンディン: ぶっ…

アル: あ〜あ〜

フンディン: ……・…

アル: 見てらんないね

スキールニル : おぼれないように支えておこう
スキールニル : ほら顔洗えよ
スキールニル : 髭に・・・ついてるぞおい

アル: (じゃぶじゃぶ)

スキールニル : こりゃ昼まで動けないかも


*などと話している間に、フンディンを支えるのを忘れていたようだ。フンディンは噴水の水に顔をつけたまま動いていない…。
フンディン: ……………
フンディン: ………………・

アル: おっと、いかん!

スキールニル : 溺れてるぞ


*二人はフンディンを水から引き上げると、座らせる。

スキールニル : まだ息はあるようだな一応
スキールニル : 困ったもんだな・・・

アル: こんな事で死なれたら冒険譚が書けなくなる

フンディン: ・・・・・・・・・・・・

スキールニル : とりあえず今日はどこに行くんだよ

フンディン: はっ??!

スキールニル : お

フンディン: ごほごほ…

スキールニル : 目が覚めたか

フンディン: ぶっ…
フンディン: う”う”…

エル: まだ酔ってるみたいだね
エル: 二日酔いというより

フンディン: いたい!

スキールニル : 重症だ

フンディン: いったい昨日の夜なにが…
フンディン: (あいたたたた…

スキールニル : 酒の飲みすぎ
スキールニル : 以上

フンディン: 酒?

フンディン: スキーニー、お酒を飲んだの???

スキールニル : 飲んだ
スキールニル : お前にも飲ませた

フンディン: その割にはいつもと変わらないように見えるけど
スキールニル : 俺は飲みすぎてないからね

フンディン: そ、それじゃ
フンディン: ナクルどのに
フンディン: 今日は、ナクル、どのに
フンディン: お話を、うかがいに
フンディン: いき、ま、す

スキールニル : じゃそうしよう

フンディン: (いたたた…


*ふらふらと歩き出す。

フンディン: いた

エル: そこは壁だよ

アル: 何処に行くんだよ…

スキールニル : しゃんとしろ!

フンディン: あいたたた・・
フンディン: スキーニー
フンディン: 大きな声出さないで…
フンディン: 頭に響くよ…

スキールニル : まっすぐ歩けないのかよ

アル: いい加減真っ直ぐ歩けよ…

フンディン: にゃ、にゃんか…
フンディン: 足元が

スキールニル : 二日酔いも知らないでよく生きてこれたなあコイツ

アル: エルも知らないけどね

エル: 二日酔いには酸っぱいものがいいんだって

フンディン: しゅ、しゅっぱいもの…?

スキールニル : 正直俺も知らないけどね

エル: 二日酔いは知ってるさ、兄者
エル: なった事が無いだけで

アル: 知識として…だろ?

スキールニル : 俺もない

エル: うん


*フラフラと歩いては壁にぶつかるフンディンを連れて、一行は遊撃隊本部までやってきた。

フンディン: おはよう
フンディン: ごじゃいます
フンディン: ございます

アル: おはよう

モグール: む

スキールニル : モグさんおつかれー

モグール: ナクル小隊長に御用かな?

フンディン: は い
フンディン: ナクルどのは
フンディン: いらっしゃいますでしょうか?
フンディン: (いたたたた…

スキールニル : 時間があれば隊長と話したいんだけど

モグール: 残念だが、今日は作戦行動があり準備中だ。話す時間はなさそうだ

エル: うう

アル: そりゃ残念

スキールニル : 作戦行動か

フンディン: しゃくせ
フンディン: 作戦??

スキールニル : 昨日軍議があるっていってたからな

フンディン: い、言ってたっけ…
フンディン: ?

アル: 作戦じゃ俺ら部外者には内容まで話せないだろうな

エル: なかなか会えないね

フンディン: あいたたあ…

モグール: 今朝まであなたたちを気にかけていた様子だったが

フンディン: しゃくせ
フンディン: 作戦ってことは
フンディン: ということは
フンディン: ナクルどのは
フンディン: どこか、へ、
フンディン: 行かれたということ、でしょうか?

スキールニル : もしかしたら手伝えるかもって思ったんだけどね

アル: あぁ、正直イライラしてきたよ
アル: こうまで目的の人に会えないとな

スキールニル : そういう時もあるさ

モグール: そういう事だ。

フンディン: しょ、
フンディン: そうですか…
フンディン: ではまた参りましゅ
フンディン: 参ります

スキールニル : 坑道で何か問題があるとかいう噂を聞いたんだけど

フンディン: (いたたた

スキールニル : ソレと関係あるのかな?

フンディン: 関係にゃいよ

モグール: 申し訳ない。こちらにも事情があるのです。

フンディン: シュキーニー
フンディン: ナクルどのは
フンディン: オークの問題だって昨日言っていたような気がしゅる

スキールニル : スキールニルだ!

フンディン: あああう
フンディン: 大きな声出さないで…

アル: 気がするじゃなくてそう言ってたよ

フンディン: はい

スキールニル : じゃあとりあえずコレで失礼するよ

フンディン: 坑道は確かドロウだと
フンディン: 言っていた

スキールニル : ありがと

モグール: はい

フンディン: だから坑道を見に行ってみましょう
フンディン: では
フンディン: これにてしちゅれい…
フンディン: 失礼いたします

モグール: では。


*一行は遊撃隊本部を離れて坑道区に向かう。

フンディン: いたた…

アル: ・・・・・・

スキールニル : 迎え酒・・・なんてやったらめんどくさいか

アル: そうだろうなぁ

フンディン: ムカエザケ?

スキールニル : 説明ならエルに聞いてくれ

エル: 解毒剤だよ


●アドバールの坑道長

*一行は坑道区に到着した。

アル: おはようさん

フンディン: おはようごじゃいま…
フンディン: ございます

ドワーフ: おはよう

スキールニル : おはよう

フンディン: ええ、と

ドワーフ: おやっさんに会いに来たのか

フンディン: はい

ドワーフ: 案内しよう、こっちだ

フンディン: ダグダどのと
フンディン: あっ!
フンディン: いたた…

ドワーフ: …

アル: しっかり歩けよ、英雄

ドワーフ: ここがおやっさんの部屋だよ

スキールニル : オークと殴りあったときより傷が多いなコイツ

アル: ありがとう

フンディン: ありがとうございまし
フンディン: …ございます

スキールニル : アドバールいちの生傷男だな

ドワーフ: じゃあ、俺は仕事があるから行く


*案内してくれたドワーフはつっけんどんな態度で立ち去る。それを見送ってから、フンディンは部屋の扉をノックして中に入る。

スキールニル : 失礼する

ダクダ アムミル: ん

フンディン: お忙しいところ
フンディン: 失礼いたします

ダクダ アムミル: 何か用かね?

アル: おはようございます、坑道長

スキールニル : おはようございます おやっさん

フンディン: わたくし、フェルバール城砦は
フンディン: ムンディン・アイアンビアードのムシュコ
フンディン: …息子
フンディン: フンディンと申します
フンディン: 父より仰せつかって
フンディン: ダグダ・アムミルどのに
フンディン: お話を伺いたく…
フンディン: こうしてシャンジョー…
フンディン: さん、参上した次第です

スキールニル : 約一名酒臭いのをお詫びしよう・・・

ダクダ アムミル: おお!ムンディンの息子か
ダクダ アムミル: ふむふむ
ダクダ アムミル: 良く訪ねて来てくれた

スキールニル : (サガに出てくる王侯貴族ですらしゃべらんようなまだるっこしい挨拶だなあ)

ダクダ アムミル: どうも、酒がのこっとるようだな

フンディン: しゃ、酒、ですか?
フンディン: どうも昨晩
フンディン: 何者かに「フツ・カヨイ」なる毒を盛られてしまったようでして…
フンディン: こうして舌がうまく回らぬこと、ご容赦くだしゃ、ください…

アル: ・・・

スキールニル : ・・・えーと、細かいことは気にしないで・・・

ダクダ アムミル: …お前さん、本気で言ってるのか?

フンディン: ??
フンディン: 父上のご友人に嘘偽りなど口にはできませぬ

ダクダ アムミル: それとも今も酔っ払ってるのか?

フンディン: 申し訳ありません、実のところ

エル: 馬鹿にしてるのかもしれませんね


*確かにそう取られても仕方ないかもしれないな(笑)

フンディン: 昨日の夜の記憶がまるでないのです…
フンディン: それは、さておき

ダクダ アムミル: (ムンディンの息子が尋ねてきたと聞いて、期待しておったのだがな…)

アル: エル、混乱するからやめときな

エル: (すまない、兄者)

アル: (分かってくれればいいよ)

フンディン: ダクダ様
フンディン: わたくしと
フンディン: この友人たちは
フンディン: いま父上の命を受けて
フンディン: 我が祖父フンディンの
フンディン: 遺産を求める探索の最中にあるのです

ダクダ アムミル: ふむ

フンディン: 聞けばダクダ様は
フンディン: このアドバールに父がいた頃に親交浅ならぬ仲でいらしたとのこと

スキールニル : (・・・早く本題に入れ・・・)

フンディン: 是非その頃の父上についてのお話をお聞かせ願えればと思いまして
フンディン: こうして参上した次第であります
フンディン: (あいたたた・・

ダクダ アムミル: そうだな…あの頃はわしとムンディンとミョルニルと3人でいつも語り合ったものだ

フンディン: !

ダクダ アムミル: 肩を並べて戦った事も何度もある

スキールニル : へー

ダクダ アムミル: それで、わざわざ昔話を聞きにここまで?

フンディン: いえ…
フンディン: 実は
フンディン: 父上は、我が祖父…
フンディン: つまり大フンディン様と暮らしていた頃の
フンディン: 記憶がないようなのです

ダクダ アムミル: 知っておる

フンディン: それはおそらくこのアドバールに来る前のことだと思うのですが

ダクダ アムミル: ミョルニルもまだ幼く、覚えていないようだな

スキールニル : 当時の鍛冶場・・・のようなもの
スキールニル : ソレを探してるんだ

ダクダ アムミル: ふーむ…

フンディン: あのね、スキーニー

スキールニル : うるさいだまれ

フンディン: いつまでも子供じゃないんだから
フンディン: 目上の人と話すときは言葉遣いを
フンディン: ・・あいたたたた…

ダクダ アムミル: 確かに、多少の礼儀は必要だぞ。わかいの

フンディン: 父、ムンディンは
フンディン: 昔祖父上と暮らしていた頃の
フンディン: 住居や… 大フンディンの仕事場について
フンディン: 何か手がかりになりそうなことを
フンディン: ダクダ様にお話しされたことはなかったでしょうか?

ダクダ アムミル: そうだのう…
ダクダ アムミル: そなたの父は、どうもあまり大フンディンの事は話したがらない様子だった
ダクダ アムミル: ミョルニルがいつだったか、話をせがんで
ダクダ アムミル: ムンディンを怒らせた事もあった

スキールニル : 何があったんでしょうね

ダクダ アムミル: だが、こうして息子を旅に出したのだから
ダクダ アムミル: 今はそうではないのだろう

フンディン: ………

ダクダ アムミル: あの頃は、まだわしらも若かったからな

スキールニル : 息子が鍛冶屋になるのをあんなに嫌がっているのに
スキールニル : なんでいまさら鍛冶場を探すのか・・・
スキールニル : 正直不思議だな

ダクダ アムミル: 若いお前さんにはわからんかもしれん

スキールニル : ?

アル: 探してるのが家宝だからじゃないか?
アル: どんなものかは知らないけどさ

ダクダ アムミル: 歳を取ると、自分の血のつながりや一族というものの
ダクダ アムミル: 重要さやありがたみを知るものだ

スキールニル : 養父はハッキリとソレが目的だけどな
スキールニル : ・・・俺は養子ですからね

アル: そうなんだ…

スキールニル : そんなのわかんねえや

フンディン: しゅきーにーは、
フンディン: いつも二言目にはそれだ


*言い返すのも面倒なのか、スキールニルは肩をすくめる。

エル: (ワザとやってるんじゃないかな、あのしゃべりかた)

フンディン: (いたたた…
フンディン: し、失礼しました

スキールニル : おっと話の腰を折ってしまったな

アル: (俺もそんな気がしてきたよ)

ダクダ アムミル: わしの知る限り、そなたの父は例えば嘘をついて当時の事を知らぬフリをしているという風ではなかった

フンディン: あそこにいるスキーニーは
フンディン: ミョルニル叔父上の子…

ダクダ アムミル: ほう。ミョルニルも所帯を持ったのかね

フンディン: はい

スキールニル : いえ

フンディン: わたしのいとこにあたる者です
フンディン: すみません、ご紹介が遅れました

スキールニル : スラムの暴れん坊だった俺を弟子にして
スキールニル : 養子にしただけですよ、おやっさん

ダクダ アムミル: ふむ…
ダクダ アムミル: まあ、そなたの探索に役立つような話は、わしは残念ながら知らんが
ダクダ アムミル: 確かなのは、ムンディンが当時の記憶を持っていないのは嘘ではない

フンディン: そうでありますか…

スキールニル : ・・・(ちっ、こいつもしらねーのかあ)

フンディン: 当然です!
フンディン: 父上が嘘など

スキールニル : なぜ記憶がないんだろう

フンディン: あいたた…

ダクダ アムミル: そしてこのアドバールにそなたらをよこした理由はわかるよ

フンディン: そ、それは?!

スキールニル : ほう・・・

ダクダ アムミル: アドバールは知っての通り、この地域では最も長く侵略された経験がない都市だ
ダクダ アムミル: だからここには古い記録が大量に残っておる

スキールニル : そういえば古い建物が多いな

フンディン: !

ダクダ アムミル: そこから、何かヒントが得られればと思ってのことだろう

スキールニル : なるほど・・・そいつを調べればいいわけだな!

エル: 伝承を調べられるなら *ワクワク*

スキールニル : 歌のネタも増えそうだね

フンディン: 父は
フンディン: 昔祖父上と共に買い物に行かれて
フンディン: マーダックという名の人間の村人と
フンディン: 取引をしていたそうなのです

ダクダ アムミル: ふむ
ダクダ アムミル: …
ダクダ アムミル: いや、心当たりはないな

スキールニル : ホントに?

フンディン: こらスキーニー!

フンディン: 失礼だ、…いたた…

ダクダ アムミル: いちいち人間の村人の名前なんぞ覚えておらんし
ダクダ アムミル: わしがムンディン兄弟と知り合ったのはあいつらがアドバールに来てからだぞ

スキールニル : なるほど

ダクダ アムミル: ところで書庫の話に戻るが

スキールニル : 書庫は何処に?

ダクダ アムミル: お前さんらが調べたいような記録は
ダクダ アムミル: 重要な書物として書庫にあると思う
ダクダ アムミル: 書庫はアドバール城内にある

フンディン: お城…ですか…

ダクダ アムミル: アドバール城内の書庫長に許可をもらえれば調べられるが
ダクダ アムミル: まず書庫長の許可をもらうためには
ダクダ アムミル: 他の、部門長2名以上の推薦が必要だ

フンディン: 部門長??

ダクダ アムミル: つまりわしや、遊撃隊長のゴトラン坊やとか
ダクダ アムミル: 神官長殿とかだな

*遊撃隊長は坊や呼ばわりだが、神官長は殿をつけている辺り、ダクダよりも高齢なのだろう。

スキールニル : じゃああと一人か

エル: そだね

フンディン: スキーニー
フンディン: それは違うよ

スキールニル : 何が?

フンディン: わたしはまだ
フンディン: ダクダ様の推薦をいただけるようなことは何もしていない

スキールニル : ふーん

アル: 昔の友人の息子というだけじゃ役不足かな?

フンディン: 父上の
フンディン: ムンディンの息子というだけで
フンディン: 貴重な記録を調べる許可をして頂くというわけには行きません

ダクダ アムミル: 確かに、わしは推薦状を書くことはできるが実績がないといかんな
ダクダ アムミル: お前さん自身の価値を証明せんとな

フンディン: ダクダ様
フンディン: 何かこのフンディンに成し遂げるべき仕事はありませんでしょうか?
フンディン: 昨日お訪ねした折に
フンディン: 何かドロウの問題について
フンディン: お困りだったご様子

エル: フンディンはオークを追い払って、ナムルを助けたよ

スキールニル : ナクルな

エル: あ、そうそう

フンディン: しかしナクルどのはナクルどのです

ダクダ アムミル: ナクルの件は、わしも耳に入っておる

フンディン: あれはあたりまえのことをしたまでです
フンディン: その功を敢えて申し立てることなどするつもりはありません
フンディン: ダクダどの
フンディン: ドロウの問題というのは解決を見たのですか?

ダクダ アムミル: ふむ、気になっているようなら、それではまず今坑道で起きている事件について話しておこうか

スキールニル : (面白そうな話になってきたな)

アル: (おっ、面白くなってきた)

ダクダ アムミル: ここ、アドバールの坑道はそのまま北方の地下トンネルと繋がっておって
ダクダ アムミル: ミラバールやミスリルホールとも繋がっている
ダクダ アムミル: さらに、古い坑道や新しく出来た裂け目などは
ダクダ アムミル: アンダーダークにも繋がっておる

フンディン: !!

アル: (凄い話だな)

ダクダ アムミル: 坑道を調査していたわしの部下が
ダクダ アムミル: 深く潜りすぎてアンダーダークのすぐ近くまで降りていってしまったのだ
ダクダ アムミル: それをドロウの偵察部隊に見つかって、皆殺しにされてしまった

フンディン: !!!!

アル: (皆殺し…)
アル: (非道い話だな)

エル: (ウンウン)
アル: (まっ相手がドロウじゃ仕方がないのかもな)

ダクダ アムミル: ドロウはその坑道を辿って、アドバールだけでなくミラバールやミスリルホールへの道を見つけ出しかねん状況になった

フンディン: なんと…

ダクダ アムミル: そこで、その坑道を封鎖する事になったわけだ
ダクダ アムミル: もともと、そこを作った当時のドワーフは
ダクダ アムミル: 落盤を起こして完全に埋めてしまう仕掛けをしてあった

フンディン: ……

ダクダ アムミル: そいつを作動させればいいのだが、坑道はドロウに押さえられていたのだ
ダクダ アムミル: アドバール他3都市から連合軍を出すという話にまでなったのだが

フンディン: そ、それで
フンディン: どうなったのですか??!

ダクダ アムミル: そこで、あいつだ。ラベンダー色の目をしたドロウがしゃしゃり出てきた
ダクダ アムミル: あいつがドロウをおびき寄せている間に、装置を動かせと

スキールニル : ドロウなんか信用できるのかな

フンディン: ???

ダクダ アムミル: ミスリルホールのブルーノー王が最も信頼している友人の一人なんだ

フンディン: ?????

ダクダ アムミル: わしはやつを信用してはいないが、ブルーノー王は信頼しておる

スキールニル : ブルーノー王は偉大な戦士だ
スキールニル : 彼が信じるならあるいは・・・
スキールニル : でも普通は半信半疑ってとこでしょう

ダクダ アムミル: というわけで、ドリッズドが一人でドロウをおびき寄せ、その隙に工夫数人で装置を作動させる作戦になった

アル: ふむふむ

ダクダ アムミル: 同じドロウだから、助けたいんだろうとわしは言ったが
ダクダ アムミル: ドリッズドはこう言った
ダクダ アムミル: 「俺がドロウである事は永遠に変わらないのです。どのような者であれ、同族の血が流されるのは気持ちのいいものじゃないでしょう」とな
ダクダ アムミル: ドリッズトはドロウにとってやつらの神に捧げるには最も良い獲物だから
ダクダ アムミル: おとりには最適だった
ダクダ アムミル: それで、作戦通り上手く行ったというわけさ
ダクダ アムミル: ただ

アル: ただ?

スキールニル : ただ?

ダクダ アムミル: ドリッズドはまだ戻って来ないし、落盤を避けてこちら側に迷い込んだドロウもいるかもしれない

スキールニル : そりゃ大変だ

ダクダ アムミル: 依然として、坑道はまだ警戒中というわけだ

アル: つまりそれに協力すればいいわけだ

スキールニル : 協力するさ!

アル: 英雄の二日酔いが治ったらね

ダクダ アムミル: それはありがたい申し出だが、ちとお前さんらでは危険すぎるのではないかな

フンディン: いえ、
フンディン: やります!
フンディン: (いたたた…

ダクダ アムミル: …

フンディン: やらぬうちから逃げ出すようでは
フンディン: もとよりこの先道はありませぬ

スキールニル : 俺たちだってそれなりに修羅場を切り抜けてますよ
スキールニル : 鼠人間も倒したし
スキールニル : オークも倒した

エル: クマには参ったけどね・・・

アル: 熊にはやられ…

スキールニル : 熊も倒しただろう最後には

ダクダ アムミル: わかったわかった。だが、まずはお前さんらの実力に合った仕事からすべきだろう

アル: 何かありますか?

フンディン: そ、それではダクダ様は
フンディン: 如何にすればと?

スキールニル : そういう仕事があるんならそっちをやることにしようか
スキールニル : 修行は一歩一歩だな

ダクダ アムミル: ふむ…ちょうど、ゴトラン坊やの部隊とアドバール軍の部隊が何か作戦をするようだ

*遊撃隊もアドバール軍の一部だが、特殊な任務も多いためダクダは通常の軍部隊とは分けて考えているようだ。

フンディン: そのようですね

アル: 身の丈に合った仕事をして経験を積まないとね

エル: 歌は才能だが

スキールニル : 歌も訓練だ

ダクダ アムミル: ナクルには面識もあるだろうし、そっちに合流してみてはどうかね

フンディン: わかりました…

ダクダ アムミル: 今ならまだ間に合うし、わしから話を通しておこう

フンディン: ダクダ様がそう仰るなら
フンディン: 必ずや成し遂げて見せます

ダクダ アムミル: では、そのようにしよう

フンディン: では!

アル: 気負いすぎるなよ、二日酔いの英雄…

フンディン: これにて今のところは失礼致します!
フンディン: (いたたた…

ダクダ アムミル: 終わったら、わしのところに顔を出すように

フンディン: は、はい
フンディン: では

アル: それでは

ダクダ アムミル: 何か思い出せないか、考えておこう

スキールニル : 思い出す・・・ねえ

フンディン: ということになりました

スキールニル : 善は急げだ

アル: ナクルさんを探さないとな


*一行は急ぎ、遊撃隊本部へと戻っていく。果たしてどんな任務になるのだろうか…


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