サヴェッジ・フロンティアDR1235
第三章 北へ
「師匠の家」


●オークの街道封鎖

サンダバール西門から出発した一行は、街道に沿って歩き始めたが、歩き始めてすぐ前方に何か見えてきた。

ウルテン: グロック、先導してくれよ
ウルテン: あの先に見えるのが町かい?


木組みの壁や見張り台が見える。

グロック: ・・・・

そしてそこから、こちらに向かって歩いてくる人影があった。

ウルテン: !
ウルテン: オークだ!
ウルテン: 斥候だ
ウルテン: 一人だけかな

ダーマン: まだいます


前方に見えるものがオークの野営地らしい。
サンダバール西門を出るとすぐ戦場になっているようだ。

ウルテン: これはどうも…
ウルテン: いったんどこかに
ウルテン: 退避したほうがよさそうだ

グロック: こっちだ

グロックは街道を外れて山のほうへと向かう細い道を指差す。

ウルテン: この先が、お師匠の?

グロック: ・・・

ウルテン: ともかくいそごう!


●師匠の家

一行は山裾を覆う木々の間を進む。
やがて小さな一軒屋が、木々に埋もれるように立っているのを見つけた。

グロック: ・・・

ウルテン: ふう

ダーマン: 割と早く着きましたね

イノーラ: もっと山奥にあるのかと思ってた

ウルテン: まずは
ウルテン: 待っていた方がいいかな


グロックは呪文で透明化するとドアを開けて家に入る。
師匠の家の扉は、物理的にも魔術的にも施錠されていなかった。

ウルテン: でもどうして師匠の家に入るのに透明になるんだろう??

ハンベイ: さぁ?

ダーマン: さあ

ウルテン: みんなはグロックとお師匠のことは何か聞いていないのかい?

イノーラ: 怖い人だと

ダーマン: そもそも彼の過去についてすら知りません

ウルテン: そうなのか

ハンベイ: そうだな

ウルテン: 付き合いは長いのかと思っていたから、てっきり

ハンベイ: 長ければ知ってるというものでもあるまい

ダーマン: まあ、私は彼に限らずつきあい初めてからそれほど日がたってないんですが
ダーマン: 最初のうちは魔術師であることすら秘密にしていましたし

ウルテン: それはどうして??

ハンベイ: 本人に聞け

ダーマン: さあ?なぜ隠していたのか聞くのも失礼ですし、知りません

イノーラ: というか、互いに生い立ちとか話したことないな、私たち

ハンベイ: ……確かにそうだな

ウルテン: ??
ウルテン: いったいきみたちはどういう関係なのか、どうもいまひとつわからないな

ダーマン: 私は話すほどの事もないですしね
ダーマン: オークに開拓村が襲われてなければそれほど深いつきあいもなかったでしょうね

ハンベイ: そうかもな

イノーラ: 顔も知らなかったかもしれないな

ハンベイ: いや、顔くらいは知ってただろ

ダーマン: 私は村に僧侶がいないと言うから赴任しただけですし

ウルテン: ということは、きみたちは同じ村の出身??

イノーラ: 顔を覚えている自信がない

ダーマン: ああ、その点だけは私は例外ですね。村でただ一人の僧侶でしたし


とかなんとか立ち話をしているうちに、だいぶ時間が経過した。

イノーラ: …グロック、私たちのこと忘れてないか

ウルテン: グロックが入ってからだいぶ経ったな…
ウルテン: 大丈夫かな

ダーマン: まあ、相手から招待がないとどうにもなりませんよ

ウルテンは扉に耳を当てて聞き耳する。判定は成功している。

ウルテン: 足音は聞こえる
ウルテン: たぶんグロックだ

ダーマン: 足音?

ウルテン: でも他にはなにも聞こえないな

ダーマン: なんでまた?

ウルテン: お師匠は留守なのかな??

イノーラ: まだ師匠に会えてないのか?

ダーマン: にしては変な対応ですね


扉は開けたままになっているので、ウルテンが呼びかけてみるが反応はない。

ウルテン: 返事がない

ダーマン: ふうむ?

ウルテン: どうしたものかな

イノーラ: 別に広い家でもなさそうなのにな

ウルテン: やっぱりいないのかな
ウルテン: なんだかあまり人が生活しているようなにおいがない

ダーマン: もうここに住んでない?

ハンベイ: そういうことかもしれんな

ウルテン: グロックはどうしたんだろう
ウルテン: 入ってみよう

イノーラ: オーク撃退装置にはまって動けなくなってるのかもな

ハンベイ: 少々無作法だが仕方ないか


一行は恐る恐る家に足を踏み入れる。すぐにウルテンが気が付いた。

ウルテン: !
ウルテン: オークの足跡がある
ウルテン: ほこりの中に

ダーマン: ですね…

イノーラ: ふーむ
イノーラ: グロックは上かな?

ダーマン: む?


ダーマンは破壊されたタンスの裏に隠し扉が付いていたのを発見した。
だがその扉も壊されているので、もはや隠し扉とは呼べない。
実際、破壊されていなければそう簡単に見つかるものではなかったろう。

ダーマン: 隠しどびらが

ダーマンは隠し扉を通ろうと中に入った。
ちょうどそこへ、二階を捜索していたハンベイたちが下りてくる。

ハンベイ: 見かけの割に中は広いな

ウルテン: いない

イノーラ: いないな

ウルテン: ん


ダーマンに続いて他の者も隠し扉を通る。
隠し扉の先は小さな研究室になっていて、魔法陣や何に使うのかわからない道具などが置かれている。
そしてまだ魔力を放つポータルの前にグロックが立っていた。

ダーマン: あ

ウルテン: グロック!
ウルテン: 心配したよ、グロック
ウルテン: ずっと出てこないからどうしてしまったのかと思った

グロック: あいことばがわからない

ウルテン: 合言葉?
ウルテン: いったい何の??

グロック: これだ

イノーラ: ポータルのか
イノーラ: そもそもまだ動くのか?

ウルテン: 何かの魔力は感じるけど

ダーマン: 動くのは動くようですね

グロック: まりょくがのこっているからうごく

ハンベイ: 思い出せ、に、3、にズレ、か

ウルテン: ?

ダーマン: そこのほんの切れ端です

ハンベイ: 赤線引いてある

ウルテン: これが合言葉のカギだと?

ダーマン: まあ、そうなんでしょうね

ハンベイ: さて、そうかもしれんし、関係ないかも知れん

ダーマン: 誰かが来ることを予見した上で残したのでしょう

ウルテン: おれは合言葉よりもジュリアスたちの運命の方が気になるけどね
ウルテン: 続きはないのかな


小さなテーブルの上に残されていた紙切れは『ジュリアスの名の元に』という本から抜き取られた一部であった。その中に赤線が引かれた文章がある。
ちなみに本の内容は以下のとおりである。(※下線が赤線)

<1枚目>
王家の陰謀によって全てを失った将軍ジュリアスであったが、職を辞して平和な家庭を築き、新しい生活を始めていた。

そんなある日かつての仲間が王家親衛隊に追われてジュリアスを訪ねてきた。ジュリアスはそんなかつての仲間を、かくまうことができない。それは今の生活を失うことを恐れてのことだった。

古き仲間はジュリアスに言った。
「お前は忘れてしまったのか?あの怒りを。思い出せ、かつての約束を。あの日々に交わした言葉を。俺は今でもお前を信じている。」

ジュリアスはしばし思案したのち、仲間を家にかくまってしまうのだった。

<2枚目>
再び王家の支配に抵抗するため、戦いに赴いたジュリアス。その中で、彼は現王家が正当な支配者ではないという証拠を発見する。

「たとえそうだとしても……」仲間の一人は沈黙の後に口を開いた。

「どうやってそれを証明するんだ?」

3本の聖剣だ。聖剣の儀式を覚えているか?」ジュリアスは自信たっぷりに答えた。すでにからくりはわかっている。

「儀式に問題があるように見えなかったが……」

仲間の疑問に、ジュリアスはかぶりふって答えた。

「儀式そのものには問題はない。問題があるのは3本の聖剣のほうだ。あれがニセモノだとしたらどうだろうか?」

<3枚目>
現王家がニセモノであることを見抜いたジュリアス。そしてその過程で彼こそが真の王位継承者であることが判明する。

真なる聖剣も手に入れ、全ての準備は整った。しかし計画実行を前にして、熱狂していたレジスタンスたちの心に冷や水をかけるような事態に陥ってしまう。

現王家がニセモノだとしても、すでにその支配体制は機能してしまっている。そして民意はその支配を受け入れていたのである。

聖剣探索、真の王位継承者、そんなヒロイックな状況に心を燃やしたレジスタンスたちだったが、彼らの王家転覆は本当に必要なのだろうか。

ズレてしまっていたんだ。なにもかもがズレている。

ジュリアスは重々しく口を開いた。仲間たちは押し黙ったままだ。

「私たちのやってきた全てのことが、民の心とズレてしまっているんだ。

暗い地下室の中で、真の聖剣は虚しく光を放っている。

「私たちは……」

しかしジュリアスのその言葉の続きを聞くことは最後まで出来なかった。突然の足音が頭上に響き、地下室への扉が叩き壊された音が続いた。

隠れ家に使っていた宿屋が通報されてしまったのである。宿屋の主人か、それとも客の誰か……しかしそんなことは問題ではない。とにかく、彼らの味方と信じていた民の裏切りであることに間違いはないのだ。

ハンベイ: 思い出せ、だから、かつて一緒にすごしたことのある奴にしかわからんということだな

イノーラ: あー、頭脳労働はお手上げだ

ダーマン: 最初の部分がそれでは私たちには無理ですね

ウルテン: 何かがズレているのを直せばいいということかな??

ハンベイ: この中ではグロックしか該当せん

ダーマン: …グロック次第、ですか

グロックは考え込んだまま動かない。

イノーラ: グロック、全然わからないならサンダーバールに戻ってもいいんだぞ

ウルテン: 昔なにか、グロックがお師匠とそういった類の内容の話をしたことはないのかい?
ウルテン: かぎは「3」だというふうに思えるけれど

グロック: むかしのあいことばだけだ

ウルテン: それは?

グロック: ビアンド サマル

ハンベイ: 3文字ずらすんじゃないか?

ウルテン: ビアンド サマル…

ダーマン: ドサマルビア

ハンベイ: まぁ、ずらし方にもいろいろある

ウルテン: 「なにもかもがズレている」…ということは

グロック: ボエンヅ セメラ


ひらめいたグロックが一言放つと、ポータルが起動したように色を変えた。
ちなみにこれは非常に単純で、たんに昔の合言葉を3つずつカタカナ順にずらすだけだ。

ダーマン: お

ハンベイ: む?

イノーラ: 解けたみたいだな

ハンベイ: あたりのようだ


グロックはさっさとポータルを通って姿を消した。
一行もすぐに後を追う。

イノーラ: ダンジョン?

ウルテン: !

ハンベイ: どこだ?

グロック: ここはかわってない


そこはかび臭い空気の、窓一つ無い空間である。石造りの通路と、扉が二つほどあるだけだ。
グロックの師匠の研究室である。

●待ち人来たりて

ハンベイ: 知ってる場所か?

ダーマン: ここから先はグロッグ頼みですね

グロック: ・・・


微かに魔法の灯りが残っているものの、ほとんど暗闇の通路をグロックは歩き出した。
そして何かを踏んだ。

???: いたい!

ウルテン: ??


悲鳴と共に飛び上がって、現れたのは……

ダーマン: インプ!

グルジッド: 誰だ何だどこから来たんだ

グロック: おれだ

グルジッド: ん?
グルジッド: ああっ
グルジッド: グロックじゃねえか
グルジッド: 俺の尻尾でちくっとやっても死ななかったやつだな

グロック: いきてたか

ウルテン: グロックの知り合いか

ハンベイ: ……らしいな

グロック: せんせいは、いるか

グルジッド: あー
グルジッド: いるけど、いない
グルジッド: ていうか
グルジッド: いるけど、引きこもってる
グルジッド: というか閉じ込められてる
グルジッド: まぁ、そんな感じ

ウルテン: ?!

イノーラ: わけがわからん

ハンベイ: だな

グロック: とじこめられてる
グロック: どういうことだ

グルジッド: ていうか
グルジッド: お前が来るのがおせーから
グルジッド: 透明化したまま眠っちまってたよ

ダーマン: ?

グロック: おれをまってた?

グルジッド: まぁ、そのなんだ
グルジッド: うん

ハンベイ: 期待されてたようだな

グロック: なんでだ

ダーマン: グロックが来ることが織り込み済み?なぜ?

グロック: おれはここをにげだした
グロック: なんでおまえ、まってるんだ

グルジッド: ていうかお前じゃなくても良かったんだけど
グルジッド: アズフールの最後の言いつけで
グルジッド: 弟子の誰かが戻ってくるのを待ってた
グルジッド: オグロク以外なら
グルジッド: 誰でも歓迎

ハンベイ: 聞き覚えがあるな

ダーマン: そんなに優秀な人ばかりですか

グロック: おぐろくは、りっくをころした

ウルテン: そいつと同門だったのか

グルジッド: じゃあ、まぁ、こっちだよ


グロックの師匠アズフールの使い魔である、インプのグルジッドがひらひらと飛んで部屋の一つへ案内する。
一行が後について部屋に入ると、研究室らしき部屋の中央には干からびた死体があった。

ウルテン: ?!

ダーマン: こちらさんは?

グルジッド: そこに寝てるのが俺の契約者
グルジッド: アズフールだったもの
グルジッド: だね

グロック: しんでいたのか

ダーマン: …

グロック: だれがころした


さっそく死体を調べてみると、床に赤黒く残った染みからして失血死したようだ。
直接の死因となったのは背中から刺されたらしい刺し傷が二つ。どちらも致命傷になりうる。

ダーマン: 刺し傷が二カ所

ウルテン: この人、誰だ?
ウルテン: グロックの師匠、とはちがうんだよな

ダーマン: グロックのお師匠殿ですね

ウルテン: へ?

ハンベイ: 話の流れからするとそうらしいな

ダーマン: 一応、祈祷を…

ウルテン: でも閉じ込められたって言ってたなかったか?

グルジッド: そんな死体はどうでもいいんだよ
グルジッド: いいかい
グルジッド: この部屋の中に、なんか魔法の壺があるんだって
グルジッド: それを隣の部屋の真ん中において
グルジッド: この呪文を使ってくれってさ


グルジッドがスクロールをグロックに渡す。
それには見覚えがあり、緊急時に助けを呼ぶためのものだと言って渡された事があるが、グロックは使った事がなかった。

グロック: ああ、これか・・・

グルジッド: あっ、そうだ
グルジッド: あとこれ、
グルジッド: まあここのカギだけど
グルジッド: 俺はもういらないからやるよ
グルジッド: じゃ、これで契約満了だからな

グロック: せんせいをころしたのはなにものだ

グルジッド: そんなの教えておけって言われてないし

グロック: いわれてなくてもいえ
グロック: さもないところす

グルジッド: すげー長いこと待ってたんだぜ
グルジッド: 俺の苦労も察してくれよ

グロック: しるか

グルジッド: 俺は優秀な使い魔だからな
グルジッド: 言われてないことはしない
グルジッド: じゃあな

イノーラ: 使い魔にしてはかなりいい子だぞ、あれ

ダーマン: まあ、何を考えているかはわかりませんよ。バートルの住人ですし

イノーラ: ともかく、壷をどうこうしてみようじゃないか

ウルテン: *ぐすっ*
ウルテン: ちーん
ウルテン: いいはなしだ!

ハンベイ: ……なにやってんだ?

ウルテン: ああ、これを読んでいたんだ
ウルテン: 外にあったあの切れ端の続きだよ


グロックとグルジッドのやり取りの間、ウルテンは見つけた本を読んでいたようだ。
ちなみに内容は以下のとおりである。前回と違って今回はゲーム進行上なんの意味もない。

民の通報によって捕縛されたジュリアス達はそれぞれ牢獄に監禁された。
ジュリアスはその監獄で30年を過ごすことになる。

通常であれば、反乱罪によって死刑となるところであるがジュリアスはまだ完全に民衆の支持を失ったわけではなかった。そのため彼の死刑によって民意を損ねるようなことは、現王家には出来なかったからである。

ジュリアスが監獄にいる間に、王は2回変わった。そして現王家3代目の王が即位したとき、ジュリアスはついに恩赦を得ることになる。
すでに老人となったジュリアスが監獄から出たとき、監獄の警備主任が毛皮に包まれたものを持ってきた。

「あなたの荷物はこれに間違いないでしょうか」

若い警備主任はそういって荷物を解いた。
すでにぼろぼろになってしまった服。錆び付いたチェインシャツ。いくらかの路銀や細かい持ち物。そして聖剣が3本。
ジュリアスは聖剣をじっと見つめていた。警備主任は「ああ」と気が付いて聖剣を手に取ると少し引き抜いた。
その刀身からこぼれる光はまさにそれが本物である証明であった。

「そ、それは……彼らはそれを持っていかなかったのか?」

ジュリアスは、現王家が聖剣を奪い取ってどこかに隠したか破壊したものと思っていた。真なる血統の持ち主が、特定の場所で抜き放つことで魔力を解放する……それが聖剣である。
しかし現王家が聖剣としているそれはニセモノに過ぎず、誰でも特定の手順を踏めば本物に似た魔力を放出する。

ジュリアスの言う"彼ら"すなわち現王家のものにとって、この聖剣の存在は脅威のはずであった。

若い警備主任はしかし、ジュリアスの驚きにの意味は理解できずに「受刑者の荷物を勝手に持っていくなど私が許しませんよ」と答えて刃を納めた。

この時のジュリアスはまだ知らなかったが、すでに聖剣の儀式は行われていなかった。現在の王家は、民衆からなる議会のリーダーという立場になっており、議会の支持がなければ即位することが出来ない仕組みに変わっていたのだ。

ジュリアスは聖剣を手に取った。真の持ち主に答えて聖剣はかすかに震えたが、もはやジュリアスの腕の震えと区別は付かない。
ジュリアスは黙って、聖剣の一本を警備主任へと差し出した。

「そんな!いただけませんよ。銅貨の一枚だってもらえません。ましてやこんな名剣、なにか特別なものなのでしょう?」

若い警備主任は両手で、差し出された聖剣を押し戻した。しかしジュリアスも引かない。

「君には世話になったし……それにこれは確かに名剣だが、しかしそれだけのものだ。特別なものなんかじゃないんだ。私には青春の思い出に、一本だけあればそれでいい」

頑として受け取らない警備主任ではあったが、やはり頑として引かないジュリアスにやがて根負けすると聖剣の一本を受け取った。

「わかりました。これは私が生まれる前からここに預かっていたもの。これから先もここで預かることにします。いつか必ず、受け取りにいらしてください。あなた自身でなくとも、ね」

ジュリアスはうなずくと、残った二本の聖剣を持って監獄を後にし、街へと向かった。

街は新王即位の祭りで賑わっていた。人垣を避けて、路地へと入ったジュリアスを少年が追い抜いて走っていった。その手に聖剣を抱えて。
ジュリアスは少年の手が聖剣に伸びたときからわかっていたが敢えて手を離したのだった。
少年は路地を駆けて行く。細く薄暗い道を、反対側のにぎやかで明るい大通りに向けて走っていく。

やがて、ジュリアスが追うでもなく、声をあげるでもない様子なのが気になったのか、少年は大通りに出る直前に一度だけジュリアスのほうを振り向いた。逆光のせいだけでなく、視力の衰えもあって顔は判別できなかったが、その貧しい身なりは見て取れた。そして抱えた聖剣は、光を受けてキラキラと輝いている。

ただ黙って、そんな少年を見ているジュリアスに、少年は一瞬の躊躇を見せたがすぐに大通りから人ごみに消えていった。
残った一本の聖剣を抱えて、ジュリアスは実に38年ぶりに、郊外にある我が家へと帰ってきた。
家の様子は、彼がかつての仲間をかくまったあの夜とまるでかわっていない。違いがあるとすれば、家の手入れをしているらしき中年男性がいることくらいである。
ジュリアスに気づいて、男性は声をかけてきた。

「こんにちは。どちら様ですか?」

ジュリアスは少し躊躇した。名乗っても問題ないのだろうか。

「あ、えー……昔、この家に住んでいたものです」

ジュリアスがそう答えると、男性はパッと顔を輝かせた。

「ということはジュリアスさん?」

「はい」

「やぁ、恩赦を受けたのは聞いていましたが、今日ここに来るとは思ってなかった。あ、私は……」

男は議会に雇われた大工だと自分のことを説明した。監獄にいる受刑者の資産はきちんと管理すべきであるという法律が10年ほど前に制定され、この家もジュリアスの資産であるとされたのである。そのときには完全に廃屋と化していたが、この男が修復し、以来ずっと現状を保ってきたのである。

「最初は仕事の一つだったんですけどね、さすがにこれだけ長い間付き合ってると、この家が自分の家みたいに愛着沸いちゃって……そのうちになんだが、私もこの家と一緒にジュリアスさんの帰りを待ってる気分になっちゃって」

大工はそう言いながらジュリアスを家に案内した。
家の内装も、当時とは少しの違いはあれど家具などはそのままに見えた。ジュリアスは家の中を一通り見て回ると、ベッドに腰を下ろした。長い旅から帰ってきた気分だった。
それから横になり、今までの旅路に思いを馳せる。
そんなジュリアスの様子に気が付いて、大工はそっと扉を閉めながらささやいた。

「明日、また来ますんで、困ったことがあったらなんでも言ってくださいよ。じゃあ、ゆっくり休んで」

大工が去った家でジュリアスは一人、彼の青春の全てを賭けた聖剣を抱えて深い眠りについたのだった。


ウルテン: ええと、それで
ウルテン: ん? あのインプは?

ダーマン: 話が本当なら今頃はバートルですね

ウルテン: 帰ってしまったのか

ダーマン: うそならどこかで待ち伏せかも

グロック: それはない
グロック: あいつはそういうやつだ
グロック: ぶっころすまえに、にげられたなあ

ダーマン: ふむ

ハンベイ: とりあえず、できることをやってみるしかないな

グロック: 壷か

イノーラ: 探すところからか

ウルテン: あまり重要そうなものは残っているようには見えないけれど

イノーラ: なさそうだな

グロック: つぼとは、なんだ

ダーマン: 一応これ、壺ですかね?

グロック: つぼとは、いれものだ

ハンベイ: そうだな

ウルテン: 要点のことも「つぼ」っていうよ


一行は手分けして部屋の中を探してみるが……

ウルテン: ん?
ウルテン: もしかして
ウルテン: このたな
ウルテン: ちょっとどけてくれよ
ウルテン: おっと
ウルテン: 壊れてしまった

ダーマン: ほほう


棚の後ろに隠すように、ルーンを彫った壺が置かれていた。

ウルテン: でもこれかい

グロック: そのままだったか
グロック: せんせいにしては、めずらしいな・・・

ダーマン: まあ死ぬ直前に謎かけ作ってる場合でもないでしょう


グロックはその壺を受け取ると、言われたとおりに隣の部屋に向かう。

ウルテン: グロック

グロック: ?

ウルテン: お師匠さん、弔ってあげなくていいのかい?

グロック: とむらうひつようは、ないかもしれない

ウルテン: ?


グロックはウルテンには答えず、隣の部屋にいくと魔法陣の中心にその壺を置いた。
そしてスクロールの呪文を唱える。
魔法の壺からもやもやとしたものが立ち上り、それは徐々に人型を取り始めた。

●グロックの師匠

アズフールの魂: ……

ダーマン: ふうむ…

ウルテン: あれは…

アズフールの魂: ……

ダーマン: 立場的にはターンしたい所ですが

グロック: せんせい

アズフールの魂: ん……

ハンベイ: 背中に穴でも開いてそうだな

アズフールの魂: ……ああ、グロックじゃないか
アズフールの魂: そうか……君が私を助けてくれるのか
アズフールの魂: 皮肉なものだね

グロック: それはなんともいえない

アズフールの魂: いや、そうなるさ
アズフールの魂: さて……見ての通り困った事になっていて
アズフールの魂: なんとか助けて欲しいんだが

グロック: どうすればたすかるかによる

アズフールの魂: とりあえず私の肉体は死んでたかな?
アズフールの魂: ああ…困ったな
アズフールの魂: どうなるんだろう

グロック: にくたいが、ひつようか

ダーマン: 来る世界へのお送りなら私が行えますが?

アズフールの魂: いや、僧侶は必要ない
アズフールの魂: というかこれが通常の死とは違うということを
アズフールの魂: 説明してあげたいな

ウルテン: でも肉体がなくなってしまったら、魂だけでこの先どうなるんだい?
ウルテン: ずっと存在しつづけられるものなのかな

グロック: だーまん
グロック: じゅもんをつかっておいたほうがいいかもしれない
グロック: にくたいをうばわれたくなければ

ダーマン: ふうむ

ウルテン: グロックのお師匠さんなのに、そんな心配いるのかい?

ダーマン: (ひそひそ)いやあ、あんまり良い関係じゃないようですよ?

アズフールの魂: 先生を信用しないのは変わらないな。そんなに酷い事したっけ…
アズフールの魂: アンデットだらけの部屋に1週間閉じ込めたことを怨んでいるのかな

ウルテン: とりあえず先生の説明を聞こうよ、グロック
ウルテン: 話が進まない

ダーマン: 必要になるまで壺にいてもらえば良いんじゃ
ダーマン: 別にスペクターというわけでもないようですし

グロック: なるほど
グロック: では、はなし、きこう
グロック: うるてん、かぶとかぶったほうがいい

ウルテン: まあそんなに言うなら、念のためかぶるけど

アズフールの魂: まあ、順を追って説明するよ
アズフールの魂: オグロクのことは覚えてるかな?


グロックはうなずく。

アズフールの魂: そうだな、君ら二人だけがハーフオークの弟子だからな
アズフールの魂: そのオグロクがだいぶ前に尋ねてきたんだ
アズフールの魂: 卒業してから初めてだったんだけどね

グロック: なんのために

アズフールの魂: その時はわからなかった
アズフールの魂: なつかしくてちょっと寄った……のかと思ったけど
アズフールの魂: もちろん違った

グロック: そうでしょうとも

アズフールの魂: 私はその時
アズフールの魂: 研究に熱中しててね
アズフールの魂: あまり注意を払ってなかった
アズフールの魂: それがいけなかった
アズフールの魂: 背後から忍び寄ったオグロクはなんと私を刺してしまったんだ

グロック: うしろから、さされた

ウルテン: !

アズフールの魂: しかもまず肺を刺されて
アズフールの魂: 呪文が唱えられないようにするんだから
アズフールの魂: あいつは凄いよ

ウルテン: 自分の師匠を刺すなんて!

ダーマン: まあそれくらいはしそうな奴なんですよ

アズフールの魂: グロックは、血がかたまりみたいになって喉から溢れてきて窒息する感じって味わったことあるかい?

グロック: ない

アズフールの魂: まあ、普通そうだよな
アズフールの魂: 貴重な体験だった……まぁそれはいいとして

ハンベイ: ……貴重な体験なのか?

ダーマン: (ひそひそ)なんというか文学的な人ですな…

アズフールの魂: 私が長年研究していたクリスタルのことを覚えているかな

グロック: どんなものかはしらない

アズフールの魂: この付近の遺跡で見つかって
アズフールの魂: したいの近くにおいておくと死体が勝手に動き出すやつ

グロック: ・・・

ダーマン: 物騒な代物だ

グロック: それが、おぐろくの、ねらいか

ハンベイ: なんか、どっかで見たな

ダーマン: あのアンデッド鳥の騒ぎの時ですな

ハンベイ: アレか……

アズフールの魂: あのクリスタルと同種の遺跡で見つかった杖があるんだ
アズフールの魂: オグロクはそれが狙いだったようだ
アズフールの魂: 真っ先にそれを奪い取ったからな
アズフールの魂: あの杖は
アズフールの魂: 私の友人ヤルルンシュからもらったものだ

ウルテン: ヤルルンシュ…(聞きなれない響きだな

アズフールの魂: どうも人間にしか使えないものらしくて
アズフールの魂: いらないから、とくれたんだ
アズフールの魂: どうやらハーフでも使えるようだな。オグロクが使って見せたから
アズフールの魂: これは興味深いことだが、まぁ、それもいいか

ハンベイ: ……いいのか?

アズフールの魂: 私の本当の研究対象はその杖でね

ダーマン: (ひそひそ)話のそれやすい人だなあ

アズフールの魂: それは最初、ネクロマンシーの秘術が封じられたものかとおもっていた
アズフールの魂: だがどうも違うような感じがする
アズフールの魂: 杖を調べていて発見した魔力を試しに使ってみたことがあって
アズフールの魂: まさか機能してるとは思わなかった

ハンベイ: ……物騒だな

アズフールの魂: この壺。これ自体は魔法で紋様が変わるだけの壺なんだけど
アズフールの魂: もちろんアンティークとしての価値は高いよ
アズフールの魂: まあそれはいいとして
アズフールの魂: この壺を対象にしてみたら、機能していたらしく
アズフールの魂: 死ぬ直前に、こっちに精神だけ移されたようだ

グロック: ・・・

イノーラ: つまりこの状態はあんた自身が狙ってやったわけじゃないんだな?

ウルテン: ふーむ

ダーマン: (ひそひそ)本当にこの人魔術師?ローグがよくやるような話なんですが…

ウルテン: でも話は面白いじゃあないか

ハンベイ: 魔術師じゃなくて妖術師なんじゃないのか?

ウルテン: でも「閉じ込められた」っていうのはそういうことだったんだね
ウルテン: 合点が行った

アズフールの魂: それでグルジットに念話で指示を出して、誰かにスクロールを使ってもらう必要があったから頼んでおいた
アズフールの魂: 頼みというのは他でもない
アズフールの魂: その杖を取り返して欲しいのだ

ハンベイ: 壷に手足でもつけるのかと思ったが

アズフールの魂: あの杖があれば、なんとか出来るような気がする

グロック: つえか

ダーマン: 一応蘇生呪文のスクロールもありますけど…その状態になられて半年くらいはたってますよね?

アズフールの魂: うむ…それに恐らく、肉体が蘇生しても精神は戻らないような気がするよ

ダーマン: じゃあ呪文も機能しませんね

グロック: おぐろくは、おーくとともに、ここらをあらしまわっている
グロック: あいつのねらい、なんだ

アズフールの魂: うーん……
アズフールの魂: そうだな……もし
アズフールの魂: オグロクがあの杖について私と同じくらいの知識を得ていた場合
アズフールの魂: 考えられるのは
アズフールの魂: 杖が真の魔力を解放するポイントを探している……だろうか

グロック: しんの、まりょく、かいほう

ダーマン: ふむ

グロック: そうなったら、どうなる、せんせい

アズフールの魂: それがどんなものかはよくわからないんだが
アズフールの魂: 例えば
アズフールの魂: 周囲の人間全員の精神と肉体が切り離されたりするかも
アズフールの魂: あるいは一人に集合して補完したりとか……
アズフールの魂: 逆にバラバラになったりするかもしれないし
アズフールの魂: 単に凄い呪文が使えるようになるのかもしれない
アズフールの魂: どうも精神、魂、肉体といったものに非常に関係深いものなのはたしかなんだ

ウルテン: 想像もつかないな…

ハンベイ: まったくだ

グロック: おーくが、さがしていたのは、それかな

イノーラ: えーと、つまり、杖を奪えばハッピーエンドになるっぽい…ってことだよな

ダーマン: まあ、そのようです

ウルテン: 奪わないと大変なことになる、といったほうが正しいと思うよ

アズフールの魂: この付近の遺跡っていうのは基本的に
アズフールの魂: エルフのモノか、ドワーフのものだ
アズフールの魂: しかし中には人間サイズの、人間にしか使えない魔法の品物がある遺跡があるんだ
アズフールの魂: それがどこのものかはわからないけど

ハンベイ: 人間にしか使えない物が出るとなると、限られるか

ダーマン: アイマスカーやネザリルもこのあたりではありますしね

アズフールの魂: うむ

グロック: このへんにも、おーくがたくさんきている
グロック: ねらいは、それかな?

アズフールの魂: うーん
アズフールの魂: わからないがしかし
アズフールの魂: あの杖を使えるポイントになりうるのは人間用の遺跡であることは間違いないな

ダーマン: わからないのはたとえそうだとして、何でオークがみんな仲良く協力してるのか、ですね

アズフールの魂: オグロクの個人的な研究にオークが協力してるなんてことはないだろうから、たぶん黙ってるんだろう

イノーラ: 限定的に杖を使う方法を発見していて、揃って精神支配してるとか

ダーマン: それはありそうかな

ウルテン: 適当なことをいって扇動しているだけということもあるんじゃあないかな

グロック: おーくが、すごいかずで
グロック: あたりをせめまくってる
グロック: まほうの、ぶきぼうぐでかためて
グロック: これは、なかなかないことだ
グロック: せんせい、これにも、おぐろくが、からんでいるのだろうか?

アズフールの魂: そうか……まあ杖の魔力でオークは増やせないから状況を利用したと考えるべきだろうな
アズフールの魂: うーん
アズフールの魂: あの杖
アズフールの魂: 友人のヤルルンシュからもらったものだと言ったが
アズフールの魂: それはオグロクも知っているんだ
アズフールの魂: ヤルルンシュについて話した事があったかな?

ダーマン: その人…だかなんだか知りませんがに聞いてみるのが早いかもしれませんね

グロック: いや、おぼえはない

アズフールの魂: ヤルルンシュはビホルダーで

イノーラ: 人じゃなかったな

アズフールの魂: 昔ソードコーストのほうで悪の帝国を作ろうとしたことがあった
アズフールの魂: たしか5回くらい

グロック: ・・・

アズフールの魂: 5回とも冒険者に阻止されている
アズフールの魂: それで彼は
アズフールの魂: より力を蓄えるため……という名目でこちらに引っ越してきたんだ
アズフールの魂: まあ本当のところ、彼は、いわゆる悪人がよくなる病気なんだ

ダーマン: その後の計画もないのにとりあえず支配したがる病?

アズフールの魂: 冒険者怖い病

イノーラ: …

グロック: いまも、おなじばしょに?

アズフールの魂: うむ、いまも、その頃に見つけた住みかにいると思うんだけど
アズフールの魂: そこで彼は
アズフールの魂: 未来の「我が帝国」のために発見した武器などを溜め込んでいたはずだ
アズフールの魂: それをオグロクが奪ったのかもしれないな

グロック: ・・・
グロック: それを、おーくがりようしていた・・・
グロック: つじつま、あうなあ

ハンベイ: ……迷惑千万だな

ダーマン: そうならもうその人は故人ですかねえ

アズフールの魂: とりあえずヤルルンシュを尋ねてみるのがいいかもしれないな
アズフールの魂: もし殺されているなら
アズフールの魂: 彼の住みかはオークだらけのはずだが

グロック: おーくを、てしたにしたのかもしれないな
グロック: おぐろくと、てをくんだとか

イノーラ: 詳しい場所を

アズフールの魂: 実は私と彼はけっこう仲が良くて秘密のポータルをつなげてあるんだよね
アズフールの魂: だからとりあえずヤルルンシュの遺跡に行ってみるのがいいと思うが
アズフールの魂: もしオークに占領されていれば忍び込める
アズフールの魂: そうでなくても忍び込める

グロック: せんせいの、でしだというあかしがあれば
グロック: おれたち、そいつに、ちりにされない

アズフールの魂: そうか、出会い頭にいきなりやられるかもしれないな

ハンベイ: 鉢合わせてもいきなりどうこうはされんか

グロック: それさえなんとかしてくれれば
グロック: おれ、おぐろくころすと、やくそくしよう

アズフールの魂: とりあえず、もし彼を見かけたら「冒険者だ」と名乗れば彼はいきなり慎重になるはずだ
アズフールの魂: そのあとで事情を説明して
アズフールの魂: 私を呼び出してくれたまえ
アズフールの魂: さっきの呪文であと数回は呼び出せるはずだ

ハンベイ: 壷もって行けと……

イノーラ: ついてくるんだ…

グロック: せんせいは、ものしりだ
グロック: たすけになる

ウルテン: そっちのほうが話もはやいさ

アズフールの魂: ポータルは、家の裏手からちょっと行ったところにある古い塔の中だ
アズフールの魂: じゃあ、何もなければ私は休むよ
アズフールの魂: よろしく頼む

ウルテン: それじゃさっそく向かおう!


アズフールの魂は再び壺に戻った。
一行はアズフールの研究室からポータルを通って家に戻る。

イノーラ: 次の目的が見つかってよかった

ウルテン: 面白い人だったじゃあないか、グロックのお師匠さん
ウルテン: なんでそんなに会いたがっていなかったんだかわからないよ

グロック: あのひとの、こわさ、しらないんだ

ダーマン: それはどうかと
ダーマン: 力はあるのに話にとりとめがない。ああいうタイプは怖いですよ

ウルテン: ? どうして?

ダーマン: 先が読めないし、話の持って行きようがないんですよ

ハンベイ: 感性は常人離れしている感じだったな

イノーラ: 何やりだすかわからん

グロック: じぶんの、きょうみが、すべて
グロック: なんでもやる

ウルテン: そういうものかな

グロック: いくか・・・


一行は家の裏手にある道らしきものを辿っていく。
やがてほとんど埋もれたようになっている古い小さな塔を発見したが……

ウルテン: !

ハンベイ: いるな

ウルテン: なるほど、
ウルテン: あっちから来たわけではない、ということか
ウルテン: 少なくとも


塔の入り口は武装したオークが固めている。
ウルテンたちは師匠の家からここまで足跡を調べてきたが、オークが通った形跡は残っていなかった。
つまりそこにいるオーク達は、街道の野営地から来たのではなく、その塔から来た事になる。

イノーラ: …迂回するか?

ウルテン: どうやらやっつけなくては進めないみたいだ
ウルテン: 塔には


敵襲を警戒しているわけではないオーク達の隙をついて、一行は先制攻撃を仕掛けて倒した。

ウルテン: ふう
ウルテン: あいかわらずいい装備だ

グロック: かね、もうかるなあ

ダーマン: 持って帰りたいところですが重いですねえ

グロック: おーくてごわいから、けっこう
グロック: じゅもんつかったな

ウルテン: グロック、鍵を


グロックはグルジットから渡された鍵を使って塔の扉を開けた。
小さな部屋の中にポータルが輝いている。
一行はそのポータルに飛び込んだ。


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