サヴェッジ・フロンティアDR1235
第二章 カヴァードホームの戦い
「戦場の英雄」
●戦火の街
遺跡から街の地下に戻り、シティホールへと戻ってきた一行。
その一行を一人の守備兵が待っていた。
守備兵 : おかえりなさい!
守備兵: 例のアンデット騒ぎは、皆さんがなんとかしてくださったのですね
イノーラ: ただいま
ダーマン: 一応はそうなるかな
ダーマン: 皆はやはり出ているのですか?
守備兵: はい
守備兵: 私はみなさんへの伝言のために
守備兵: ここに残されました
ウルテン: 戦況はどうだい
守備兵: はい、簡単にですが、そこのテーブルの上の書類に書いてあります
守備兵: みなさんへの伝言を
守備兵: 伝えたら、私は行かなければなりません
ダーマン: しかし、また厄介な事が判明した
ダーマン: 東側か…
ダーマン: 南はあの連中だな
テーブルの上の書類には、現在の戦況が書かれている。
守備兵: アンデットが沈静化したところをみると、皆さんの作戦は成功したようだとのことで
守備兵: 疲れているところ申し訳ないのですが、ホーム防衛のために
守備兵: 戦線に参加して欲しい、とのことです
ハンベイ: 厄介なことだ
ダーマン: もちろんだ。具体的に指示など出ているかな?
守備兵: いえ、皆さんがどのような状況で帰還されるかわからないので
守備兵: そこは皆さんの判断に任せる、とのことです
ダーマン: ふうむ
ダーマン: 現在の戦況は?
守備兵: 現在はクロウィンさんが
守備兵: 街中での混乱を沈静化させ、東側に兵力を移動中
守備兵: 敵は東に陣を張っているようです。そこから波状的に攻撃してきます
守備兵: 南側へ敵が回りこんできた様子はありません
守備兵: 北側は市民数人に見張りを頼んで、全員が東に移動済みです
グロック: どーするか
イノーラ: ボーっとしてる時間はあまりなさそうだな
グロック: たぶん、ひがしはもんだいない
守備兵: どこに向かうか決めていただければ
守備兵: それをクロウィンさんに伝令します
グロック: あいつらころせるならどこでもいいぞ
ハンベイ: 北に回り込まれるような気配はあるのだろうか?
守備兵: 北側はありえないんじゃないでしょうか…私見ですが
守備兵: デリンピーアが増水していて
守備兵: あの河を船でのんびり渡ってきたら
守備兵: 市民にだって見つかりますし
守備兵: 渡り終えるまえに迎撃準備ができるかと思いますが
ダーマン: まあ、早期警戒が効くなら今は捨て置くしかないでしょう。人員が足り無すぎる
守備兵: 特になければ東側に参戦していただければ問題ないかと思いますが…
ダーマン: そう言う事なら東ですかね
グロック: じゃ、それでいこう
イノーラ: なら急がないとな
守備兵: わかりました。では、そのように伝えておきます
守備兵は伝令のために走って行った。
ダーマン: 補充できれば良いんですがあまり時間はなさそうですね
ハンベイ: 活用できるなら活用したほうがよかろう
●戦場へ
一行は東側の味方陣営で配置についた。
周辺にはブラッドアックス傭兵団の一部隊がいる。
今回の騒ぎでサンダバールに戻れなくなってしまった部隊である。
ロウラン: なにか用か?
グロック: 一緒にカヴァードホームを守ろう!
ロウラン: そのつもりでここにいるんだ。お互い一匹でもオークを殺してから死にたいもんだな。
グロック: しぬきか
ブラッドアックス傭兵団には見知った顔がいた。名も無き村から一緒に逃げてきたロウランである。
リックを殺され、家を焼かれ、村を失った彼はオークへの復讐のため傭兵団に参加したのだ。
グロック: このばしょで、いいのか?
ウルテン: !
と、ここで敵の第一陣が岩場から現れた。
防衛柵を使いながら、一行含むカヴァードホーム軍は戦って撃退する。
ウルテン: こっちは見張っておいたほうがよさそうだな
グロック: じんちのばしょ、ちがうな
ウルテン: ?
グロック: たかいばしょ、おさえるのがだいじだ
グロック: これだと、あいてにとられる
ウルテン: そうともかぎらないさ
ウルテン: 高い場所は水や物資の補給路がきちんと確保できていない場合
ウルテン: 相手に包囲されてしまったら死地になってしまうよ
グロック: ばかいえ
グロック: まちのすぐそばだぞ
ウルテン: 町の傍でも、さ
グロック: ならなおさら
グロック: ばしょがわるい
ダーマン: いずれにせよ、弓兵とグロックには高台にいてもらう方が良さそうですね
ウルテン: グロックのアイボールで
ウルテン: 高台から何か見えないかな?
グロック: どうかな
ウルテン: たのんでみてくれよ
クロニー: 私は物見ではないのですがねえ
ウルテン: はは、そういわずにさ
ウルテン: せっかくそれだけたくさん目があるんだから、きっとよく見えるだろう?
クロニー: 肉眼で目視できる敵は現在のところ発見できず
ウルテン: ふむ
そこへイノーラが倒した敵兵の盾を奪い取って、持ってきた。
イノーラ: ダーマン
イノーラ: この紋章、今までのと違うと思うんだが
イノーラ: 盾についてるやつだけど
ダーマン: む?
ダーマン: ふむ…
ダーマン: 複数の部族が参画しているようですしね
ダーマンが考えていると、自陣右翼のほうで戦いの声が上がった。
グロック: あっちになにかでたな
ウルテン: ということは
ウルテン: そのすきにこちらに
ウルテン: 来るかもしれない
ウルテン: さっきの感じからするとね
実際その通りに、第二陣の攻撃が来た。
ダーマン: 妙に散発ですね
ウルテン: それにしても敵もこんな攻撃の仕方では
ウルテン: 消耗するだけだと思うんだけど
ウルテン: グロック!
ウルテン: しっかり!
ウルテン: 大丈夫?
ウルテン: きたぞ
ウルテン: ナイスだグロック!
グロックが呪文で援護する。
グロック: いそげ
グロック: あまりながもちしない
ハンベイ: 洒落ならんな
第二陣を撃破して、敵の死体を片付ける。
グロック: てきは、かねもちだな
ハンベイ: 全くだ
イノーラ: 分けて欲しいね
ダーマン: そうですね。そこが前から引っかかっているんです
ダーマン: これだけの経済力があれば別に飢えたりはしないでしょうし…?
グロック: もうかるからいいけど
グロック: そうおもう
敵が着ている装備が良いので疑問に思っているようだ。
そこへ敵の第三陣がやってくる。
今度の部隊は今まで以上に数が多く、明らかに見た目の違う部隊長に率いられている。
激戦の最中、ブラッドアックス傭兵団や守備兵に被害が出たものの、なんとか撃退することができた。
ウルテン: ふう
ウルテン: グロックのおかげで楽に倒せたけど、こいつ他とちがった
ウルテン: 部隊長かな
ダーマン: ええ、あきらかに
グロック: いっかいめの、まひ
グロック: かわされた
ウルテン: このスケイルメイルは補修すれば使えそうだ
グロック: つえわかんないな
グロック: おれもっとく
イノーラ: 本当に金持ちだな
ダーマン: 指輪、誰か使いますか?
ハンベイ: いや、いい
ウルテン: もらっておこうかな
グロック: もうかった
グロック: まちがのこればだけど
ハンベイ: そういうことだな
グロック: いざとなったらどうする、だーまん
グロック: しぬまで、ここでやるのか?
ロン : た、たいへん!
そこへ、名も無き村から一緒に逃げてきた羊飼いのロンが陣に駆け込んで来た。
ウルテン: ?
ロン : 北からきた!
ロン : はやく、サリーナたちが危ない
ロン : たすけてくれ
一行はすぐさま、北門に向けて駆け出した。
●北門の戦い
北門は本来、デリンピーア河に面した小さな港を持つ場所であるが、今年の増水によって現在は使用不能となっている。
増水した河の流れは早く、敵の侵入を拒む天然の障害物と化していた……はずであった。
ウルテン: こ、これは
ダーマン: トカゲ共か!
ウルテン: トログロダイト??
ハンベイ: 厄介な
見張りについた市民兵(名も無き村の住人たちを主力としている)たちが、どんどん上陸してくるトログロダイトの部隊に対応しきれなくなっていた。
ウルテン: このっ!!
ウルテン: くそっ…ちからがぬける・・・
ウルテン: それにしてもひどいニオイだな…
ウルテン: どうしてトログロダイトが??
ウルテン: 敵に雇われたんだろうか?
ダーマン: 本当にどういう事なんだ?
ウルテン: グロック、これ
ウルテン: あいつらが持っていたんだ
グロック: うるてんに、けむりを
グロック: かさねるぞ
グロック: くものいとも、だせるが
グロック: しゅびへいまきこむな
一行が援軍に駆け付け、戦いは膠着状態になったが、さらに一部隊が援軍に来てくれたおかげで敵を撃退することができた。
ウルテン: ちょっと
ウルテン: 休むよ
ハンベイ: よさそうなメイスだが
ダーマン: 今のは族長のようですね
ウルテン: 一段落したかな
グロック: なぜ とろぐろだいとが・・・
守備兵 : 敵軍が撤退を開始したようだ
守備兵 : 追撃に出る余力は……なさそうだな
ダーマン: しかし、本当に良い装備ですねえ…
ダーマン: この盾なんか、ウォーターディープでもそうそう手に入らないんじゃ
グロック: どこかから、てにいれてるのか?
ダーマン: そこですよね
グロック: あたまいいおれでも、みわけつかないそうび、あるぞ
ダーマン: とりあえず戻って報告と補給ですね
●戦い終わって
一行はシティホールに報告のため戻ってきた。
ダーマン: もど…りました
クロウィン ケルベン: やあ
クロウィン ケルベン: よくやってくれた
クロウィン ケルベン: 今回は、本当に……危なかった
クロウィン ケルベン: 犠牲もたくさん出てしまったよ
ダーマン: そうですね。他の種族まで雇うとは
ウルテン: トログロダイトが来るなんて
クロウィン ケルベン: うむ…
クロウィン ケルベン: どういう理屈なんだろうか
クロウィン ケルベン: 単に金なのか
クロウィン ケルベン: 利害が一致したからとか
クロウィン ケルベン: それとも他種族も取り込みつつあるということなのか
ダーマン: 奴ら、装備が妙に充実してるのも不思議です
クロウィン ケルベン: そうだな……
ダーマン: 本当ならそろそろ普通の矢だってつきそうな物なのに
ダーマン: 食い詰めの遠征とは思えない事が多すぎる
クロウィン ケルベン: われわれは案外、この地域の事を知らないんだ
クロウィン ケルベン: しかし、この街のような遺跡も残っていて
クロウィン ケルベン: そこに装備品が残っていた…という可能性はないだろうか
クロウィン ケルベン: 考えすぎかな
ダーマン: エルフの遺産ですか…
ダーマン: あり得る話ですが…
グロック: すごくもうかったぞ!
クロウィン ケルベン: 古くは、ドワーフの王国もあったと聞く。まあ、御伽噺みたいな昔の話だけど
ウルテン: ・・・
ダーマン: それなら数が減ってないのが不思議ですね。ほぼ例外なくエルフの廃墟には恐ろしいほどの罠があるはず
クロウィン ケルベン: うむ……魔法で隠されているとか、いろいろと話は聞く
ハンベイ: とにかく、わからないことだらけなのはかわらんか
ダーマン: そうですね…
クロウィン ケルベン: そうだな…
ダーマン: ああ、そういえば今回本物のアーガイルを名乗るオークも見ました
クロウィン ケルベン: ああ…私も見たよ
クロウィン ケルベン: 東の戦線で会った
クロウィン ケルベン: 私を見つけるなり、仲間も踏み潰すような勢いで向かってきて
クロウィン ケルベン: 近くにいた兵が巻き込まれて死んだよ…
ウルテン: ふーむ
ダーマン: うーむ
クロウィン ケルベン: その鎧は指揮官と見た!とか言ってたな
イノーラ: ってことは、アーガイルはまだ生きているのか?
クロウィン ケルベン: 生きている。
グロック: よくいきてたな
クロウィン ケルベン: 私もなんとか逃げ延びたが
クロウィン ケルベン: しかし、あの猪突猛進ぶりは簡単に罠にかかりそうだったな
ダーマン: なにかオークらしく無いというか、妙な奴ではありましたね
グロック: わなふみつぶしてきそうだな
クロウィン ケルベン: 休みたいところだけど報告を聞こうか。
クロウィン ケルベン: アンデットの件は?
ハンベイ: なにか破片があったな
ダーマン: そちらは倒しました。しかし、まだいる可能性はあります
ダーマン: 核になる物は破片でしたので同じ物を生産する可能性は残っているかと
グロック: それをみろ
クロウィン ケルベン: なんだい、これは
地下に潜んだ骨の怪物から入手した水晶の破片をテーブルの上に置く。
グロック: しらないのか
クロウィン ケルベン: うーん、なにかこう…気持ち悪くなる感じがする
グロック: それをつかっていたのだと、おもう
ハンベイ: 調べてもらえばいい
グロック: つまり、もうじゃを
グロック: つかうのに
クロウィン ケルベン: ……私はネクロマンシーに詳しくないからな…
ダーマン: おそらくはゴーレムやあるいは「憑依」に近い現象を起こさせる物だと思います
グロック: おれの、せんせいなら、わかるかもな
クロウィン ケルベン: ほう?
クロウィン ケルベン: どこにいるんだ、グロックの先生は
グロック: お・・・おれ、だまってでてきたから・・・
ハンベイ: 誰かわかるやつに見せればいいだろう
グロック: ・・・さ・・・さんだばーるの
グロック: ちかくだ
クロウィン ケルベン: ふむ
ウルテン: ?
クロウィン ケルベン: まあとりあえず預かっておくが
ダーマン: となれば放逐やディスペルは対抗手段として使えない事になります
グロック: なにかききたそうだな、うるてん
ウルテン: いや、いまはやめておくよ
クロウィン ケルベン: 他には?
グロック: そとにつながってるのは
グロック: はなした?
ダーマン: 例の地下道ですが、町の外に続いています
クロウィン ケルベン: えっ?
ダーマン: 厄介な事に敵陣地の側のようです
ウルテン: たぶん敵に発見されてしまうのも時間の問題だと思う
クロウィン ケルベン: ここの地下が?
ダーマン: 急いで封鎖する事を進言します
グロック: たぶん、まだへいきだ
グロック: りっく、まもってるからな
グロック: でもいそげ
クロウィン ケルベン: ……その話は、私のほかに誰かにした?
グロック: あーがいるは、きづいたか、いずれ、きづくとおもうけど
ダーマン: 話したのは貴方だけですがオークはいずれ気づくでしょうね
クロウィン ケルベン: なら、街の人には黙っておいてくれ。地下は私と君たちで封鎖しよう
クロウィン ケルベン: そんな通路があるのは、知られないほうがいいからな
ダーマン: どちらにせよ、遺体をもう一度安置しないといけませんしね
クロウィン ケルベン: ああ、そうだなあ…うんざりする作業だ
ウルテン: …
ハンベイ: 死者の尊厳もクソもないな
クロウィン ケルベン: 君らの東と北での活躍は聞いてあるよ
クロウィン ケルベン: 東では敵の一翼を担う族長を倒してくれたようだね
グロック: おれのつえ
グロック: あいつのもちもんだ
ダーマン: 今まで見た事無いシンボルを持った部族でした
クロウィン ケルベン: 北のトログロダイトは誰も予想してなかったが、君たちが対応してくれて助かった
クロウィン ケルベン: 今回わかったことは
クロウィン ケルベン: 敵にはネクロマンシーに長けたものがいるということ
クロウィン ケルベン: そいつがオグログとかいうんだったな
グロック: ・・・おれの、・・・
グロック: いや、いい
ウルテン: …
クロウィン ケルベン: やつが胸の悪くなるような罠を仕掛けてくる可能性があるってことだ
ダーマン: うっかり捕虜も取れないとなると…まあ、控えめに言っても酷い事になりそうです
クロウィン ケルベン: そしてアーガイルとかいう指揮官。おそらくその二人が敵の二柱ってところか
イノーラ: そういえば、やつらの横の連携が弱い話はしたっけ?
クロウィン ケルベン: いや?
イノーラ: アーガイルはネクロマンシーの作戦を知らなかったみたいだ
ダーマン: そうそう。奴らはしっくりいってないようです
クロウィン ケルベン: ああ、敵も一枚岩ではないということか
クロウィン ケルベン: そこに付け入る隙があればいいが
グロック: おーくは、ばか、ばかりだ
クロウィン ケルベン: ふむ…
ダーマン: アーガイルが嘘の名人でない限りと言う事になりますが
グロック: あいつ、ばかの、ひっとうだ
グロック: のうみそまで、きんにくだ
ハンベイ: ま、それはわからん
クロウィン ケルベン: さらに敵は他のオーク部族を取り込みつつある
クロウィン ケルベン: まあこちらもオークに対応しているからいいものの、一枚岩ではないしな……(つぶやく
ダーマン: まあ、そうでしょうね
クロウィン ケルベン: さらにトログロダイトのような他種族も使うようになってきた
クロウィン ケルベン: もともと敵オークは連合していなかったようだが、どうも状況は変わりつつあるようだ
ハンベイ: 状況は混迷するばかりだが、あがくしかないな
クロウィン ケルベン: そのとおりだ
グロック: たすけは、こないか
クロウィン ケルベン: ……
ダーマン: 少なくとも雪が解けないとね
クロウィン ケルベン: 少し考えてみないといけないな
クロウィン ケルベン: では疲れているところもうしわけないが地下道の封鎖を手伝ってくれ
一行は疲れた身体を引きずってクロウィンと共に再び地下に戻り、遺跡の外に通じる道を封鎖した。