上映時間16分のカラー短編アニメ
全く予備知識もなく、生まれてはじめて観るアニメだったが、あまりの完成度の高さに驚かされた。
絵柄もリアルなら、動きもしっかりしており、大人が観ても納得するレベルになっているのだ。
というか、この作品、果たして、子供を対象に作られたのであろうか。
それにしては、ちょっと無気味な内容にも思える。
ストーリーもちょっと異色だが、時代劇風の人間像も異色。
動物3匹こそ後の東映動画を彷彿とさせるような可愛らしいキャラクターだが、人間のキャラの方は全体的にリアルタッチ(とは言え、悪い木こりの方の顔つきなどは古風なマンガ風)。
特に、途中から出現する雪女の表現が出色。
あたかも、伊東深水が描く美人画のような雰囲気で、紫色のおこそ頭巾姿が艶かしくも美しい。
しかし、その雪女の動きは素早く、風のように山を移動する。
マルチプレーン技法で、奥行きのある雪の中、この描写は妙に怖い。
不思議なのはよみがえった動物たちの存在。
生き返ったのであれば、最初の漁師の家に死体はなくなるはずなのだが、ちゃんと元の死体は残っている。
結局、形を与えられた魂という事だったのだろうか?
山小屋に出現した雪女、悪い木こりには姿が見えるようで、猟銃を取り出し撃とうとしているが、良い木こりの方は、雪女が家の中に入ってきたことにも気づいてないように見える。
動物を殺した木こりの方には、その罪の報いとしての雪女が見え、良い木こりの方には何の罪もないので、報いとしての雪女も見えなかったと言うことなのだろうか?
互いに信頼し合った仲間同士が協力すれば、怖いものなどないと言う教えなのだろう。
色々、深読みができる大人向きのファンタジーといえるかも知れない。
小さな子供は、怖がって、途中から観れなくなるかも知れない。
アニメファンには必見の作品だろう。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼ |
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1956年、日動映画社、浜田広介原作、森康二脚本、藪下泰司演出作品。 冬の雪山、一件の家で、囲炉裏の前の漁師が晩酌を楽しんでいた。 そこに、戸を叩く音。 怪んだ漁師が出てみると、そこには、一匹の月の輪熊が立っていた。 一旦は、家に入れるのを断わった漁師だったが、鉄砲があるのを思い出し、熊を中に招くと、食事を与え、熊が油断している所を背後から撃ち殺してしまう。 しばらくすると、又扉を叩く音。 窓から様子をうかがうと、今度は狐とリスが表に立っている。 熊で味をしめた漁師は、窓から二匹を鉄砲で撃つ。 リスは気絶しただけだったのだが、逃げ出した所を捕まってしまい、結局、二匹とも死んでしまう。 しかし、猟師が刃を研ぎ始めた中、土間に並べられていた熊、狐、リスの死体から、魂が起き上がり、そのまま雪の森の中に戻る。 熊の霊は小さなリスの霊を手のひらに乗せると、雪深い山奥へと向かう。 すると、彼ら3匹の前に、光芒を背負った仙人のような姿をした森の神様が出現し、3匹は命をよみがえらせてもらう。 生き返った三匹は喜んで、仙人に向かって頭を下げる。 すると、仙人の姿は消えて行ったので、3匹は手を合わせて拝む。 その森の別の場所にあった家には、白髪頭の優しい漁師が住んでいたが、薪を取るため外に出た良い猟師は、外に立っていたリスやクマたちを観ると、にこやかに微笑んで、家の中に招き入れてる。 良い木こりは、いろりで粥を温めると、三つの入れ物に装ってやり、3匹に勧めるが、リスが一番大きな茶碗に飛びついたので、爺さんは笑って、小さな湯飲みに入れた粥をクマに差し出す。 お代わりは?と言う風に木こりが手を出すと、キツネもクマも、満足そうに腹を擦ると辞退する。 そんな中、森の中では吹雪が酷くなり、その吹雪の中で、おこそ頭巾をかぶった雪女が出現する…。 雪女は飛ぶように山の中を駆け回り、彼女が通り過ぎた後は、川も木も凍り付いて行く。 悪い木こりの方は、急に寒くなって来たので、死体からはぎ取ったクマやキツネの毛皮をかぶったりして囲炉裏の前で震えていた。 そんな悪い木こりの山小屋の中に雪女が出現。 悪い木こりは、必死で火吹き竹で囲炉裏の火を燃やそうとするが、炎は徐々に小さくなり、やがて凍り付いて崩れ落ちてしまう。 驚いた悪い木こりは、猟銃を取り、雪女を撃とうとするが、次の瞬間、足下から全身が凍り付いてしまう。 悪い木こりの山小屋の中は、全部凍り付いていた。 次に雪女は、優しい木こりの山小屋にやって来る。 良い木こりは、囲炉裏の廻りに集まった3匹の動物を前に横笛を吹いていた。 リスなどは、すっかり懐いてしまい、木こりの懐の中に潜り込んでいた。 そこに雪女が出現。 囲炉裏の火が消えかけたので、クマが囲炉裏の火を吹いて火を起こす。 キツネも同じように火を吹いて炎を大きくする。 良い木こりも火吹き竹で火を起こしたので、炎は大きく燃え上がり、雪女は、その炎の熱さに怯え、小屋の隅に下がると、そのまま外へ逃げて行ってしまう。 良い木こりは、何ごともなかったかのように又、横笛を吹き始めるのだった。 |
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