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暁の追跡

1957年、田中プロモーション、市川崑監督作品。
脚本、新藤兼人。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

新橋の交番に勤務する石川巡査(池部良)は、子供が腹痛を起こしたという古参巡査の代わりに、夜勤も兼務してやる。

同僚によって、怪しい取り引き現場から連行されて来た一人の男を尋問する内に、石川は一瞬の隙をつかれ、その男に逃げ出されてしまう。
必死に追い掛ける石川であったが、男は線路に倒れ込み、そのまま接近して来た列車に轢かれてしまう。

後日、死亡したその男の家を訪ねた石川は、病気を患った娘から、「こんな苦しい生活をしている人間が、少しくらいの悪事に荷担したからといって、何故、こんな目に会わされるのか。今後どうして生活していけば良いのか」と詰め寄られ、追い返される。

真面目な石川は苦悩するが、その娘のために職を捜して、再び訪問してみると、もはや、家族全員、夜逃げするかのように姿を消していた。

石川は、警官という職に疑問を持ち、別の職業を捜し始めるが、ある非番の日、電車内で、偶然に、くだんの娘と出会う。

娘の姿を見失った後、石川は職捜しの相談を知人とビルの上でしている途中、偶然、向いのビルの一室で怪し気な喧嘩を目にし、その現場に直行。
床にこぼれた麻薬を発見した石川は、本部に連絡を入れる。

その電話を受け取る警察本部を訪れた娘であったが、非番中の石川とは会えずじまいのまま帰る事に。
後日、死体となって娘は発見される。
死体の持っていた石川宛ての手紙には、今までの自分の姿勢をわび、自分も悪事に荷担していた事が告白されていた。

麻薬事件の背後には、娘を殺害した犯人ともつながりがあると睨んだ石川は、警官という仕事に対する迷いも吹っ切れ、捜査本部に加えてくれと願い出るが、受け入れられない。

やがて、少しづつ、犯人像が判明していき、密輸団との関係も明らかになり、大掛かりな夜明け前の一斉捜査が開始される…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

警視庁の全面協力や、戦後間もない当時の街頭ロケが多用され、ドキュメンタリー風とも思えるような独特のタッチの作品になっている。

基本的には、戦後の民主主義の中での警官の立場を考える、生真面目なテーマ性を持ったポリスストーリーだと思う。石川が同僚達と、警察とはどういうものかについて言い合いになるシーンもある。

恋人である中華料理店の娘との仲も波乱があり、一人の青年としての石川の迷いや苦悩も描かれている。

クライマックスは、タイトル通り、曉の中、密輸団と警官隊の逮捕劇がドラマチックに用意され、娯楽作品としても見ごたえがある。

新人の拳銃をいじっている内に暴発させて、新人に怪我をさせたため、警官の職を失う石川の同僚に、若き日の伊藤雄之助。
轢死した男の女房役に、これ叉若い、北林谷栄。

他に、田崎潤や藤原鎌足などが警官や刑事役として登場する。