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恋と涙の太陽

橋幸夫主演のアイドル映画

ビクターが作った専属歌手の宣伝映画のようなものだろう。

どう観ても、加山雄三の「若大将シリーズ」の雰囲気で、歌にスポーツに大活躍の主人公が、何故か会う女性会う女性にモテまくると言う脳天気な内容になっている。

違和感があるとすれば、ソース顔(古い表現)の加山雄三に代わって、醤油顔(古い表現)の橋幸夫が主人公を演じている点と、大学生の後輩を演じている青年たちや、大学生を自称しているチンピラたちが、皆、おじさん顔であることだろう。

若者映画のはずなのに、今ひとつかっこ良さがないのが惜しい。

大学生役の青年たちは、橋幸夫の歌うシーンではバックバンドを勤めており、フレッシュメンとかザ・ビーズス(?)と言ったバンド名がキャストロールに出て来るので、当時のエレキバンドらしいのだが、失礼ながら、こんなにあか抜けないメンバーだったのだろうか?

今の感覚で観るからかも知れないが、橋幸夫たちの刈り上げヘアにポップスやエレキは似合わないような気がする。

後輩と言う設定のはずなのに、どう観ても、橋幸夫の方が若く見えるのも奇妙。

作られた時代が時代だけに、ヒロインとして登場する倍賞千恵子、香山美子、山東昭子らは、全員当然ながら若々しいが、特に、この作品では(新人)表記がある早瀬久美は、まだぽちゃぽちゃした子供顔である。

長らく、TVの大川橋蔵主演版「銭形平次」でガラッ八役を演じていた林家珍平が、橋幸夫の相棒役を演じている所にも注目したい。

橋幸夫と言えば、舟木一夫、西郷輝彦と共に、「御三家」と呼ばれたアイドルだったが、デビュー曲の「潮来笠」のイメージが強いためか、演歌の人と言う雰囲気が終始つきまとい、その後ヒットしたポップス歌謡のような歌の数々も、何となく違和感があったような気がする。

しかし、今改めて、こうして映画に出演している彼の姿を観ていると、子供の頃は知らなかった別の一面があったんだな〜と感じる。

正直な所、今観て、ものすごく魅力的とは思えないし、映画としても凡庸な印象ながら、ごく普通に楽しめるプログラムピクチャーにはなっていると思う。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1966年、ビクター+松竹、立花明脚本、井上梅次脚本+監督作品。

シューリズム(?) アメリッチ…の文字

タイトル

富士急ハイランドの文字が入ったヘリコプターの操縦士で歌の得意な旗野健一(橋幸夫)は、今日も歌いながら操縦をしていた。

同乗者の田代六郎(林家珍平)は航空写真を撮っている。

歌い終わったた健一が滑りたいな〜と言い出したので、六郎は旗野が城南大学の水上スキー部だったことを思い出す。

無事その日の飛行を終え、事務所に報告に戻って来た2人だったが、突然、所長から、本社から指令が来て、富士五湖観光部に転勤と言うことになったと言う。

それを聞いた健一は、ちょうど山中湖に大学の水上スキー部の後輩たちが泊まるので好都合だと転勤を喜ぶ。

所長は、歌の得意な旗野くんには、ホテルやユースホステルなどで歌って欲しいとも頼む。

旗野の実家である薬屋「百草堂」では、旗野の妹のまり(早瀬久美)が、義兄で養子の清(立原博)に姉さんが呼んでいるわよと声をかけていたが、今忙しいのでダメだと言う。

まりが姉の公子の物まねをやってみると、似ていると喜んでいた清だったが、本物の公子(佐乃美子)がやって来て呼びかけたのに気づかず、怒鳴られて青ざめる。

母親のタカ(村田知栄子)は、愛しちゃったのよ。骨の骨まで愛しちゃたのよ…などと甘い言葉が書かれた恋文らしきものを読んでいた。

そこにやって来た清にタカが恋文を渡し、廊下に落ちてたのよと妻の公子が追求する。

窮地に陥った清は、とっさに、これは健一君に来たものだと言い訳してしまう。

そんな所に、健一が帰って来たので、今までの話を一緒に聞いていたまりは、兄さん、濡れ着を着せられたわよと告げ口する。

清も申し訳なさそうに、義母さんから抜け殻なんていじめられるし…、つい…と謝って来たので、健一は明るく、何とかごまかしてやりましょうと答える。

そんなた健一も、二階の自分の部屋に入るなり、唖然としてしまう。

壁にかけたポスターパネルやステレオの位置が全部動かされていたからだ。

下にいた母のタカに文句を言いに行くと、今あんたは東南東の方角が良いと言う。

タカは方位学や星占いなどに凝っているのだった。

タカは、富士で病院をやっている義太郎も、うちの「七宝丸」をたくさん欲しがっていると喜んでいたが、た健一が、今度富士五湖に転勤になったと報告すると、西南は方向が悪いよと機嫌が悪くなる。

さらに、そろそろ結婚して店をやってもらいたい。健一がこの夏中に嫁をもらわないと、この店に大難が降り掛かるなどと旗野に迫って来たタカは、お前、花奴と言う芸者を知っているかいと聞いて来たので、芸者くらい接待の席に来るので知ってるよと旗野が答えると、それで安心したなどと言い出す。

さらにタカは、女医さんに良い人がおり、胃腸病と漢方の関わりに付いて聞いて来たくらいの人で、今日会う手はずになっていると言い出す。

しかし、余りにも一方的な話にへそを曲げた健一は、お断りします!と言い残して2階の自室に帰るが、清が仲介役となり、何とかその女医さんと会ってくれ。男女の仲なんて3度も手を握りあえば通じるものさと頼まれる。

健一は嫁などまだもらう気はないと拒絶するが、間に立った清が階段の上がり下りで伝令の繰り返しをして行くうちに、タカは清にこの家から出て行ってもらうことになると言う無茶な話になり、義兄のため仕方なく健一は、その女医に会うことだけは承知するが、清からも、今夜会うことになっている芸者の花奴にも代わりに会って、自分とは会ったことがないと言うように頼んでくれと頭を下げられてしまう。

その後、タカに連れられ、先方の女医北村和美(倍賞千恵子)と見合いさせられることになった健一だったが、和美と2人きりになると、僕は最初から結婚する気がないのに、交換条件を出され…と断り、それを聞いた和美の方も、私も地方の病院に行くのを親に反対されたので仕方なく来たのだと言い出し、共に意気投合して乾杯をするが、その内、健一の「女なんて…」と言う女性軽視のような発言に和美が切れてしまう。

その間、気を利かせて席を外していた両家の親たちがホテルの部屋に戻って来ると、2人は大喧嘩の真っ最中だった。

和美は、こんな人間のクズは嫌いよ!とわめくし、健一も、こんな高慢ちきな女は大嫌いだ!と怒鳴り返すのだった。

その後、料亭で花奴(山東昭子)に会った健一だったが、花奴は、健一に会った瞬間に一目惚れ、清が結婚して5年も経つと言うことも初めて知ったらしく、償いしてよ!代わりに結婚して!と迫って来る。

女に興味がないんですと断り、花奴が酒を取りに部屋の外に出た隙に逃げ出そうとした健一だったが、窓から逃げ出しかけていた所を、戻って来た花奴に発見され、足を引っ張られるが、靴下が脱げたので何とか難を逃れる。

後日、健一は六郎と共にヘリに乗り、富士五湖支店に向かう。

山中湖では、後輩の水上スキー部が練習中で、上空に飛来したヘリを見つけると、先輩のヘリだ!と喜んで手を振って来る。

着任の挨拶をした健一と六郎を前に、支店長は秘書で「ミス富士」だと言う高木令子(初名美香)を紹介する。

令子は、車に2人を乗せると、地域や関連施設の案内をしてくれる。

健一は嬉しくなり、「炎のように燃えようよ〜♬」と歌い始めるが、途中、すれ違った警官たちが車に向かって敬礼する姿を観かける。

やがて、「マウント フジ」と言うホテルに到着した令子は、客の1人城山元(待田京介)と肩がぶつかる。

ホテルの説明をし始めた令子だったが、健一が、ロビーに1人座っていた美人(香山美子)を見つめていることに気づいたので、着任早々、もうガールハント?この辺の女はボーイハントに懸命よなどと皮肉を言う。

その後、次の「本栖ホテル」に向かうと、後輩の1人がやって来て、三合の奴がアイスクリームを20個も食って腹痛を起こしたと言う。

健一は、おじの溝口先生のうちが近いのでそこに向かおうと言うと、令子もその方なら父の親友ですと驚く。

その令子の車で病人を運ぶ途中、なぜ病人は三合と呼ばれているのかと聞くと、一食三合の大食いだからだと言う。

令子はスピードを出すように言い、運転していた健一は、警察の目を恐れながら90km近く出していたが、案の定、途中で白バイに追いかけられてしまう。

ところが並走した来た白バイ警官に、令子が急病人よと頼むと、あっさり先導してくれたので、健一らはあっけにとられる。

溝口医院の院長義太郎(柳沢真一)は、三合を診るなり、単なる暴飲暴食だと注意するが、甥の健一には姉さんに頼まれていることがあるので残ってくれと言い、令子には署長さんに宜しくと伝えて、山合らと一緒に帰させたので、署長って?と健一が不思議がると、あれは警察署長の娘さんだと言うではないか。

どうりで警官たちが挨拶して来たわけだと健一は納得する。

座敷で義太郎と向かい合った健一に、看護婦の圭子(呉恵美子)がしきりに麦茶やスイカを出して来る。

どうやら、彼女も一目で健一のことを好きになったようだった。

義太郎は健一に、お前がこの夏中に良い相手を見つけなければ、姉さんはもう漢方薬を送ってくれないと言っているんだ。自分では漢方は使わないのだが、行商に半値で売って、それを酒代にしているので…と頼んで来たので、趣味の会う人がいれば…と健一は返事をする。

それを聞いた義太郎は、今年の湖畔は凄まじい恋愛合戦になりそうだなと苦笑する。

その夜、健一は、ホテル「マウントフジ」のステージで得意の歌「太陽だって泣いている」を披露していた。

客席には、昼間見かけた美人がいたので、健一は歌いながら近づくが、そんな健一に、令子は用意して来た花束を渡し、さらには、いつの間にやって来たのか、脱げた靴下を持った花奴まで寄り添って来る。

客席の中には、昼間令子と肩がぶつかった男客の姿もあった。

翌日、健一、令子、花奴の3人は、後輩たちの水上スキーを一緒に楽しむ。

健一は、「あの娘と僕(スイム・スイム・スイム) 」を歌い始める。

さらに、その後、後輩を引き連れアルバイトとして、彼らのギター演奏をバックに「MUSIC FAIR in SUMMER」開催中の野外ステージで歌い始めた健一だったが、客席の前で、一部の男客たちが大声で騒ぎ出す。

付き添っていた令子が注意しに行くが、一向に言うことを聞こうとしない。

歌い終わった健一や後輩たちも協力し、そのチンピラ連中をステージの横に連れて行き身分を聞くと、極東大学の学生だと言う。

そんな大学はないと後輩がチンピラの1人を押すと、大げさに倒れた相手は足の骨が折れたと騒ぎ出す。

健一は、そんなはずがないと抗議するが、その時、六郎がやって来て、ホテルの客が夕べから行方不明になっているので捜査飛行の依頼があったと伝えに来る。

後は、令子と後輩たちに託して、山野君江と言う女性客は、真夜中に出て行って樹海に入ったらしいと六郎が言うので、健一はヘリコプターで樹海上空を飛ぶ。

やがて、地上で倒れていた女性を発見、すぐに着陸して救助すると、最寄りの病院へ輸送する。

やって来た医者は、何と、見合いした北村和美だったので、女はダメだ!男の先生はいないのか?と健一は言うが、救助された女性客の容態を診た和美は単なる過労ねと言い、その女性客が目を開けると、傍らに立っていた健一を、この方が助けて下さったのよと和美は紹介する。

その時、看護婦が、地方新聞の記者が押し掛けて来たと伝えに来たので、和美は健一に、男なら断ってよと頼む。

廊下に出た健一は、遭難したのは単なるハイカーで、怪我もねんざに過ぎませんと軽くいなしたので、興味をなくした記者たちは帰って行く。

そこに来たのが令子で、さっきのチンピラの怪我はここの女医さんが化けの皮を剥がしてくれたのと言う。

そこに出て来た和美は、あの人は心の病気があるようだと健一に告げ、あなたに会いたいと伝えて来る。

そんな和美を観ていた六郎が、旗野さんの嫁さんにはああ言う人が良いと思いますけどねと呟くと、横で利いていた令子が怒って、六郎の足を踏みつける。

病室の女客を見舞った健一に、樹海に入ったのはあなたの歌のせいですわと言い出す。

若くて伸び伸びとして、楽しくって…、聞いているうちに自由が欲しくなったの。私、子供の頃から縛られていて…。今は何も申し上げられないけど、あなたの歌のように楽しく生きたいと言う。

そんな話を聞いた健一は、良くなったら、水上スキーやヘリにご案内しますと約束する。

溝口医院にやって来た健一は、そこに和美も来ていたことを知る。

和美は、先生の代診の相談に来ていただけですと弁解する。

そこに、花奴まで、ハーさん来ているでしょう?とやって来たので、看護婦の圭子が、今お見合い中ですと断ると、私を差し置いて見合いなんかさせないわ!といきり立ち、2人はにらみ合いになる。

決闘してやる!と言う花奴の言葉を聞いた義太郎は、健一と和美を窓から外に逃がしてやる。

2人は、突っかけを履いた姿で互いに手を取り合って湖畔まで逃げて来るが、健一は、あの芸者とは何の関係もないと弁解する。

和美も、2、3回付き合えば、あなたのこと分かるわと理解を示し、健一も照れながら、君の医者として脳でもまんざらでもなさそうだと負け惜しみを言う。

その時雨が降って来たので、2人は近くの屋根付きベンチの所で雨宿りするが、そこに置いてあった雑誌のグラビアページを開いてみた健一は、そこにあの女性入院患者の写真が載っていることに気づく。

彼女は、飛鳥紫と言う、何十万と言う弟子を持つ飛鳥流と言う踊りの跡継ぎだったのだ。

和美は会った瞬間に分かっていたと言い、小さい頃養女になって、鳳流の跡継ぎと結婚することになっている人なのと教えると、2人で、あの人の心の病気を治してあげない?と提案する。

健一も同意し、紫さんの剣に関して交際を始めますと和美と握手をするが、「男女の仲なんて3度も手を握りあえば通じるものさ」と言う母親の言葉を思い出したので、訳あって、2度と握手をしないと和美に伝え、2人は何となく笑いあうのだった。

その後、「百草堂」では、まりが、兄さんから手紙来たんだって?とタカに聞くと、義太郎の看護婦もお熱らしいよとタカが言うので、もう何回手を握ったかな?と呟いた清が、私がお目付に行きましょうかと言い出し、まりも私も行くと言う。

それを聞いたタカは、行ってもらおうかと答える。

その頃、山中湖で、紫と和美を乗せたボートで、健一は水上スキーを披露していた。

夜は、キャンプファイヤーを囲んで、後輩たちが弾くエレキパーティに参加する。

令子と健一が踊り始め、圭子と六郎が踊っていたが、そこに乱入して来たのが花奴で、令子から健一を奪い取ろうとする。

花奴は、健一にデレデレ甘えかかるが、そこにやって来たのが、清とまりだった。

まりは、兄さん、随分モテるのねと感心すると、花奴に振られた清は複雑な表情になる。

そこに、和美に連れられ飛鳥紫もやって来る。

和美と健一に勧められ、紫は恥ずかしそうにゴーゴーを踊り出すが、巧いもんですよ、さすがだ!と健一が呟いたので、え?と驚く。

それを観ていた令子は、ホテルのお客様よ、強敵だわ…と、紫のことをライバル視する。

続いて、健一を踊る事になった和美は、あなた、紫さんのこと好きなの?と聞く。

その時、旗野さん歌って!と声がかかったので、エレキバンドのステージに上がった健一は「どうして僕たち、いけないの〜♬」と歌い始める。

そんな健一を、花奴がフォークダンスの中に引きずり込む。

みんなが一体になってダンスに興じていた時、先日のチンピラ集団が又乱入して来る。

前に足にけがをしたと言っていた男が、擦り傷から菌が入り化膿したと言うので、和美は傷なんかなかったと否定するが、ヤブ医者!とののしられてしまう。

止めに来た健一らと乱闘騒ぎになるが、それを観ていた紫の目が輝く。

結局、チンピラも健一らも全員、その場にいた若者は警察に捕まってしまい、警察署の3つの留置場の中に収容されてしまう。

そこにやって来た高木警察署長(有木山太)は、留置場から全員外に出して整列させると、近頃の若者はなっとらん。レジェーと称して不良行為をして!などと十把一絡げに叱りつけると、どうせまともな仕事をしている奴などおらんのだろうと勝手に決めつけ、近くにいるものから1人1人指差して仕事を聞いて行く。

最初に指差された健一は、富士急ハイランド勤務と答え、レジェーが何で悪いんですか?と文句を言う。

続いて、和美が医師ですと答え、花奴は芸者と誇らし気に答えるが、続く紫は職業は申せませんと拒否した後、私は檻の中に暮らしたけど、ここは楽しい!と嬉しそうに答える。

その背後から前に出て来た令子が、警察署長!と答えたので、高木署長は慌てる。

それを観た若者たちが又騒ぎ出したので、高木署長は、静かにせんか!ここは警察だよ!と注意する。

溝口医院では、花奴が義太郎と清にジョニ赤を注いでやっていた。

縁側にはまりもくつろいでいた。

そんな中廊下に出た花奴は、箒が逆さまに立てかけてあるのを観て、看護婦の圭子に、これ、あなたがやったの?と聞くと、僧だとあっさり認める。

そこに、令子まで訪ねて来て、一体どこへ蒸発したのかしら?と健一の行方を気にしていた。

健一は、ホテル「マウントフジ」で紫と会っていたが、紫から、私の本名知っているんでしょう?と聞かれたので、ぼくにとってあなたは、山野君江さんですと答えると、握手を求めて来た彼女に、一瞬ためらいながらも握手をした後、「太陽だって泣いている」をロビーで歌い始める。

そこに、お嬢様だ!と言いながら近づいて来た男女がいた。

紫は狼狽するが、飛鳥家の飛鳥弥生(志賀真津子)と鈴木(青山宏)だった。

健一は、紫に、ゆっくり話し合ったらどうですか?と勧める。

そこに和美がやって来て、朝から随分電話があったわ。女の人からと、プールサイドの方に歩きながら健一に伝える。

そんな健一と和美の姿を、部屋のキーホルダーをゆらしながら観ていた男があった。

城山だった。

健一は、あの人は、気の毒な宿命をぶっつぶそうとしているんだと呟くが、飛鳥流はそんなもんじゃないわ。あなたはあの人を好きになったんでしょう?と和美が問いかける。

2人は、紫のことで言い合いを始め、とうとう和美が健一をプールに突き落とすが、その様子を城山はカメラに収めていた。

自室の307号室に戻って来た城山は、向かい側の310号室を観ながら、こんなぼろい商売が目の前に転がっていたなんて…と苦笑して部屋に入る。

その310号室では、鈴木が、もうすぐ、文彦様が帰国なさいますと婚約者のことを紫に念を押し、弥生も、あなた様は10才の時、宗家様が素質を見つけた方なのですと説得していた。

そこに電話がかかって来て、飛鳥紫さんの部屋ですか?と聞いて来たので、慌てた木村はごまかそうとするが、鳳さんの帰国前に行方不明…、他の男と恋愛沙汰と言うのは良い記事になりますななどと脅して来る。

あんたは新聞記者か?と木村が気色ばむと、トップ屋にでもなろうと思っているんですがねと答えた城山は、手前にあるフィルムにはヘリコプター乗りまで写っている。ホテル下のお宮まで来てくれと要求を言う。

先に車でお宮に到着した城山は、先に待機していたチンピラたちと合流すると、今までかかっていくらも稼げないのか?だらしないと叱りつけた後、飛んでもねえネタを掴んだ。少なくとも1000万にはなるだろうと伝える。

サマーフェスティバルやキャンプファイヤーで騒いでいたチンピラたちは、兄貴分である城山の話に度肝を抜かれる。

その頃、紫の部屋に来たのは和美で、今日は女同士で話があるのと伝える。

お宮では、原稿とフィルムを相手に見せて、最初は2000万と吹きかけてみろと城山がチンピラたちに支持を与えていた。

ホテルでは、紫が、健一さんのことですね?先生が健一さんを好きなことくらい分かります。私も好きですわ。淡い恋と軽い嫉妬心がありますものと答え、先生も、私のことをご存知なんでしょう?と聞く。

和美は、最初に会ったときからと頷くと、好きは好きとして、堂々と張り合いたかったのと答えると、紫も、人生も逃げちゃいけないんですわ。戦わなければいけなかったのねと晴れやかに答える。

そこに、看護婦の圭子、令子、花奴らも到着したので、共同の敵が現れたのね?と和美は呟く。

その頃、宮にやって来た鈴木と弥生は、チンピラから原稿とフィルムを見せられ、2000万と言われて狼狽していた。

そこに和美たちが近づいて来る。

東京に相談しませんと…と困惑する鈴木らに、チンピラたちはバンガロー村にいるぜと言い残して去って行く。

バンガローで先に待っていた城山は、チンピラたちは不用心に持っていたフィルムを取り上げると、ケースの中に入れて隠す。

事情を聞いた和美が、こんな時に頼りになる人は?と女性たちに問いかけると、全員、あっ!と思い出す。

健一と、水上スキー部の後輩たちに相談を持ち込んだ和美らだったが、陸じゃ敵わないから、何とか僕等の世界へ引っ張り込むんだと言い、作戦を練り始める。

バンガロー村には、高木署長が部下を連れ、パトロールに廻っていた。

城山たちが泊まっていたバンガローにやって来た健一は、紫さんの名誉を守るために対決しようと挑戦し、チンピラたちと城山を外におびき出す。

湖畔に集まったチンピラと城山に、決闘は陸じゃないんだなと健一が告げると、目の前に停まっていた2台のモーターボートが出発し、その間に闇に隠して浜辺に張ってあった網が、チンピラたちを全員湖に引きづりこむ。

水の中で待ち構えていた後輩たちが一斉にチンピラと城山に飛びかかり、水中に押さえ込む。

その間に、城山たちがいたバンガローの中に忍び込んだまりと和美が、原稿とフィルムを探し始める。

原稿はすぐに見つかったが、中味は白紙だった。

フィルムはなかなか見つからなかったが、布団の下にケースが隠してあったのを発見する。

2人はその2つを外に持ち出すと、たき火の中に放り込み燃やしてしまう。

水の中では、さんごに結んだロープの端をチンピラたちの足にからませ、逃げられないようにする。

城山たちは全員、水の中であっぷあっぷになる。

証拠を隠滅した和美は、もう良いわよ〜!と健一たちに声をかける。

健一たちは、へろへろになった城山とチンピラたちに、もう2度とこんなことしないと約束するか!と念を押す。

そこに騒ぎを聞きつけた高木署長が駆けつけて来て、昨夜は失礼しましたと健一たちに謝罪する。

令子は、これでレジャーでのボーイハントやガールハントは健康だと分かってくれた?と父親を責める。

高木署長は、署長として心から礼を言いますと健一たちの活躍に感謝する。

翌日、健一に紫から電話があり、東京から新聞記者が詰めかけて来ていると教えられる。

夕べの湖畔の騒ぎがバレたのだった。

記者会見の席に着くことになった紫は、富士五湖に来て、好きな方が出来たそうですが?と記者から振られ、私には好きな方が出来ましたと答えていた。

そこに健一がやって、夕べ飛鳥流を脅そうとしたヤクザとのもめ事があって、あなたの重要性が分かりましたと紫に伝えると、あなたたちは、友情をどうしてゴシップ扱いするのです?と新聞記者たちに毅然とした態度で抗議する。

紫さんとは友情を感じただけです。僕には心に決めた人がいますと健一は言い切ると、和美を連れて来て、もう一度手を握ったら僕はこの人の虜になりますよと言う。

そうした2人の姿を観た紫は、たまらない気持ちになってここへ来たんですが、でも私は飛鳥紫です。ここで水の上を走ったり、殴り合いを観たり、留置場まで入れられました。私、東京に帰ります。旗野さん、和美さん、あなたたちのお陰ですわと感謝する。

そこにやって来たのは、帰国した紫の婚約者鳳文彦(巽仙太郎)であった。

健一は、さあ、紫さん、お帰りなさい。あなたと手を握るのは僕じゃありませんよと言うと、鳳に向かい、連れて帰って下さいと頼む。

その様子を脇で観ていた花奴は、要するに失恋したわけねとがっかりするが、気を取り直したように、夏はまだまだ長いし…と令子や圭子たちに伝える。

紫は鳳の運転する車に乗り、その後ろを鈴木と弥生が乗り込んだ車が付いて帰路につくが、その上空に接近して来たのは、健一の操縦するヘリコプターだった。

紫は嬉しそうにヘリを見上げ、弥生も、本当に気持ちの良い人たちでしたねと健一たちのことを思い出す。

ヘリの操縦席には、六郎と和美も同乗しており、和美は手を差し伸べた健一に、握手すると夢中になるんでしょう?慌てない方が良いわよと笑いかける。

健一は戻ろうか?と微笑むと、「恋と涙の太陽」を歌いながら、山中湖で水上スキーを楽しんでいた花奴や令子の頭上に飛んで来る。

ボートの後輩たちも、健一らに手を振るのだった。