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にっぽん実話時代

失礼ながら、凡作が多い福田純監督作品だけに全く期待せずに観ていたのだが、意外と面白く出来ており、ひょっとすると福田純監督の代表作の1本ではないかと感心した。

うがった見方をするならば、ここに描かれている伊達の姿、野良犬のバイタリティと言うのは、撮影所システム全盛期後半、低予算のB級映画ばかり作らされていた当時の福田監督や脚本家の屈折した心情を投影しているのではないかとさえ感じる。

キャスティングも大変興味深く、この前年に公開された「キングコング対ゴジラ」(1962)のメインキャスト、高島忠夫、藤木悠、有島一郎が勢揃いしている。

高島忠夫がばりばりの二枚目演技をしているのも、東宝作品としては珍しい部類ではないだろうか?

一方、「若大将シリーズ」の青大将こと田中邦衛、若大将の妹役中真千子、若大将の父親役の有島一郎が勢揃いしていると言う見方も出来る。

そして「ロボジー」の五十嵐新次郎ことミッキー・カーチスや、ミッキー安川こと安川実など個性派がそろっている。

それにしても、この時代のミッキー・カーチスは若くて可愛らしい。

おねえ言葉を使い、あげくの果ては女装姿まで披露している。

ボンドガールだった浜美枝と若林英子がそろって出ているのも興味深いし、若林英子の方がトルコ嬢として水着姿を披露しているのも貴重。

ヒロイン役となる池内淳子も、この当時派本当に美しい。

平田昭彦、土屋嘉男、田崎潤、沢村いき雄と言った東宝常連陣も顔を見せてくれるし、往年の東宝映画ファンとしては胸躍るキャスト陣である。

話の展開としては良くあるパターンであり、その結末も想像通り…と言ってしまえばそれまでだが、「実話雑誌」の内幕ものとしても興味深い内容であり、テンポも良い。

劇中に登場する「ソノシート」が、流行っていた時代を思い出させてくれる作品でもある。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1963年、東宝、松木ひろし脚本、福田純監督。

「これはあくまでも架空の物語であって、実際にあったことではない」…とのテロップが出る。

東宝会社クレジット

ヌード写真が表紙の「実話時代」と言う週刊誌を背景にキャストロール

画面全体にたくさんの雑誌がモザイク模様のように並び、それが次々に手に取られて減って行く中、「月刊経済マガジン」だけが売れ残ったように画面に取り残される。

その「月刊経済マガジン」の編集部に詰まれた返品本の山を観ながら、印刷屋の秋山(織田政雄)は、紙を無駄にしてもったいない…とつぶやいていた。

秋山は、なかなか支払われない雑誌の印刷代を請求しに二宮義之(村上冬樹)編集長に談判に来たのだが、売れない本の編集部に、代金を支払う余裕などないのは明らかだった。

お茶汲みの中山リエ子(南弘子)が出したお茶ですら、出がらしの「馬ション」だったので、秋山は呆れる。

取材から戻って来た編集者の片桐鶴夫(田中邦衛)が、320円のタクシー代を請求しても、経理の綿貫良三(有島一郎)は、都電かバスを利用すべきだったと良いながら金を出そうとしない。

同じく、綿貫に交通費を請求した野田豊(安川実)も、綿貫得意のぜんそくの咳真似でごまかされるだけだった。

居座っていてもらちがあかないと悟った印刷屋の秋山は、もうこんな不経済な雑誌はお断りだ!と捨て台詞を残して帰って行く。

それを見送ったリエ子が、失礼しちゃうわ。このお茶、昨日入れ替えたばかりよとふくれたので、それを耳にした編集者たちはあきれかえる。

そこに、出版社社長である黒岩善造(平田昭彦)がやって来て、二宮編集長を呼び出す。

そんな中、編集者岩淵正順(藤木悠)の電話が鳴ったので岩渕が取ると、電話の相手は馴染みの焼き肉屋「大京圓」の女店員純子(中島そのみ)で、電話の目的は隣に座っている編集者の「のっぺり」こと柏谷秀彦(ミッキー・カーチス)だったので、受話器を渡してやる。

いつも、仕事中にかかって来る順子と粕谷の長電話はこうして始まるのだった。

そんな編集室に、たいやきの差し入れを持ってやって来たのは、二宮編集長の娘二宮英子(浜美枝)だった。

社長室では、黒岩社長が二宮編集長に、もうこんなに売れない経済雑誌などはやめて、売れる実話雑誌を作るつもりであり、もう、新しい編集長は見つけて来てある。君はその参謀格としてやってくれないかと相談していた。

編集室では、結婚しないのか?と聞かれた英子が、自分は大学院に残って勉強を続けるつもりだが、優しくまじめで親切な人となら考えて良いと、野田を見つめながら答えていた。

そこに、気落ちした二宮編集長と黒岩社長が戻って来て、黒岩社長は、明日は9時に出社だよ!と、編集者全員に伝えて帰って行く。

二宮編集長は、英子を先に帰らせる。

その夜、二宮編集長から雑誌の方向転換話を聞かされた編集者たちは、純子の焼き肉屋で、今後の身の振り方を考えていた。

現実派の片桐は、俺たちが今から他の商売に転職できるか?と疑問を口にする。

そこに、のっぺりの恋人純子が、のっぺりたちが暗い表情になっている事情も知らず、明るい笑顔と共に焼き肉のお代わりを持って来る。

片桐は、もうしばらく様子を見よう。辞めるのはいつだってできると言い、みんなもそれに同意する。

翌朝、黒岩社長は、新編集長伊達康介(高島忠夫)を連れて編集部にやって来る。

二宮編集長は動揺を隠せない編集者たちに、落ち着きなさい。編集者としての誇りをなくしてはいけないと注意する。

返本の山を早く始末しなさいと顔をしかめた黒岩社長は、伊達を編集者たちに紹介し、今日限り、この会社は「経済マガジン社」ではなく「実話時代社」とすると宣言する。

綿貫は、喘息の咳が出始め、二宮編集長は辞表を黒岩社長に手渡すと編集室を後にする。

岩渕も立ち上がりかけるが、片桐に制されて椅子に腰掛け直す。

編集室を出た黒岩社長は伊達に、これで、君に楯突く奴はいなくなった。ホネのある奴もな…と耳打ちして帰って行く。

編集長室に座った伊達の腕時計のブザーがいきなり鳴り始め、仁丹を口にした伊達は、これから作る雑誌は、世の中に何のためにもならない下等な本だ。再来週の金曜日に発行する。片桐社長の経営では、新しい人材は呼ばないようだと編集者たちに発表する。

そして、岩渕には、人妻の自殺の新聞記事を見せて、このニュースストーリーを書けと命じ、野田には野球のブルドッグスの取材を命じる。

その時、いつものように、「大京圓」の純子からのっぺりに電話がかかって来て、恋愛映画身に行かない?と誘って来るが、さすがにこの雰囲気の中では長電話も出来なかった。

早々に電話を切ったのっぺりの顔を睨んでいた伊達編集長は、女優のインタビューを命じる。

内容は、下着のサイズと色を聞いて来いと言うものだったので、日頃からおねえ言葉ののっぺりは唖然とする。

片桐には美人攻略法を書くよう命じた伊達は、東洋美術学院出身だと言う森一郎(当銀長太郎)には、ヌードグラビアの撮影を命じる。

綿貫とリエ子には、自分と一緒に部屋の模様替えを命じた伊達編集長は、火のないところに煙がないと言うなら、火をつけろと命じ、ポンと100万円の札束を取り出して綿貫に入金してくように指示する。

そんな伊達のはったりと勢いに押される形で、取材に飛び出した編集者たちは、噓を書いて金を取るなんてキ○ガイ沙汰だねと互いにぼやき合う。

スポーツ音痴の野田は、ブルドッグスの監督(清水元)にインタビューをするが、選手や監督の給料など、それまでの癖で金にまつわる話ばかりを聞いてしまう。

女優衣笠礼子(中真千子)にインタビューを申し込んだのっぺりこと粕谷は、下着のことを聞きたいとは言い出せず、単に色とサイズ…と聞いてしまったので、礼子は、好きな色とボディサイズのことと勘違いし、青、83、54、88と答えたので、のっぺりはそれ以上追求することが出来なかった。

人妻の浮気のニュースストーリーを書き上げた岩渕は、編集部にいた伊達からこの場で読んでみろと言われたので声を出して読み出すが、あまりに硬い論説文章でお色気も何も全くなかった。

伊達の苦りきった顔色を観た岩渕は、少し凝り過ぎだったでしょうか?と恐縮するが、伊達は「按摩にでもかかるんだな」と皮肉で返す。

森が提出したヌード写真も、抽象的なだけでお色気要素が皆無だったので、目的はエロだよ!こんなもんなら、犬や猫の写真を載せた方がマシだ!と叱りつける。

新雑誌の目標部数は30万部だが、それが達成できたら、君等の給料を3割増しにするよう社長に話をしてやると檄を飛ばした伊達は、明日から、服装ももっと派手なものを来て来い。今夜は俺に付いて来いと命じる。

その夜、伊達が編集者たちを連れて行ったのはキャバレーだった。

ホステス相手に、豪快な会話をする伊達の迫力に飲まれた編集者たちは、野良犬万歳!と自虐的に乾杯してノリノリになる。

その後「実話時代」が販売されると、飛ぶように売れ始め、引き続いて印刷を受け持った印刷屋の秋山は、受け取った印刷代の領収書を渡しながら、残本がほとんどないんだってねと感心する。

リエ子が出してくれたお茶もコーヒーに変わっていたので、喜んだ秋山に、綿貫が、うちの資本系統が変わったので、来週号から印刷は他に回すと言われてしまう。

驚いた秋山が何とかしてくれないかと頼むが、綿貫はいつものように咳き込んでごまかすだけしか出来なかった。

岩渕が、取材費として1万円を要求すると、綿貫はすぐさま5000円手渡し、足りなかったら後で請求しろと言い渡す。

グラビア撮影に向かう森は、会社の前でタクシーを停めると、「実話時代」の三角社旗をタクシーのアンテナに付け、意気揚々と出かけて行く。

衣笠礼子が衣装替えのため、母親みよと一緒に映画スタジオを出て来たところに合流したのはのっぺりだった。

造船技師の方と結婚間近で、引退なさるそうですね?仕事辞めるの惜しいですねと話しかけると、母親のみよ(東郷晴子)が嬉しそうに肯定する。

その直後、礼子に話しかけた男優の姿を観たのっぺりは、近くにいた衣装担当にあれは誰かと聞く。

城東映画の東海林ヒデオ()だと聞いたのっぺりは、礼子があの東海林との間に出来た子供を堕胎したという記事を書いたら面白いだろうと思いつく。

その頃、とある海岸の岩場でヌード撮影をしていた森と岩渕だったが、岩渕は、たまたま近づいて来た近くの温泉宿の客たちに、ヌード撮影をしないかと声をかけ、一人一人から金を取る商売をしようとするが、客たちが興奮して、ヌード嬢の方に殺到し始めたので慌てる。

一方、とあるトルコ風呂に来た客(田武謙三)とトルコ嬢勝山千恵(若林映子)の会話を、隣で盗聴してテープに録音していたのは、野田と片桐だった。

2人はトルコ嬢に金を渡して、この盗聴商売に加担させていたのだった。

イヤホンから聞こえて来るエロティックな会話に興奮する野田と片桐だったが、「立派!」とか「スペシャルサービスよ」「私巧いでしょう?」と言っているその会話は実は、千恵が服に着替えた客のネクタイのことを話しているだけだった。

客が帰ったあと、やって来た千恵に金を渡した片桐だったが、店に内緒で協力した千恵は、片桐が自分のなど興味ないことに気づいていたのか、わざと自分の名前を教える。

こうして録音して来たエロティックなテープを編集部で流して喜んでいた片桐たちだったが、その間、リエ子は嫌そうに耳を塞いでおり、その様子を苦々しそうに綿貫も見つめていた。

すっかり調子づいた森などは、伊達の悪口を言い出すが、その時等の伊達が戻って来る。

伊達は悪口など気にしていないようで、片桐たちが採って来たエロテープを聞かせろという。

リエ子の存在に気づいた伊達は、イヤホンでテープを聞くが、これを文字にしたら迫力が亡くなる。そのまま音声をソノシートにして雑誌に付ければ売れるぞと言い出す。

経費がかかりますと綿貫が指摘すると、伊達はタイアップするんだと言う。

さらに、刺激的な音が採れないかと考え出した編集者たちは、いつもおねえ言葉を使っているのっぺりを利用することを思いつく。

その後、「サクラクラブ」と言うデートクラブに入会を申し込みに来たのは、女装したのっぺりだったが、応対した会長(中北千枝子)は、全くそのことに気づかなかった。

かくして、デートクラブの女会員になったのっぺりは、中年男の客(石田茂樹)と一緒に旅館に出向くが、その様子を片桐たちはしっかり監視していた。

男と気づかず、寝室でのっぺりに甘い声をかける客の声を録音したソノシートを付け「音の週刊誌」と謳った「実話時代」は、想像通りバカ当たりする。

録音の最後に「ここのベッドには『夕焼けマットレス』が使われている」などと、ちゃんとタイアップCMも入っている、この愉快な録音テープは、飲み屋の客たちにも大受けだった。

発行部数も20万を突破し、もうすぐ目標の30万分に迫りつつある「実話時代」の成功を祝って、黒岩と伊達が、バー「ゆき」と言う飲み屋で飲んでいた。

記者を首になり、エロ小説を書いてくすぶっていた伊達を拾ったのだ黒岩だったのだ。

伊達は黒岩社長に、編集者たちに金一封出してくれ。はした金でも、奴らはメ○ラ馬のように飛んで行きますと頼む。

そこにこの店のママ須永雪枝(池内淳子)が姿を見せるが、初めての客である伊達の顔を観た雪枝は驚く。

常連客だった黒岩社長は、初対面だと思っていた2人が旧知の間柄だったことを知り、こちらも意外そうな顔をする。

店を閉め、残った伊達と二人きりになった雪枝は、別れた5年前の話をし出す。

その頃、伊達は、社会部の記者として、正義感と純粋さを持った男だったと、雪枝は懐かしそうに思い出す。

それを聞いた伊達は、世の中の汚さを知らなかった…と自嘲する。

何故結婚しないの?と言う雪枝の問いには、世の中で一番下らないことはしないようにしていると答えた伊達。

雪枝の方も、今は独身と答える。

翌朝、雲ヶ丘駅にやって来たのは二宮父娘だった。

父の二宮は、新しい就職口を探しているところだったが、駅前の売店に置かれた「実話時代」の衣笠礼子のスキャンダル記事を見つけると、ずいぶん堕ちたもんだな、この雑誌も…と嘆息しながらも、娘の英子が、編集部の野田を好きだったんじゃないかと案じていた。

父が職を失った今、英子は大学を辞め、自動車販売店に勤めていた。

そんな販売店にこっそり様子を見に来たのは、かつての恋人野田だった。

英子は。480万もする車を購入する女性客の応対をしていた。

その女性客を見送って外に出て来た英子は、あわてて逃げようとし、植え込みに無様に転んだ野田を発見する。

英子は冷たい視線で野田を見ると、父はまだ失業中なので自分は大学を辞め働くことにした。

あんな薄汚いインチキ週刊誌で働いてもらいたくないの。あなたたちには理想もなければ節操もないわときっぱり言う。

しかし、「実話時代」の編集者たちは、社長からわずかばかりの金一封が出たことに驚喜し、編集室で乾杯をしていた。

30万分の目標まで後7万部!ドブネズミのエネルギーが今までの君たちにはなかった!と伊達が演説しているところにやって来たのが、青ざめた顔の衣笠礼子だった。

それに気づいたリエ子は単純に喜ぶが、架空のスキャンダル記事を書いたのっぺりは急いで机の下に隠れてしまう。

過去に堕胎経験があるなどと書かれた礼子は、あなた方がやっていることは愚連隊と一緒よ!プライバシーの侵害で訴えてやる!と意気込むが、それを黙って聞いていた伊達は、「…らしい」と記事では書いただけで断定はしていない。訴えるのは自由だが、あなたに勝ち目はないでしょうねとうそぶく。

礼子は、酷いわ!あなた、悪魔!とののしって、泣きながら部屋を飛び出して行く。

その夜、「大京圓」で焼き肉を食べていた編集者たちだったが、全員息が上がらなかった。

特に、記事を書いた張本人であるのっぺりの落ち込みようは尋常ではなく、焼き肉を持って来た純子は、女の子にいじめられたの?と見当違いな慰めを言う。

ある日、町を歩いていた片桐は、トルコ嬢の千恵から声をかけられるが、案の定、片桐は彼女の名前をもう覚えていなかった。

千恵は、新しい勤め先である高級クラブ「レター」に片桐を誘うと、あの盗聴のことが支配人にバレ、それをネタに自分を口説こうとしたので嫌になり、トルコ風呂を辞めてしまったのだと教える。

そんな会話をしている時、片桐は店にやって来た中年客2人組の片方に見覚えがあった。

その店には、サングラスをしたトップ屋大塚(土屋嘉男)も来ており、中年客たちの会話をテープに盗聴していた。

そのトップ屋は、翌日、その盗聴テープを伊達の元に持ち込んで来る。

テープの内容は、開運銀行頭取の伊吹彦八(田崎潤)に2000万をねだる愛人らしき女の睦言だった。

そのテープを買い取った伊達は、その場から伊吹に電話をすると、テープのことを話し、買って欲しいので、明日までに来てくれと伝える。

その様子を観ていた編集者たちに、伊達は300万は固いなとうそぶいてみせる。

その数字を聞いて唖然とする編集者たちを観ていたリエ子は、みんなアパッチみたいと嘲る。

その後、編集室にやって来たのは別のトップ屋(沢村いき雄)だった。

今、来日している某大物のネタだから10万円で買ってくれと伊達に迫るが、伊達は2000円なら買うと値切り、トップ屋を追い返すと、観ろ!俺たちが有名になれば、ネタの方から飛び込んで来る。奴らはウジ虫だと編集者たちに教える。

それを聞いた編集者たちは、皆、しゅんとうなだれてしまう。

その夜、伊達は雪枝の店で飲んでいた。

寂しいんじゃない?と問いかけた雪枝に、伊達は、今はカスみたいな連中の尻を叩いて汚いことをやっている。俺の力でどの程度のことが出来るのか試しているんだとつぶやくと、雪枝と久々に踊り始める。

その夜、再び千恵の高級クラブ「レター」にやって来た片桐は、その店の社長と言う美人があの中年客の席に挨拶に行く姿を観る。

千恵が、あの中年客は伊吹と言う人だと教えると、片桐は、見覚えがあったその中年客こそ、開運銀行の頭取だったことに気づく。

翌日、昼時になっても、弁当を食べていたのは綿貫とリエ子だけだった。

他の編集者たちは、皆一様に何かを待っていたのだ。

やがて伊達の腕時計のブザーが鳴り、彼らが待っていた伊吹は来ないことを知る。

嘗められたと知った伊達は、敵として不足はないと、さらに伊吹への闘志をむき出しにする。

その時、伊吹の愛人は、クラブ「レター」の女社長倉本あき(浦島千歌子)だと、戻って来た片桐が報告する。

カメラマンのピンちゃんこと森一郎と、クラブから彼女の屋敷まで後をつけ確認して来たと言うのだった。

それを聞いた伊達はその場からあきの自宅に電話をして、電話に出た彼女の声を聞くと、テープに入っていた愛人の声と同じだと確信する。

片桐は、伊吹は彼女に3台も外車を買ってやっていると報告する。

翌日、早速、野田と片桐を引き連れて、倉本あきの屋敷に乗り込んだ伊達は、持って来たテープをその場で再生しようとするが、中味を推測したあきによって制止され、押売の現行犯で訴えるわよと、冷静に電話の受話器を取られる。

あきも一筋縄ではいかないタマだと気づいた伊達たちは、一旦引き下がることにするが、帰りのタクシーの中で、野田がちょっと寄り道をしたいと言い出し、先に車を降りる。

彼が向かったのは、英子が勤める車の販売店で、そこに帰って来た英子に、買って来たたいやきを渡す。

その時、英子に倉本さんの代金は?と上司が話しかけ、英子が車を売って受け取って来た小切手を取り出すのを観ていた野田は、その領収書のサインに注目する。

480万と書かれた小切手には、はっきり「開運銀行」のサインも書かれていたからだ。

野田の表情の変化に気づいた英子は、「実話時代」にあるわね?と見破るが、特ダネを得た野田は陰で礼子に詫びながら、それを公衆電話から伊達に報告する。

伊吹と礼子の睦言が入ったテープをソノシートにした「実話時代」の発行日、雑誌は休刊した。あるご夫人が「実話時代」を1部残らず買い取りたいと申し込みがあったのだ言いながら、伊達は300万の札束を包んだ大きな紙包みを編集者たちの前で破って披露してみせる。

その時、岩渕が、あのスキャンダル記事が原因で婚約が破談になり、衣笠礼子が自殺未遂をしたと駆け込んで来る。

しかし、それを聞いた伊達は、狂言自殺かも…と言うだけだった。

そんな伊達や編集者たちに呆れたリエ子は、みんな、人殺しよ!嫌い!と叫んで部屋を飛び出して行く。

さすがに落ち込んだ編集者たちに向かい、伊達は、下らんセンチメンタリズムは捨てろ!と檄を飛ばす。

その夜は又、伊達も加わって、「大京圓」で焼き肉パーティをしていた編集者たちだったが、さすがに、のっぺりだけは落ち込んだままだった。

それに気づいた純子は、又、女の人と何かあったんでしょうと言って慰める。

そんな中、トイレに立った伊達に絡み付いて来た酔客があった。

クラブ「レター」で、伊吹頭取と一緒にいた中年男杉本(松村達雄)だった。

伊達の名を確認すると、俺は開運銀行の貸し付け課長だが、お前等のせいで痛くもない腹を探られ、20年も勤めた銀行を首になってしまったと息巻く。

伊達は、そんな杉本を利用できると踏み、お詫びに俺が一杯おごると言い、バー「ゆき」に連れ込むと、じゃんじゃん飲ませて愚痴を聞いてやる振りをして情報を引き出す。

杉本は、酔った勢いで、倉本あき以外にも10何億、無担保で貸し出したよなどと言い出す。

伊達が、持っていた金の大半を核本の胸ポケットに押し込むと、杉本は「海野重臣」なる相手先を教える。

その名を聞いた伊達は、海野コンツェルンの総帥だと気づく。

海野コンツェルンと開運銀行は癒着していることになる!

何年かぶりに真面目な顔になった伊達は、昔を思い出したのさ。苦い思い出を…と雪枝に話しかけ、俺はやってやるぞ!と意気込む。

しかし、この取材を始めようとした矢先、編集部にやって来た黒岩社長は、開運銀行の関連取材は止めろ!開運銀行はうちの経営系統だ。お前たちのやろうとしていることは、自分の親に毒を盛るようなもので、お前たちは今後1割の減俸だ!と叱りつける。

しかし、伊達は、社長がこの会社を潰してもやりますよと宣言する。

その発言に怒った黒岩社長は、全員首だ!と言い渡す。

その後、会社を追われ、バー「ユキ」に、編集者たちと綿貫らが集まると、伊達は、お前等がいやなら、俺一人でもやる!と言い切り、自分の過去を話し始める。

伊達はかつて新聞社の社会部にいたが、財界汚職のネタを見つけた。しかし、圧力がかかり、その記事はうやむやにされ、伊達は犬ころのように新聞社を追い出された。

意気地なく、尻尾を巻いて逃げ出すのはご免だ!

そう語り終えた伊達に、野田、片桐、岩渕等は、自分等もやらせてくれ!と声をあげる。

野良犬のバイタリティを見せてやろうと片桐が張り切ると、どんな小さなネタも見逃すな!資金は俺が何とかすると伊達は励ます。

そんなみんなに、サポートする立場になった雪枝が茶を運んで来る。

ところが、数日後、完成した原稿を岩渕が渡したはずの大東洋印刷から、そんな原稿は預かっていないと言う電話を受けた片桐は仰天し、その話を聞いた伊達も、あそこには海野の資本は入ってないはずなのだが…と不思議がる。

しかし、すぐに伊達は岩渕に、もっと小さな印刷所を探してくれと命じる。

雪枝は、店のドアに「本日休業」の札を下げる。

大東洋印刷の主任(佐田豊)に、詳しい事情を聞きに出かけた片桐が店に戻って来て、印刷所は押さえられていたと報告すると、暗い顔つきの伊達も、金融関係も手が回っていたと教える。

資金繰りに行き詰まった伊達等に対し、話を聞いていた雪枝は、この店を打って、そのお金を出資すると言い出す。

伊達はそれはいけないと断ろうとするが、どうせこんな店続けても酔っぱらいを増やすだけだから…。やりかけたことをやり遂げなくてどうするの?と雪枝の決意は固いようだった。

岩渕が店に連れて来た印刷屋は、あの秋山だった。

話を聞いて尻込みしていた秋山だったが、綿貫までが自分の貯金を下ろして10万円出資すると言い出すと、さすがに承知するしかなかった。

翌朝、朝食を店に持って来た雪枝は、伊達の姿が見えないことに気づく。

外に出て通りの方まで歩いてみると、伊達が橋の上から遠くを見つめていた。

二宮元編集長は、体操中の女子校から嬉しそうに帰っていた。

そして、ちょうど昼食のため販売店を出て来た英子と出会うと、予備校の先生の職が決まったと報告し、喜んだ英子と共に食事に向かう。

その後、バー「ユキ」にいた岩渕に、印刷屋の秋山から、印刷を勘弁してくれと言う連絡がある。

片桐、岩渕、綿貫の3人が秋山印刷に出向いて訳を聞いていると、奥から出て来た秋山の女房(千石規子)が、訳を言えば殺されてしまう。あんた等がここに来ていることが分かると大変なのよ!帰って!二度と来ないで!と声を荒げる。

バー「ユキ」で、その話を聞いた伊達は、相手が暴力をちらつかせたと言うことは、こちらが図星を突いていると言うことだ。こうなったら、東京以外の印刷所を探そう!と電話帳を持ち出して来る。

「大京圓」の純子もやって来て、持って来た材料で、全員にホルモン焼きを振る舞うと言い出す。

そんな時、強面の一行が店の中に侵入して来て、「編集長は?」とドスの効いた声で聞いて来る。

伊達が前に出ると、ヤクザらしき男がもう手を引かないと痛い目に会うぞと脅して来たので、伊達が毅然とはねつけると、殴り掛かって来る。

見かねて、雪枝や他の編集者や綿貫までもヤクザに飛びかかって行くが、結局、全員こてんぱんに叩きのめされてしまう。

数日後、病院から出て来た伊達は、タクシーで駆けつけた雪枝から、退院おめでとうと言われる。

他の編集者たちも、よれよれになって病院を退院して来る。

編集者たちは職安に向かうが、全員職にありつけず、野良犬のように町をさまよい歩く。

やがて、片桐が、又スキャンダルで行こうか?と全員に提案する。

そうした彼らの横を、小型犬を抱いた倉本あきが乗った高級車が通り過ぎて行く。

野良犬の正義感は、所詮、野良犬の世界でしか通じなかったなとつぶやく伊達に、付き添って歩いていた雪枝は、私の所へ来ない?と誘うと、一番くだらないことしてみない?これからどうなさるの?と聞く。

伊達は、町のビルを見上げながら、そうだな…とつぶやくのだった。