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おへその大将

1962年、宝塚映画、藤本義一 + 木村武脚本、佐伯幸三監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

夜の闇に乗じ、川に浮かんだ小舟に乗り込む大勢の男たち。

これは戦争ではない。しかし、敵前上陸である。

大阪にある旧砲兵工廠跡、ここにはおびただしい鉄くずがあった。

朝鮮戦争特需で鉄篇ブームが起きた時、ここに鉄くずを堀りに来て、それを換金して生活する「アパッチ族」と呼ばれた一団があった。

彼らは、見張りや警備の人間の目を盗んで、夜な夜な襲撃を繰り返していたが、彼ら自身は、自分たちのことを「地下埋蔵開発隊」と称していた。

これは、朝鮮戦争も終わり、金篇ブームが下火になっていた頃の話である。

リヤカーを後ろに繋いだ自転車を漕ぎ、アパッチ族が住む集落にやって来た青年がいた。

木元進(船戸順)だった。

リヤカーには、病気らしく寝ている妹秋子(桂洋子)と、まだ幼い妹銀子(土井真弓)が乗っていた。

進は、最近安くなって来た金物の値段のことで業者に愚痴をこぼしていた政吉(山茶花究)に到着の挨拶をすると、催促され、バラックを建てる場所の権利金を渡す。

政吉は、受け取った金額が約束の1万円に満たないことに不平を言いながらも、バラックを建てる場所を進に教える。

その権利金を入れた財布を素早く取り上げたのは、ちゃっかりものの政吉の女房お種(山田桂子)だった。

そこに、宗やん(花菱アチャコ)がやって来て、この地所はお前と俺の二人のものだから、自分にも権利金を寄越せと政吉に迫るが、政吉は俺は1万円受け取ったと言うだけなので、権利金は2万かと思った宗やんは、進に自分にも1万寄越せと近づく。

しかし、事情を知らない進は権利金ならもう払ったし、こっちには病人がいるので、そんな金はないと反論する。

そんなアパッチ族の集落に「児玉医院」と言う「整形外科、内科、小児科」の看板を掲げた病院が一軒あった。

自転車で往診から帰って来た児玉(フランキー堺)は、出迎えた妻で看護婦でもある綾子(新珠三千代)から、急患だと知らされる。

急患とは、進が連れて来た秋子だった。

児玉はざっと往診し、秋子が肺病に冒されていることを知るが、進は、とりあえず、秋子を抱いて帰る。

綾子は、これで商売になるの?こんな所で、私たちが犠牲を払う価値があるのかしら?と、兄の意志を継いで、東京からこの地にやって来た夫の先行きを心配するが、そこへ、先ほど進に付いて来ていた銀子が、忘れていった自分のバッグを取りに戻って来たので、児玉は、持っていた菓子を与えてやる。

宗やんの娘でアルサロの女給をしている久子(千之赫子)は、自分の財布から1000円なくなっていると朝から騒いでいた。

しかし、父の宗やんも母のお米(萬代峰子)も、弟の健一(山崎努)も知らないと言うので、プリプリ怒りながら家を出て行く。

店に行く途中、父と弟金太郎(頭師満)と3人で暮らしている近所の敏子(原知佐子)に、女給をやれば1日200円は固いと勧めるが、敏子の父、行田(谷口完)に、妙なものに誘うのは止めてくれと文句を言われたので、あんたに甲斐性がないから勧めているんやと言い捨てて出て行く。

久子の売り言葉にカッカしていた行田は、幼い金太郎から「父ちゃん、銀はどこに埋まっているんや?」と聞かれたので、黙っとれ!誰かに聞かれたらどうするんや!と叱りつける。

行田は、旧砲兵工廠跡で銀塊が埋まっている場所をかねがね知っていたのだった。

アルサロに来た久子は、助平そうな客(南都雄二)から口説かれながら踊りの相手をしてやるが、客が、踊っている最中も、他の女の尻を触っていた。

一方、アパッチ集落に一つある公衆便所の前には、長蛇の列ができていた。

いつも、便所の中でマンガを読みながら用を足す癖の宗やんが占領している為だった。

並んでいた政吉に声をかけられ、渋々出て来た宗やんは、お米が研いでいた米のとぎ汁に手を突っ込み手を洗うので、お米はミソも糞も一緒やと怒る。

児玉医院では、集落中の子供たちが集まって来たので、往診の順番を待っていた女客の一人が怒って帰ってしまう。

児玉の日課の一つは、子供たちの定期的な健康診断だった。

顔や口の中の検査と共に、子供たちのへその様子を見ることによって健康状態を知ると言うやり方をやっていたので、はじめてやって来た銀子は、恥ずかしがって、おへそを見せようとはしなかった。

その後、児玉は、銀子の姉秋子の様子を見に出かけるが、急ごしらえのバラックの日当りが悪かったので、そう進に伝えると、進は部屋を出て行き、その後、バラックが大きく揺れ始めたので、児玉は地震が起きたのかと驚くが、外に出てみると、進や政吉が総出でバラックを回転させ、窓から日が入るようにしていたのだと気づく。

児玉は、バラック自慢をする政吉に、後で皆に話があると伝える。

その夜、飲み屋にやって来た児玉は、マッカリなど振る舞われながら、集まった集落の連中に、工廠跡への攻撃はもう止めた方が良い。警察が取り締まることになったようだからと忠告する。

しかし、政吉は、あそこにあるものは旧軍隊のもので、今、その軍隊はないので、掘り出すのは自由なはずだと反論する。

それに対し、児玉は、今は財務局が管理している国家のもんやと教え、医者として、警察に楯突いてけが人を出すのは忍びないのだと説明するが、その場にいたものたちは納得できない様子。

半分ヤケになった児玉は、出された肉のようなものを噛もうとするが噛めないので、これは何だと聞くと、これは「雑巾」と言う牛の胃袋で、あんたが今口に入れたのは「シロ」と言う部分、噛むのではなく、マッカリと一緒にぐい飲みするものだと、宗やんが食べ方を教える。

そんな飲み屋に、綾子が急患だと知らせに来る。

立ち上がろうとした児玉だが、腰が抜けてしまっていた。

それを知った政吉は、やかんの水を頭から浴びせ、何とか正気付かせてやる。

児玉が帰ったあと、10時の時報が聞こえて来たので、飲み屋にいたアパッチ族たちは、工廠跡に出かけて行く。

旧砲兵工廠跡には、見張りが3人いたので、殴ってやろうと政吉たちは様子を見る。

そんな中、銀塊を掘り出して逃げていた行田は、見張りに発見され、頭を殴りつけられる。

地面に倒れた行田が握りしめていた銀塊を奪って逃げたのは宗やんだった。

翌朝、川に遊びに来た子供たちは、対岸の旧砲兵工廠跡に倒れている行田を発見する。

片足を負傷していた行田を診察した児玉は、ここでは対応できないので救急車を呼ぼうと電話をかけ始めるが、気がつくと、連れて来た政吉や健一たちが、行田をおんぶして集落へ逃げ帰ったことに気づく。

政吉は、行田の家に連れて来ると、これからはお前が面倒見るんやと敏子に言い聞かせる。

集落まで追って来た児玉だったが、住民たちが道をふさぎ邪魔をする中、児玉の前に出た政吉は、ここに警察の手が入ったら困るんで、救急車も呼べんのやと説明する。

癇癪を起こした児玉は、病院へ戻ると一人やけ酒を飲み始めるが、そんな夫に、綾子は、大学の同窓生だった村山が、糖尿病の新薬を発見したと新聞に載っているのを見せながら、東京の病院で働いていた方が良かったでしょうと話しかける。

その時、銀子が、姉の秋子の容態が悪いと呼びに来たので、児玉はすぐ往診に出かける準備を始め、綾子も又、往診鞄を手早く用意しながら、やっぱり縁は切れないわねと自嘲するのだった。

秋子は喀血していたが、兄の進は稼ぎに出かけているらしかった。

旧砲兵工廠跡では、いつものように、アパッチたちが鉄くずを掘っていたが、そこへパトカーのサイレンが近づいて来る。

児玉は、兄ちゃんが帰って来たら、これでも擦って、食べさせてもらえとリンゴを渡すが、そこへも、パトカーの音と「手入れだ!」と言う叫び声が聞こえて来る。

旧砲兵工廠跡から船で逃げて来た亭主たちを、心配そうに岸で迎える女房たち。

しかし、奥の方へ入り込んだものの中には逃げ遅れたものもあり、警察の発砲で1人が射殺され、宗やんが捕まってしまう。

その宗やんを、自分が保証人となって警察から引き取って帰って来た児玉だったが、気がつくと、進のバラックがなくなっていた。

お米が言うには、身内のものと言う人が来て、進たちを連れて行ったと言う。

そんな中、ホステスになることに決め、勤め出した敏子を見た健一は不機嫌になる。

二人は愛し合っていたのだが、敏子は、父が足を怪我し、幼い弟の金太郎の面倒も見なければならないのだと説明するが、健一は、自分が工廠跡で儲けてやると説得しようとする。

児玉は、子供たちがドラム缶風呂に入っている場所を通りかかった時、進の妹の銀子がドラム缶風呂に入っていることに気づき、どうしたのだと聞くと、逃げて来たと言う。

それを聞いた児玉はいじらしくなり、迷子にならず良く帰って来たと褒めると、そのまま病院に連れて来て、診療室に寝かせてやる。

綾子は、児玉が何か隠している様子に気づき、診療室で寝ていた銀子に気づくと、これまで色んな難局を乗り越えて来られたのは、自分たちが二人っきりでいられたことであり、子供も作らないようにして来たのに…と呆れるが、児玉は、しばらく預かるだけだと言い訳する。

その頃、新聞には、連日のように、くず鉄ドロに手入れが入り、数十名単位で逮捕されていた記事が載るようになっていた。

旧砲兵工廠跡の川沿いにはずらりと機動隊が並び、警戒をするようになっていた。

それを対岸から見つめる政吉が、隣にいた健一に、仕事探しに行ったそうやな?と聞くが、健一は、面白くなさそうに、住所書いただけでダメだったと答える。

一方、宗やんの家では、久子が、アルサロには宿舎があるので、そこに住むことにすると言い残して家を出ていく。

お米は、そんな娘を止めようと追いかけて行くが、家に残った宗やんは、久子!久子!と口だけで言いながら、畳の下に隠していた空き缶の中に入れたへそくりの中から1000円を取り出していた。

姉の秋子は既に他界したらしい銀子は、いつの間にか、児玉家の一員となっており、人形相手にお医者さんごっこをするようになっていたが、児玉が世話していることが新聞で紹介されたことから、博愛園と言う施設が預かることになる。

その施設に銀子を連れて行き、寂しそうな表情の銀子を残し、児玉と二人で帰りかけた綾子だったが、途中でどうしても我慢ができなくなり、児玉を連れて施設に戻ると、銀子を連れ戻すことにする。

ある大雨の日、中小企業の社長工藤(遠藤辰雄)が、集落の家族の家を見て回っていた。

児玉からの依頼で、安定した収入を得る為に、工藤が手内職を頼んだ家に、様子を見に来ていたのだった。

一方、児玉の方は、支払いが滞っていた薬局から、注文を断られるようになっていた。

そんな児玉に、綾子は、今日は徹夜して未収分の請求書の整理をすると話しかける。

そこに工藤がやって来て、この集落は雨が振ると水がたまり、特に便所の周りがひどいので衛生面で問題があると伝える。

後日、集落の住民たちが協力し、便所周りの地面補修など行うことにするが、児玉は、そうした様子を取材してもらおうと、知りあいの新聞記者に来てもらっていた。

記者は、健一や政吉に、写真用につるはしを振り上げたポーズを作ってくれと頼むが、健一は俺たちは見せ物じゃない!と急に怒り出し、記者を追い帰してしまう。

児玉が、どうしたんだ?と健一の側に来ると、先生が余計なことをするから、あんな連中がくるんだと、健一は迷惑そうにつぶやく。

夜、拾って来た犬が、外でいつまでも鳴いているのが気になった綾子は、外に出て犬を抱き上げると、先に寝ていた銀子に抱かせてやる。

それを観ていた児玉は、とうとう負けたか…と苦笑する。

足を負傷した行田は、松葉杖を付いて工事現場で働いていた仲間の元にやって来ると、トラックに危うく轢かれかけるが、それを助けてくれた友人に向かい、俺から奪った銀塊を返せと迫る。

しかし、その友人は知らないと困惑する。

その後も、あの日、一緒に工廠跡に行った仲間や仲買人を探し歩き、銀塊を売った人間がいないか探していた行田だったが、とうとう一人の仲買人の口から、顔が平べったく、目がしょぼしょぼした男から銀を勝ったと教えられる。

行田は、その人相から宗やんが犯人だと気づくと、家に向かい、銀を返せと宗やんに殴り掛かって行く。

それを知った政吉や児玉は、行田の乱暴を止めようとするが、一人で銀で得た金を使ったと知ったお米も夫の行為に逆上する。

そこに帰って来た健一の顔を見た行田は、敏子に手を出すなと釘を刺して帰って行く。

児玉は、宗やんの口から、本当に盗んだ銀を金にして、一人で使ったことを確認すると、がっかりしたように家を出るが、そんな児玉に声をかけた政吉は自分の家に寄ってくれと頼む。

政吉の家には、すでに5人もの子供が寝ており、鉄くずで儲けていた頃は育てられたが、今となっては生活も苦しくなった中、女房のお種に、又子供ができてしまったので、始末してくれないかと言うのだった。

その話を呆れたように聞いていた児玉は一つのアイデアを思いつく。

集落中の女房たちを集めて、避妊の基礎知識を教えることにしたのだった。

その中には、宗やんや敏子も混ざっていた。

女房たちは、臍下丹田を大切にするよう説く児玉の話に感心しながら帰って行くが、残った敏子は、健ちゃんが自分の身体を欲しがるが、結婚できそうにもないので悩んでいるようだった。

それを聞いた児玉は、二人が本当に愛し合っているのなら問題ないと思うと答えて帰す。

その後、いつものように、腹の具合が悪く、トイレを借りるため残ってた宗やんが帰って行く。

ある日、もはやタイヤがイカレてしまって使い物にならなくなった自転車の修理をしていると、綾子がバイク屋のバイクに乗って帰って来て、これからはこれを使ってくれと言う。

聞けば、生命保険を解約して勝ったのだと言う。

昼食の準備をし始めた綾子に児玉が感謝している時、窓ガラスが割られ、外に置いてあったバイクが走り去る音が聞こえて来る。

それを追おうとした児玉は、健一たち若者に取り囲まれる。

追っても無駄や。今日は喧嘩を売りに来た。病人が治るのは薬のお陰で、あんたの力じゃない。あることないこと新聞に書かせ、俺たちに下水工事をやらせても請けた金でバイクを買ったのだろうと言うのだった。

唖然とした児玉が何も言わず帰りかけると、他の若者たちも、ほら吹きのええことし!とかペテン師!と児玉の背後から罵る声をかけて来る。

病室に帰って来た児玉は、僕の負けだ。明日、ここを出て行こう…と綾子に次げる。

しかし、綾子は断固反対する。

外からはまだ罵声が聞こえて来るが、玄関に出た銀子は、あんたら帰れ!と怒鳴りつける。

旧砲兵工廠跡では、爆破作業が行われていたが、そんな中で、子供たちは遊び、健一と敏子は抱き合っていた。

身体を与えた敏子は、思い切ってここを出ようと勧めるが、へぼ医者と喧嘩をしたことを打ち明けた健一は、敏ちゃんは俺のもんや。酔っぱらいの好き勝手にさせるか!と息巻く。

その時、子供たちの騒ぎ声が聞こえ、遊んでいた金太郎が穴に落ち、人事不省になったことが分かる。

ちょうどその頃、児玉医院にやって来た工藤は、資金繰りが付かず、会社が倒産したことを児玉に打ち明けていた。

健一は金太郎を抱きかかえ、児玉医院に駆け込んで来る。

話を聞いた行田も敏子と共に駆けつける中、児玉は緊急手術を始めることにする。

健一だけを手術室に残し、血液型を聞いた児玉だったが、健一は知らないと言うので、仕方なく、自分の血液を輸血する決心をした児玉は、綾子と二人で手術を続行する。

その一部始終を見ていた健一の表情が少し変わる。

控え室で待っていた行田は、金がいるな…と敏子と相談していた。

やがて、手術が終わり、控え室にやって来た児玉は、今晩一晩様子を見ようと言い、健一に話があると告げる。

その後、健一は、集落に戻ると皆を集め、工藤が倒産したことを教える。

それを聞いた住民たちは、児玉の差し金で工藤の内職を始めたのに…と、一斉に児玉の悪口を言い始める。

お米たちは、明日から一体どうして食べて行けば良いのかと悩み始める。

その時、住民たちの頭の中に聞こえていたのは、アパッチ族の雄叫びだった。

旧砲兵工廠跡で鉄くずを掘り起こし、それで金儲けをする幻想だった。

宗平や政吉たちは、もう一遍やろうと決心する。

その頃、児玉は、工藤の仕事を請け負っていた家への弁済金として、30万は必要だと計算し、その工面に悩んでいた。

金太郎は、何とか峠を越したことが分かる。

旧砲兵工廠跡に偵察に行っていた宗やんが戻って来て、警察はおらず、守衛が5、6人いるだけだと報告しに帰って来る。

金太郎が気がつき、家に下着の替えを鳥に帰ろうと児玉医院を出た敏子は、つるはしを背負って一斉に出かけて行く集落の住民たちの姿を目撃する。

その中には、もちろん、健一や父、行田の姿もあった。

アパッチ賊の襲撃を受けた旧砲兵工廠跡の守衛は、直ちに警察に通報し、警報を鳴らす。

しかし、政吉たちは警報の音を聞いても舐めてかかり、作業を止めようとはしなかった。

その時、健一は、近づいて来るパトカーの男に気づく。

政吉も危険を察知し、全員に、バラバラになったらあかんで!と声をかけ、逃げるよう勧める。

敏子から、又、住民たちが襲撃に行ったと言う話を聞いた児玉は、一人夜の川を渡り、旧砲兵工廠跡に来ると、寝ゲル住民たちに、鉄くずを捨てろ!俺たちは泥棒じゃないはずだ!と叫びながら、迫って来るパトカーの前に飛び出し、警官を阻止しようとする。

朝方、集落に児玉と共にやって来た警官たちは、すっかり住民がいなくなっており、もぬけの殻状態になっているのを発見する。

児玉と同行して来た警官(楠栄二)は、特に暴力沙汰を起こした訳ではないので、今回は問題にならないのだが…と教える。

そこにやって来た工藤は、何とか半分だけ金をこしらえて来たと工藤に見せる。

その頃、政吉たち一行は、大阪の街を集団で移動していた。

途中、警官の姿を発見すると道を変え、行く当てのない彼らは公園で時間をつぶすしかなかったが、政吉はやっぱりあそこへ帰ろうと言い出す。

銀子が児玉に、皆が帰って来たと知らせに来たので、出迎えに行った児玉は、行田に、金太郎が助かったことを教える。

そこに健一がやって来たので、喜んでいた行田は急に表情を変え、人の娘をたぶらかしやがってとつかみかかる。

すると、児玉は、金太郎に献血してくれたのはこの健一であり、命の恩人だと説明したので、健一は呆然となり、児玉に近づくと、先生、俺…と絶句してしまう。

そんな健一に、児玉は敏子をみてやれと小声で伝える。

政吉は、この後全員で自首するつもりで、その前にここで一踊りしてやろうと思って帰って来たと説明するが、児玉はそんな住民たちに、警察の方はもうすんでいる。工藤社長の手内職の賃金も半分だけ払ってもらったと伝えたので、それを聞いた住民たちの間に安堵の声が広がる。

児玉は、宗やんにも、これから、行田とは親戚になるので仲直しろと説得し、行田と握手させるのだった。

そんな所に、妊娠したらしくおなかが大きくなった久子が戻って来たので、男に捨てられたと察したお米は、何とかなるやろと言いながら迎えてやる。

病院に戻って来た児玉に、綾子は、自分が妊娠したことを告げる。

児玉は何やってんだか…と、我がことに呆れるのだった。

その後も、お米とお種がつかみ合っていると政吉が児玉を呼びに来るので、おなかの子供の頃を考えろと、お種を叱ったりする児玉だった。

久子も敏子と一緒に洗濯をしていた。

バイクに乗った健一が、これから仕事に向かうらしく、児玉に挨拶をして去って行くと、政吉が屋台を引いて近づいて来る。

政吉は、先生が俺らのことを心配してくれるのは分かっているが、そうそう先生に迷惑はかけられない。とにかく、朝が来たら、お日様が昇ることだけは確かなので、少しずつ自分たちの手で生活できるようにやって行くつもりだと言い別れる。

それを聞いた児玉は、頼りになるのはお日様だけか…と自嘲しながらも、いないよりは、いる方がましか?と自分の存在を弁護しながら、その日も往診に出かけるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

現代版「赤ひげ」といった感じの人情医者物語だが、背景となっているのが、大阪地区にかつていたと言う「アパッチ族」が描かれているのが珍しい。

小松左京原作の「日本アパッチ族」で名前だけは知っていたが、こうして映画化されていたことは知らなかった。

貧しいながらもバイタリティだけはある人々の生活が、おもしろおかしく描かれている。

山茶花究やアチャコと言った達者なベテラン陣に混じり、血気盛んな若者を演じているのは、翌年の「天国と地獄」(1963)で有名になる前の山崎努である。

主役を演じているフランキー堺も脂が乗り切っていた時期で、人間味のあるキャラクターを、嫌味のないシリアスさで演じている。

新珠三千代も、夫を理解し支える賢婦として、見事に存在感を見せている。

劇中、今では差別用語と言われる言葉などが頻繁に出て来るため、なかなかテレビなどでは見れない作品だとは思うが、まぎれもない名作の一本だと思う。