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ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲

2010年、セントラル・アーツ、宮藤官九郎脚本、三池崇史監督作品。

※この作品は新作ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、ご注意ください。コメントはページ下です。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

2010年

「ゼブラーマン!ゼブラーマン!」押し掛けた群衆が熱狂的な声援を送っている。

その群衆の前では、レポーターとビデオを担いだスタッフが組んだマスコミ各社が陣取って実況中継をしている。

その場所は、一介の小学校教諭、冴えない学年主任でしかなかった市川新市(哀川翔)の自宅前だった。

その市川新市がゼブラーマンに変身し、エイリアンを撃退して、地球を救った事件の一ヶ月後のことだった。

玄関から出て来た市川新市は、パジャマ姿にゴミを入れたゴミ袋を両手に下げた「朝のゴミ出し」の姿だった。

自宅前に押し掛けた時ならぬ群衆やマスコミ陣に呆然となりながら、階段を降りて来た市川新市だったが、「白黒つけるぜ!」と言うゼブラーマンの決め台詞が流行語大賞に選ばれたことを聞かされるが、ピンと来ない表情。

家族のことを聞かれた市川新市は、「出て行かれた」と寂しげに応える。

さらに、レポーター(生瀬勝久)からポーズを要求させると、不承不承と云った感じで、ゼブラーマンのポーズをパジャマ姿のまま演じてみせたりしていたが、群衆の後ろの方に、松葉杖をついた息子の姿を見かけたので呼びかけるが、息子は黙ったまま去って行くのだった。

「出来ないんです…」

いつの間にか、何かの装置に縛り付けられていた市川新市は、そうつぶやいていた。

「変身出来ないんです…。あれは夢だったんです…」

その言葉を、装置の外で聞いていた不気味な男は、助手の小人に目で合図をする。

すると、助手の小人は、イスに縛り付けた少女にメスを突き刺す。

すると、その少女の目が不気味に緑色に光った。

不気味な男は、装置のスイッチを回し始める。

2025年、路上で目覚めた市川新市の髪は真っ白になっていた。

周囲にはサイレン音が響き渡り、人々が逃げ惑っていた。

泣いている子供の姿も見えた。

場所は新宿西口のようだった。

コクーンビルの近くにそびえ立つ、螺旋状になったビルが回転を始める。

その屋上付近から、一条の光が上空に向かって発射される。

その光は「ゼブラシティ市役所」と銘が入った人工衛星で反射され、拡散して、東京都を中心とした特定地域を、軌道上からバリアで封じ込める。

ふらふらと歌舞伎町らしき場所で立ち上がった市川新市は、全身黒尽くめの怪しい武装集団が迫って来たのに気づき、側にあった高齢者用スクーターに乗って「馬骨街」と看板が出ている場所へ逃げ出す。

ステージ上では、ゼブラクイーンこと相原ユイ(仲里依紗)が、観客たちの前で、扇情的な唄を歌い始めていた。

タイトル

市川新市は、スクーターから、車輪部分だけ残った荷車に気づくと、その上に腹這いになり、さらに逃げ続ける。

しかし、追って来た不気味な軍団に追いつかれ、機銃掃射を浴びせかけ吹っ飛ぶ。

すると何故か、ステージ上で歌っていたユイも又、倒れて苦しみ始める。

時計が5時5分を指すと、謎の軍団は攻撃を止め、そのまま帰って行く。

スパイラル状の新都庁から、都知事相原公蔵(ガダルカナル・タカ)の映像が飛び出し、「白黒付けてみませんか?」のコピーを応用した数種類の宣伝を流し始める。

その都知事相原公蔵こそ、市川新市を謎の装置に入れた不気味な男だった。

「なっちゃいねえぜ…」、そうつぶやきながらサングラスを外した男は、市場純市(田中直樹)だった。

市場は、銃弾を受け倒れていた市川新市に気づくと、慌てて「白馬の家」と大きなロゴ模型が置かれた遊園地のような場所に運んで来る。

そこには、手術中の浅野晋平(井上正大)がいたので、急患だと告げる。

しかし、浅野は順番を待てと云う。

市場は、この患者は全身に百発銃弾を受けており、13カ所骨折している急患なんだと必死に訴えるが、それを聞いた浅野は、それならとっくに死んでいると答える。

しかし、その直後、「死んでねえよ」と言いながら、市川新市は起き上がる。

仰天する市場と浅野だったが、新市の顔をまじまじと見た浅野は、それが、自分が小学生時代の学年主任だった市川新市先生だと気づく。

浅野は、新市の身体から弾を取りながら、相原公蔵が都知事に当選してから、「朝と夕方の5分間だけ、警察が民間人を撃って良い」「ゼブラタイム」と云う新システムを始めたことを教える。

驚いたことに、そのシステムが始まって以降、犯罪発生率は半分以下になったと云うのだ。

「メリハリです!」

ステージに登場した相原公蔵は、そう観客に訴えかける。

「善と悪、その二面性を肯定することで、メリハリの利いた社会になる」と説いているのだ。

その演説に反対する中年男(木下ほうか)が、金属バットを握ってステージ上に登るが、都知事の脇に従えていた3人のゼブラミニスカポリス(稲生美紀、大橋沙代子、清水ゆう子)が、キックで倒す。

「今度、アメリカの17州が、ゼブラタイムを導入することが決まった」と、相原公蔵は何事もなかったかのように続ける。

そのニュースが流れていたテレビを切る市場。

ベッドに寝かされていた新市が、気絶していた間、歌が聞こえた、嫌な歌が…と呟くと、すぐさま「それはゼブラクイーンこと相原ユイだろ?都知事の娘で、ゼブラシティの広告塔だ」と教える。

新市の腕に麻酔を注射した浅野が「医者になりたいんです」と言うので、医者じゃないの?と驚く新市だったが、浅野はただの看護士だと言う。

市場は、ここの家族だと、白馬の家の中で暮らしている仲間を紹介する。

それはみんな、ゼブラタイムの被害者たちだった。

新市は、無惨な身体になった人々の姿を見て、「これが、家族…?」と言葉を飲む。

そんな新市に浅羽が、「先生は15年間、どこにいたんですか?自分は八千代小学校出身の浅野ですよ」と聞くが、新市は、自分が先生だったと云う過去も覚えていないようだで、何も答えられなかった。

浅野は、新市が記憶喪失だと気づく。

少女は「ゼブラーマン 宇宙人を退治」と大見出しが載った古い新聞を読んでいた。

ゼブラクイーンこと相原ユイは、その日、スチールモデルの仕事をこなしていた。

仕事を終え、父親相原公蔵と車に乗り込んだユイは機嫌が悪かった。

公蔵が理由を聞くと、CDチャートで40週1位を誇っている美咲美香(スザンヌ)がうざいと言い出す。

運転席でそれを聞いていた秘書の新実(阿部力)は、ゼブラタイムで始末しましょうか?と声をかけるが、そんなんじゃダメだとユイは拒絶する。

後日、美咲美香が椅子に腰掛けていた廊下でモップをかけていた一人の掃除婦が「美咲さんですか?サインください」と目を合わさずに言葉をかける。

美香は快く承知するが、掃除婦は「本当にいい子なんだ…」と不機嫌そうに振り返る。

掃除婦に化けていたのはユイだった。

ユイは、持っていたモップの柄で、美香をめった打ちにして殺す。

その後、ゼブラクイーンにメイクしてステージに立ったユイは、美香の死を悔やむように装いながら、本当によい方でした…、次の曲を美咲さんに捧げますと言いながら、ゼブラクイーンの唄を歌い始めるのだった。

その頃、白馬の家の中にある市場の部屋のベッドの上にいた新市は、小さなバーベルを使って、少しづつ体力を取り戻すよう努力をしていた。

そんな新市は、市場が熱心に観ているユイのテレビを消すように頼む。

生理的に受け付けないし、その曲を聴いているだけで力が抜けてしまい、俺はだんだん弱って行くと云うのだ。

すると市場は、俺のDVDを見るかと、一枚の作品を新市に差し出す。

それは、市場がかつて、アクション俳優をやっていた時代演じていたと云う「ゼブラーマン」のDVDだった。

水木一郎が歌う勇壮なテーマソングに乗り、市場が演じるゼブラーマンと怪人イノシシ男(中野英雄)の対決が描かれていた。

そのテレビ番組を観ているうちに、新市は徐々に昔のことを思い出して行く。

その頃、ゼブラクイーンこと相原ユイは、衣装デザイナー(波岡一喜)が用意した衣装に、もっと黒が欲しいとダメ出しをしていた。

それでも衣装デザイナーが、お愛想を言いながら背後に立ったのに気づいたユイは「後ろに立つな!」と怒鳴り、キックで蹴飛ばす。

その後、「俺、ユイさんの気持分かりますよ」と近づいた新実とじゃれ合ったユイは、「お願い聞いてくれる?」と甘えかかる。

15年前、緑色のエイリアンが地球を征服しようとした。ゼブラーマンがそれを倒した後、エイリアンの死体の回収処理を担当したのが防衛庁だった。

当時、その担当者だったのが、ユイの父親相原公蔵だった。

作業中だった公蔵は、エイリアンに寄生された一人の少女を発見した…と説明したユイは、その少女を見つけてくれと新実に頼む。

見つけてどうするのか?と新実が聞くと、ユイは、繁殖させるのだと言い出す。

その時、部屋に入って来た公蔵は、お前たちは手を出すな。お前には、地球外生物の恐ろしさが分かっていないとユイに詰め寄る。

ユイが知ってるよと反抗したので、思わずその頬を叩く公蔵。

その頃、新市は、市場が主演した「ゼブラーマン」のDVDの最終回を観ていた。

市場は一緒にその作品を観ながら、脚本家がバッくれたので、この回は自分がアイデアを出したのだと自慢する。

観ていると、ゼブラーマンの最終回は、ゼブラーマンが宇宙人の身体を食べ、死んでしまうと云うとんでもない結末だった。

市場に言わせると、それは「自己犠牲」を表した、もっともヒーローらしい行為なのだと云うが、それを見た新市は、急にテレビを壊そうと暴れ出す。

騒ぎに気づいた浅野が駆けつけ、麻酔を打つが、市場が「ゼブラーマン」のDVDを見せたと知ると、記憶喪失の治療には時間がかかるんだと叱りつける。

浅野の言葉を理解出来ない市場が反論しかけると、「先生は、ゼブラーマンなんです。本物の」と浅野は答える。

その後、落ち着きを取り戻した新市を外に連れ出した市場は、暴力を否定する浅野とは意見が合わないのだと打ち明ける。

自分は、ゼブラタイムの犠牲者の中から優秀な人材を見つけ出して、ゼブラシティの連中と全面対決することを目指しているのだとも。

平和の為には、暴力しかないと訴えている市場のすぐ脇に、突如、何かが落下して来て砕け散る。

新市が見上げると、屋上から少女が植木鉢を投げ落としている所だった。

あの子は、すみれと云う口がきけない子で、自分で育てた鉢植えを壊すのが趣味なんだと市場が説明する。

その後、一人屋上に上がり、壊れた鉢植えの中の花にじょうろで水を与えていた新市の元に、すみれが近づいて来て「花が好きなの?」と口を聞く。

新市が「口がきけるの?」と驚くと、これまでしゃべりたくなかっただけなのだとすみれは言う。

名前を聞いても、言いたくないと云うすみれだったが、又、鉢植え直せば良いよ、今度は咲くかも知れないかななと言いながら、新市が壊れた鉢植えの破片を拾っていると、自分も進んで拾い始める。

そんなすみれの顔をじっと見つめていた新市は、どかで会ったような気がすると口に出す。

おじさんは先生だったんだと聞いて来たすみれの頭をなでようと触った新市だったが、その途端、緑色の衝撃が、すみれの頭から流れ込む。

後ろに吹っ飛んだ新市に、「私もおじさんに会ったような気がする」と言いながら、すみれは右手を差し出して来る。

「触ってみて。私に触って!」

恐る恐る新市が、すみれの右手に手を合わせると、またもや感電したかのように衝撃が走る。

同じ頃、相原ユイも苦しんでいた。

ユイの身体に縞模様が発生する。

新市は、ゼブラーマンに変身しかけていた。

しかし、それは真っ白なゼブラーマンだった。

新市は自らの姿を見て、「ありえねえ…」と呟き、すみれに「君は?」と問いかけるが、すみれは「分からない。こう見えて私25歳だし…、私の能力を悪いことに利用しようとしていた連中にどこかに閉じ込められていたので成長が止まったの…」と答える。

その頃、ゼブラクイーンことユイは、「エイリアンの場所が分かった」と新実に告げていた。

「横浜市八千代区…」と住所をすらすらと云うので、それを聞いていた新実は、その場所では「ゼブラタイム」が適用出来ないと悔しがる。

ユイは「あいつは生きている…」と呟く。

その後、いつものように、公蔵と車の後部座席に並んで乗っていたユイは、突如、隣の父親公蔵を蹴り始める。

白馬の家では、変身した新市に、浅野が「先生、思い出したんですか?」と聞いていたが、新市は、「分かりません。でも、あいつが何者か分かるんです。相原ユイは私なんです」と言い出す。

「あなたは、まじめだけが取り柄の教師なんです」と浅野と市場は止めようとするが、新市は、すみれの身体をしっかり抱きとめ、完全なホワイトゼブラーマンに変身する。

「浅野さん、あんたは、ここの家族を守ってくれ。俺は俺のやるべきことをやる!」と白ゼブラーマンは言い放つ。

その時、スパイラル状の新都庁ビルが回転を始める。

「ゼブラタイム」の時間になったのだ。

そんな中、ユイは、父親公蔵の身体を車の外に蹴落とすのだった。

「馬骨街」と看板が出ている場所にふらふらと立ち上がった公蔵は、ゼブラポリスの一団に取り囲まれる。

公蔵は、自分は都知事だと言うが、ゼブラポリスは「知ってるよ?」と笑いながら、公蔵をいたぶり始める。

さらに、三人のゼブラミニスカポリスもやって来て、血まみれになった公蔵の身体にまたがると、からかうように痛めつけ始める。

公蔵は、最後の力を振り絞るように「お前らは俺が作ったのだ」と抵抗するが、最後は、ミニスカポリスの太ももに挟まれ首を折られて果てる。

それを見届けた新実は、その場を離れる。

テレビでは、「都知事が暗殺された」「八千代区に殺害した犯人がいる」などと偽のニュースを流し始める。

それを見ていた浅野は逃げようとはせず、「先生と約束をしたんだ。僕は僕の家族を守る」と言うので、市場の方も「俺も俺のやり方でやらせてもらう」と宣言すると、日頃からこの日の為に鍛えていた白馬の家の自警団仲間を集める。

その頃、マスコミ相手に、自分が父親の後を継いでゼブラシティを守ると発表していたユイの前に、ホワイトゼブラーマンが出現する。

ホワイトゼブラーマンは、嬉しそうに戦いを挑んで来たゼブラクイーンに「貴様は俺なんだよ」と言い放つ。

すると、ゼブラクイーンも「お前が俺なんだよ」と言い返しながら戦う。

やがて、ゼブラポリスたちが登場して来たので、ホワイトゼブラーマンは一旦退却する。

この事件は「ゼブラクイーンがストーカー被害にあった。その背後には『白馬の家』と名乗るカルト集団があることが分かったので、その残党を一掃するため強制捜査が行われる」と報道される。

その偽情報を盾に、新実をリーダーとしたゼブラポリスが、白馬の家の前に到着する。

それを出迎えたのは、市場と自警団の面々だった。

浅野は、すみれを逃がそうとしていたが、すみれは、おじさんを助けると言う事を聞かない。

新実は浅野を呼び出すが、無視された形の市場は「俺も一回くらい、ゼブラーマンと呼ばれてみたい…」と悔しがると、ジャンパーを脱ぎ捨てる。

その下には、昔テレビドラマで着ていたゼブラーマンの衣装が着込んであった。

マスクをかぶった市場の様子を呆れたように観ていた新実は、「ガキの頃テレビで観ていた」と漏らすが、家の中に入り込もうとする際、一蹴りで市場を倒して行く。

それでも、何とか立ち上がろうとした市場だったが、又しても簡単にのされてしまう。

あげくの果てに、脱げたゼブラーマンのマスクを、ゼブラポリスが次々に踏みつけて行くではないか。

その頃、家の屋上に上って来た浅野は、すみれを温室の中に隠していた。

しかし、浅野が去った後、そこを抜け出したすみれは、屋上からゼブラーマンを呼びかける。

その声を察知したゼブラクイーンは驚喜し、最終ゼブラークイーンの姿に変身する。

新市の方も、ホワイトゼブラーマンに変身して、白馬の家に向かって飛び立つ。

ゼブラクイーンの方は、バイクで白馬の家に向かっていた。

ゼブラポリスに捕まったすみれは、猿ぐつわをかまされ、鎖につながれていた。

それを守ろうとする浅野に新実は、このガキはエイリアンに寄生されている。邪魔をすれば、公務執行妨害で斬って捨てるとに本当を突き出して脅す。

それでも浅野が抵抗しようと鉄棒を拾い上げると、新実は「あれっ?それっておかしくない?」とあざ笑う。

暴力を否定して来た浅野には、鉄棒を捨てるしかなかった。

そんな浅野の首筋に、「それはそれでかっけーな。完結させてやるよ」とあざけりながら、新実が日本刀を突きつけて来る。

その時、ホワイトゼブラーマンが到着する。

新実は「分かってないね、おっさん。日本人の魂に斬れないものはない」と啖呵を切りながら、日本刀を構えると、ホワイトゼブラーマンと交差する。

ホワイトゼブラーマンは、胸の部分が少し斬れていることに気づくと、そこを触り、その指先をぺろりとなめる。

もちろん、「燃えよドラゴン」でのブルース・リーのまねである。

次の瞬間、新実の日本刀を「真剣白刃取り」の要領で掴んだホワイトゼブラーマンは、日本刀をねじ落とす。

すると、そのホワイトゼブラーマンの背後の扉が開き「白黒つけに来てやったよ」と声が響く。

ゼブラクイーンが到着したのだ。

構えるホワイトゼブラーマンに対し、ゼブラクイーンは「慌てるなよ。思い出させてやるよ」と、言いながら、干してあった白と黒の服を外し、洗濯機の中に放り込んでスイッチを入れ、「観てみな」とからかうように言う。

恐る恐る、洗濯機のふたを開けたホワイトゼブラーマンは、廻り続ける水の中の白と黒の服に目を奪われて行く。

謎の装置に縛り付けられていたことを思い出す新市。

「変身出来ないのは、心に迷いがあるからです」装置の前でそう云っているのは、相原公蔵だった。

助手の小人の胸の名札には岸田美穂(マメ山田)とあった。

「白黒つけてあげましょう。遠心力で」公蔵は愉快そうに続ける。

「俺は遠心分離機にかけられた!」ホワイトゼブラーマンこと新市は思い出していた。

1秒間に8000回転するその新装置は、人間を善と悪とに分離する装置だった。

スイッチを入れられ、廻り始めた新市は、この装置、実験はやったのかと聞くが、公蔵は笑いながら、「今やっているのが実験です」と言うだけだった。

「俺が生まれた」そう、ゼブラクイーンが笑う。

小人の助手岸田が、防衛庁のマークが入った大きなコインを装置に投ずると、装置の一方の出口から、黒い固まりが転がり出て来る。

少し遅れて、別の出口から、白い固まりも転がり出て来た。

公蔵は「成功だ!白と黒の分離に成功した!」と喜ぶ。

白い固まりの中から、髪が白くなった新市の顔が出て来るが、それを見た公蔵は、「お前には用はない。抜け殻め…」とバカにする。

一方、黒い弾はグニョグニョと変形すると、皮が破れ、中から黒い流動体のようなものが飛び出して来る。

それは、公蔵の前で徐々に形を整え始め、女性らしいと分かると、胸は大きく、尻はくびれて…と云う公蔵の注文通りの体型に変化して、最後に黒い顔の中からユイの顔が出現する。

「それが私よ」ゼブラクイーンは説明を終える。

その時、すみれの口から、緑色のゼリー状のものが吐き出され、それが小さくなったかと思うと、ゼブラクイーンの舌の上に乗る。

ゼブラクイーンは、又しても新たな姿に変身すると、ホワイトゼブラーマンに体当たりして来る。

「私はあなたの黒い部分、言わばあんたの分身さ。つまり、あんたが相原公蔵を使って作ったのよ。あんたは、私が生まれた次の日、捨てられた…。しかし、あんたは生きていた。しかもエイリアンと一緒に!」そうゼブラクイーンは続ける。

それがすみれのことだと気づいた浅野は、側にいたすみれを優しくいたわるのだった。

ホワイトゼブラーマンはゼブラクイーンに、「教えてくれ!あんたの目的は?」と聞く。

すると、ゼブラクイーンは「世界中にゼブラタイムが導入され、弱い人間、役に立たない人間がいなくなる。その為にこいつを復活させる。すると、地球がパニックになる!」と言うではないか。

互いに背中合わせで話していた二人は、同時に「俺の背中に立つんじゃねえ!」と叫び、同時にハイジャンプをすると、空中でキックを出し合う。

ホワイトゼブラーマンが、ゼブラクイーンの腹を殴りつけると、血反吐を吐きながら「好きだよ…、こう云うの…」とゼブラクイーンは満更でもなさそう。

「なぶり殺しにしてやるわ!」と呟くゼブラクイーンの前に「ユイは俺が守る」と突然新実が立ちふさがる。

「お前の為なら死んでも良い」と言い切った新実の背中に近づいたゼブラクイーンは、「うざい!そう云うの、すっごくうざい!」と言い捨てる。

次の瞬間、新実は、自分の身体に背後から、ゼブラクイーンの手によって日本刀が突き刺されたことを知る。

そうした様子を見ていたすみれは、「私さえいなければ…」と哀しみ、ビルの縁に立つと「先生ありがとう!」の言葉を残し、飛び降りる。

それを追って、ホワイトゼブラーマンも屋上から飛び降りていた。

浅野が下を見下ろすと、地上に立っていたテントの屋根が破れていた。

目覚めた新市は、浅野が側にいることに気づく。

すみれは?と聞くと、奴らに連れて行かれたと云う。

新市は再びホワイトゼブラーマンに変身し、浅野と互いに頷き合うと、空を飛んで行く。

都庁の中に設置されていた遠心分離装置の前に来たゼブラクイーンは、装置の中に縛り付けたすみれを見ながら、スイッチを回し始める。

そこに、ホワイトゼブラーマンが飛来して来たので、助手の岸田にスイッチを渡したゼブラクイーンだったが、キコキコ、回転スイッチの音がうるさいので、全自動回転装置に切り替えろと癇癪を起こす。

「死ねば良いのに」そう減らず口を叩くゼブラクイーンに、「なぜ死なないか教えてやろうか?お前が生きているからだ」と答えるホワイトゼブラーマン。

「そん兄言うなら出てやるよ」と言うなり、ゼブラクイーンの額の「Z」の文字から黒い固まりが飛び出したかと思うと、そこから新市の顔が出現する。

そのメガネをかけた新市が、安い給料で子供や家族からバカにされ、退屈な人生に付き合わされるのは嫌だ!」とわめく。

その時、遠心分離機にかけられていたすみれの口から緑色のエイリアンが飛び出して来る。

緑色のゼリーのようなエイリアンは巨大化し、口から光線を出すと、新宿の町を焼き払い始める。

破壊された瓦礫の中に立ち、「あいつだ!最終回の…」と呟いていた男こそ、市場だった。

市場は、かつて自分が演じたゼブラーマンのように、巨大エイリアンに立ち向かって行く。

ゼブラクイーンが大笑いする中、ホワイトゼブラーマンは、遠心分離機の中からすみれを抱いて出て来ていた。

地上で、浅野と再会するホワイトゼブラーマン。

「もっとやれ!破壊しろ!」そう叫びながら、巨大エイリアンに向かって行ったゼブラクイーンだったが、巨大エイリアンお尻から出る屁で吹き飛ばされる。

市場も吹き飛ばされ、瓦礫の中に叩き付けられていた。

怒ったゼブラクイーンは、巨大エイリアンの頭の中に飛び込むと、頭の中を引っ掻き回す。

市場の側に駆けつけたホワイトゼブラーマンと浅野だったが、その二人に見守られながら、市場は「ゼブラーマン…、白も黒も…」と言いかけ、そのままがっくり首を足れる。

二人が思わず「市場!」と呼びかけると、「何?」とすぐ市場は首を起こす。

ゼブラクイーンも、巨大エイリアンの敵ではなかった。

弾き飛ばされ気絶したゼブラクイーンの身体に、緑色のエイリアンの触手が嫌らしく伸びて来て身体を触る。

目覚めたゼブラクイーンだったが身体が動かない。

その触手を日本刀で一刀両断に切断したのが、生きていた新実だった。

腹からは多量の出血をしている。

新実は、なおも、人間の大きさに変化したエイリアンに斬り掛かるが、ゼリーを切るようで全く手応えがない。

すると、新実は身体ごとエイリアンの中に飛び込み合体すると、「言ったろ?あんたの為なら死ねるって」と言いざま、自分で自分の身体に日本刀を突き刺す。

「お前、サイコーだぜ…」そう云って、新実は息絶える。

その最期の姿を見ていたゼブラークイーンは、手の平に落ちた自分の涙に驚く。

「黒くしてやる!真っ黒にしてやる!」と興奮するゼブラクイーンに「止めろ!もう止めるんだ」と声をかけたのはホワイトゼブラーマンだった。

「あいつを倒してなんになる?」そう説得しながら、ゼブラクイーンの肩に手を置くホワイトゼブラーマン。

まだ抵抗していたゼブラクイーンだったが、「合体だ!合体するんだ!あいつを倒すには、合体するしかない」と言うホワイトゼブラーマン。

「俺はお前が嫌いだ」と言うゼブラクイーンに対し、ホワイトゼブラーマンも「俺もお前が嫌いだ」と言いながら、どこから見つけて来たのか、布団と二つの枕を引っ張って来ていた。

浅野は、すみれの目を押さえ、見えないようにするが、その手をどけたすみれは、「私もう現実から目をそらさないことにしたの。25歳だし…」と言う。

ホワイトゼブラーマンはゼブラクイーンに「お前には何かまだ残っている。だから今なら一つになれる!」と言いながら身体を寄せ合うと、二人の身体は光に包み込まれて行く。

合体成功!

白と黒のゼブラーマンに変身した新市は、そっとコンドームの箱を捨てる。

STOP! AIDS!

それを見て拍手する浅野、市場、すみれの三人。

「ゼブラビーム!」そう叫んだゼブラーマンの目から出た光線が、空中に巨大な「Z」の文字を浮き出させる。

ゼブラーマンは市場に、どうやってエイリアンを倒したんです?最終回…と問いかける。

その直後、新市はDVDの映像を思い出す。

「浅野さん、一つだけ聞いて良いですか?白黒つけることで人は幸せになれるのですか?」そう言い残したゼブラーマンは巨大エイリアンの頭に飛び乗ると、そのゼリー状の身体を一気飲みし始める。佐賀県名物の「餅すすり」の要領で…

ゼブラーマンは、黙々とエイリアンを食べ続ける。

そして呟く。

「白黒付かねえから…丸く収めたぜ!」

巨大エイリアンの身体を丸呑みしたゼブラーマンの身体は、まん丸の気球のようになっていた。

空中に浮かんだゼブラーマンに近づいたすみれは、足を回転させ、頭の部分を真下に持って来ると、新市の顔に触り「信じれば…、夢は叶う」と言葉をかける。

頷くゼブラーマンこと市川新市。

すみれが微笑むと、バルーン状態になったゼブラーマンはゆっくり浮上し始める。

それを見上げる市場、そして群衆たちがゼブラーマンの名前を呼びかける。

「ゼブラーマン!ゼブラーマン!」

すみれは「ありがとう」と言いながら、遠ざかって行くゼブラーマンに手を振っていた。

地球の引力圏を離れたゼブラーマンは、宇宙のかなたの星になって行った。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

哀川翔主演百本記念作品だった「ゼブラーマン」(2003)の続編。

家族からはバカにされている冴えない小学校教諭が、自分で作った衣装を着てゼブラーマンと名乗り、町内でちまちま怪人(実はエイリアン)と戦っているうちに、本当の地球の危機に立ち向かわざるを得なくなり…と云う、小市民的な…と云うか、下町風ヒーローとでも言うべき発想の前作の後日談の形を取っている。

ただし、本作では「自分の中の悪と戦う」と云う前作とは全く違った新たな視点になっている為、冒頭から家族たちは離散したことになっており、下町風の雰囲気も一掃されている。

いつの間にか、白い髪になって道に捨てられていた市川新市が目にした東京は、奇妙な悪の権力者が支配する町を変貌していた…と云う、かなりSF色が強まった世界観になっている。

前作も、いわゆる「ヒーローもの」や「特撮もの」「オタク」のパロディめいた内容だったが、本作も典型的な「ヒーローもの」のパロディになっており、「ヒーローが善と悪とに二分し戦う」と云うアイデアは、「スーパーマン3 電子の要塞」や「スパイダーマン3」と同じであり、お馴染みのパターン。

本作がユニークな点は、その分離したもう一つの自分が「女」になっている所。

このゼブラクイーンを演じる仲里依紗の体当たり演技がまず魅力である。

ほぼ同時期に撮っていた「時をかける少女」のヒロイン像とは全く違う異質のキャラクターを見事に演じ切っている。

前作で気になった「敵役の弱さ、魅力のなさ」が、本作のゼブラクイーンでは、かなり改善されている。

しかし、又しても、最後の敵は前作と同じになってしまうので、カタルシスは中途半端な感じのまま終わるのが惜しまれる。

随所に挿入されている「パターン外しのギャグ」などはばかばかしくもつい笑ってしまうが、ラストのオチは、観る人によって笑えるかどうか微妙な所だろう。

佐賀県の一地方で伝承されている「餅すすり」(突き立ての餅を、そのまま切らずに両手で伸ばしながら、吸うように全部飲み込んでしまう奇習)を知っていると、ばかばかしさも格別なのだが…

若干、冗談っぽくと言うか、脱力系っぽく作ってあったため、イマイチ乗りにくかった前作に比べると、かなりヒーローものとして「マジ度が高くなっている」分、本作は、ヒーロー好きにはかなり満足度の高い作品になっているのではないだろうか。

個人的に気になったのは、前作で「東京都」だったはずの八千代市が「横浜市八千代区」になっていること。

傷ついた新市が身を寄せる「白馬の家」が「ゼブラタイム」の適用範囲から外れている地域にあると云う設定の為なのだろうが、そこにいるはずの市場や浅野が、すぐに新宿副都心を思わせる場所に姿を表すのが解せない。

冒頭近く、ゼブラポリスに撃たれ、倒れていた新市を見つけた市場が、その新市を一人で「白馬の家」に運んで来た過程も描かれていないので、新宿と横浜がすぐ側にあるかのような不自然さを感じる。

又、ゼブラクイーンことユイと相原公蔵がいつも隣り合って座っている場所は、車の後部座席だと思うが、これも車の外観が登場しないので、釈然としないまま見てしまうことになる。

全ては、低予算の為の苦肉の策だとは思うが、もうちょっとどうにかならなかったのだろうか?

東映ヒーローもの特有の「スケール感のなさ」が、この作品でも出てしまっているので、どうしても気になるのだが、そうした点も「ギャグ」として、笑ってすませる部分なのかも知れない。