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俺にまかせろ

1958年、東宝、樫原一郎「昭和刑事物語」原作、須崎勝弥脚本、日高繁明監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

夜の階段を登る守衛。

ある階の部屋に鍵を差し込もうとすると、ドアはそのまま開いた。

部屋の中に懐中電灯を差し込むと、その光の中に、倒れた男と凶器のナイフ、そのして、その側には呆然とした表情の男が立っていた。

2丁目7番地の銀星宣伝社で人殺しとの急報を受ける栗原刑事(宮口精二)

タイトル

パトカーが出動する。

被害者の横に立っていたのは、中島(松本光男)と言う男だったが、彼は正当防衛と言う事で、簡単に釈放になる。

所長室では、北村署長(土屋詩朗)と立石主任(岡部正)が、今度来る部長刑事がまだ世間に面が割れてないので、匿名捜査をやらせる事になったと打ち合わせしていた。

栗原警部の元に、中島の身柄を引き取りに来たのは、上司の黒崎(熊谷二良)だった。

自分が書類を取りに行かせたのが悪かったと、黒崎は謝って、中島を連れて帰る。

ピン公こと市村刑事(山田彰)を呼んだ栗原刑事は、デカ長は来るのか?と聞くが、逆に、ご子息ですか?と聞かれて腐る。

匿名捜査の事を知らされていなかった栗原刑事の元にやって来たのは、風俗タイムスの記者浦上常一(伊藤久哉)、100号記念の特集号を持って来たのだった。

その浦上、親である栗原刑事が、いまだ平刑事である事をからかいながら、息子の部長刑事は昨日着任だったんでしょう?と探りを入れて来る。

黒崎と中島はタクシーで会社に帰るが、後部座席でひそひそ話をする二人の様子を、バックミラー越しに観察していた運転手こそ、栗原刑事の息子で、部長刑事として衆院したばかりの栗原英一(佐藤允)だった。

会社に到着して二人を降ろした英一は、すぐに主任に電話を入れて報告を済ますと、市村刑事を助手として付けると主任から言われる。

主任は、栗原刑事から息子について聞かれるが、彼は25年も親父の下にいてうんざりしていると言い、休暇届を出して出て行ったと説明する。

その主任が、市村を所長室に呼んだのを、廊下で見ていたのが浦上だった。

浦上は、黒崎に会いに行き、栗原の息子が姿を消したと報告する。

それを聞いた黒崎は、あの運転手だったのではないかと疑い、すぐに中島に日本タクシーに電話を入れさせ、偽者だった事を知る。

黒崎は、ただちに息子の英一を捜せと命じる。

浦上はその夜、手みやげ持参で栗原刑事の家を訪れると、今度、親子刑事の記事を書きたいので、息子さんの写真を見せてもらえないかと相談する。

英一の妹の潤子(若林映子)が言うには、一昨日から、部屋に鍵をかけているので、兄の部屋には入れないと言う。

浦上を疑っていない栗原刑事は、自分が持っていた英一の写真を見せてやるのだった。

女連れで写真店に帰って来た玉井五郎(中丸忠雄)は、目つきの悪い男が来ていると女店員に教えられる。

二階に上がってみると、そこで待ってたのは、自分の洋服を勝手に着込んだ大学時代以来の友人、栗原英一だった。

二人は気兼ねない仲で、英一は二階に並べてあるバーの酒をねだる。

実はこの建物が、ちょうど風俗タイムスの向かいにあり、見張るのにはうってつけだったので、英一が勝手にやって来たと言う訳だった。

そこに市村刑事がやって来たので、英一は五郎に座を外させる。

そして、安っぽいスーツを着た市村を、そんな服装では、上流社会への潜入など出来ないぞと注意するのだった。

市村は恐縮すると共に、殺された被害者の遺体に付着していた髪の毛は、21、2才の女性のものだった。電波は東シナ海航行中の船からだったらしいと報告する。

それを聞いた英一は、密輸の仲間割れかな?と推理する。

その頃、黒崎たちは無線を通じて、柳宗信を呼んでくれと先方から連絡を受けたので、留守だと答えさせていた。

柳とは、あの殺した相手の名前だったからだ。

無線通信で、取引は予定通り、5月15日と確認する黒崎たち。

一方、市原刑事は、浦上が、デカ長の事を探るためにお父さんを狙っていると教えたので、父親とは一度会って説明するしかないだろうと英一は決意する。

おでん屋「弥助」の主人弥助(有島一郎)と女房のおすみ(立花暎子)は、やって来た栗原刑事に、昔、旦那に二度パクられたと言う男が来ていますと出迎える。

奥に向かった栗原がそこで見たのは、泥酔して座敷に寝そべっている英一だった。

何のまねなのかと問いかけた栗原に、英一が、芝居だと言う風に目配せする。

しかし、その瞬間、英一の写真を撮ったものがいた。

いつの間にか、店に入って来ていた浦上だった。

浦上は、英一が、栗原の息子で部長刑事である事を知っていると明かす。

それを聞いた弥助も、英一の本当の正体を知って感心する。

今何をしているのかと浦上から聞かれた英一は、パン助と鬼ごっこだとはぐらかし、30年も刑事をやり、みんなに面が割れているようじゃダメだと父親に嫌みを言い残し帰って行く。

主任にその事を電話で報告すると、匿名捜査は中止だと言われるが、英一は嫌だと拒絶する。

一方、黒崎たちの元に戻って来た浦上は、市村を張っていれば分かると報告する。

息子に言われた事で少し気落ちしていた栗原刑事だったが、弥助は、自分がスリから足を洗ったのは、旦那のおかげだと言い出す。

旦那には、人を知らず知らずに改心させる力があるんだから、渋谷署の主だと思って威張っていて下さいと慰める。

その後、栗原刑事は、外で出会った市原刑事に、英一と付き合っているだろうとかまをかけるが、浦上が見張っている事に気づいた市原はごまかして、その場から姿を消す。

市原にまかれた浦上はがっかりして風俗タイムズ社に戻って来るが、驚いた事に、英一が待っていた。

英一は、社内にいた百合子(野口ふみえ)を気に入ったと側に呼ぶと、いきなり浮気しないかと言いながら、その子の手に手錠をかけてしまう。

あっけに取られた浦上を前に、笑いながら手錠を外すと英一は帰って行く。

英一は、五郎と一緒にナイトクラブに来て、五郎馴染みのホステス由加利(園田あゆみ)から紹介してもらって、マリ(浅田美恵子)と言う新しいホステスを紹介してもらう。

英一の隣に座ったマリは、英一にほくろがある事を指摘すると、彼の手首にもほくろがあったと言う。

それを聞いた英一は、銀星宣伝社で殺された被害者の手首にほくろがあった事を思い出す。

英一は、マリと一緒に踊りだすが、その時、胸のポケットに忍ばせていた無線機のアンテナを伸ばす。

英一の会話は、外の車の中で待機していた市村刑事や主任に筒抜けになっていたのだ。

マリは、彼は死んだと言う。

英一が、その男に決闘を申し込もうと思っていたなどとからかうと、マリはビンタをして来る。

ふられたと思い、五郎らのテーブルに戻って来た英一だったが、今度はマリの方が誘って来る。

再び踊りだした英一は、マリの髪を撫でる振りをしながら、何本か髪の毛を採取する。

英一が入手した髪の毛は、分析の結果、被害者に付着していたものと同じだったと市原刑事は教える。

英一は、そんな市原刑事に、あの女は腕力のある男を欲しがっている。捜査本部はハマに移動するぞと言う。

英一を、ベアと言うニックネームの勘当された富豪のどら息子と思い込んでいたマリは、横浜の自宅マンションで一緒に暮らし始める。

マリは、前の男の名を柳だと教えると、母親が病気で金がなかったので、仕方なく付き合っていたと打ち明ける。

マリは、英一に惚れたようだが、英一は、ナイトクラブであってすぐの告白なんて信じられないとつれない態度を取る。

英一自身も、自分の心の中に芽生えた愛情に戸惑っていたが、その後、トンネル内で会った市村刑事に、被害者の名前が龍と言う事だけ分かったと報告する。

浦上たちは、市村を8mm撮影機を使って尾行していたが、列車に乗る所でまかれてしまっていた。

ナイトクラブに来た黒崎の配下の殺し屋ビショップの謙(高木弘)は、由加利を脅しつけると、マリのマンションに電話をかけさせる。

その電話を受け取ったマリの会話を横で聞いていた英一は、由加利が誰かに脅されて電話をして来ていると気づき、すぐに電話を切ると、柳は何をしていた?例えば、麻薬?だったら、マリも狙われているぞと迫る。

ビショップの謙は、英一の行方を捜して横浜にやって来ていた。

マリは、もうすぐ自分の誕生日の5月15日まで待ってくれと、英一に打ち明けるのを拒む。

一方、黒崎たちも、今度の取引日が、5月15日である事を相手側と無線で再確認していた。

浦上は栗原刑事に近づくと、英一が女と遊んでいる合成写真を見せつけ、英一の居場所を教えないとこれを雑誌に載せると脅す。

栗原は、締め切りまでに何としても息子を捜し出すと約束するしかなかった。

英一は、深夜、マリが寝ているのを確認してマンションを抜け出すと、外の鉄橋で立石主任と会うと、連絡電波の変更を聞く。

その後、部屋に戻って来ると、マリは起きていて、英一のコートが湿っている事を指摘し、寝付けなくて外でタバコを吸っていたと言う英一が嘘をついている事を見抜くと、自分に対する本当の気持ちを尋ねて来る。

私の事を汚らわしいと思っているでしょう?とまで言われると、英一はマリを抱きしめるしかなかった。

思わずキスしようとするマリだったが、それを止めた英一は、誕生日まで、俺のプレゼントがなくなるじゃないかと頬を殴ってごまかすのだった。

床に倒れたマリは、何故かうれしそうに微笑んでいた。

翌朝、妙に機嫌が良くなったマリは、英一を誘って港にモーターボートを乗りに行く。

マリの持ちボートだと言う。

途中でボートを停めた二人は唄を歌い始める。

マリは、この世は太く短く生きたいと言い出す。

マリは汽船を追っかけてと言い出し、その言葉に従った英一に、5月15日午前3時、興隆丸と言う船から荷物が落とされる。

その荷物は、3分間で海に沈む仕掛けになっていると、突然打ち明ける。

柳は、日本に来て一ヶ月にもなっておらず、仲良くしていたのは自分だけだったのだと言う。

夜の波止場を帰る二人の前に、ビショップの謙、ボテ安(桐野洋雄)、パレ辰(宇野晃司)の三人が立ちふさがる。

英一は、三人と戦い始める。

二人はその場で倒した英一だったが、ドスを抜いたビショップの謙との戦いは長引き、近くを通っていた線路上にまで倒れ込む。

そこに機関車が接近して来たので、マリは必死になって列車を止める。

ビショップの謙は逃げ出すが、ここにいたら、又いつ連中が飛び出して来るか分からないと、英一はマリに引っ越す事を勧める。

その後、マリと一緒にタクシーで移動していた英一の姿を偶然見つけた妹の潤子は、その事を父親の栗原刑事に知らせる。

玉井五郎の店を探し当てた栗原刑事は、二階で英一を待ち受けるが、その場から浦上に電話をしようとした所を、やって来た市原刑事に止められる。

市原から匿名捜査の事を打ち明けられた栗原刑事は、自分が浦上の囮になっていた事を始めて知る。

その頃、黒崎は浦上に、栗原刑事を人質にして英一を呼び出そうと指示していた。

おでん屋「弥助」にやって来た浦上に、弥助は、風俗タイムスに自分の事を「流れ星」と言う昔のスリ時代の事を記事にされたので、客が来なくなったと食って掛かる。

そこにやって来た栗原刑事が手錠をかけようとしたので、開き直った浦上は、懐から銃を取り出そうとする。

しかし、その銃は、今しがた弥助がスリ取っていた。

その後、立石主任に会いに行った栗原刑事は、自分が無様なまねをしてしまったと謝る。

しかし、主任は、栗原に、英一の麻薬壊滅作戦の陣頭指揮につくように命ずる。

栗原は、せがれの指揮で奉公をしようと決意する。

5月15日、横浜の岸壁に来ていた英一は、マリと地図を見ながら、観音崎沖10海里で荷物が落とされる事を確認していた。

そこに、市原と栗原がやって来る。

栗原は、自分も一緒に連れて行ってくれと息子に頼むが、英一は、マリを見ていろと父親に命ずると、市原刑事と二人でボートに乗り、現場に向かう。

マリは、あの人はあれで良い所もあるのよ。気にしないでねと、命令されてしょげている栗原を慰める。

そんなマリたちの前を、水上警察の船が走り去って行く。

マリは驚くが、栗原は、ベアは部長刑事で、自分の息子なのだと打ち明ける。

今までだまされていた事を悟ったマリは泣き出すが、栗原刑事は、ただ「すまん、すまん」と謝るしかなかった。

その晩、密輸団は一斉検挙された。

大手柄をあげ帰って来た英一に、立石主任は、100店満点だと誉めると共に、お父さんがアパートで待っていると教える。

アパートに戻って来た英一は、入り口で待っていた栗原に、ボクはマリと結婚しますよと言いながら部屋の仲に入る。

しかし、そこで英一が見たものは、ベッドの上で息絶えているマリだった。

栗原刑事は、自分がちょっと部屋を出た隙に薬を飲まれたと謝る。

英一は、そんなに裏切られた事が悔しかったのかと憮然と立ち尽くすが、栗原刑事は、部屋にあった鏡台を開いてみせる。

そこには、口紅で「それでも私はベアが好き」と書かれてあった。

マリを見つめる英一の背後に立った栗原刑事は、自分が生きている間に良く謝っておいた。今回の事件は、お前が99点、自分が1点で、合計100点だったかも知れない。否否、デカの仕事はもっと難しいぞと、優しく諭すのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

親子刑事+潜入捜査ものだが、脇役に見覚えがない俳優ばかりがそろっている珍しい作品。

脇役で分かるのは、中丸忠雄と有島一郎くらいで、佐藤允の妹役が若林映子であると言う事も、若すぎて判別出来ない。

何より、ヒロイン役の浅田美恵子と言う女優は始めて観たような気がする。

目力がある独特の風貌の女優だが、その後、引退してしまったのだろうか?

宮口精二扮する老刑事が、息子とは別に何か活躍するのではないかと期待させるが、活躍をするどころか息子の足を引っ張る事ばかりと言うのが引っかかる。

30年も刑事をやっている人間にしては、脇が甘すぎると言うか、頭が悪い人間にしか見えないのが観ていていらつく。

最後に、息子の恋人の死まで防げなかったでは、良い所なしである。

だまされていたと分かった栗原が、浦上をいきなり逮捕する罪状も良く分からない。

クールな捜査官を貫いていたはずの佐藤允自身も、結局、女の情にほだされて…と言う風に見えるのも、何となくすっきりしない所だろう。

遊び人を演じている中丸忠雄と佐藤允だけが,妙に生き生きとして見えるような気がする。

あくまでも、当時の東宝ニューフェースたちを売り出す目的で作られた作品だったのかも知れない。