TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

怪電波の戦慄 第二篇 透明人間篇

1939年、大都映画、大井利與脚本、山内俊英監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

タイトル前に断片的な映像が続く。

どうやら、前編である「怪電波の戦慄 第一篇 人間タンク篇 」のダイジェストらしい。

動くロボット(人間タンク)、 椅子に縛られた女性。

草むらで、男数名と戦う黒覆面に黒マントと言う謎めいた黒衣の怪人。

ボートに乗せられた女性を追う、もう一隻のボート。

ボートに乗せられ誘拐されていたのは、人間タンクの発明者古里博士(藤間)の一人娘美樹子(夢路妙子)。

誘拐したのは、古里博士の元助手で、今回、人間タンクを奪い取った早川と小松。

そしてそれを追うボートに乗っているのは、古里博士の今の助手二人、水原(水原洋一)と細山であった。

好漢、水原は、ボートのへさきに仁王立ちになって誘拐犯たちのボートに迫るが、小松の放った拳銃で川に墜落してしまう。

美樹子危うし!

黒衣の怪人とは?

博士はどこに?


タイトル

川に落ちた水原は、すぐに水面に姿を現す。

幸い、銃弾には当らなかった様子。

一方、男たちと戦っていた黒衣の怪人は、一人の男から棒で頭部を殴られ気絶していたかに思えたが、男がその覆面を脱がそうと近づいた瞬間、急に起き上がると、どこへともなく逃げて行ってしまう。

その黒衣の怪人は、金庫に近づいていた人間ロボットの部屋に駆け付けると、鉄枠の窓から金庫のハンドルに向って紐を投げ、さらには、椅子に縛られていた女の足元に何か丸めた手紙のようなものを投げて去る。

その紙には、灯台の所に廃屋があるのでそこに迎えと、地図が記してあった。

追っ手が姿を消したので、上陸した小松らは、人間タンクの後援者となる山口が待つ海辺の住処に到着すると、連れて来た美樹子をここでしばらく預かってくれと山口に頼む。

山口は、召し使いのせ●し男(伊達正)に、美樹子を奥の部屋に閉じ込めるよう命ずる。

山口は、早川と小松に、例の設計図は?と問うが、それは古里博士から奪って来た。明日には人間タンクも完成すると説明する。

山口は、部屋の中にある装置を彼らに貸し与え、透明人間を完成させてくれと依頼する。

その頃、部屋に閉じ込めた美樹子に、お茶を運んで来たせ●し男だったが、美樹子がそれをはね落としたので、カッとなって襲いかかろうとした時、様子を見に来た小松が叱り外に追い出す。

早川は、美樹子と二人きりになると、自分の一生を棒に振ったのは、博士が裏切ったからだと言い訳をし始める。

その頃、住処の側の海に人間タンクが浮上して来る。

そして、浜辺に歩いて上陸すると、その場で消えたり現れたりする。

近くから小松が操縦していたのである。

浜辺に降り、人間タンクの透明化を当たりにした山口とせ●し男は驚嘆する。

小松は、そんな山口に、人間タンクの発する殺人光線は、あの山を爆破するくらいの威力あると自慢し、残りの部品が届けば明日にも完成すると付け加える。

住処に戻り、これからの軍事兵器は「電波」の時代だと、山口に説明していた小松だったが、その部屋の隅に置かれた二つの箱には、いつの間に忍び込んでいたのか、水原と細山が潜んでおり、こっそり箱を抜け出すと、見張りの男を殴りつけて気絶させ、美樹子を探しはじめる。

その頃、美樹子を閉じ込めていた部屋の中では、早川が美樹子に襲いかかろうとしていた。

美樹子は、柱に刺さっていたナイフを手に取ると、迫りくる早川に抵抗しようとする。

一方、水原と細山は、廊下で出くわしたせ●し男を倒し、ようやく美樹子の部屋を突き止め、中に入ると、正に早川が美樹子につかみ掛かろうとする瞬間だった。

気でも違ったのかと声をかけた水原に気付いた早山は、仰せの通り、狂ったのかも知れないと開き直る。

水原と早川は、その場で殴り合いを始める。

しかし、騒ぎに気付いて駆け付けて来た小松に拳銃を突き付けられてはどうする事も出来ない。

翌日、捕まった水原は、山の中の棒に身体を縛り付けられ、人間タンクの殺人光線の実験台にされてしまう。

山口、小松、早川らが操縦する人間ロボットの四角い目と口が光ると、一発、二発と、水原の身体の側の地面が爆発するが、その時突如出現した黒衣の怪人が、すばやく水原の捕縛を解き、解放してやる。

さらに、早川らが持っていた設計図を盗んで逃亡を計る。

せ●し男がその後を追い、一旦は飛びついて設計図を奪い返すが、どこからともなく、もう一人の黒衣の怪人が現れ、又、その設計図を奪って逃げ、早川たちを混乱させる。

その頃、山口の住処を脱出していた美樹子と細山は、トンネルの中で追い掛けて来るもう一人の男に気付き、細山は暗闇の中、取っ組み合いを始める。

その内、向こう側に出て、互いの顔を太陽の下で確認しあうと、水原であった事が分かる。

安心して立ち上がった彼ら3人の足元に、どこからともなく、髪を丸めたものが投げ込まれる。

広げてみると、そこには「博士は健在、灯台へ」と書かれてあった。

その灯台では、古里博士が、黒衣の怪人から返されたのか、人間タンクの設計図を持ち、火で焼こうとしていたが、そこに何者かが侵入して来た気配があるので身を隠す。

侵入して来たのは早川らだった。

室内を探し回っていた彼らは、タンスに隠れていた古里博士が、拳銃を手に現れた事に気付く。

そして博士は、これが元で醜い争いをするのなら、抗してしまえば良いのだと言いながら、手にしていた設計図を、早川や小松らの目の前で燃やしはじめる。

そこへ遅れてやって来たのが水原ら3人だったが、たった今、小松らが設計図を奪って逃げ去った所なのだ、古里博士から教えられる。

しかし、博士は慌てた様子がなく、人間タンクを破壊すれば良いのだと落ち着いて説明する。

細山はそんな博士から頼まれ、人間タンクを奪い返すため、山口の住処に舞い戻るが、人間タンクは、そんな彼らの前で透明化し、細山を襲おうとする。

しかし、細山は何とかその魔の手から逃れ、操縦器を奪い取る事に成功する。

細山は、すぐさま操縦器を操り、人間タンクを透明化させると、博士と美樹子の近くに出現させる。

そんな博士の前に現れたのが、銃を構えた山口だったが、水原は早川らと戦いはじめる。

そんな水原に向けて、山口は銃を発射するが、そんな山口に襲いかかったのは人間タンクだった。

人間タンクは、抵抗する山口を難なく抱え上げると、そのまま崖から、山口の身体を放り投げてしまう。

水原は、そんな人間タンクに向けて手榴弾を投付け、その爆発で人間タンクは動かなくなってしまう。

ようやく事件が解決したところで、博士や水原の元に現れたのは、謎の黒衣の怪人だった。

その怪人が黒覆面を取ると、博士の甥の時彦だった。

そこに、もう一人の黒衣の怪人が現れ、覆面を取ると、中に入っていたのは見知らぬ女だった。

博士が名前を聞くと、自分は小松に殺されかけた所を、時彦さんに助けられた女だと説明する。

その後、灯台の麓で、海を仲良く眺めていた水原と美樹子の元に、壊れたはずの人間タンクが歩み寄って来て姿を現す。

水原らが驚くと、人間タンクの頭を外して、中に入っていた細山が顔を出し笑ってみせる。

外側だけになった人間タンクの中に入って動かし、二人の恋人をからかったのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼


昭和14年(1939年)に作られた「怪電波の戦慄 第一篇 人間タンク出現篇」の続編に当る。

今回、フイルムセンターの「発掘された映画たち2008」と言う企画で上映されたものだが、前編はまだ見つかっていないようで、第ニ篇だけが上映された。

前編は、この作品の冒頭部分に添えられている断片的なダイジェスト映像と、続編の展開から推測するしかないが、どうやら、人間タンク(ロボット)の研究をしていた古里博士の元助手二人が、博士に逆恨みをし、研究成果である人間タンクと、かねてより思いを寄せていた娘、美樹子を共に奪って逃走するが、その際、黒覆面の謎の男が出現し、彼らの妨害をしたらしい事。

そんな二人を追って、博士の現在の助手二人が追跡を開始したが、博士の行方は分からなくなったらしい事。

又、小松に利用されたあげく、椅子に縛られて、人間タンクに襲われかけていた女もいた模様で、どうやらその女が、続編に登場する、もう一人の黒衣の怪人の正体らしい。

基本的には単純な冒険活劇なので、さほど複雑な筋立てでもないと思われる。

この第二篇に題された「透明人間」と言うのは、「透明人間タンク」の事であって、文字通り、透明人間が出現するのではない。

何故、ロボットが透明化するかについては何の説明もないが、どうやら軍事兵器として、透明化し、相手に気付かれないまま接近する事が可能と言う機能らしい。

カメラを止めて、その間に、ロボットが画面から外に出て、その後再びカメラを回すと、フィルム上では一瞬にしてロボットが消えたように見えると言う、昔の忍術映画などにも良く使われた初歩的なトリック撮影で撮られている。

ロボットは、当然ながら着ぐるみ使用。

ラストのオチで、その仕掛けを見せているのが御愛嬌。

それでも、海の中から姿を現す所とかは、それなりに大変な撮影だったと思う。

ストーリー展開に関しては御都合主義の連続で、今の感覚からするとバカバカしくも思えるのだが、当時としては、手に汗を握る活劇として喜ばれたのかも知れない。

当時の撮影技術の限界もあったためか、終始、明るいセットや屋外で撮られているため、ダークな怪奇色は薄い。

むしろ、アクション場面になると「うさぎとかめ」のような、運動会の駆けっこの時にかかるような陽気な音楽が重なるので、スリラータッチと言うより、コミカルな印象を受ける。

明らかにアフレコでしゃべっている早川のセリフも、大時代な棒読み調で、今観ると珍妙。

この作品、どことなく「TV実写版 鉄人28号」の雰囲気に似ている。

ロボットの操縦器を持った方が有利になると言う設定も、操縦器のアンテナの形など造型面もそっくり。

せ●し男を演じている伊達正言う俳優は、1936年版の「西遊記」で孫悟空を演じた役者さんで、後に大映の「大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス」(1967)や「蛇娘と白髪魔」(1968)にも登場している大ベテラン。この映画でも、意外に素早い身のこなしを披露している。

さすがに後編だけを観ているので、あっけないと言うか、話の筋立てで今一つ釈然としない部分などもあるが、戦前にも、こうしたロボット活劇があった事を知っただけでも貴重だった。

そもそも「人間タンク」と言う名称は、1918年、脱出王フーディーニが主演したアメリカの連続活劇映画に登場したロボットを、日本に輸入した際、そう名付けたのが始まりらしいが、かつてテレビで洋画の解説をしていた淀川長治氏が、ロボット映画の話になると必ずと言って良いほど、この「人間タンク」話をしていた事が思い出される。