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ひばり十八番 弁天小僧

1960年、東映京都、瀬戸口寅雄原作、中田竜雄脚本、佐々木康監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

江ノ島の岩本院では、弁財天の御開帳を祝って能が披露されていた。

受付に立っていた寺侍戸沢平馬(若杉恵之介)は、御皇室から多額の御奉仕を頂いたので、それを院主の玄照和尚(柳永二郎)に知らせに行く。

玄照和尚は、そのお礼を能を観ていたお縫様(日高澄子)にする。

そのお縫様、舞っている青年がいたくお気に召したようで、踊りの後、自分の所へ呼ぶように、和尚に頼む。

能を舞っていたのは、小姓の菊之助(美空ひばり)だった。

お縫様が待つ部屋にやって来た菊之助は、お縫様の酌の相手をするよう、和尚から命ぜられると、ぶ然とした顔をしながらも従う事になる。

さらに、お縫様から返杯をされた菊之助は、自分は不調法なのでと断わろうとするが、和尚からたしなめられ、仕方なく一杯だけ相手をする。

和尚は、明らかに不機嫌になった菊之助に対し、御皇室からは、黄金百枚も頂いたので、十分にお相手するようにと言い付かり、その場に取り残される。

しかし、その直後、部屋で物音に気付いた和尚が戻って来ると、お縫様の誘いをはねつけた菊之助がぶ然とした表情で待っていた。

お縫様は、恥をかかされたと立腹しており、すぐにこの小姓を下げるよう和尚に命ずる。

狼狽して、菊之助に謝罪をするよう命じる和尚に、今まで散々、自分達を稚児扱いにして私服を肥やして来た事を指摘した菊之助は、今夜限りで寺を出ると言い放ち立ち去る。

その頃、奥の部屋では、和尚の隠し財産を狙った平馬が、和尚の奥方を斬り殺していた。

その現場を偶然観てしまった菊之助は、慌てて平馬と争う形となり、相手の刀を奪い取った菊之助は、平馬を斬ってしまう。

そこにやって来たのが玄妙和尚で、現場の惨状を観た彼は、全ては、菊之助一人でやった事だと疑ってしまう。

必死に否定する菊之助だったが、先ほど裏切られた和尚に聞く耳はない事を悟ると、やむなく寺を飛び出してしまう。

その後、幼い頃に別れた母親を探し求めるため、旅に出かける菊之助の姿があった。

その頃、とある宿場の塩問屋「さぬき屋」の前には、相場を釣り上げるため、塩を売ろうとしない店の態度に怒った大勢の庶民が集まっていた。

しかし、さぬき屋は、岡っ引安五郎(阿部九州男)に袖の下を掴ませて、民衆を追い払ってもらう。

岡っ引は、去年の嵐で、塩田が全部ダメになったのだから仕方ないと民衆たちを説得しようとする。

そんな宿場には、二人を殺害して逃亡した下手人として、菊之助の似顔絵を描いた立て札が立てられていた。

そんな事は知らない菊之助、探し求めていた母親のいる藤野屋に行くと、13年前、江ノ島の岩本院に子供を預けた覚えはないかと、その時から肌身離さず持っていた守り袋を出して、母親おふじ(三浦光子)に見せていた。

長年離ればなれだった一人息子との再会に喜ぶおふじだったが、ちょっと部屋を出たところで、ふらりと立ち寄った岡っ引安五郎に出会い、手配書の人相書きを見せられ、御上に教えると十両もらえると知ると、急に態度が豹変する。

菊之助のいる部屋に戻って来たおふじは、何喰わぬ顔で、菊之助に風呂に入るように勧める。

その頃、とある蔵には賊が侵入していた。

その賊の一人日本左衛門(黒川弥太郎)が、岡っ引が近づいて来た事に気付くと、仲間たちに知らせると共に、すぐさま覆面を解き、武士の姿になると、何喰わぬ顔で現場を立ち去る。

風呂から上がって来た菊之助を待っていたのは、安五郎が連れて来た捕り手たちだった。

寺男と奥方を殺しただろうと一方的に責められ、いくら菊之助が違うと言っても、聞く耳を持たない。

さらに、菊之助を驚かせたのは、先ほどまで、親子の再会を喜んでいたはずのおふじが、自分の事を全く信じていない態度だった。

その憎々しげに見つめる視線を感じた菊之助は、今日限り親子の縁を切り、裏稼業を歩くと啖呵を切るやいなや、捕り手たちの合間をかいくぐって、宿屋を逃走するのだった。

その頃、先ほど、蔵から千両箱を盗んで来た日本左衛門たちは、貧乏長家の連中に、その小判を撒いていた。

その長家の屋根伝いに逃げていた菊之助は、一件の長家の部屋に降りるが、そこには寝たきりの父親と二人暮しの娘加代(花園ひろみ)がいた。

菊之助は、驚く娘に謝り、無実の罪で追われているので、一時匿って欲しいと頭を下げる。

その直後、捕り手たちが長家中を調べに来るが、娘の部屋の押入に匿われた菊之助は窮地を免れるのだった。

菊之助は、これ以上迷惑をかけられないと、娘に礼を言い、すぐに長家を立ち去るのだった。

その頃、蔵破りの仕事から一足先に帰り、仲間のための鍋を仕込んでいた赤星十三(花房錦一)は、日本左衛門たちが帰って来たので、出迎えに出て、座敷に戻ってみると、見知らぬ若者が勝手に鍋を食べているので驚いてしまう。

名を尋ねると、弁天小僧菊之助だと言う。

そのあまりの度胸の良さを見た日本左衛門は、自分達は泥棒だが、貧しいものに金を撒いている義賊なのだと正体を明かす。

正直者がバカを見る世の中が悪いんだと呟く言葉を聞いた菊之助は、南郷力丸(若山富三郎)から、仲間に入らないかと誘われると、仲間にして下さいと頭を下げる。

それを聞いた日本左衛門は、これで、今、呉服問屋に忍び込んでいる忠信利平を加え、白波五人男が出来上がったと喜ぶのだった。

その忠信利平(里見浩太朗)は、呉服問屋浜松屋幸兵衛(山形勲)の用心棒として、運び込まれている塩を眺めていた。

そこへ、岩本院の玄照和尚と岡っ引の安五郎がやって来る。

その安五郎は岡っ引の他に金貸もやっており、借金が返せない長家の一件にやって来る。

何時か、菊之助を匿ってくれた加代の家だった。

安五郎は加代に、金が返せないなら今夜から藤野屋へ働きに来いと命ずる。

その後、玄照と浜松屋に合流した安五郎は、良い娘が藤野屋で働く事になったと知らせる。

そんな様子を見ていた利平が、浜松屋の一人娘お鶴(中里阿津子)のお供を言い付かったので、お鶴に、あの三人の間柄について聞いてみると、幼い頃からの友達なのだと言う。

そのお鶴は、利平に思いを寄せているようで、思いきって告白して来るが、利平がきっぱりはねつけたので、嘆き哀しむ。

藤野屋で働きはじめた加代は、やって来た玄照の酒の相手をしていた。

安五郎は、おふじに、加代を玄照の夜の相手をするよう焚き付けていた。

その夜、何も知らず玄照の部屋に呼ばれた加代は、寝具の上で待っていた和尚の姿に驚き、店を飛び出すが、そこでばったり菊之助と再会する。

菊之助は、思わぬ所で出会った加代の姿にも驚くが、その後から追って来た玄照和尚にも驚く。

玄照の方も驚くが、菊之助は、寺の奥方を殺害したのは自分ではなく、戸沢平馬がやった事だが、思わぬ濡れ衣を着せられた今では裏稼業を歩く弁天小僧菊之助と名乗るようになったと啖呵を切ると、和尚を側の川に突き落とすのだった。

加代が落とした簪を拾って渡してやった菊之助は、彼女が二両借りた元金が膨らんで、いつの間にか五両になった借金が返せないばっかりに、藤野屋で働かされていると知ると、自分が持っていた七両を、使ってくれと渡そうとする。

しかし、加代が遠慮すると、その金は汚いものではなく、自分が小さい頃から、母親に渡そうと忽忽と溜めて来たものだが、もうその必要がなくなったので…と、淋しげに説明する。

その後、利平は、玄照、浜松屋、安五郎たちが結託し、近々、赤穂に塩を買いに行くらしいと、日本左衛門や菊之助ら仲間に報告する。

それを聞いた日本左衛門たちは、計画を練りはじめる。

翌日、浜松屋に、旗本に化けた日本左衛門とその小姓役の赤星十三が、将軍家への贈り物をしたいので、反物を見せて欲しいと客を装ってやって来る。

二人が座敷に上げられた後、良家の娘に化けた菊之助がお供の南郷力丸と、同じく客に成り済ましてやって来る。

菊之助は、端物を見ている振りをしながら、何喰わぬ顔で、赤い端切れを懐に入れてしまう。

それを側でしっかり見ていた番頭は、今、万引きをしたと詰め寄り、すぐに用心棒役の利平を呼ぶ。

お供役の力丸が、言い掛かりだと反論するが、菊之助の懐から端切れが出て来るに及んでは言い逃れが出来ない。

番頭は、やっぱりと怒り、タバコ盆で菊之助の額を打ち据える。

この暴力は、さすがの菊之助も計算外だったらしく、その美しい額に三日月型の傷が出来てしまう。

これを見ていた力丸は、番頭が盗んだと指摘した赤い端切れを良く確認してみろと言い出す。

そこには「山形屋」の札がしっかりついていた。

ここに来る前に、別の店で買った品だと言う力丸の言葉を証拠立てるものだった。

これには、番頭は青ざめてしまう。

良家の息女の額に傷を付けてしまったからだ。

この騒ぎを聞き付け、部屋にやって来た浜松屋幸兵衛は、薬代として十両を差し出して詫びるが、力丸は、切り餅四つ(百両)だと吹っかけて来る。

浜松屋は、法外な要求に一瞬怯むが、仕方なしと判断、言うがままに、百両を差し出す。

そこにやって来たのが、旗本に扮した日本左衛門と赤星十三。

日本左衛門は、自分は二階堂信濃守の配下の者だが、力丸が称した屋敷など聞いた事がないと言い出す。

さらに、その娘と言う菊之助は、本当は男が化けた姿であろうと言う。

これを聞いた菊之助は、諦めたように胡座を組むと、タバコ盆を引き寄せ、勝手にタバコを吸いながら、見栄を切りはじめる。

これに同調するかのように、南郷力丸の方も本名を名乗る。

二人は、悪びれる風もなく、金を諦め帰って行く。

この一部始終を側で見ていた浜松屋は、日本左衛門に、詐欺を見破ってくれた礼を言い、奥へ通すと、謝礼をさせて頂きたいと申し出る。

すると、日本左衛門、臆する事なく、それでは一万両出してくれと言い出し、浜松屋は唖然とする。

そんな大金はないと浜松屋が言うと、赤穂へ塩の買い出しに行く支度金があるはずと、本名を明かした日本左衛門は詰め寄る。

そこへ、利平がやって来たので、浜松屋はほっとして、二人を追い払うよう指示を出すが、利平はその言う事を聞くどころか、部屋の畳を剥がし、床下に隠してあった千両箱の山を日本左衛門らに教え、浜松屋に自らの正体も明かすと、浜松屋がこれまで、塩買い占めによる値段のつり上げなど悪行を重ねて来た事を突き付けるのだった。

これを隣の部屋で聞いていた娘のお鶴は、泣きながら父親にすがりつくと、もう人から怨まれるような事は止めてくれと諭す。

そんな浜松屋の前に、三社祭りの神輿が通りかかると、菊之助は太鼓を叩き、浜松屋から持ち出した千両箱の小判を、他の仲間たちが神輿の上から廻りを埋め尽くした民衆に向けてばらまきはじめる。

そこにやって来た玄照と安五郎は、自分達の溜めた小判をばらまかれていると知り仰天する。

菊之助は、怨み重なる玄照を、その場で斬り殺してしまう。

安五郎は、捕り手たちを日本左衛門らに差し向けるが、彼らは一足先に逃げ出していた。

民衆の中、賊を追って街を走り回る捕り手たち。

そんな町中にある芝居小屋では、花道から菊之助が登場していた。

舞台上には、いつの間に役者とすり替わったのか、日本左衛門、赤星十三、忠信利平、弁天小僧菊之助、南郷力丸ら「白浪五人男」が内揃い、各々見栄を切りはじめる。

それを発見して、安五郎たち捕り手が、舞台に駆け上がって来る。

それを見た日本左衛門は、ここでは客に迷惑がかかるから表へ出ろと叫ぶ。

表に抜け出た白浪五人男たちは、捕り手たちと大立ち回りを始める。

南郷力丸は、屋根の上で大暴れ。

白浪五人男は、川べりに繋いだ船に乗り込むと、菊之助が一人捕り手たちの相手をしている隙に漕ぎ出して行く。

菊之助の身を案じる十三に、日本左衛門は、菊之助は大丈夫だと太鼓判を押す。

逃げた菊之助を追っていた捕り手たちは、京極丹後守の娘白菊を名乗る駕篭に遭遇し、捕物の苦労をねぎらわれる。

しかし、その白菊の乗った駕篭は川べりに近づき、中に乗っていた白菊は、いつの間にか菊之助の姿になって船に飛び乗ると、怪んで追って来た捕り手たちを尻目に、川へ進んで行く。

愉快そうに唄いながら櫂を漕ぐ菊之助の小舟は、他の四人が乗った船に近づいて行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「白浪五人男」の中の一人、弁天小僧菊之助を美空ひばりが演じた娯楽時代劇。

菊之助の不幸な生い立ちから、「白浪五人男」に加わって義賊として活躍するまでをテンポ良く描いており、クライマックスでは、お馴染みの歌舞伎の芝居とそれまでのドラマが融合すると言う面白い試みもなされている。

ストーリー自体は単純だし、かなり御都合主義が目立つとは言え、そこは娯楽作品。

ラストの大立ち回りなど迫力満点で見ごたえがある。

とにかく、歌も芝居も天才的な、美空ひばりの魅力が如何なく発揮された一本だと感じる。

水も下たる美剣士ぶりが際立つ里見浩太朗や、若き若山富三郎の姿も初々しい。