TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

アリババと40匹の盗賊

1971年、東映、山元護久脚本、設楽博監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

大きな城の中で、怪物の姿をした巨大な風船と剣を交えているのはアリババ33世(声-大塚周夫)。

そこへ、コックが料理を運んで来る。

ふたを取ると、小さな食物しか入ってなかったので、アリババは、それをペットのネコに食べさせ、次の料理の到着を待つが、コックは、今のが今日の料理の全てだと恐縮する。

それを聞いたアリババは、驚いて署長(声-田の中勇)を呼び寄せる。

署長はアリババを引き連れ、秘密の地下室に来ると、「開け!ゴマ」と唱えると扉が開く。

しかし、 そこには、あるはずの財宝が全てなくなっており、最初にあった大量に金貨の重さで窪んだ床の痕が残っているだけだった。

署長が説明するには、アリババの父親の代までに、先祖が残していた財産の半分を使ってしまい、今の陛下が残りの財宝を全て使い尽くしてしまったと言う。

今や、ここに残っているのはこれだけと、汚いランプを取り出して、署長が埃を拭うと、中から奇妙な魔物(声-富田耕生)が出現し、自分こそ、有名な「ランプの精」なのだと名乗る。

何でも願い事を叶える魔物と知り、喜んだアリババは、さっそく「ありったけの御馳走とカツ節2本をもってこい」と命ずる。

それを聞いた魔物が、「何故、カツ節が2本?」と聞くと、ペットのネコが「私が食べるのよ〜」と近寄って来る。

すると、それを見た魔物は飛び上がり、「ネコは嫌い!」と言って、ランプの中に逃げ込んでしまう。

これでは、魔物は何の役にも立たないと気付いたアリババは、ただちに国中のネコを一匹残らず捕まえて来るように、署長に命じる。

署長は、言われた通り、国中のネコを捕えはじめる。

そうした様子を、少年アルハック(声-大山のぶ代)と、友達のネズミのカジル(声-滝口順平)は隠れて見守っていた。

やがて、国中のネコを捕えたとの報告を受けたアリババは、ランプの魔物を呼出して、御馳走を捜して来いと命ずる。

その頃、空腹だったアルハックは、市場に来てスイカ売りからスイカをを買う。

しかし一枚の小銭しか持ってなかったので、アルハックが買えたのはスイカのほんのかけらに過ぎなかったが、それでも喜んでそのスイカを食べようとした瞬間、何者かが市場の上を通過し、市場は大混乱になる。

魔物が、市場中の食べ物を巨大なパラソルに入れて、空に持ち去ってしまったのだ。

しかし、その魔物、パラソルの中の食べ物が蠢いているので、不思議に思い、良く見てみると、その中に一匹のネコが紛れ込んでいた事を発見、盗んだ食べ物を放り出して退散する。

まだ、ネコが残っていたと知ったアリババは怒って、署長に、もっと徹底的にネコを捕まえてしまうように命ずる。

そのネコ探索の最中、アルハックはネコを助けてやる。

それを伝え聞いたアリババは、ランプをこすり、魔物を呼出すと、アルハックの居所を見つけろと命ずる。

魔物は、アリババが持っていたワインのビンを取り上げると、その中身をランプの中に注ぎ、精神を集中させると、ランプの中を満たしたワインが渦を巻きはじめ、その表面に何かが見えて来る。

それは山小屋だった。

さらに、魔物が精神を集中させると、山小屋の中が見えて来る。

その中に見えたのは…、大量のネコの群れだった。

それを見た魔物は気絶するが、アリババは家来たちを総動員して、アルハックの山小屋を目指す。

アルハックの住処に潜んでいた大量のネコは、署長のネコ狩りから逃げ延びて来た38匹、そのボスらしきネコがドラ(声-内海賢二)とゴロ(声-納谷悟朗)だと名乗り、仲間たちを助けてくれた礼を言う。

そこにカジルがやって来て、アルハックの首に賞金がかかったと知らせる。

ドラたちは、ネコにも意地があるので、これからアリババ城に殴り込みに行くつもりだと息巻くが、それを聞いたアルハックも、人間にも意地があると答える。

カジルは、38匹のネコと自分とアルハックでちょうど40人だから、今日からアルハックと共に戦おうと、皆を励ます。

そのカジルが、今こそ話す時が来たと、アルハックの先祖の話を始める。

ある日、アリババの先祖は、岩の前に集結するアルハックの先祖の盗賊一味を見かける。

アルハックの先祖が「開け!ゴマ!」と叫ぶと、大きな岩の扉が開いたのを隠れて見ていたアリババの先祖は、盗賊たちが去った後、自分も同じ呪文を口にして、扉を開け、洞窟の中に入り込むと、そこにあった宝の山を全て盗んで帰る。

それを聞いていたネコたちは、驚く。♪これは呆れた!エッホッホ!

それでは、アリババの方が泥棒じゃないかと。

アリババに財宝を盗まれた事を知ったアルハックの先祖は、部下を使って、アリババの家を見つけだすと、その扉に目印として×印を付けておく。

ところが、これに気付いた、アリババの賢い召し使いが、同じ×印を、全ての家の扉に付けて廻る。

その後、何とか、アリババの家を再発見したアルハックの先祖は油売りに化け、一味を40個の壷の中に身を隠してアリババの家を捜しはじめるが、これも気付いた召し使いが、熱い油を40個の壷全部に流し込んだので、中に入っていたアルハックの一味は全滅してしまったのである。

その後、仲間を全て失ったアルハックの先祖は、宝石売りに化け、アリババが開いていたパーティの席に運び込まれると、アリババ殺害の計画を実行しようとするが、またもや、勘付いた召し使いが、剣の舞を披露すると言い出し、アルハックの先祖に近づくと、その胸に剣を突き刺して殺害してしまったのであった。

盗賊から奪い取った財宝を元に、アリババはその後、国王となる。

全てを知ったアルハックとネコたちは、本当に驚く。♪これは呆れた!エッホッホ!

やはり、悪いのはアリババの方だったのだ。

アルハックは、その殺された先祖の子孫であり、カジルは、昔、アルハックの家の屋根裏で暮していたネズミの子孫だと言う。

その話を、カジルがし終わった時、山小屋の周囲で様子をうかがっていたアリババ王とその家来たちが、一斉に攻撃を仕掛けて来る。

アリババは、山小屋の中のアルハックに向って、野良猫共を引き渡せば許してやると叫ぶ。

署長は、単身、山小屋へ突入し、家来たちは次々と火矢を撃ち込んで来る。

まはやこの山小屋とはおさらばだと覚悟したアルハックは、ネコたち全員に、ここを飛び出してめいめい逃げるが、三日後の満月の夜、ガラクタ置き場で再会しようと伝える。

その時の合い言葉は「アルハック」「40匹」だと。

山小屋が、火矢で燃えはじめ、アルハックとカジル、そして、38匹のネコたちは一斉に外に飛び出すと、アリババの家来たちに飛びかかりながら、皆バラバラに逃げ出す。

ハックは、崖の上に無事逃げおうせる事が出来たが、他のネコたちの行方は分からなかった。

翌朝、アリババは、城のテラスで上機嫌で体操をしていた。

そこへお愛想を言いに来た署長は、ネコ共は皆、遠い国に逃げたんだと思うと言う。

アリババは、久々にランプの魔物を呼出すと、食べ物を盗んで来るよう命ずる。

城から飛び出して行った魔物は、市場中からあらゆる食べ物を強奪して行く。

それを影で見ていたドラは、ひどい事をすると悔しがる。

満月の夜、ガラクタ置き場にやって来たアルハックは、カジルから、残されたアルハック家の宝の一つだった「魔法の絨毯」を取り出して見せられる。

それは、もはやぼろぼろの状態だった。

その暗闇に、無気味な光る目が多数集結する。

アルハックが「アルハック!」と言うと、「40匹!」と言う返事が帰って来る。

ネコたちも全員無事だったのだ。

カジルは、全員に、魔法の絨毯に乗り込むように命ずるが、皆一斉に飛び乗ろうとしたので、気が立っていた絨毯は暴走を始め、ネコたちを振払うと、アルハックとカジルを乗せただけで飛び上がり、城を取り巻く湖に墜落してしまう。

城の中では、今正に、アリババの3333個目の銅像が建ったパーティが開かれていた。

そこに、アルハックを乗せた絨毯が飛び込んで来る。

アルハックは刀を構えて、アリババに挑戦するが、アリババはアンプの魔物を呼出す。

アルハックは、絨毯に乗って、巨大な魔物の顔の近くまで飛ぶと、「耳耳作戦」と叫ぶと、魔物の耳を思い井きり引っ張りはじめる。

あまりの痛さに体を小さくする魔物。

さらに、アルハックは「ハクション大作戦!」と叫び、魔物の上からコショウを撒く。

その頃、城の周囲の池の向こう岸に取り残されていたネコたちは、何とか城に乗り込もうと、二本のやしの木の間にゴムを張り、それに全員が乗って飛ぶ「パチンコ作戦」を実行しようとしていたが、城の側まで後33cmと言う所で、飛行距離が足らず、全員、湖に落ちてしまう。

城の中庭では、とうとう捕まってしまったアルハックを餌にして、魔物は庭の池に糸をたらす。

池の中には、何匹ものワニが、口を大きく開けて待ち構えていた。

何度も、じらされたあげく、とうとう池に落下させられたアルハックだったが、そこに飛んで来たカジル操縦の魔法の絨毯に間一髪救われる。

絨毯は、魔物の周囲をぐるぐると廻り、魔物の目を回す。

怒った魔物は、自分も飛び上がり、絨毯を追って城の周囲を飛び回る内に、城を破壊しはじめる。

この追跡劇で、さすがの絨毯も疲れ出す。

魔物も疲れたのか、中庭の池に手を伸ばし、池ごと掘り出すと、その中の水を飲み干すと、その後、口の中からワニを吐き出すのだった。

このピンチの中、再び、向こう岸まで戻っていたネコたちは、全員身体に風船を付け、股旅を七輪で焼いて煙を出す「フィーリング戦法」を始める。

その匂いを嗅いだネコたちは、全員夢心地になり、風船の浮力も手伝って空に浮かび出す。

魔物は、捕まえたアルハックの体を壊した丸屋根の内側に入れると、もう片方の手に持った別の尖った屋根の先をピンのように突き立てはじめる。

やがて、面倒臭くなったのか、丸屋根ごと口に入れて食べはじめる。

ドラは、背中に括り付けた花火に点火し、城目掛け飛び出す。

魔物が口を開けると、ハックは、歯と歯の間のすき間に挟まって助かっていた。

そこにドラが飛んで来て、魔物の鼻に飛びつく。

目の前にネコが現れたので、恐怖のあまり小さくなった魔物を、ドラは追跡しはじめる。

アルハックは、アリババと剣で勝負を始めるが、その周囲を署長と家来たちが取り囲む。

しかし、ゴロたちネコの大軍も駆け付け、ゴロは署長に飛びかかる。

逃げて来た魔物は、ランプの中に逃げ込もうとするが、そこにはドラが先回りして待ち構えていた。

アルハックとアリババの戦いは、城の屋根の上に及んでいた。

アルハックは、アリババの体に投げ縄を引っ掛けると、城から突き落とす。

アリババは、途中の突起物に引っ掛かり、まるでアメリカンクラッカーのようにぶつかりあう。

一方、ランプに入れなかった魔物は、秘密の地下室の中に逃げ込むが、そこには、国中から捕えられて来たネコが全部集められていた。

魔物は後ろに逃げて来ていたアリババの上に気絶して倒れてしまう。

とうとうアルハックやネコたちに包囲されたアリババは、国民から奪い取った宝物はどこだと聞かれ、金貨一枚もないと答える。

がかりするアルハックたちを尻目に、隙をついて、魔法の絨毯を奪い取ったアリババは、それに乗って、城を逃亡しようとする。

しかし、絨毯は疲れ切っており、湖の上で力つきると、そのまま湖に墜落してしまう。

アリババは、湖の中に住んでいたワニに食い付かれ、慌てて水面から飛び出すと、そのまま向こう岸まで走って逃げる。

城はもうぼろぼろの状態だった。

アルハックはランプをこすり、魔物を出現させると、この城を、世界一素晴らしい遊園地にしろと命ずる。

魔物は、腰布を取って、それをマジシャンのように城の上に広げると、さっと取り上げる。

すると、ぼろぼろだった城は、素晴らしい遊園地に産まれ変って出現する。

空には鳩が飛び交い、遊園地に続く長い道には、大勢の子供達がやって来る姿が見られた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

従来、ディズニーと日本画をミックスしたような丁寧な作画でお馴染みだった東映動画が、まるでハンナ・バーバラのリミテッド・アニメのような奔放なスタイルで描いた全く新しいタイプのアニメ作品。

この時代の東映動画としては、かなり異色作と言って良いだろう。

60年代後半、それまでの、やや真面目さが前面に出た名作路線から、より子供に楽しんでもらおうとするテレビアニメやマンガ原作を意識したかなりラフな路線や、オリジナルのギャグ路線を極めた東映動画が、さらに新しいジャンルに挑戦しようとした企画だったのかも知れない。

アリババと40人の盗賊の話を、大胆に逆転させた発想も面白い。

アルハックの声を演じているのは、後にドラえもんで有名になる大山のぶ代。

エンディング曲も彼女が唄っている。

この頃はまだ、ドラえもん声と言うよりも、石田国松(「ハリスの旋風」「国松さまのお通りだい」)の声である。

アリババ33世の声は、「ゲゲゲの鬼太郎」の初代ネズミ男大塚周夫、そして署長の声は、同じく目玉の親父の田の中勇である。

ランプの精と言うか、魔物のキャラクターも人間とも動物ともつかない印象的な造型で、例えて言えば、赤塚不二夫描く所のベラマッチャに似ているとでも言えば良いのか?

上映時間が短い分、やや内容的には物足りなさも感じるが、それなりに楽しめるアニメとなっている。