TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

黒帯三国志

1956年、東宝、下村明原作、松浦健郎+山崎巌脚本、谷口千吉脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

明治の末、北九州のある町

町に向う岡蒸気の中にはメリケン練習場と言う拳闘クラブの門弟たちが乗り込んでおり、その中の一人、泥酔した小鉄(藤木悠)は、同じ列車に乗り合わせていた洋装の令嬢風の娘に目を停め、彼女が持っていたヴァイオリンを掴むとからかいはじめる。

その暴挙に、果敢にもビンタで応じた娘であったが、小鉄が怒って殴り返そうとした時、見かねて注意したのは、向いの席に座っていた正風館道場の門弟で小天狗とあだ名される小関昌彦(三船敏郎)だった。

小鉄は、その小関に立ち向かおうとするが、あっさり投げ飛ばされてしまう。

拳闘クラブの面々は、小鉄を押しとどめ目配せしあい、その場は何とかおさまる。

南屋敷と言う町に着いた娘は、小関から荷物を降ろしてもらうのだった。

柔道着を持って道場に帰る途中の小関を待ち伏せしていたのは、小鉄や伊庭八郎(佐伯秀男)らメリケン練習場の面々。

列車の中で恥をかかされたので、この場で勝負を願いたいと言う。

しかし、小関は、他流試合は固く禁止されているので、話し合いになら応ずると、御所明神の境内で明日の晩7時に再会しようと答えて去って行く。

清風館道場では、道場主天路正純(佐分利信)が来客中で、一人娘静江(香川京子)は、呉服屋と楽しそうに話をしていた。

来客と言うのは、岡蒸気の中で小関に助けられた加茂紀久子(岡田茉莉子)と、その父親加茂貢兵衛(笈川武夫)であった。

事の経緯を打ち明け、礼を言うと共に、紀久子がすっかり小関を気に入ってしまったので、婿にくれないかと言う相談だった。

その話を、茶を運んで来た静江が聞いてしまい、思わず、部屋の前で立ち止まってしまう。

静江は、幼い頃から兄弟同様に育てられて来た小関と、末は夫婦になれると思い込んでいたからだ。

着飾った紀久子は練習中の小関の元に向い、その胸ぐらを掴んで投げてみようとするお転婆振り。

しかし、軽く投げ返されると、わざと足を挫い居たと小関に甘えてみせるので、外で見ていた静江はいたたまれなくなって、外に逃げ出してしまう。

ところが、近くの塀に「小天狗、静江」と子供が書いた相合い傘のいたずら書きを見つけ、顔を赤らめている所に、心配した小関が近づいて来たので、慌てて落書きを消し、道場へ戻るよう促す。

二人が道場へ帰ろうとすると、近くに潜んでいた子供達は、又塀の側に戻り、同じ落書きを書くのだった。

静江が、見合いはもうすんだの?と皮肉まじりに聞くと、小関はぶ然とする。

その頃、メリケン道場では、伊庭や小鉄たちが、今夜、神社で会う約束になっている小関を襲撃する相談をしあっていたが、道場主印東祐一郎(中村哲)が戻って来たので、皆黙り込んでしまう。

その夜7時、小関は約束通り、御所神社の境内に一人でやって来る。

待ち受けていた伊庭八郎は、自分達は、九州に拳闘を広めようとしているが、それを邪魔しているのは清風館の柔道だと、因縁を吹き掛けて来て殴り掛かる。

それを避けた小関は、大勢に待ち伏せされていた事を知ると、やむを得ないと判断、全員と戦いはじめる。

その喧嘩の事を小関本人から打ち明けられた天路は、何故、黙って殴られて来なかった?今の君は、わしより強いかも知れないが、柔道は喧嘩の道具ではないと叱りつける。

小関は、覚悟をしていたように、責任を取ると答える。

辞めるのか?と天路が問うと、身寄りのない自分を育て、中学まで出させてもらいありがとうございますと礼を述べた後、自分は東京に行くと小関は頭を下げるのだった。

それを聞いていた静江は引き止めようとするが、甘え過ぎていた自分を鍛え直そうと思うと小関は譲らない。

それに対し天路は、東京では、一年に一度、官費で外国に行かせる試験があるそうだから、それを受けて、立派な男になって、わしを見返しに来なさい。わしが、行く行くは君を後継ぎにするつもりだった事は分かっているだろうと、小関に優しく言葉をかけるのだった。

小関が自宅に引き下がると、考えてみれば、喧嘩や見合いなど、ここは修行中の男には悪い町なのかも知れぬ。お前も、あの男を田舎の柔道教師にするつもりではないだろう?明日の朝までに、あいつの着物を縫ってしまえと、天路は静江に促す。

彼女が、小関のために着物を作りかけていた事を知っていたのだ。

翌日、小関の下宿を訪れた静江は、徹夜で縫い上げた着物を渡す。

それを有難くもらった小関は、試験に受かったら、必ず報告に戻って来ると誓い、静江と指切りをするのだった。

その頃、メリケン練習場の伊庭を訪ねて、怪しげな男がやって来る。

その男、沖縄から弟が戻って来たと伝えてくれと言う。

八郎の弟、俊介(平田昭彦)であった。

俊介が、少林流空手の修行で行った沖縄は空気が合わんと、戻って来た理由を説明すると、八郎の方も、喧嘩がばれて、師匠から破門を言い渡されたと告白する。

兄の破門の原因が、柔道家だった事を知ると、自分がその男を消してやると凄みながら、サンドバッグを手刀で突き破るのだった。

小関を駅まで送ろうとしていた静江は、駅で泣き出したりしたら、みっともないからと言いながら、途中で帰ると言い出す。

一旦、一人で駅に向っていた小関だが、途中で走り戻って来て静江に追い付くと、自分が戻って来るまで、どこにもお嫁に行かないでくれと頼む。

同じ頃、清風館道場では、天路が、淋しそうに、小関の名札を壁から外していた。

岡蒸気に乗って東京に向っていた小関の、隣に座っていた商人風の男が話し掛けて来て、割の良い仕事があるのでやってみる気はないかと勧める。

しかし、小関は、外国に行くため、東京で勉強をしなければいけないのでと、断わる。

東京に着いた小関は、東京館と言う下宿に泊まって、留学生試験を受けるが、新聞発表を見ても、自分の名前は載っていなかった。

仕方がないので、下宿代を払い、父親に叱られているような気持ちになる西郷像がある上野公園にやって来た小関は、列車で知り合ったあの商人風の男に声をかけられたので、思いきって、働き口を世話してくれと頼む。

親切そうな商人風の男の正体は、人買い譲次(田中春男)であり、小関が連れて行かれたのは、北海道の開拓現場だった。

トロッコで日々石運びをやらされると言う重労働も、小関には苦にならなかったが、身体の小さな仕立て屋の職人キンチャク(沢村いき雄)には辛そうだったのでかばってやる。

彼らが入れられていたのは、二度と本土には帰れないと言われるタコ部屋だった。

タコ部屋とは、タコが自分の足を喰うように、死ぬまで辞められない監獄部屋の事であった。

そのタコ部屋で、売店を任されていた女お葉(久慈あさみ)は、小関に気があるらしく、彼が買った石鹸の箱に「切り通しで待っている」と書いてあった。

しかし、それに気付いたキンチャクは、あれは親分の女だから相手をするなと忠告する。

その言葉に従い、入口の売店で「九州!」と呼び掛けるお葉を無視して、右田親分(杉山昌三九)や譲次のいる小屋に向った小関は、約束通り1年間働いたので、百円を頂きたいと伝えるが、譲次はバカにしたように笑うだけ。

その態度を見た小関は、はじめて、自分がだまされていた事に気付くが、そこにお葉が駆け寄って来て、用事があるからと、戸籍を外に連れ出して行く。

そこへ、色眼鏡をかけた形原四郎(小堀明男)を名乗る怪しげなヤクザ風の客人が、右田を訪ねて来る。

小屋から離れた切り通しに小関を連れて来たお葉は、自分と一緒にここから逃げてくれないかと頼む。

自分は逃げないと拒む小関に、あんたもこうなりたいのかい?と、お葉が足元を指差した先にあったのは石を置いただけの墓だった。

お葉の亭主の墓なのだと言う。

知らせを聞いて、東京から駆け付けた時には三日遅く、亭主は、あの連中にここで叩き殺され、自分もそれ以来、右田の言いなりになって、売店をやらされているのだとお葉は説明する。

その話を、側で隠れて聞いている形原の姿があった。

お葉は、工事用のダイナマイトを持っているから、これで逃げようと、再度小関を誘うが、断わられ、とうとう泣き出してしまう。

その時、小屋の方から、譲次の「とびっちょ(脱走)だ!」と叫ぶ声が聞こえて来る。

犬と馬に乗った捜索隊が、とびっちょを探しに出て行く。

そんな騒ぎの中、小屋に戻って来た小関に、形原は、自分は九州生まれの人を探しているのだと説明する。

お葉も、ようやく小屋の売店に戻って来る。

キンチャクが、唯一の楽しみの尺八を吹きはじめると、それに合わせて、形原が唄いはじめる。

その様子を微笑みながら小関が見ていると、小関は、とびっちょが逃げおおせるか、捕まるか、賭けてみないかと賽を振る。

しかし、その様子を見ていた譲次は、勘に触ったように形原に迫って来るが、形原は、譲次の持った仕込みづえを珍しそうに誉めてはぐらかすのだった。

やがて、とびっちょの男(山本蓮)が捕まって、小屋の前に連れ戻されて来る。

これから、親分の前で、拷問が始まるのだったが、その様子を眺めていた形原は、お仕置きは勘弁してやってくれと前に進み出る。

自分が替わって、仕置を受けると言うのである。

その言葉を聞いて、小関は、形原を殴りつけそうになった男たちを投げ飛ばすのだった。

その態度を見た譲次は、自分は博多の菅原一家の人買い譲次だと脅しをかけて来る。

形原と小関は、右田の子分たち相手に大暴れを始める。

その様子を見ていたお葉は、ダイナマイトをタコ部屋の中に投げ込み、大爆発。

それをきっかけにして、雇われ人たちが一斉に暴動を起こし、その場所から逃げはじめる。

それから数カ月後、東京、上野公園に、どうやら、あの爆発で受けたらしき火傷の痕が額にある譲次の姿が現れる。

譲次は、そこで、警邏中の巡査と会話している形原の姿を発見、思わず身を隠すのだった。

その譲次、本郷付近で、お葉の姿を発見、その後を着いて行くと、彼女は東京館と言う下宿に向っていた。

下宿では、小関が、新聞に載った自分の合格者名を発見し、喜んでいた。

そこに訪ねて来たのが、お葉で、外務省で、ここの住所を聞いて来たと言い、外国に行くまで、自分に身の回りの世話をさせてくれと言い出す。

しかし、小関は、九州に行かねばならないと荷物をまとめはじめる。

その様子を見て、お葉は、そこに小関の良い人がいるのだと気付く。

小関は、急いで下宿を後にするが、諦めきれないお葉は、その後を追い掛ける。

そんなお葉に声をかけたのが、待ち伏せていた譲次だった。

お葉は助けを求めるが、譲次はドスで突いて殺害する。

故郷の清風館に戻った小関は、その道場が、いつの間にか「空手拳法道場」と名を変えている事に気付き、驚く。

聞くと、天路親子は引っ越したと言うので、その先を訪ねて行くと、はたして「仕立物屋」の板がかかっている。

そこからちょうど出て来た静江は、目の前に立っている小関の姿を見て驚くと同時に、彼が手にしている荷物に、自分が渡した人形がいまだについている事に気付き、泣き出すのだった。

長家の中に案内され、天路に再会した小関は、その様子がおかしい事に気付く。

静江は、父は目が見えなくなっているのだと説明する。

イギリスに行く事になったと聞いた天路は喜ぶが、目は患ったとしか言わない。

しかし、その傷跡を見た小関は、それは病気ではない事を見抜いていたが、一緒に外に出た静江に問いつめると、泣き出すだけだった。

事実を知りたい小関は、紀久子に会いに行く。

紀久子は、あれは空手家にやられたのであり、道場も、ただ同然で手放したのだとあっさり教えてくれる。

外出先から、ほろ酔い気分で帰って来た天路を待っていたのは、メリケン練習場の伊庭兄弟や小鉄ら、破門された連中だった。

彼らが待ち伏せていた理由が、小関との喧嘩にあると気付いた天路は、どうか許してやってくれと、その場に土下座をするが、そんな天路の顔を蹴り付けたのは伊庭俊介だった。

一方、小関を地元まで追い掛けて来た譲次は、元の清風館に居着いていた俊介らに、小関が戻って来ているはずだと教えるのだった。

それを聞いた俊介は、それなら天路の所にいるはずに違いないと推理し、敵が攻めて来る前に倒すのが俺流の空手だと嘯き、小鉄に、夕方5時、御所明神に来るよう、小関に伝言に行くよう頼む。

その小鉄が、道場を出ようとした時、たまたま出向いて来ていた小関と出会ったので、伝言をその場で伝える。

その頃、南屋敷駅で降りる形原の姿があった。

彼の正体は、刑事だったのだ。

一方、静江の長家に訪ねて来た紀久子は、自分が軽はずみにも、事の次第を小関にばらしてしまったと謝罪に来る。

形原は、地元署で、小関の居場所を聞き出していた。

伊庭俊介や小鉄らは道場を出、神社に向うので、譲次もそれに付いて行く。

静江は、小関の身を案じて、神社に駆け付けていた。

その静江の長家にやって来たのが、形原刑事だった。

神社で待ち受けていた俊介は、折から降り始めた雨の中、咳き込みはじめる。

その様子を見た小関は、君は病気じゃないかと気付く。

その頃、形原刑事は、紀久子と共に家に残っていた天路から事情を聞いていた。

天路は、そんな形原に、小関は自分達父子にとって夢なのですと話す。

形原刑事は、すぐさま神社に向う事にする。

紀久子は、天路にも、自分の軽率さを詫びる。

神社では、隠れていた譲次がドスを取り出し、小関に斬り掛かろうとするが、そこに駆け付けて来た形原刑事が飛びかかり、捕縄をかけながら、雑魚は俺に任せておけと小関に声をかける。

その声に勇気づけられた小関は、飛びかかって来た俊介を交わすと、石階段に向けて投げ付ける。

俊介は、起き上がろうとするが、その場で喀血してしまう。

それを見た小関は、病気を直して元気になったら、堂々と戦おうと諌めるのだった。

そんな小関に、形原刑事は、お葉が死んだ事を打ち明ける。

事情を知らない小関は、病気だったのかと驚く。

形原刑事は、それに頷くと、君に宜しくと言っていたと嘘を付くのだった。

そこに、静江が駆け付けて来て、無事な小関の姿を発見して喜ぶ。

小関は、イギリスに向うため、再び、駅から岡蒸気に乗ろうとしていた。

それを見送っていたのは、紀久子と静江の二人。

家に残っていた天路は、独り、小関の名札を愛おしそうになでていた。

紀久子は、静江の肩を押して前に出させる。

走りはじめた岡蒸気に乗った小関に向い、静江は、外国に行ったら、もう手紙なんかどうでも良いわと励ますのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

三船主演の武道ものだが、何だか前半は「続姿三四郎」、途中は「どぶろくの辰」を思わせる展開になっており、新鮮さはあまりない。

平田昭彦がライバルと言うのだから、珍しい事は確かだが、格闘シーンも迫力は今一つ。

当時「次郎長三国志」で人気の高かった小堀明男が、又、途中から参加して来て、おいしい役を演じているが、この辺のサービス精神は、今観るとピンと来ない観客も多いはず。

ただし、人買いの譲次を演じている田中春男の悪役振りはなかなか。

じゃじゃ馬風の紀久子や、対照的におしとやかな静江の描き方なども「姿三四郎」そのままと言う感じで類型的。

かえって、いちずに小関に惚れ抜く女を演じている久慈あさみの方が印象的かも知れない。

大作と言うほどではなく、当時としては、ごく普通の添え物娯楽映画と言った感じだったのではないだろうか。