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硫黄島の砂

1949年、アメリカ、ハリー・ブラウン原作+脚色、アラン・ドワン監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

第二次世界大戦の最中、ガダルカナルから撤退したアメリカ海兵隊は、ニュージーランドで本土からの補充兵の到着を待ちながら訓練を開始することになる。

ラガージ(ウォーリー・キャッセル)の元へは、シップリー(リチャード・ウェッブ)、いつも喧嘩ばかりしているフリン兄弟、ジョージ(リチャード・ジャッケル、ビル・マーフィー)などが集まって来て、互いに紹介しあう。

そして、自分達の隊長がジョン・ストライカー軍曹(ジョン・ウェイン)だと知ったアル・トーマス(フォレスト・タッカー)は、ストライカーのことを、中国戦線の頃から知っておるが、カチカチ頭の軍人だと腐すのだった。何故か階級も格下げになっているという。

訓練中、補充兵の一人、コンウェイ(ジョン・エイガー)に、彼の父親のサム・コンウェイは立派な指揮官だったと話し掛けるストライカーに対し、コンウェイは複雑な顔になる。

彼自身はインテリで、家のしきたりとして入隊したが、頭の堅い軍人の典型である父親や、同じタイプのストライカーの考え方を根本的に嫌っていたのだった。

厳しい訓練に訪れた貴重な休暇日、ストライカーに郵便が届かないのことを気にするラガージがいた、
実は、ストライカーは、別れた妻のメアリーに子供を取られてしまっていたのだ。

そのことが原因で、休暇になると、ストライカーは一人泥酔するのが常だった。
階級が格下げになったのもそうした所行が原因らしい。

一方、酒場にくり出したコンウェイは、アリソン(アデール・メイラ)という女性と知り合い、一目で恋に落ちてしまう。

ある日の野営に出かけた夜、キャンプの中で友人に、結婚して子供を作る意義を語るコンウェイの言葉を偶然聞いたストライカーは、翌日、彼に軽はずみな結婚はよせと注意するが、コンウェイは、私生活には口を出すなとますます反発するのだった。

ストライカーの部隊でも、特に不器用で、銃剣の訓練では、ストライカーから怪我をさせられたこともあるチョインスキー(ハル・フィーバーリング)も、ストライカーを嫌っていた一人だったが、ある日、レコードの音楽に合わせて銃剣のリズムを教えてくれた彼に対する気持ちを変えるようになる。

結局、アリソンとの結婚に踏み切ったコンウェイに、その直後、タラワ島への出動命令がおりる。

タラワ島では、仲間二人を残し、切れた銃弾を一人取りに戻ったトーマスは、後方で味方がコーヒーを作っているのに出会い、つい、それを飲んで時間を忘れてしまう。
その結果、残して来たギリシャ人は死に、チャーリーは負傷して本土送りになってしまう。

その事実を、作戦終了後、ハワイに戻って知ったストライカーは、トーマスを呼出し殴りつける。

しかし、トーマス自身も自分の犯した過ちを後悔していたので、二人の喧嘩を見つけ、止めに入った上官に柔道の練習中だったと嘘をつくのだった。

ホノルルでの10日間の休暇が与えられ、いつものように一人で酒を飲んでいたストライカーに、一人の女が近づいてきて、家で飲まないかと誘う。

金が目的だろうと察しを付け、それでも彼女の家に付いていったストライカーは、酒を買いに出かけた彼女の家で、一人取り残されていた赤ん坊を発見する。

彼女も又、夫に家出され、女一人で赤ん坊を育てていることを知ったストライカーは、黙って赤ん坊に金を渡し家を出るのだが、又しても自分の行動を見張っていたラガージに、もう、泥酔するのは止めたと宣言するのだった。

その後、相変わらず、新妻からの手紙に現を抜かし、訓練中の新人が過って反対方向に投げてしまった手榴弾にやられそうになったコンウェイは、ストライカーに命を助けられることになる。

そんなストライカー部隊に、硫黄島への出撃命令がおりる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

太平洋戦争の激戦地、硫黄島に出撃するまで猛特訓に明け暮れる補充兵たちと鬼軍曹役のジョン・ウェインの対立と和解を描いた戦争映画。

海兵隊が全面協力しているらしく、上陸シーンや戦闘シーンはなかなかの迫力。
実際の記録フィルムも使用されているようだ。

硫黄島決戦に向け、若い補充兵が訓練されているといえば、日本の悲愴感溢れる「海軍特別年少兵」(1972)などが思い浮かぶが、やはり描き方が全く違っているのが分かる。

訓練の地となるニュージーランドやハワイの描写は、いかにも戦勝国らしく余裕があり、そこでの休日の過ごし方やラブロマンスが絡ませてある辺りの描き方も、いかにも豊かな国の作品というしかない。

軍人としては真面目一方なのだが、家庭を顧みず、妻と子供に逃げられ、傷付いている男を、ジョン・ウェインが演じている。

一見頭が堅い頑固者と思われる軍人が、実は意外と部下思いの優しさを持った男だったというパターンは「海軍特別年少兵」にも使われており、比較的良くあるパターンなのだが、やはり、無骨そうなジョン・ウェインがやるとハマって見える。

ただし、劇中で部下たちが口でいっているほどには、画面上、ジョン・ウェインは厳しい男には見えず、その辺が若干甘く感じられるが、当時のジョン・ウェインのイメージや、戦争映画のヒーローの描き方としては仕方ない所かも知れない。

娯楽作品としての出来はともかく、硫黄島の戦い自体、あまりきちんと描かれたことがない題材のように思われるし、そういう意味では、大変貴重な作品ではないだろうか。