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森は生きている

1956年、ロシア、S・マルシャーク原作+脚本、イワン・イワノフ=ワノ監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

老カラス、ウサギ、リスたちさえもが寒さに震える大晦日の森の中。

一人の少女がそりを引いて雪の中を近づいてくる。

さらに、同じようにそりを引いた城の老兵士が少女に近づき、何をしているのかと尋ねてくる。

少女が言うには、継母からの命令で、薪を集めて来なければパンをもらえないと言うのであった。

同情した老兵士は、少女の薪拾いを手伝いながら、同じように親を亡くしたために、我がまま放題に育ってしまった、少女と同年輩の女王の話を聞かせる。

その頃、城の中では、当の女王が教育係の博士から授業を受けていたが、最初から真面目に覚えるつもり等ない様子。
博士も、幼い女王から、きまぐれで死刑を言い渡されるのを恐れて、注意する事すらままならない。

博士から、一年には12ヶ月と四季があると聞いた女王、何を思ったか、大晦日の今日、4月に咲くはずの「マツユキ草」が咲く事を命ずると言い出す。

ついては、今日中に籠いっぱいのマツユキ草を持って来たものには、籠いっぱいの金貨を与えると国中におふれを出す事に。

その知らせを聞いた少女の継母と寝穢く太った実娘は、薪を運んで帰宅したばかりの少女に、今すぐ、森へ行ってマツユキ草を籠いっぱい取ってくるよう無理難題を命ずるのであった。

凍えるような寒さの中、再び入った森の中で、腹を空かせた狼と遭遇した少女は木の上に避難するが、急場を助けようとした老カラスが、近くに狼が嫌う光が見えると声をだし、その光に気付いた狼は退散することに。

不思議な光に近づいた少女は、それが12人の男たちがたき火を囲んでいる姿だったことに気付くのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

有名な舞台劇の映画化で、連邦動画スタジオ製作のカラー長篇アニメの古典。

正確なデッサン、滑らかなフルアニメ、美しい自然描写、安定感のあるカメラワーク…、ディフォルメされた現代のアニメを見慣れた目には、しごく地味に映るかも知れないが、この時代特有のアニメ表現の技術力には、ゆるぎない安心感がある。

ストーリーの中核は「継母に虐げられた少女の救済譚」だろうが、我がままな女王が大自然の驚異の前に素直さを学ぶ過程も微笑ましい。

唯一、本作で難点をあげるとすれば、主人公の少女のキャラクターが、今一つ魅力に乏しい事。

平均的なロシア人少女の顔という事なのだろうが、動物たち、痩せぎすの女王、博士、老兵士、継母たちが皆、リアルな中にも微妙にイラスト的なディフォルメをされて表情も豊かになっているのに比べ、12ケ月の精たちと少女は、リアルさを基調に描かれているので、キャラクタ−重視で発展して来た日本のアニメやコミックを観慣れた感覚から言うと、ちょっと馴染みにくい感じもしないではない。

これはしかし、ディズニーの初期作品等でも見られる傾向で、ファンタジー作品中、他のキャラクターはどんなに誇張されていても、主人公自体はリアルに…という不文律が当時はあったものと思われる。

マンガ映画というより、動くイラストという感覚に近いのかも知れない。

透過光表現やフィルター効果が効果的に使用してあり、次々に森の季節が変容していくクライマックスシーンは、アニメ表現の独擅場といえる程の見事さ。

正に、ファンタジーアニメの歴史的名作と言うにふさわしい作品だと思う。