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暴力教室

1976年、東映東京、神波史男+奥山貞行+福湯通夫脚本、岡本明久脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

愛徳学園高等学校にやってきた一人の青年、やおらポケットウィスキーを取り出すとぐいと一口飲んで校門をくぐる。

理事長の石黒(安部徹)や校長の難波(名和宏)に挨拶したこの青年、荒れる3年のクラス担任を仰せつかった体育の新人教師、溝口勝利(松田優作)であった。

さっそく、生徒たちをしごきはじめるが、生徒たちも黙っちゃいない。
溝口以外の教師のことなど、バカにし放題という有り様だった。

中でも、クラス一の問題児、喜多条仁(舘ひろし)は、暴走族のボスも兼ねており、誰も手を出せない状態であった。

彼の父親(丹波哲郎)は、そんな息子がいつか警察沙汰を起こすのではないかときつく叱責するが、逆にその行為が仁の心を閉ざして行く。

校舎移転の関する跡地処理から発生する4億円もの利鞘を当てにする理事長の話を耳にした、娘のますみ(結城なほこ)は、自ら進んで不良仲間と付き合うようになり、シンナー遊び等で身を持ち崩して行く。

乱れたそのますみの狂態振りを写した写真を脅しのネタにされた石黒は、溝口にネガの返却を依頼する。

喜多条と暴走族仲間にボコボコにされながらも、一切手出ししなかった溝口のただならぬ根性を怪んだ喜多条は、溝口が元ボクサーで、かつて、試合相手をリング上で死なせてしまった男であることを知る。

ある日、喜多条は、溝口のいない留守宅に押し掛け、かねて見かけたことのある高校生の妹、淳子(山本由香利)に乱暴するのだった。

帰宅後、その事実を知った溝口は、翌日学校で、喜多条と殴り合いの喧嘩をはじめ、結局、喜多条は退学、溝口は謹慎処分を言い渡されてしまう。

さらに、学校の風紀改善を計る校長は、剣道部のキャプテン新田(南条弘二)を焚き付けて、力には力で対抗する強力な自治組織を結成させるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

舘ひろしのデビュー作であると同時に、松田優作の東映初主演作品でもある。

タイトルから、グレン・フォー、シドニー・ポワチエ、ヴィック・モローら出演の同名作品「暴力教室」(1955)などを連想するが、どちらかといえば、この前年に公開された劇画の実写版「男組」の「柳の下」を狙った企画ではないかと想像される。

事実、この作品でデビューした舘ひろしは、続いて「男組」の続編「男組 少年刑務所」(1976)の主人公、流全次郎に扮することになる。

学園を舞台にした生徒同士、さらに教師と生徒との血みどろの格闘ものというアイデアは、例えば、最近の韓国映画「火山高」などにも受け継がれているような気がする。(剣道が登場する所がミソ)

学生たちの喧嘩を、どちらかといえば爽やかなバンカラ風に描く青春映画はこの前にもいくつかあるが、明らかに「セックスとヴァイオレンス」を全面に押し出した作品は、この辺から始まったように感じる。
「劇画」の影響もあるが、70年代映画の一つの流れである。

後半のアクションには、「燃えよドラゴン」(1973)や「ドラゴン 怒りの鉄拳」(1972)などを連想させる演出があり、ここにも時代を感じさせる。

舘ひろしが当時所属していたクールズの面々が不良学生、安西マリア、室田日出男、小林稔侍などが、弱くだらしのない教師を演じている所にも注目したい。

ダブル主演ともいうべき松田優作と舘ひろしは、各々、迫力、存在感を競い合っている。
舘ひろしが、時折、ちらりと見せる「シャイというか気弱そうな表情」も見所。