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くノ一忍法

1964年、東映京都、山田風太郎原作、倉本聰脚本、中島貞夫脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

大阪城落城を前に、真田幸村(北村英三)は、信濃から呼び寄せた、お由比(中原早苗)、お眉(芳村真理)、お喬(金子勝美)、お揺(三島ゆり子)、お奈津(葵三津子)ら5人のくノ一に、子供に恵まれなかった千姫(野川由美子)に代わり、豊臣秀頼の子種を忍法「吸い壺」の術で各人が貰い受け、豊臣の血を守るようよう命ずる。

その直後、幸村は、参上した猿飛佐助(市川小金吾)共々、敵の銃弾に倒れてしまうのだが、肉体から抜け出た幸村の霊魂は、やり残した計画が結実する様子を見届けたいといいだし、仕方なく、佐助の霊もこの世に留まる事になる。

坂崎出羽守(露口茂)の手によって大阪城から助け出され、祖父である徳川家康(曽我廼家明蝶)の待つ駿府城に連れて来られた千姫は、服部半蔵(品川隆二)からの報告で、彼女が連れてきた腰元の中に、秀頼の子種を妊ったくノ一が紛れ込んでいるという事を家康から聞かされても、驚くどころか、自分は豊臣の女なので、その子を生ませて立派に育ててみせると言い張るのだった。

言い出したら聞かない千姫に困惑した家康は、仕方なく、半蔵が呼び寄せた五人の伊賀忍者、鼓隼人(大木実)、七斗捨兵衛(待田京介)、般若寺風伯(吉田義夫)、雨巻一天斎(山城新伍)、薄墨友康(小沢昭一)に、千姫に気取られぬよう、5ケ月以内に妊娠した腰元を見つけだして始末するよう命ずるのだった。

秘かに千姫に恋心を抱いた坂崎出羽守が、彼女の元へ差し向けた三人の若侍たちは、千姫の腰元の一人、お眉の取り出した仏像にエロティックな幻想を見る。
お眉の信濃忍法「幻菩薩」にかかってしまったのである。

以後、抱いた相手の女に姿形がそっくり変身してしまう、伊賀忍法「くノ一化粧」を使って、腰元の一人お奈美に接近した薄墨友康は、逆に相手の信濃忍法「月の輪」にかかってしまい、他のくノ一たちに正体を見破られる事になる。

一方、帰って来ない三人の若侍を心配した坂崎出羽守は、再び腹心の十兵衛を千姫の元へ送るのだが、帰ってきた十兵衛は、精気を全て抜き取られたような耄けた姿となっていた。
そのあまりの狂態に、思わず斬ってしまった出羽守は、十兵衛の身体には一滴の血も残されていなかった事に気付く。

伊賀忍法「花開き」で敵陣に乗り込んだ一天斎同様、お喬の信濃忍法「露枯らし」の餌食になってしまっていたのである…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

中島貞夫監督の監督第一作である。

倉本聰脚本というのも意外なら、あの「夜のヒットスタジオ」の司会で有名だった芳村真理がくノ一をやっていたという事、さらに名女優の小暮実千代が、こんなお色気ファンタジー映画に出演しているというのも意外である。

なみのSFなんかよりもはるかに奇想天外といわれる山田風太郎の原作の映画化、それを中島監督は、様式的な美術セットとユーモアも交えた構成で、一種独特の優雅な幻想世界に仕上げている。

作られた時代が時代だけに、エロティックさは希薄で、むしろアート風。
今なら、女性が観ても、さほど抵抗がないのではないかと思われる程度の表現である。

伊賀忍者たちを演ずるは、テレビ版「忍びの者」の主役石川五右衛門や「素浪人月影兵庫」での焼津の半次で人気者だった品川隆二、テレビ「悪魔くん」のメフィスト役吉田義夫、「風小憎」や「白馬童子」の山城新伍など、かなりマニアックなキャスティング。

進歩したVFX技術等を見慣れ、そうした刺激的なものを求める目には物足りなさを感じる作品だろうが、これはこれでかなり面白い作品だと思う。

後半、真田幸村の隠し砦として登場する、何やら「きのこ雲」を連想させるような巨岩を中心とした、海辺の雪景色は印象的。

千姫役の野川由美子も、瑞々しくて魅力的である。