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浪人街

1990年、山田洋行ライトヴィジョン、山上伊太郎原作、笠原和夫脚本、黒木和男監督作品。

日本映画の父、牧野省三追悼60周年記念作品。

本作では総監修をつとめたマキノ雅広自身の出世作の4度目のリメイクでもある。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

雨の中、決闘する二人の武士。
勝った方が立ち去った後、その試合を近くで観ていた一人の浪人者が、斬られた死体に近づき、その刀を盗み取る。自身の持っていた刀は「竹みつ」だったのである。

夜鷹連中が集まる一件の飲み屋。
そこへやってきたのは、夜鷹にからむ客相手に、自身の頭を棒で叩かせては、小銭にありついていた、これ又、情けない浪人者の赤牛弥五右衛門(勝新太郎)。
先客だった新顔の浪人者に目を止める。

先程、死体から刀を盗んでいた男、荒牧源内(原田芳雄)である。
荒巻は、店にいたお新(樋口可南子)とは旧知の間柄であるらしい。

さらに、赤牛と同じ貧乏長家に、妹のおぶん(杉田かおる)と住む鳥飼いの浪人、土居孫八郎(田中邦衛)。
そして、荒牧の知人で、旗本達の刀の試し斬りのために、死体を斬ってみせては生計を立てている母衣権兵衛(石橋蓮司)。

彼らは各々、訳ありの過去を持ちながらも、今は全員、何の希望もないどん底状態の浪人達であった。

そんな彼らの周囲で、夜鷹が次々に惨殺されるという事件が起きる。

どうやら、若い旗本連中たちの仕業らしいと分かるのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

良くも悪くも、非常に生真面目に作られている時代劇である。
画面構成も堂々たるもので、中心となる人物達の演技も皆見ごたえがある。

特に、勝新演ずる赤牛の卑屈感は絶品。

日頃は、貧しい夜鷹相手に読み書きを教えてやっている人柄の良さもあるだけに、いっそう、そのみじめさが際立つ。

もう一人、印象に残るのは母衣を演じる石橋蓮司のかっこよさ。

特に、クライマックスの大立ち回りの舞台に、白装束姿で駆け付ける様はうっとりする程。

本作は彼の代表作の一本ではないだろうか。

出来としては悪くはないのだが、正直、娯楽時代劇特有のワクワク感は薄いといわざるを得ない。

見せ場となるクライマックスの大立ち回りに至るまでが、その生真面目な作風を好む人もいるだろうが、個人的には、やや硬く感じるのだ。

大立ち回りにしても、確かに迫力はあるのだが、今一つ、爽快感に乏しい。
やはり、そこに至るまでの重苦しさが、大きくそこで「弾けた!」というメリハリ感が乏しいからであろうか?
あるいは、悪役を演じる旗本達に迫力がないからか?

どちらにしても、時代劇ファンにとってみれば、一見の価値は十分にある作品といえよう。