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1959年、宝塚映画、井伏鱒二原作、藤本義一脚本、川島雄三脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

大阪の町の路上で、いかがわしい写真を販売していたハラ作こと西原作一(藤木悠)は、警察に追われ、逃げ込んだ書店で出会った学生服姿の江藤実(小沢昭一)から頼まれるままに、よろず請負業の与田五郎(フランキー堺)の住む夕陽ケ丘のアパートへ彼を案内する。

一方、陶芸作家の津山ユミ子(淡島千景)も、五郎を頼ってそのアパートを訪れてきて、空いていた四畳半の部屋に住む事になる。

予備校生である江藤の五郎への依頼は、自分の代わりに予備校の模擬試験を受けて欲しいというものであった。
成績の悪い自分でも、何とか国元の親を喜ばせたいからだという。

やがて、五郎の元に、アパートの住人で三人の男の相手をして妾暮しをしている村上お千代(乙羽信子)が奇妙な依頼をしに来る。
自分は国元に約束した相手がいるのだが、自分は両家のお屋敷に奉公していると信じ込んでいる。
故郷の習慣で、そういう娘が帰省する時は、そのお屋敷のお嬢様なり奥様を一人連れて帰らねばならぬという。そうしなければ、外でどんな商売をしてきたか悪い噂が立ちかねないというのだった。

そのお嬢様役を頼まれたのは、引っ越してきたばかりのユミ子だった。
不承不承に引き受けざるを得なくなるユミ子。

さらに五郎は、やはり、同じアパートの住人で、欲求不満の妻を持つ骨董屋の宝珍堂(渡辺篤)から、自分に代わって、女房の相手をしてやってくれというとんでもない依頼までされる事に。

さらに、江藤から再び依頼された代理試験のために、遠路、飛行機で連れて来られた福岡の西日本大学で、五郎は、最初から自分が代理入学試験を受けさせられるに雇われていたのだという事に気付くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

強烈なキャラクターの住人達が住んでいるアパートの生活を中心に、小器用に生きてきた男が、自分の軽薄な本質と向き合わされる事になり、やがて、そこから逃亡しようとする様をドタバタを交えて、コミカルに描いている。

とにかく、登場する一人一人がエネルギッシュで、その個性が丁々発止と交差しあう中で、物語がズンズン進行して行く。そのテンポに、観ている側は、付いて行くだけでやっとという感じである。

アパートの中で蜂を買い、怪し気な栄養剤を作っている熊田(山茶花究)。
女一人ながら洋酒の密売で儲けている島ヤスヨ(清川虹子)。
テルミー化粧品の販売員で、ひ弱な夫(加藤春哉)と始終イチャイチャしながら暮している教子(市原悦子)。
ヌーボーとして、何を考えているのか得体の知れない保険屋、野々宮(益田喜頓)。
耳の遠いアパートの御隠居(沢村いき雄)と、ちゃっかり女房のおミノ(浪花千栄子)。

そして、アパートの隣で、元戦友だった五郎直伝のキャベツ巻きとこんにゃく作りで生計を立てている洋さん(桂小金治)。

皆、一癖も二癖もありそうな連中ばかりである。

冒頭、ユミ子がアパートを訪れる際、次々と、奇妙なキャラクターたちのキテレツな行動と彼女が遭遇して行く様子を観客に観せる事によって、このアパートの特殊さを一挙に説明してしまう辺り、見事というしかない。

ドタバタとわい雑さの中に、きれいごとを排除したむき出しの人間の本性が透けて見えるような内容になっている。

面白うて、やがて哀しき…、そんなドラマである。