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人も歩けば

1960年、東宝、梅崎春生原作、川島雄三脚色+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

しがない銀座のドラマー、砂川桂馬(フランキー堺)は、成金質店の店主、義平(沢村いき雄)と将棋友達であった。

ある日、その義平から娘をもらってくれないかと誘われ、すっかり若く可愛い清子(小林千登勢)の事だとばかり思い込んで承諾した桂馬、実は結婚の相手は出戻り娘の富子(横山道代)の方だと分かった時はもう手後れ。

結婚式の酒が祟ったのか、義父になったばかりの義平はその晩、急死。
今や、質屋の若旦那に治まったはずの桂馬だったが、事業拡張計画に失敗、すっかり信用を落とした彼は、義母のキン(沢村貞子)からも女房からも見限られ、今では、化粧品の販売員として家計を助ける毎日であった。

そんな桂馬の唯一の楽しみは、色っぽいママ(淡路恵子)の経営するおでんや「すみれ」で飲む事くらい。
その「すみれ」で知り合った、占いに夢中の銭湯「八卦湯」の主人、日高泥竜子(森川信)から手相を見られた桂馬は、近々大金が転がり込むと予見される。

しかし、家に帰った桂馬を待っていたのは、出入りの古着屋、木下藤兵衛(桂小金治)も加わり、すっかり、桂馬をないがしろにした家族の姿だった。
解消のなさをバカにされ逆上した桂馬は、怪し気な私立探偵、金田一小五郎(藤木悠)が質草として預けてあった短刀を振り回し、藤兵衛に軽い怪我を追わせた後、その藤兵衛のスクーターを盗んで家を飛び出してしまう。

100円宿の「浪浪荘」に泊まり込んだ桂馬は、そこで、ヤクザ志望の板割の鉄(三遊亭小円馬)や将棋好きの大家、並木(加藤大介)と知り合う。

その頃、成金屋には一人の外国人弁護士が訪ねて来る。
彼、ロバート・近藤(ロイ・ジェームズ)がいうには、ロスに住む桂馬の叔父が他界したため、遺言によって、桂馬に9000万の遺産が入るという。

しかし、それを受け取るには条件があり、1ヶ月以内に、桂馬本人が弁護士事務所まで取りに来いという。

欲に目がくらんだものの、家を出たまま行方の知れない桂馬を探すため、キンと富子は、探偵の金田一に桂馬捜索の依頼をする事になるのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

フランキー主演の軽妙なコメディである。

登場人物も多彩で、今観ると、色々興味深い箇所がある。

例えば、本作の作られた1960年に、金田一という名前が、すでに名探偵の代名詞として使用されている事である。
これは、片岡千恵蔵が金田一を演じた1949年から1956年にかけての東映人気シリーズが元だと思われる。
そのため、本作での金田一、藤木悠も、やたらと変装ばかりしているキャラクターになっている。

板割の鉄に絡んで「浪浪荘」に乗り込んで来るヤクザに、「ゴジラの八(八破むと志)」「ラドンの松(由利徹)」「アンギラスの熊(南利明)」という役名で、当時人気の脱線トリオが登場するのもおかしい。

ちなみに、フランキー堺が「モスラ」で主演を演じるのは、この翌年の1961年の事である。

ヒロインを演ずる小林千登勢も愛らしいし、木下藤兵衛の所で働いている探偵マニアのおかしな女の子、ナミ子(春川ますみ)も、まだ少女の面影が残る時代である。

占いに凝るあまり、銭湯をやめて、新興宗教を作ろうと計画している日高が、ボサボサ頭のカツラにヒゲモジャの変装をしているフランキーを教祖にぴったりと祭り上げようとする辺りは、何やらを連想してしまったりもする。

最後のあっけなさが若干気にならないでもないが、観て損はない楽しい娯楽編である。